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この小説、危険すぎ! 累計72万部の圧倒的人気シリーズ『絶体絶命ゲーム』待望の最新刊を、どこよりも早くためし読み!
気になる新キャラの2年生、クセモノぞろいの3年生を相手に、春馬たち1年生はどう戦う――!?
(毎週水曜日・全4回)
※『絶体絶命ゲーム』コミック公開中!
このお話は…
ゲームの案内人・ざまーミロさえイライラさせるほどの、
圧倒的な強さを見せる、3年生チームリーダーの北条雅。
ところがミロが雅に、
「あなた、いかさましたでしょう!」
と言いだして、ゲームが中断。
いったいどういうことなのか……???
緊張感ビリビリの第4回がスタート!!!
※これまでのお話はコチラから
8 雅の仕掛けたワナ
「第2ラウンドのあとの、じゃんけんよ」
ミロが言うと、雅が余裕の笑みでききかえす。
「じゃんけんでいかさまをしたって、どうやったというの? きかせてくれるかしら?」
「春馬と快晴の心をあやつって、じゃんけんでグーを出させたのよ」
ミロの言葉に、春馬はあることを思いだす。
亜沙美のいる教室を当てたあと、雅の言動がおかしかった。
妙にはしゃいで、にぎりこぶしを作って前につきだしたりしていた。
「「そういうことか!」」
春馬と快晴が、同時に声をあげた。
「2人の潜在意識に、グーをすりこんだのよ」とミロ。
「潜在意識、なにそれ?」
雅が、しらじらしくきいた。
「自覚はないが、その人の行動に影響をあたえる心の奥の意識のことだな。それを利用したサブリミナル効果というものもある」
快晴が説明した。
「それなら知っている。映画の中に、ジュースの映像をほんの少しだけ入れると、映画を観ていた人は覚えてなくても、脳は認識していて、そのジュースを飲みたくなるというものだ」
春馬が言った。
「あら、そうなの……。わたし、ジュースは飲まないわ」
雅はわざとらしく言った。
「北条雅、あなたは、亜沙美のいる教室を当てたあとに、にぎりこぶし、つまり、じゃんけんのグーを作って前につきだしたわ」
ミロが、追及するように言った。
「当てたのがうれしくて、ガッツポーズをしただけよ」
雅はゆずらない。
「それだけじゃない。『グーの音も出ないようにしてあげるわ』とか『グーッドね』とか、グーを強調して言って、春馬と快晴の潜在意識に、グーをすりこんだのよ」
「そんな、マジシャンみたいなこと、わたしはできないわよ」
雅は、断固としてみとめない。
「……あのとき、ぼくは雅先輩がなにを考えているのか、必死で心を読もうとしていた。そのせいで、雅先輩の仕掛けたサブリミナルに引っかかりやすい状態だったんだ」
春馬が言うと、雅がわざとらしくため息をついた。
「それって、わたしが潜在意識にすりこんだ前提で話してるけど……、やってないから」
「判定はどうなるんですか?」
快晴がきくと、ミロが「そうね」と腕を組んで考える。
「……というか、わたしがいかさまをしたという証拠はあるの?」
雅が質問した。
「ないわ。だから、本人がみとめなさい」
ミロに言われて、雅は躊躇せず答える。
「みとめないわ。グーと言ったのは、グーぜんよ。あれ、またグーと言ったわ。普通に会話していたら、グーと口にすることはあるわ。それでもいかさまと言うなら、じゃんけんなんて意味ないんじゃない。それに、最終ラウンドの解答順を、じゃんけんと決めたミロに責任があるとも言えるわ。くじ引きにすればよかったのよ。そうすれば、わたしも不要な疑いをかけられずにすんだわけですからね」
雅が、まくしたてるように言った。
「……時間の無駄だったようね」
ミロがため息まじりに言った。
春馬と快晴は落胆する。
「気分をあらたに、ゲーム再開よ。次は、快晴が答える順番だったわね」
ミロが言うと、快晴はきょとんとした顔をする。
「ぼくの順番って言うけど、残っているのはもう、チームメートのミッシェルだけだよ?」
「それなら、パスでいいの?」
ミロが確認すると、雅が口をはさむ。
「よく考えたほうがいいんじゃない。ここでパスして、最後に春馬がミッシェルのいる教室を当てたら、マイナス1ポイントなのよ」
「それって、アドバイスじゃないよね。悪だくみだ」
快晴が、うんざりした顔で言った。
「親切でアドバイスしてるのよ。春馬にポイントをとらせたくなかったら、ここでミッシェルのいる教室を選べばいいのよ」
「……なるほど、そうか! とはならないよ。雅先輩はミッシェルのいる教室を当てられなかったのが、くやしいんだ」
雅はふっと鼻で笑うが、快晴はかまわずにつづける。
「第2ゲームは雅先輩の独壇場だったように見えるけど、ミッシェルがどの教室にいるか当てられなかった。それで、せめてミッシェルが電気ショックで苦しむところを見たいんだ」
「……わたし、そんなに性格悪くないわよ。それに、答えられるのは3回だけ。9人は、4つの教室にわかれていた。どうしても、1つの教室は当てられないわ」
雅が言った。
「ぼくはパスだよ」
快晴はあらためて口にした。
「……それでは、第2ゲームのラストよ。春馬、答えなさい」
ミロに言われて、春馬はディスプレイを確認する。
「ミッシェルがかくれているのは、3年3組か、3年5組よ」
口を出したのは、雅だ。
「あの、少ししずかにしてくれませんか?」
春馬が言うと、雅が笑顔で言う。
「ごめんなさい。よけいなおせっかいよね。でも、かわいい後輩にわたしの考えを……」
「必要ありません!」
春馬が断るが、雅は話しつづける。
「ミッシェルも、初めは未奈と同じ部屋に入ろうとしていたのよ。でも、渋神四星の3人もいて、とまどった。みんな、同じ作戦をとると、このわたしに気づかれる。これは移動したほうがいい。しかし、時間がない。それで、あわてて教室に入った。そう考えると、3年4組のとなりの、3年3組か5組にいるんじゃない?」
「それじゃ、答えます」
春馬は、雅を無視して言った。
「いいわよ」とミロ。
「1年6組です」
「1年6組でいいのね」
ミロが確認する。
「ぼくの推理は、雅先輩とはちがいます。ミッシェル先輩は、未奈と同じ部屋にいるのは危険だと感じて、すぐに部屋を移動した。そして、なるべく3年4組から離れた教室に移った。おそらく、1年の教室。1組、3組、5組はオープンになっているから、答えは6組だ」
「能書きはそれくらいでいい?」
ミロにきかれて、春馬は「いいです」と答えた。
モニターに、1年6組が映る。
そこには…………、だれもいない。
「はずれ! すか、すか、すか、すかよ!」
ミロが言った。
「残りの1人は、この部屋にいました」
ミロが言うと、モニターに『2年4組』の教室が映る。
そこには、しずかに読書するミッシェルがいる。
「どうして、2年4組に……?」
春馬が口にした。
「ぼくもずっと考えていたんだけど、それがわからないんだ」
快晴が言った。
「……意味なんてないのよ」
雅がつぶやいた。
「そうか、ミッシェル先輩は適当に選んで2年4組に入ったんだ。チームメートの快晴先輩は、ミッシェル先輩がなにを考えているのか必死に考えをめぐらせ、そのすがたを見たぼくは、なにか策があるんじゃないかと勘ぐって迷った」
「こういうのって、なにも考えずに決められるのが、一番当てにくいのよね」
ミロが、話をまとめるように言った。
モニターに、現在のポイントが表示される。
1年生チーム 7ポイント
2年生チーム 9ポイント
3年生チーム 18ポイント
「春馬、快晴、雅、それぞれの学年の控え室にもどっていいわよ」
ミロに言われて、春馬たちは特別室を出た。
9 3年生からのさそい
春馬は、1年生の控え室にもどってくる。
控え室のドアは、普通に開閉できるようになっていた。
「あぁ、もう! 春馬のせいで、わたしたち、死にそうなくらい痛い目にあったのよ!」
先にもどっていた亜沙美が、春馬を怒鳴りつけてくる。
未奈と栄太郎も、げっそりした顔で床に座りこんでいる。
「みんな、ごめん」
春馬は頭を下げた。
「あやまっても、ゆるせない! 春馬は、ペナルティーをうけなかったんでしょう」
亜沙美の怒りはおさまらない。
「……うん、そうなんだ」
「だいたい、どうして、わたしがゲームに巻きこまれないとならないわけ!?」
亜沙美が、険しい口調で言った。
「それは春馬に言っても、どうにもならないことだよ」
栄太郎が助け舟を出した。
「なによ、それ? あっ、今、思いだしたんだけど、入学式の『絶体絶命ゲーム』でも、わたしは関係ないのに巻きこまれたのよね」
「亜沙美は、運が悪いんだよ」
なにげなく言った栄太郎を、亜沙美がにらみつける。
「『運が悪い』で、すまさないでよ!」
「ご、ご、ごめん」
「亜沙美、ジタバタしてもはじまらないわよ。ゲームに巻きこまれた以上、やるしかないわ!」
未奈が、ふらふら立ちあがって言った。
「それって、マジで言ってるの?」
「今は、仲間割れしている場合じゃないわ。このゲームに負けるといかされるっていう『奈落』って、相当にまずい場所みたいよ。絶対に負けられないわ」
「それは、そうかもしれないけど……」
「未奈の言うとおりだよ。だから、今回は春馬をゆるしてあげよう」
栄太郎が言うが、亜沙美はまだ不満そうだ。
すると未奈が、春馬にむきなおる。
「でも、春馬だけペナルティーなしっていうのは、納得いかないな」
未奈に言われて、春馬はこまった顔になる。
「そう言われても……」
「——だから春馬、デコピンさせて!」
未奈が、突拍子もないことを言った。
「デコピンって、あのデコピン?」
春馬がきくと、未奈がうなずく。
「……わかった。いいよ。ぼくも、自分だけペナルティーがないのは気が引けていたんだ。やってくれ」
「それじゃ、遠慮なく」
未奈は、春馬の前にいくと、中指を丸めて力をこめる。
バチッ!
「痛っ!」
「本気でやらせてもらったわよ。あたしたちは、もっと痛かったんだからね」
「ねぇねぇ、わたしもやってもいいよね?」
亜沙美が笑顔で聞いた。
「いいよ」
春馬は、亜沙美にむかって額をつきだす。
「いくわよ!」
バチ─ン!
「痛たたた……」
春馬が額をおさえる。
「今のは相当な衝撃だったみたいだけど、大丈夫かい?」
栄太郎が優しく声をかける。
「うん、大丈夫だよ。栄太郎もしていいよ、デコピン」
春馬が言うが、栄太郎は首を横にふる。
「いいや、ぼくはやらないよ。ぼくは、春馬に運命をあずけてるんだ。これくらいのことで、根にはもたないよ」
栄太郎は、はっきりと言った。
「それって、本気で言ってるの?」
亜沙美が、あきれた顔で聞いた。
「ぼくは、力は強くないし、春馬ほど優秀じゃない。でも、心は意外と強いんだ」
「栄太郎くん、きみは最高にいい男だよ!」
聞き覚えのある声に、春馬たちがふりむいた。
渋神四星の1人で学校で一番のイケメンの翔が、控え室のドアのところに立っている。
「ここは1年生の控え室ですよ」
春馬がとがめるように言うが、翔は気にせずにはいってくる。
「ほかのチームの控え室にはいってはいけない、というルールはなかっただろう」
翔は、静かにドアを閉めた。
「それは、言われてないけど……」
春馬たちは警戒する。
「ぼくは、重要な話をするためにきたんだ。きみたちは、ミロの言っていた『奈落』について、知っているかい?」
翔の質問に、栄太郎が答える。
「かなりあぶない学校だというくらいですけど……」
「うん、そうだ。『奈落』は全寮制の学校で一度はいると、卒業するまで出てこられない。そして、その生活は、地獄らしい。だから、ぼくたちは、なにがなんでもいきたくない」
「だから雅先輩は、卑怯な手を使ってでも、ぼくたちを脱落させようとしたんですか?」
春馬が、せめるように聞いた。
「うん、そうなんだ」
「……ただの負けず嫌いでしょう」
未奈が投げやりに言った。
「まぁ、たしかにそれもある。それより、本題にはいろう」
翔はそう言うと、ドアが閉まっているのを確認してから話しだす。
「このゲームをやることになったのは、ぼくら3年生と2年生の確執が発端だ。1年生は、とんだとばっちりだよね」
「そうですよ。迷惑です」
未奈が、うんざりしたように言った。
「きみたちには、申し訳ないと思っている」
「わざわざ謝罪にきたんですか?」
春馬が、小首をかしげて聞いた。
「ぼくたちは、きみたちを『奈落』にいかせたくはない。ゲームをしかけたのは、2年生だ。だから、『奈落』へは、彼らにいってもらおうよ」
「それって、どういう意味ですか?」
栄太郎が聞いた。
「1年生チームと3年生チームで同盟を組もうと言っているんだ」
翔の言葉を聞いて、春馬は眉をひそめる。
「同盟、いいわ! さすが、翔さま。素敵な考えです!」
目をキラキラさせながら言ったのは、亜沙美だ。
「そうだろう? 春馬はどうかな?」
「先輩の申し出を、信じろというんですか?」
春馬は、疑わしそうにききかえす。
「そうだよ。こんなことは言いたくないけど、2年生と3年生に敵対心があるように——春馬と未奈には、深井アイと因縁があるだろう?」
翔の質問に、春馬は頭をかいた。
「たしかに、ぼくたちはなぜかアイに嫌われているようだけど……」
「ゲームの仕掛け人として、不正はしないだろうけど、この先、春馬の苦手なゲームを用意するんじゃないか。さっきのゲームだって、人の心を読んだりだましたりするのは、春馬よりも雅のほうが得意だ」
「そうかもしれませんね……」
春馬はあいまいに言った。
「ぼくたちと同盟を組むのが最善だと思うんだけど、どうかな?」
翔が、あらためて聞いた。
「この同盟のことって、雅先輩も知っているんですか?」
未奈が確認する。
「もちろんだよ。雅も咲子も武蔵も、賛成している」
「どうするの、リーダー?」
未奈が春馬に聞いた。
「……同盟は組まない」
「えっ、どうしてよ? 手を組んだほうがいいに決まってるでしょう」
亜沙美が、口をとがらせて言った。
「ぼくは、ずるいことはしたくない。正々堂々と戦って、勝ちたいんだ」
春馬の言葉に、翔は苦笑いする。
「正々堂々といっても……不意打ちでゲームを仕掛けてきたのは2年生だよ?」
「それでも、ぼくは自分の納得する方法で勝ちたいんだ。でも、チームメートの意見も……」
「あたしは、春馬と同じ意見よ」
未奈が即答した。
「ぼくも、春馬と未奈と同じだ。同盟は組まない」
栄太郎が、迷いなく言った。
「どうして、そうなるの?」
亜沙美は、頬をふくらませる。
「そうか、それならしょうがないな。……春馬は、やっぱりお人よしだな。その友人もか」
翔は捨て台詞を残して、1年生の控え室を出ていった。
亜沙美は不満そうな顔で、春馬に質問する。
「あんないい話、どうして断ったの?」
「同盟を組もうって言われても、3年生を完全に信用することはできないよ。もし、ぼくたちが18ポイントとっていて、3年生が7ポイントしかなかったら、亜沙美は3年生に『協力しよう』とさそうかい?」
春馬に言われて、亜沙美が少し考えこむ。
「それは……さそわないわ。だって、わたしたちにメリットないじゃない」
「そうだろう。翔先輩は、ぼくたちのことを『奈落』にいかせたくないと言っていたけど、一番いきたくないのは自分たちだ」
「それは、そうでしょう」
「そう考えたら、もし同盟を組んでも、3年生がピンチの状況になったら、簡単に1年生を裏切る。下手をすれば、ぼくたちは利用されるだけだ」
「わかったわ。でも、同じ話を、3年生が2年生にもちかけることはないのかな?」
亜沙美が疑問を口にする。
「その心配はないだろうね。2年生がゲームをはじめたのは、3年生を倒すためだ。同盟を組むということは、正攻法では3年生に勝てないと認めたようなものだからね」
春馬の説明で、亜沙美は「なるほどね……」と力なく言った。
「3年生は、どうして、同盟を組もうなんてあやしい話を持ちかけてきたのかな?」
未奈が、不思議そうに聞いた。
「それだけ『奈落』を恐れているということだよ」
「……このゲームって、絶対に負けられないわね」
そう言った未奈を、春馬はじっと見た。
「未奈、ありがとう」
「えっ、なにが?」
「さっき、デコピンしてくれたことだよ。ぼくになんのペナルティーもなかったら、みんな、不満が残っていただろう」
「あたしは自分の不満を解消したかっただけ。今日の春馬は、調子が悪いみたい」
「……それは、いきなりゲームがはじまって、心がまえができてなかったからだよ」
言い訳した春馬だが、実は未奈の指摘は当たっていた。
調子が悪いというより、今回のゲームは、どこか本気を出せない。
翔は、今回のゲームの発端は2年生と3年生の確執と言っていたが、2年生の、春馬たちに対するねたみが原因のような感じがする。
それなら『絶体絶命ゲーム』をやらなくても、解決方法があったのではないだろうか?
そのとき、スピーカーからミロの声が流れてくる。
『みんな、休憩はできたかな?
それじゃ、第3ゲームをはじめるので、12時までに東棟の食堂に集まるように』
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