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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ あぶないグルメ屋敷!?の巻』第4回 登場! メタナイト


◆第4回

パフェスキー夫人のおたんじょうびパーティのごちそうを食べるため、いろいろと作戦を考えていたカービィとワドルディ。
そんなとき、飛行船に乗ってやってきたのは……?

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

登場! メタナイト

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

 飛行船は、野原の真ん中に、ふわりとゆうがに着陸(ちゃくりく)していた。

 

 カービィとワドルディが見守る前で、入り口の扉(とびら)が音もなく開いた。

 

 そこに姿をあらわしたのは……。

 

 カービィがさけんだ。

 

「やっぱり! メタナイトだー!」

 

「カービィ。そして、ワドルディも。ひさしいな」

 

 飛行船の持ち主──メタナイトは、二人に軽くうなずきかけて、ゆっくりとタラップを降りてきた。

 

 メタナイトは、すがおを仮面にかくした、ナゾめいた剣士。すがおばかりか、出身地も過去も、だれにも知られていない。

 

 ひきょうな行いを嫌(きら)う紳士(しんし)ではあるが、自分の目的を遂行(すいこう)するためなら、時にあのデデデ大王とも手を組んでしまったりする──ようするに、信条(しんじょう)も本心も、すべてがナゾにつつまれた剣士なのだ。

 

 ふだん、彼がどこに住んでいるのかも、だれも知らない。ときおり、ふと思い出したように、このプププランドにあらわれる。

 

 今、彼がやってきたということは……ひょっとして、事件の前兆(ぜんちょう)かも……!?

 

 ワドルディが、緊張(きんちょう)しながらたずねた。

 

「メタナイト様……プププランドに、何かご用ですか?」

 

 メタナイトは、気軽な調子(ちょうし)で答えた。

 

「ああ。パーティの招待状(しょうたいじょう)をもらったのでね」

 

 招待状(しょうたいじょう)……!

 

 その言葉に、カービィもワドルディも、ピクッと反応した。

 

「それって……まさか……!」

 

「君たち、知っているかな? 最近、プププランドにひっこしてきたパフェスキー夫人という人物の、たんじょうびパーティなんだが……」

 

「やっぱり!」

 

 カービィとワドルディは同時にさけんで、メタナイトに飛びついた。

 

 メタナイトはおどろいて、よろけそうになった。

 

 

「な……どうした……!?」

 

「メタナイトってば! パフェスキー夫人と友だちだったのー!?」

 

「い、いや。友だちというわけではないが。以前、別のパーティで顔を合わせたことがあって……それで招待(しょうたい)されただけだ」

 

「招待状(しょうたいじょう)、見せて見せてー!」

 

「と、飛びつくな、カービィ!」

 

 メタナイトはカービィをたしなめ、一通の封書(ふうしょ)を見せた。

 

「これだ」

 

「わーっ! これ本物ーっ!?」

 

「当たり前だ」

 

 カービィとワドルディは、封筒(ふうとう)から招待状(しょうたいじょう)を取り出して、じっくりながめた。

 

「ほんとだ……ちゃんと書いてある。『わたくしのたんじょうびパーティに、どうぞお越しくださいませ。心よりおまちしております』……だって!」

 

「わああああん! いいなあ、いいなあ、メタナイトったらー!」

 

「飛びつくなというのに!」

 

 メタナイトは、カービィとワドルディをかわして、招待状(しょうたいじょう)をしまった。

 

「どうしたことだ? このさわぎは」

 

「だって、ぼくもパーティに行きたいんだよ! でも、招待状(しょうたいじょう)が来ないから、行けないんだ!」

 

「パーティに……行きたい?」

 

「うん! もちろん!」

 

 ワドルディも、カービィに負けずに声を張り上げた。

 

「デデデ大王様だって、招待状(しょうたいじょう)をまっているんです! いつ届くかって、楽しみにしてて……なのに!」

 

「そうか」

 

 メタナイトは事情をさとって、うなずいた。

 

「実は、私も困っていてね」

 

「困る? 何を?」

 

「この招待状(しょうたいじょう)には、パートナーといっしょに来てほしいと書いてあるんだ。夜どおし、ダンスをするそうじゃないか。だから、パートナーが必要なんだ。だが、私にはともなうような相手がいない」

 

 メタナイトは両手を広げ、首を振った。

 

「パートナーが見つからないから一人で出席したいが、かまわないかと問い合わせようと思っていたんだ」

 

「……パートナー……!」

 

 カービィは、ぴょーんと飛び上がった。

 

「ぼくがパートナーになるよー! 連れてってよ、メタナイト!」

 

「う……うむ。それはかまわない……が……ダンスパーティだぞ? カービィ、おどれるのか?」

 

「おどれるよー! ぼく、ぼんおどり得意(とくい)だよー!」

 

「いや、ぼんおどりではない。ワルツとか、タンゴなどをおどれなければ……」

 

「ワッフル? だんご? うん、ワッフルもおだんごも、大好きー!」

 

「ちがう……ちがうぞ、カービィ」

 

 メタナイトは、カービィのいきおいに圧倒(あっとう)されている。

 

 ワドルディが、おずおずと言った。

 

「あの、メタナイト様……」

 

「どうした、ワドルディ?」

 

「デデデ大王様も、こころまちにしてるんです。その……招待状(しょうたいじょう)を」

 

「……ふむ?」

 

「パートナーとして、連れて行ってあげてくれませんか? カービィと大王様を、いっしょに」

 

 自分勝手で気まぐれなデデデ大王だけれど、ワドルディにとっては大事な主君(しゅくん)。

 

 できることなら、その夢をかなえてあげたい。

 

 メタナイトは腕(うで)をくみ、「うむ……」と、うなった。

 

「そうしたいのはやまやまだが、パートナーはひとりと決まっているのだ。カービィかデデデ、どちらかを選ばねばならん」

 

 ワドルディは、ちらっとカービィを見た。

 

 カービィは、キリッとした表情で口を引きむすんでいた。

 

 いつもは気のいいカービィだが、食べ物がからむと、がんこ一徹(いってつ)。ぜったいに後(あと)へは引かないという決意をみなぎらせている。

 

(この様子じゃ、ゆずってくれそうにないなあ……)

 

 ワドルディは考えこんでしまった。

 

 カービィはいちばんの友だちだし、デデデ大王は大事な主君(しゅくん)。

 

 どちらの願いも、かなえてあげたいものだが……。

 

 メタナイトが言った。

 

「ともかく、デデデ大王に会いに行くとしよう。彼の意見を聞いた上で決めようではないか」

 

「えー……」

 カービィは不服(ふふく)そうな顔になった。

 

「デデデ大王なんか連れて行ったら、きっとパーティをぶちこわしちゃうよ。ぼくのほうが、いいと思うけどな……」

 

「こういうことは、公平に決めないと。さ、行くぞ」

 

 メタナイトは、さっとマントをひるがえした。

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

 

 デデデ城は、大ゆれだった。

 

 バーニンレオの報告を聞いたデデデ大王が、いかりくるって飛び回っているからである。

 

「くっそー! カービィのやつめ! なんという、にくたらしいヤツなんだーっ!」

 

「まったくです……」

 

 バーニンレオが、うっすらとなみだを浮かべてうったえた。

 

「あいつ、本当にひどいんです! オレのファイアの力を利用しやがってぇ……うああああっ」

 

「泣くな、うっとうしい! おまえが悪いんじゃーっ! この役立たずがっ!」

 

 デデデ大王は、腹立ちまぎれにバーニンレオをけとばした。

 

 ちょうど、メタナイトを先頭に、カービィやワドルディが部屋に入ろうとするところだった。

 

 メタナイトは、飛んできたバーニンレオを軽くかわし、優雅(ゆうが)にあいさつをした。

 

「やあ、久しぶりだな、デデデ大王。あいかわらず元気そうで、何よりだ」

 

「む……? メタナイトか。何か用か……」

 

 言いかけて、大王はメタナイトの後ろにいるカービィに気づいた。

 

 大王の形相(ぎょうそう)が変わった。

 

カァァァァビィィィィィー! 何をしにきた!? そうか、このデデデ城を破壊(はかい)しにきたんだな! そうはさせん、オレ様が相手だー!」

 

「おちつけ、大王。カービィは関係ない。君に用があるのは、この私だ」

 

「なんだと……?」

 

「ある女性の、たんじょうびパーティのことなんだ」

 

 メタナイトは、招待状(しょうたいじょう)を取り出した。

 

 デデデ大王は、食い入るように招待状(しょうたいじょう)を見つめた。

 

「そ、それはまさか……! パフェスキーの……!」

 

「そうだ。君はパフェスキー夫人を知っているのか?」

 

「会ったことはない。デデデ湖のほとりに、これみよがしに大きな屋敷(やしき)を建てたという話は聞いているが……」

 

「……デデデ湖だって?」

 

 メタナイトは、けげんそうに聞きとがめた。

 

「たしか、パフェスキー夫人の屋敷(やしき)は、西のはずれの湖の近くだと聞いているが……?」

 

「そうだ。その湖を、デデデ湖というんだ」

 

「……初耳(はつみみ)だ」

 

「プププランドでは、常識(じょうしき)だ! 見よ!」

 

 デデデ大王は、カベにはってある大きな地図をしめした。

 

 メタナイトは地図に近づいて、書かれている地名を読み上げた。

 

「デデデ山、デデデ湖、デデデ川、デデデ谷、デデデ平野……あっちもこっちも、デデデだらけだな」

 

「はっはっは! 当たり前だ。オレ様がこのプププランドの偉大なる支配者だからな!」

 

「……元の地名を全部消して書き直してある」

 

「うるさい! 地名など、どうでもいい。問題はその招待状(しょうたいじょう)だ」

 

 デデデ大王は、うらやましげにメタナイトを見つめて、うろうろ歩き回った。

 

「なぜ、きさまのもとに招待状(しょうたいじょう)が届いて、オレ様に届かないのだ? やはり郵便屋(ゆうびんや)」の手ぬきか……住所の書きまちがいか……ううむ……」

 

「そのことで、ひとつ提案(ていあん)があるんだ。パーティに出席するために、パートナーが必要なんだが、私には適当(てきとう)な相手がいない」

 

「……パートナーだと?」

 

「ああ。そこで、カービィか君のどちらかに、いっしょに行ってほしいんだが……」

 

 デデデ大王は、ぴたりと足を止めた。

 

「オレ様に、いっしょにパーティに行ってほしい……というのか?」

 

「まだ、君と決めたわけではない。君かカービィか、どちらかだ」

 

「ふざけるなぁぁ!」

 

 デデデ大王は、顔を真っ赤にしてどなった。

 

 メタナイトは、あきれたように首を振った。

 

「私はふざけてなどいないのだが。私のパートナーでは不服(ふふく)か? なるほど、君はプライドが高いからな。では、仕方ない。この話は忘れてくれ。パートナーはカービィに決めよう」

 

「わーい!」

 

 カービィはよろこんで飛び回った。

 

 部屋を出て行こうとするメタナイトを、デデデ大王はあわてて引き止めた。

 

「ち、ちがう! そうじゃない。オレ様かカービィかで迷うなんて、ふざけていると言いたかったのだ。オレ様のほうが、ふさわしいに決まってるだろう!」

 

「……ほう?」

 

 メタナイトは足を止めて、デデデ大王に向き直った。

 

「では、私のパートナーになる気はあるのだな」

 

「お、おう。どうしてもと言うなら、仕方ない。パートナーとして、いっしょに行ってやる!」

 

「……別に、どうしてもとは言っていないが……」

 

「カービィなんぞを連れて行ったら、あかっぱじをかくぞ! 何しろ、そいつは礼儀(れいぎ)知らずで、下品で、信じられないくらい食い意地がはってるからな!」

 

「どっちが!? デデデ大王こそ、食い意地のかたまりじゃないか!」

 

 カービィは負けずに言い返した。

 

 メタナイトは「どっちもどっちだが……」とつぶやき、にらみ合うふたりの間にわって入った。

 

「待て、こんなことで争(あらそ)うな。ここは、公平に決めよう」

 

「どうやって!?」

 

「そうだな……たとえば、ジャンケンとか」

 

 デデデ大王は、「はっ」とばかにしたように笑った。

 

「ジャンケンなんて、子どもっぽいわい。男なら、実力勝負だ!」

 

「いいよ! 望むところだっ!」

 

 今にも戦いを始めそうな二人を、メタナイトはため息まじりに止めた。

 

「待てというのに。つまらぬ争いは、私の望むところではない。ジャンケンが不服(ふふく)だというなら、もう君たちには頼まない」

 

「えっ!?」

 

「他のパートナーを探すことにする。さらばだ」

 

「ま、待って!」

 

 カービィとデデデ大王は、あわててメタナイトに取りすがった。

 

「ぼく、ジャンケン大好きー! ジャンケン、さいこー!」

 

「オ、オレ様もだ! ジャンケンばんざーい! ばんざーい!」

 

「……では、さっさと始めてくれ」

 

 カービィとデデデ大王は、間合いを取って、にらみ合った。

 

「……行くぞ、カービィ」

 

「……負けないぞ!」

 

「では……ジャン……ケン……!」

 

「待て」

 

 メタナイトが、静かに間に入った。

 

 デデデ大王が不満をぶちまけた。

 

「なんだというのだ。ジャマをするな、メタナイト」

 

「なぜ、ジャンケン勝負なのに背中にハンマーをかくし持っているんだ、デデデ大王」

 

「え? あ? こ、これは……!」

 

 デデデ大王は、あせるあまり、かくしていたハンマーを取り落としてしまい、しどろもどろに言い訳をした。

 

「オレ様のお守りなのだ! これがないとジャンケンに勝てないのだ!」

 

「ウソつきー! ぼくをなぐるつもりだったんだな。ずるいぞ、デデデ大王!」

 

 そうさけんだカービィに、メタナイトは冷静に告げた。

 

「そういうカービィも同じことだ。今、思いきり『すいこみ』の体勢(たいせい)に入っていたぞ」

 

「……え? そ……そう? 深呼吸してただけなんだけど……」

 

 カービィは、つごうが悪いのをごまかそうと、フンフンと鼻歌を歌った。

 

 メタナイトはため息をついた。

 

「まったく。ジャンケンぐらい、まともにできないのか、君たちは」

 

「できる……よ……たぶん」

 

「信用ならんな」

 

 そのとき、部屋のすみで見守っていたワドルディが、おずおずと口を開いた。

 

「あの……ぼく、考えたんですけど……」

 

「うん? なんだ、ワドルディ」

 

「大王様もカービィも、どっちもパーティに行きたいんだから……一人にしぼるのは、かわいそうだと思います」

 

「だが、パートナーはひとりと決まっているんだ」

 

「はい。そこで、考えたんですけど……」

 

「あ! わかったー!」

 

 カービィが飛び上がった。

 

「ぼくとデデデ大王がいっしょに行けばいいんだ! メタナイトはおるすばん!」

 

「おおっ? カービィのくせに、いい考えじゃないか。さんせい、さんせい!」

 

「わーい!」

 

 カービィとデデデ大王は、いつものいがみ合いを忘れて、手を取り合ってよろこんだ。

 

 メタナイトが、首を振った。

 

「──招待状(しょうたいじょう)を受け取ったのは私だ。私が行かぬのでは、話にならない」

 

「でもさあ……」

 

「でも、ではない。ワドルディの考えを、最後まで聞こうではないか」

 

 うながされて、ワドルディは、はずかしそうに提案(ていあん)した。

 

「大王様とカービィが、ふたりでひと役をしたらいいんじゃないでしょうか?」

 

「ふたり……ひと役?」

 

「はい。大王様は大きいし、カービィは小さいから。大王様の上にカービィが乗って、服やマントでうまくかくせば、ひとりに見えると思うんです」

 

「ふたりひと役……か」

 

 メタナイトは、カービィとデデデ大王を振り返り、ふたりの頭のてっぺんからつま先まで、じっくりとながめた。

 

「なるほどな。良い考えかもしれん」

 

 カービィとデデデ大王は、顔を見合わせた。

 

 ふたりとも、どんなことになるのか、想像もつかずにいる。

 

 メタナイトが言った。

 

「ためしてみよう。カービィ、デデデ大王の上に乗ってみてくれ」

 

「……えー……」

 

「イヤなら、パーティには連れて行けないが……」

 

「わかったよー! やってみるよ」

 

 カービィはピョンとはずんで、デデデ大王の頭の上にとび乗った。

 

 たちまち、大王が顔をしかめる。

 

「なぜ、このオレ様が、きさまのふみ台にならねばならんのだー!」

 

「イヤなら、パーティには……」

 

「わかったわかった! もんくはないわい!」

 

「ワドルディ、すまないが、大王のマントを持ってきてくれ」

 

「はい!」

 

 ワドルディはデデデ大王のクローゼットから、ゴージャスなマントを持ち出してきた。

 

 メタナイトは、デデデ大王とカービィをおおうように、マントをはおらせた。

 

 大王の顔とからだはすっぽりかくれ、カービィの顔だけがのぞいている。

 

「ふむ、なかなか良い感じだ。これなら、ひとりに見える」

 

 デデデ大王がもんくを言った。

 

「いきぐるしいぞ!」

 

「マントを少しゆるめよう。これで、どうだ?」

 

「うむ……まあ、なんとかがまんできそうだ」

 

「ところでデデデ大王、君はダンスが得意(とくい)か?」

 

「む? ダンスだと?」

 

「ああ。パフェスキー夫人のパーティでは、夜どおしダンスをするのだそうだ。私は好きではないが、せめて一曲はおどらないと、失礼にあたる」

 

「ははは、オレ様にまかせろ! ダンスなら、得意中(とくいちゅう)の得意(とくい)だ!」

 

 デデデ大王はそうさけぶと、いきなりおどり始めた。

 

 腰をふりふり、ドタドタと左右に飛び回り、時々「キャホー! デデデ・ダーンス!」とさけんでいる。

 

 大王の頭の上に乗っているカービィが、悲鳴を上げた。

 

「ちょ、ちょっと、やめてよー! 落ちちゃうよー!」

 

 メタナイトはあっけにとられていたが、カービィの声でわれに返った。

 

「やめたまえ、デデデ大王。私が求めているのは、そういうダンスではない」

 

「……なんだと?」

 

「もっとゆうがで上品におどれないものか?」

 

「え? すごくゆうがで上品だっただろうが」

 

「どこが……このままでは、私がはじをかく。ワルツの練習ぐらいしておこう」

 

 メタナイトはふわりと飛び上がり、デデデ大王の手を取った。

 

「手をつないでおどるのか?」

 

「もちろん。ワルツだからな」

 

「男同士だと、変じゃないかな?」

 

「……ふむ。言われてみれば、そうだな」

 

 メタナイトは考えこんだ。

 

「うっかりしていた。ダンスはふつう、男女のペアでおどるものだ……女装でごまかすしかないか……」

 

 カービィが、目を丸くした。

 

「えー? じゃあ、メタナイトが女装するの? わあ、見たい見たーい!」

 

「私ではない! 女性の役は、君たちがやるんだ」

 

「ぼくたちが?」

 

「オレ様が……女装……だと……?」

 

 デデデ大王は、声をふるわせた。

 

「うむ。いやだろうが、仕方ないのだ。がまんしてくれ」

 

「おお! いやでいやでたまらんが、がまんしてやるー!」

 

「……デデデ大王? 声がイキイキしているぞ……?」

 

「気のせいだ! ああ、いやでたまらん! ワドルディ、何をしとるんだ! さっさと衣装を持ってこい! そうそう、けしょう品もな!」

 

「は、はいっ!」

 

 ワドルディは再び大王のクローゼットを開き、何着かの衣装をかかえてきた。

 

「どれにしましょうか……?」

 

「ばかもん、もっとフリルいっぱいのドレスがあっただろうが! ピンク色で、大きなリボンがついてるやつ! あれだ!」

 

「は、はいっ!」

 

「デデデ大王……」

 

 メタナイトは、おそれおののいて言った。

 

「なぜ、そんなドレスを持っているんだ? しかも、けしょう品まで……?」

 

「大王たるもの、どんな場合もあわてないように、つねに準備を万全(ばんぜん)にしているものなのだ!」

 

「な、なるほど……」

 

 デデデ大王はマントをぬぎすて、ワドルディが持ってきたフリルいっぱいのドレスに着がえた。

 

「ちょっとキツいな。ドレスがちぢんでしまったようだ」

 

「いや、君がふくらんだのだと思うが……」

 

「何か言ったか?」

 

「いや、別に」

 

「どうだ、にあうだろう!」

 

 デデデ大王は鏡に走りより、全身をうつしてうっとりした。

 

 大王の頭の上のカービィは、「うぇー」とさけんで、ころがり落ちそうになった。

 

「ひ、ひどーい……気持ち悪ーい……」

 

「だまれ、カービィ! きさまには、この美しさがわからんのだ。さ、次はメイク、メイクと」

 

「待て、デデデ大王」

 

 メタナイトが止めた。

 

「君がけしょうをしてどうする。君の顔はかくすんだ。おもてに出るのは、カービィの顔だぞ」

 

「……む?」

 

「けしょうをするなら、カービィにしなくては」

 

「えー!? ぼくが、おけしょうするの!?」

 

 カービィは、おどろいてさけんだ。

 

「おけしょうなんて、したことないよー! いやだよー!」

 

「がまんしてくれ。ワドルディ、手伝ってくれ」

 

「はーい!」

 

「いやだなあ……」

 

 カービィはしぶしぶ、デデデ大王の頭の上から飛び下りた。

 

 口紅やマスカラなど、けしょう用具一式を持ったワドルディが駆けよった。

 

「じゃ、始めるよ。カービィ、じっとしててね」

 

「ワドルディ、おけしょうなんてしたことあるの?」

 

「大王様のメイクを手伝ったことがあるから、やり方は知ってるよ」

 

 ワドルディは、カービィの顔にファンデーションをぬり、ピンク色のチークをさしていった。さすが、大王に毎日こき使われているだけあって、手つきがなれている。

 

「口紅はローズピンク……アイシャドウはパープル……マスカラはボリュームたっぷりに……と。できたー!」

 

 カービィは、タッタッタと鏡の前に走っていき、メイクされた自分の顔をのぞきこんだ。

 

 とたんに、カービィは息をのみ、よろめいた。

 

「か……か……か……!」

 

「どうした、カービィ?」

 

「か……っ!」

 

「そんなにショックなのか? 無理もないが……」

 

「か、か……かわいい~~~!」

 

 カービィは両手を口もとに当て、はね回った。

 

「ぼく、知らなかったよー! おけしょうすると、こんなにかわいくなるなんて!」

 

 くるっと振り返ったカービィと目を合わせて、メタナイトはだまりこんだ。

 

「ね、ね! メタナイトも、そう思うでしょ!? かわいすぎて、どうしよう〜!」

 

 カービィは、マスカラで長くのびたまつ毛を、パチパチさせた。

 

「う……びみょう……だが……」

 

「びみょー? どうして?」

 

「まあ、デデデ大王よりは、かわいいかも……」

 

「なんだとー!? 目が悪いのか、メタナイト! こんな気持ち悪いのより、オレ様のほうが、百倍かわいいに決まってるだろう!」

 

「だれが気持ち悪いってー!?」

 

「こら、ケンカをするな。君たちはこれから、文字どおり一心同体。ふたりでひとりになるんだからな」

 

 カービィとデデデ大王は、どちらからともなく、にらみ合いをやめた。

 

「むー……気は進まんが、しかたないな。パーティに行くためだ」

 

「うん。パーティが終わるまでは、仲良くしよう!」

 

「よし、それでいい」

 

 メタナイトは、ワドルディに向き直った。

 

「ドレスを手直しして、デデデ大王の顔がすっぽりかくれるようにしてくれないか?」

 

「はい!」

 

「それから、カービィにかぶせる、かつらも用意してくれ」

 

「わかりました!」

 

「たのんだぞ」

 

 メタナイトはデデデ大王とカービィを振り返った。

 

 表情は仮面にかくされているが……とてつもなく不安そうなオーラが、全身からただよい出ている。

 

「とにかく、ふたりとも、あやしまれないよう気をつけてくれ」

 

「わかっておる!」

 

「まかせて!」

 

 デデデ大王とカービィは、そろってガッツポーズを取った。いつもの険悪(けんあく)な関係がウソのように、ぴったり息が合っている。

 

「いちおう、ダンスの練習をしておくか……」

 

「はーい!」

 

 カービィははりきって、ふたたび大王の頭の上にとび乗った。

 

 メタナイトはデデデ大王の手を取り、ワルツの練習を始めた。

 

「いち、に、さん……いち、に、さん……ちがう! 私がリードする方向に動くんだ!」

 

「うるさいわい……あー、ワルツなんて、つまらん。デデデ・ダンスのほうがよっぽどゆうがでおしゃれなのに……」

 

「だまって練習してくれ」

 

 大王の頭上のカービィは、最初のうちはおもしろがっていたが、することがないのでだんだんたいくつし始めた。

 

「あーあ。つまんない。ぼくもダンスしたいよー」

 

「カービィは『あたま』の役だ。何もせず、ニコニコしていてくれれば良い」

 

「そんなのたいくつだよー。そうだ、歌でも歌おう。ラララ〜! なんていい天気〜! なんておいしい朝ごはん〜。ラララ〜!

 

「歌うなっ!」

 

 デデデ大王のダンスはまったく上達(じょうたつ)せず、カービィの好き勝手なふるまいはまったくおさまらないまま……。

 

 いよいよ、パーティ当日になった。



メタナイトといっしょに、パフェスキー夫人のお屋敷(やしき)へ!
はたして、カービィたちは無事にごちそうを食べることができるでしょうか……?

『星のカービィ あぶないグルメ屋敷!?の巻』れんさい第5回(6月10日更新予定)に続く


作:高瀬 美恵 絵:苅野 タウ 絵:ぽと

定価
748円(本体680円+税)
発売日
サイズ
新書変形判
ISBN
9784046313362

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9784041116197

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