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ものがたり

【どこよりも早く先行ためし読み!】最新刊『絶体絶命ゲーム13』 第3回


この小説、危険すぎ! 累計72万部の圧倒的人気シリーズ『絶体絶命ゲーム』待望の最新刊を、どこよりも早くためし読み!
気になる新キャラの2年生、クセモノぞろいの3年生を相手に、春馬たち1年生はどう戦う――!?
(毎週水曜日・全4回)


※『絶体絶命ゲーム』コミック公開中!

このお話は…

第2ゲームは「プレイヤーはどの教室にいる?」

3学年のチームリーダーが、おたがいの表情や態度を読みあうところが、勝利のキモ!?

お人好しの春馬にはいちばん苦手な心理戦。
さっそく北条雅に、未奈のことをつっこまれて、考えを読まれてしまい、絶体絶命に。
いったいどうする、春馬!?



※これまでのお話はコチラから


6 読みの「裏」をかけ!

 

「それでは、第2ラウンドよ。このラウンドは、答える順番をかえて1年生からにしたわよ。それでは、春馬、どの教室か答えてください!」

 ミロが言うが、春馬はすぐに答えずに、また考える。

 今回の『絶体絶命ゲーム』は出鼻をくじかれたようで、いつもの調子が出ない。

 このゲーム、なにか見落としている感じがする。

 なんだろう?

 雅は、本当に未奈のいる教室が、わかったのだろうか?

「あぁ、もう、どうしたのよ! すぐに答えてよ」

 ミロが、せきたてた。

 春馬は、じっと考える。

「だんまりなんて、最低! あと5秒で答えなさい。5、4……」

「そんなルールはなかっただろう」

「今、作ったのよ! さあ、残り3秒、2秒……」

 ミロがけんか腰で言う。

「わかった、答えるよ。……1年5組だ」

「1年5組でいいのね」

 ミロが確認すると、春馬はしぶしぶ「いいよ」と答えた。

 モニターに『1年5組』の教室が映る。

 教室には、だれもいない。

「また、ハズレ! すか、すか、すか、すかよ!」

 ミロが、陽気に言った。

「つぎは、快晴よ」

 ミロに言われると、快晴は春馬に目をむけてくる。

「ターゲットは、ぼくですか?」

 春馬が、不満そうにきいた。

「きみは頭がよくて、運動神経もいいけど、お人よしという欠点があるだろう」

「……このゲームは、ぼくに不利ということか?」

 春馬は、自虐的に言った。

「まぁ、そういうことだ。雅先輩の推測を信じると、亜沙美は2階にいるな。ぼくの答えは、2年5組だ」

「2年5組でいいのね」

 ミロが確認すると、快晴はうなずく。

 モニターに『2年5組』の教室が映るが、だれもいない。

「またまた、おまた、ハズレ! すか、すか、すか、すかよ!」

 ミロが、声をはりあげて言った。

「どうして、2階にしたの?」

 雅のふいの質問に、快晴は、きょとんとなる。

「……えっ、なに?」

「わたしはさっき、『未奈は3階にいる』と言ったわ。それなのに、どうして2階を選んだの?」

「雅先輩の言ったことをまとめると、1年生は1階にはいない。2階にはいる。3階には未奈がいるです」

「そうよ。それで、2年1組にいる栄太郎を当てたわ」と雅。

「では、もう1人の1年生の亜沙美はどこにいるのか? 雅先輩の言いかただと、3階には未奈しかいない。1階には1年生はいない。そうなると、亜沙美は2階にいることになる」

「未奈のいる教室を当てようとは、考えなかったの?」

「確率です。3階はまだ1つの教室も開いてない。未奈のいる部屋を当てられる確率は6分の1。それに比べると、2階はすでに1組と3組が開いている。第1ラウンドの雅先輩と春馬のやりとりを考えると、2年2組と4組にも亜沙美はいない。なら残りは2年5組か6組だ。亜沙美がいる部屋を当てられる確率は2分の1になる」

 快晴の答えをききながら、雅はなにかを考えているようだ。

「おしゃべりは、そこまでよ。次は、雅が答える順番よ」

 ミロが言うと、雅が質問する。

「その前に、最終ラウンドの答える順番を教えて」

「はぁ、なに言ってるの。おかしな質問しないでよ」

 ミロが、不機嫌そうに言った。

「最終ラウンドの順番を知りたいだけよ。教えなさい、ざまーミロ」

 雅が、命令口調できいた。

「気にいらないわ。それが案内人にものをきく態度なの!」

 ミロが怒るが、雅は平然としている。

「わたし、生粋のお嬢さまなの。こういう態度は、生まれつきよ」

「それなら、あらためなさい」

「考えておくわ。それよりも、教えてくれるの、くれないの?」

 雅のかわらない態度に、ミロは意地悪そうな顔で言う。

「まぁ、いいわ。特別に教えてあげるわ」

「待って! それは、フェアじゃない!」

 快晴が言うと、春馬も意見を言う。

「ぼくも、それは卑怯だと思う。最終ラウンドで答える順番が、このゲームを戦うヒントになる可能性がある。1年生と2年生が答えられるのは、残り1回。3年生は残り2回……」

「お黙り! 案内人がいいと言ったのよ。文句を言わないで!」

 雅にぴしゃりと言われて、春馬と快晴は口をとざした。

「……もういいよね。それじゃ、最終ラウンドの解答順を教えてあげるわ。順番は、じゃんけんで勝った人からよ。第2ラウンドが終わったあと、3人でじゃんけんをしてもらうわ」

「……それって、教えてくれないのと同じじゃない」

 雅が、つまらなそうに言った。

「でも、質問に答えてあげたわ。礼くらい言ったらどうなのよ、雅お嬢さま」

 ミロが、いやみっぽく言った。

「くえない女」

 雅はそう言うと、気を取りなおして答える。

「春馬、グーの音も出ないようにしてあげるわ。……亜沙美がいるのは、2年6組よ」

「2年6組でいいのね」

 ミロが確認する。

「いいわ」

 雅が言うと、モニターに『2年6組』の教室が映る。

 そこに、亜沙美がいる。

「また、大当たり!」

「よし、いいわよ。グーッドよ!」

 雅は叫ぶと、にぎりこぶしを作って前につきだした。

 春馬は、雅の大げさなアクションに違和感を覚えた。

 モニターに映った亜沙美のベストの『E』が光る。

 『ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!』

 スピーカーから亜沙美の悲鳴が響き、モニターでは彼女が体を激しくけいれんさせている。

「亜沙美!」

 春馬が叫ぶ。

 『うぅぅぅぅ!』

 モニターに映っている亜沙美は床に倒れて、すぐに動かなくなる。

 春馬は、見守ることしかできない。

 こういう時間は、すごく長く感じる。

 少しして、亜沙美のベストの『E』の明かりが消えた。

 しかし、亜沙美は起きあがらない。

 春馬は心配で、じっとモニターを見ている。

 床に倒れていた亜沙美が、ようやく起きあがった。

「よかった。無事みたいだな……」

「グーッドね」

 雅が、また意味不明なことを言った。

「ここまでのポイントを発表します」

 モニターに、ここまでのポイントが映しだされる。

 

   1年生チーム 8ポイント

   2年生チーム 11ポイント

   3年生チーム 15ポイント

 

「それじゃ、最終ラウンドの順番をきめるじゃんけんをするわよ」

 ミロに言われて、春馬と雅と快晴は右手をあげて、じゃんけんをする。

「「「じゃんけん、ポン」」」

 春馬と快晴はグーを出し、雅がパーを出した。

 最終ラウンドは、雅が1番になる。

「し、し、しまった……。これは、ぼくのミスだ」

 快晴が唇をかんで、くやしがる。

 春馬は、首をかしげる。

 どうしたんだ、どうして、こんなにくやしがっているんだ。

 それに、いよいよ3回目だ。

 雅は、本当に未奈のいる教室を知っているのだろうか?

「はい、ぼうっとしないで、2番目を決めるじゃんけんをして」

 ミロに言われて、春馬と快晴がじゃんけんをする。

「「じゃんけん、ポン」」

 春馬がパーを出して、快晴はチョキを出した。

 最終ラウンドの解答順は、最初が雅、2番目が快晴、最後が春馬になった。



7 その教室にいるのは?

 

 最終ラウンドが始まる前、春馬はディスプレイを確認する。

 

「それじゃ、最終ラウンドよ。まずは、じゃんけんで最初に勝った雅から答えて」

 ミロが言った。

「第2ゲームはこれで終わりよ」

 雅の言葉を、春馬は疑問に思う。

 これで終わりだなんて、考えられない。

 未奈のいる教室を当てたとしても、まだ2年生の3人と渋神四星の3人が……。

 もしかして、見つかっていない7人は、同じ教室にいるということなのか?

「未奈は……、いいえ、未奈たちは3年4組にいるわ」

「3年4組でいいのね?」

 ミロが確認すると雅は「いいわ」と答えた。

 モニターに『3年4組』の教室が映る。

 そこに、未奈がいる。

 そして、2年生の凛子と大将、3年生の翔と咲子と武蔵もいた。

 3年4組には、6人の生徒がいる。

「へー、やるじゃない。大当たりよ」

 ミロが、なげやりな口調で言った。

「ミッシェルは、いないのね」

 雅が、残念そうに言った。

 春馬は、くやしくて言葉が出てこない。

 未奈と同じ教室にいた5人は、「春馬は未奈のいる教室を選ばないだろう」と予想したのだ。

 雅はチームメートの3人がそう考えるだろうと推理して、未奈のいる3年4組を言い当てたのだ。

 第1ラウンドで、雅が「未奈は3階にいる」と言ったのは、春馬の表情を読んで言ったのではない。3人のチームメートのいる教室に、未奈がいると確信して言ったのだ。

 それなら快晴も同じように、チームメートの2人が3年4組にいるなら、そこになにかがあると考えなかったのだろうか?

 どうして、快晴は第1ラウンドで3年4組を選ばなかったんだ?

 もしかして、ミッシェルがいなかったからか?

 どうして、ミッシェルは、凛子と大将といっしょに3年4組にいなかったのか?

 疑問ばかりが増えていくようで、春馬は困惑する。

 あぁ、そういうことか。

 快晴も、今の春馬と同じように、ミッシェルの考えが、わからなかったのだ。

 それで、第2ゲームがはじまってから、ずっとパソコンのディスプレイを見ながら、ミッシェルの考えを読もうとして、困惑していたんだ。

「はじめから未奈が3年4組にいると知っていたなら、第1ラウンドで3年4組を選べばよかったんじゃないのか?」

 春馬がきくが、雅は知らんふりをする。

「それは、おそらく、ポイントのためだ」と厳しい表情で快晴が言う。

「ここでのポイントはどうなるんだ?」

 春馬が、ミロにきいた。

「その前に、お楽しみのペナルティーよ!」

 3年4組の教室にいた6人のベストの『E』が光る。

 『うわぁぁぁぁ!』『キャーーーー!』『ウゥゥゥゥゥゥ……』『あぁぁぁぁ……』『わぁわぁわぁ……』『う……っ!』

 6人は、電気ショックに体をけいれんさせる。

 未奈が立っていられなくなり、バタッと倒れた。

 2年生の凛子と大将、3年生の咲子と翔も、床に倒れて体をけいれんさせる。

 武蔵は平気な顔をしてみせているが、体はぶるぶるふるえている。

「チームメートを犠牲にしてまで、ポイントをとるなんて……」

 春馬は、雅をとがめるように見る。

「奈落いきをさけられるなら、この程度はたいしたことじゃないわ」

 チームメートの苦悶の表情にも、雅はまったく動じていない。

 モニターに、床に倒れて体をふるわせている未奈たちが映っている。

 電気ショックは、なかなか終わらない。

「まだ終わらないのか? さっきよりも、時間が長いんじゃないか?」

 春馬の質問に、ミロは「うるさいな」と答えただけだ。

「いとおしい人が苦しむすがたを見るのは、つらいでしょうね」

 雅が、からかうように言った。

 「うるさい!」

 春馬は、めずらしく怒鳴った。

 長い間のあと、6人のベストの『E』の光が消える。

 翔がよろよろ立ちあがると、咲子、大将、凛子も起きあがる。

 そして、未奈もようやく立ちあがった。

「……よかった」

 春馬がつぶやいた。

「それじゃ、ポイントを発表するわよ。3年4組には、1年生1人、2年生2人、3年生3人の計6人がいたから、当てた3年生チームはプラス6ポイント。当てられた1年生チームはマイナス1ポイント、2年生チームはマイナス2ポイント、3年生チームはマイナス3ポイント。3年生チームはプラス6ポイントからマイナス3ポイントなので、プラス3ポイントね」

「……自分のチームのプレイヤーでも、当てたらポイントになるのか?」

 春馬がきいた。

「そうよ。ただ、当てると同時に当てられたことになるから、プラスマイナスは0。ただチームメートに、電気ショックをあたえただけね」

「ほかのチームに当てられてポイントをとられるより、チームメートのいる教室を答えて、ポイントを減らさないという作戦もあったんだな……」

 快晴の意見をきいて、春馬は気がついた。

「……そうか。だから雅先輩は、最初に3年4組を答えなかったんだ」

「最初に3年4組を当てて、このシステムに気づかれたら、ぼくや春馬がチームメートのいる教室をわざと当てるかもしれないだろう」

「そうなったら、雅先輩がこのゲームで獲得できるポイントは、未奈を当てた1ポイントだけということも考えられる。それで、最終ラウンドまで、わざと3年4組を当てなかったんだ」

 春馬は言いながら、その意見が正しいと感じていた。

 雅は、絶対に「奈落」へはいきたくないようだ。

 それで、1つでも多くポイントをとりたいのだ。

 ……しかし、それは危険だったんじゃないだろうか?

 春馬が未奈のいる教室を選ばなくても、快晴が3年4組を選ぶ危険はあった。

 春馬が考えていると、快晴が言う。

「ぼくがチームメートが同じ教室に2人いる意味に、もっと早く気がついていたら、第1ラウンドで3年4組を選んでいたのに……」

「それは無理よ。わたしはずっと、快晴を観察していたのよ。あなたは第3ラウンドがはじまっても、3年4組に未奈がいると気づいていなかったわ」

 雅に言われて、快晴はうなだれた。

「もし、快晴先輩が3年4組に未奈がいることに早い段階で気がついていたら、雅先輩は第1ラウンドか第2ラウンドで3年4組を選んだんですか?」

 春馬がきくと、雅は無関心そうな顔で「まぁ、そうね」と答えた。

「どっちにしても、3年4組は雅先輩に選ばれていたわけか」

 春馬はそう言いながら、ミッシェルの思慮深さに感心していた。

 もしミッシェルが3年4組にいたら、雅は第2ゲームで獲得できるポイントをすべてとっていた。それを警戒したミッシェルは、ほかの教室に入ったのだろう。

 雅とミッシェルは離れた場所で、作戦の読みあいをして、裏をかきあっていたことになる。

 しかし、疑問もある。

 第2ラウンドが終わったあと、快晴が3年4組に未奈がいると気がついたら……。

「あっ! それで、第2ラウンドの途中で、最終ラウンドでの解答する順番を質問したのか。最終ラウンドの雅先輩の解答順が2番目か3番目だったら、あそこで3年4組と答えるつもりだったんだ」

 春馬が言うと、快晴は首を横にふる。

「でも、最終ラウンドの解答順はじゃんけんで決めたんだよ。順番は、わからなかったはずだ」

「たしかに、そうだ……」

 最終ラウンドの解答順はじゃんけんで決めた。もし、快晴が勝っていたら、彼は、一か八かで、チームメートが2人いると知っている3年4組と答える可能性がある。

 3人でじゃんけんをすれば、雅が勝つ確率は3分の1だ。

 雅はそれに賭けたのだろうか?

「ここで、ゲームは中断よ。北条雅、正直に答えてよ」

 ミロがそう言うと、雅の前に歩いていく。

「なに?」

「あなた、いかさましたでしょう」

「いかさまだって!」

 春馬が思わず声をあげた。



第4回へ続く(6月14日公開予定)
 

スリルの頂点をゆく絶対的人気シリーズ。
最新刊『絶体絶命ゲーム13』は、6月14日発売!


作:藤 ダリオ 絵:さいね

定価
792円(本体720円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322289

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