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今日からは、2月9日に発売する『君のとなりで。(7)つながる想いと、ひみつの約束』を、ひとあし先にお届けしちゃいます!
黒羽中吹奏楽部の冬合宿での、伊吹先輩のセリフ「恋愛対象じゃないなんて、言ってない」……その意味って、もしかして……?(くわしくは、『君のとなりで。(6)』で読めるよ!)
ぜったいに見のがせません!!
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♪序奏
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ドキドキドキドキ。
痛いくらいに胸が高鳴っている。
「伊吹さんかっこよかったね!」
「うん! お腹痛いの、治っちゃったかも!」
「あはは。なにそれ~。ちゃんと休んでおきなよ。ほら、ベッドに寝て」
「はーい」
やなぎ中吹奏楽部の人たちの声が、カーテン越しに聞こえる。
ドキドキドキドキ。
いつまでも鳴り止まない、自分の心臓の音を聞きながら。
私は長イスに座って、伊吹先輩の言葉を思い出していた。
『恋愛対象じゃないなんて、言ってないだろ』
『でも……またウワサされて傷つくの、イヤだろ』
それって、どういう意味?
私は伊吹先輩の恋愛対象じゃない、……わけじゃないってこと?
疑問だらけで、頭の中がぐちゃぐちゃだよ。
先輩の言葉を忘れてしまわないように、何度も心の中でくり返す。
伊吹先輩がテーピングをしてくれた右足首に、そっと触れてみた。
お昼休み中、やなぎ中吹奏楽部の人に突き飛ばされて、足首をひねってしまって。
雪の中で動けなくなってしまった私を、伊吹先輩は助けに来てくれた。
合宿最後の演奏で、足首の痛みに気を取られて演奏がボロボロになってしまったことに気づいた先輩は、
『足、痛いんだろ』
って、私にテーピングをしてくれたんだ……。
先輩の優しさがうれしくて、気を抜くとほおがゆるんでしまいそう。
そのとき、保健室のドアをコンコン、とノックする音が響いて、さっこが顔をのぞかせた。
「さっこ、こっちだよ」
体調の悪いやなぎ中の人が、ベッドで寝ているから、小さな声でこたえる。
さっこが歩いてくると、ベッドのカーテンのすきまから、やなぎ中の人たちが顔を出した。
「残念。伊吹さんじゃなかった」
「な~んだ」
それだけ言って、また顔を引っこめたやなぎ中の人たちを見て、さっこは肩をすくめた。
「さくら、大丈夫? カバン持ってきたよ」
「ありがとう。テーピングのおかげで、足の痛みはなくなったよ」
「よかった! ていうか、そのテーピングって、もしかして……!」
さっこは私の足首を見ると、両手で口を押さえて、チラリとベッドのほうを見る。
やなぎ中の人がいるから、伊吹先輩の話題は避けた方がいいってことだよね。
また『伊吹さんに会わせて!』とか、『伊吹さんの連絡先教えて!』って言われたら困るから。
私が小さくうなずくと、さっこは笑顔でジタバタした。
「いっぱい聞きたいことがあるけど、今はやめておくわ」
「ごめんね。ありがとう」
「そのかわり! 明日、部活休みだし、ゆっくり話を聞かせてよ」
「うん。加代ちゃんといっしょに、うちに遊びにおいでよ」
「わかった! 明日ね。じゃあ、私は戻るね」
「楽器の積みこみ、できなくてごめん」
「いいんだよ。さくらは無理しないで休んでて。出発まで、あと30分くらいかかっちゃいそうだし。先輩が、新田先輩とフルートのパートリーダーにも、さくらのこと伝えてくれてたから、大丈夫だよ」
「えっ……」
先輩って、伊吹先輩のことだよね?
『新田には言っておく。荷物は須田に持って行かせるから』
たしかに、伊吹先輩はそう言っていた。
伊吹先輩が、私のために、ぜんぶやってくれたんだ……。
落ち着いていたはずの心臓が、またとくんとくんと音を立て始める。
そんな私を見たさっこは、ふふっと笑って、カバンを手渡してくれた。
「バスに乗る時間になったら、またむかえにくるからね」
「ありがとう、さっこ」
保健室を出ていったさっこを見送って、私はふーっと熱い息をついた。
信じられないことが続いて、ドキドキしっぱなしだよ。
私は夢心地で、両腕でかかえていたカバンに顔をうずめた。
伊吹先輩はいつでも、さくらを助けてくれるし、守ってくれる。
そんな先輩のセリフの意味、さくらが知ることはできる日は来るの……?
次回も、お楽しみに!!
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