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ものがたり

【先行連載】『君のとなりで。』7巻発売直前 スペシャルれんさい 第2回 バレンタインの計画


ドキドキいっぱいの黒羽中吹奏楽部の冬合宿が終わったら、次なるイベントは……バレンタイン!
さくらの、さっこの、加代ちゃんの、バレンタインの作戦とは……?

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バレンタインの計画

 

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 次の日、約束どおり、さっこと加代ちゃんが私の家に遊びに来てくれた。

 

「ちょっと待って、さくら!」

 

『恋愛対象じゃないなんて、言ってないだろ』……って」

 

「「どういうこと!?」」

 

 昨日の伊吹先輩の言葉を報告すると、ふたりは目を丸くして、ずいっとせまってきた。

 

「私もよくわからなくて。どういう意味か聞き返せなかったんだ。でも……」

 

「「うん」」

 

「『またウワサされて傷つくの、イヤだろ』って、先輩が言ったの」

 

 その言葉を聞いたさっこと加代ちゃんは、声にならない悲鳴をあげて、クッションにつっぷした。

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

 うろたえる私の前で、ふたりは上げた顔を見合わせて、口を開いた。

 

「それはさー。もうそういうことだよね、加代ちゃん」

 

「そうさね~、さっこ」

 

 ふたりとも、なんだかすごくニヤニヤしてる。

 

「え? なになに? どういうこと?」

 

 どういうことなのか、私には、ぜんぜんわからないよ。

 

 さっこは私の肩にポンと手を置いて、力強く言った。

 

「やっぱりさくらは、伊吹先輩にフラれたわけじゃないよ!」

 

 加代ちゃんも、うんうんとうなずいた。

 

「私もそう思う! さくらの告白を『聞かなかったことにする』って、つまり……はっきり断りたいわけじゃないってことだもん」

 

「そうかなぁ……」

 

 私もそうだったらいいな、なんて思ったけど。

 

 自分に都合よく考えちゃってる気がして、自信がないんだ。

 

 さっこが、真面目な顔で言った。

 

「それどころか、伊吹先輩、本当はさくらのことが好きなんじゃない?」

 

「ええ!?」 

 

 信じられない言葉に、悲鳴が出てしまった。

 

 加代ちゃんも、さっこにうなずいて言う。

 

「私もそう思う。でも、全国大会の前みたいに、またウワサされてさくらが傷つくのがイヤだから、『好き』も『つきあいたい』も言えないとか?」

 

「そうかなぁ……」

 

 伊吹先輩が、私のことを……?

 

 そうだったらいいなとは思うけど、『まさか!』って気持ちのほうが勝ってしまう。

 

 さっこは、ちょっぴり真剣なまなざしで私を見つめた。

 

「昨日、伊吹先輩が私に、さくらの荷物を保健室に持っていくように頼んだのも、さくらがあぶない目にあったのが、ぜんぶ自分のせいだと思ってるからなんじゃない?」

 

「伊吹先輩って、どうしても目立っちゃうからね。伊吹先輩の近くにさくらがいると、誰かがさくらのことを傷つけてしまうって思ってるのかも。合宿のときのやなぎ中の人みたいに」

 

 加代ちゃんも、合宿のことを思い出すように、天井を見上げて言う。

 

「そうそう。好きだけど、だからこそ傷つけたくなくて、いっしょにはいられない……ってことなのかもしれないよ」

 

 まじめな顔をしているふたりの言葉を、胸に手を当てて受け止める。

 

「そう……なのかな」

 

 たしかに、先輩は、かまくらの中で話していたとき、私がケガをしたのを『俺のせいだよな。悪かった』と言って、悲しそうな目をしていた……。 

 

「それと、高田先輩と同じで、部活内恋愛禁止のオキテがあるから、引退するまではつきあえないって思ってるのかも」

 

「あー、それ、あると思う。伊吹先輩、自分に厳しそうだもん。しっかりオキテを守りそう!」

 

 さっこと加代ちゃんは、目を輝かせながら、私をはげましてくれてる。

 

 その気持ちがとってもうれしくて、胸がいっぱいだよ。

 

「さっこ、加代ちゃん、ありがとう。どうしていいかわからなかったけど、元気が出てきたよ!」

 

 先輩のこと、好きでいていいですか?

 

 そう聞いた私に、先輩は『ダメ』とは言わなかった。

 

 ということは……。

 

 ぎゅっとこぶしをにぎって、私はふたりに宣言した。

 

「私、先輩のことを好きでいてもいいって、前向きに受け止めることにする!」

 

「「うん!」」

 

 さっこと加代ちゃんは、ピカピカの笑顔でうなずいてくれた。

 

 そしてさっこが、いたずらっぽく言う。

 

「来月は、乙女の一大イベント、バレンタインがあるしね!」

 

「そうだよ、さくら! 先輩に気持ちを伝えるチャンスだよ!」

 

「私、ホラーなチョコ、手作りして高田先輩に渡すんだ~」

 

「私も、今度こそ、村中先輩に渡せるようにがんばるつもりだよ。さくらもいっしょに、がんばろうよ!」

 

 ウキウキしてるふたりの顔を見ていると、私もがんばろうって気持ちになってきた。

 

「うん。私も、伊吹先輩にチョコを渡せるようにがんばるよ!」

 

 バレンタインは、女の子から男の子に想いを伝えるイベント。

 

 先輩に「つきあってください」とは言えなくて、もどかしいけれど。

 

 そのぶん、想いをこめたチョコを渡せたらいいな。

 

「じゃあさ、2月13日に、3人でチョコ作りしようよ!」

 

「賛成!」

 

 さっこの言葉に、加代ちゃんが手をあげて、ステキな提案をしてくれた。

 

「うちで集まろうよ。3人で、がんばろう!」

 

「「うん!」」

 

 3人で約束して、私たちはほほえみあった。

 

 さっこと加代ちゃんのおかげで、楽しみがひとつ、増えたんだ。

 

 

三人が、それぞれにいどむ、大切な恋イベント・バレンタイン!
それぞれの想いが、どうかかないますように……!
次回も、お楽しみに♪

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先輩は、もうすぐ卒業…。せまる恋の『終わり』に、大事件発生!?
吉川さくら、12歳。冬合宿の最終日、伊吹先輩に「好き」の気持ちを受け止めてもらえた…!
先輩が、私のことをどう想っているのかは分からない。けれど、私は、先輩のことを好きでいていい――。
想いをかたちにして届けるためにがんばった勝負のバレンタイン、学校中を巻きこんでまさかの大事件発生!
…チョコが、渡せない!?
先輩は、もうすぐ卒業。遠くに行ってしまうのに…。
恋の『終わり』まで、あと少し。大注目の第7巻です!


作:高杉 六花 絵:穂坂きなみ

定価
726円(本体660円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046321336

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