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ものがたり

【先行連載】『君のとなりで。』最終9巻 ためし読みれんさい! 第2回 ふたりだけのまちあわせ


大人気の恋愛&部活ストーリー『君のとなりで。』シリーズ、ついに完結!10月13日発売の最終巻『君のとなりで。(9)この道を、ずっといっしょに』を、いちはやくスペシャルれんさいでお届けします。
※このお話は、『君のとなりで。(8) ふたつのさよなら、ひとつの始まり』を読んでから読み進めてね!

まだ『君のとなりで。』を読んでない方は1巻から3巻まで読める『君のとなりで。』スペシャルれんさい!が期間限定で復活中なので読んでくださいね。

きょうは、さくらの誕生日で、伊吹先輩との初デートの日。
一番かわいい自分になるために、さくらがえらんだ髪形とお洋服は…?特別な1日が始まります!

第9巻先行れんさいを読みなおす(もくじへ)

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♪ふたりだけのまちあわせ 

 

****************

 

 次の日――。

 

 いつもは二度寝する日曜日の朝だけど、今日はいつもよりだいぶ早く目が覚めちゃった。

 

 緊張とドキドキでそわそわしてしまって、むだに部屋の中をうろうろしちゃう。

 

「よし、準備を始めよう」

 

 お気に入りの春色ワンピースにそでを通して、伊吹先輩からバレンタインにもらった、桜のネックレスをつける。

 

 かわいいハンカチにポケットティッシュ、おサイフ、スマホ。

 

 ショルダーバッグの中身もしっかり確認した。

 

 それから、ていねいにブラッシングした髪を、頭の上でくるんとおだんごにする。

 

 鏡をのぞきこんで、ほんのり色つきのリップをぬって、準備はおしまい。

 

「これでどうかな……」

 

 雑誌のデート特集を見ながら、服も髪形も気合を入れてがんばってみた。

 

 だって、今日は伊吹先輩との初デート!

 

 絶対にかわいくしたいよ。

 

 ほんのちょっとでいいから、先輩にかわいいって思ってもらえたらいいな。

 

 だけど……。

 

「うーーーーーん……。気合い、いれすぎかな」

 

 がんばりすぎてる感じがして、鏡の前でうなってしまう。

 

「やっぱりハーフアップにしようかな」

 

 おだんごをほどいて、みつあみハーフアップにしてみた。

 

「うーーん。いつもとあまり変わらないかも」

 

 こまりはてて、雑誌をパラパラめくってると……。

 

「あ! これいいかも!」

 

 ふんわりしたそでと、ひらひら広がるワンピースにもぴったり。

 

「よし、これで行こう」

 

 伊吹先輩の私服姿は、いつもおしゃれでにあってるから、となりを歩く私だって、先輩にぴったりの、おしゃれな子でいたい。

 

 私は、伊吹先輩の『彼女』なんだから。

 

「行ってきます~!」

 

 お気に入りのくつをはいて、私は玄関(げんかん)を飛び出した。

 

****************

 

「ちょっと早く着きすぎたかな……」

 

 まちあわせ場所に着いたのは、約束の20分も前。

 

 さすがに伊吹先輩は来ていない。

 

「場所、ここであってるよね」

 

 急に不安になってきて、きのうの夜、先輩から届いたメッセージをたしかめる。

 

 待ち合わせ場所は、初めて降りる駅の、大型ショッピングモール。

 

「1階にある『待ち合わせの鐘(かね)』の前……」

 

 うん、だいじょうぶ。間違いない。

 

 ほっと息をついて、ぐるりとまわりを見渡す。

 

 都会の大きな街で、歩いている人たちもみんなオシャレだ。

 

 学校からは遠いから、知ってる人に会わないですみそうかな。

 

 伊吹先輩は、いつもここにお買い物に来てるのかな?

 

 行き交う人たちをながめて、あれこれ考えながら先輩を待つ。

 

「あと15分」

 

 待ち合わせ時間が近づいてくると、なんだかソワソワしてきた。

 

「これがデートなんだ……」

 

 ドキドキとわくわくと緊張で、心臓が爆発しちゃいそうだよ。

 

 そのとき、バッグの中のスマホが、ピコン!と鳴った。

 

 急いでスマホを見ると……。

 

『さくら~。お誕生日おめでとう~! 今日は家にいる?』

 

 さっこと加代ちゃんと私、3人のグループチャットに、さっこからのメッセージが届いていた。

 

『ありがとう!』のスタンプを送ると、加代ちゃんからもメッセージが届いた。

 

『誕生日おめでとう! もしかして、今日はデート??』

 

 わわっ。するどい!

 

『うん』っていうスタンプを送ると、ふたりから、ハートのスタンプが大量に送られてきた。

 

『すごい~! さくら、よかったね!』

 

『伊吹先輩においわいしてもらえるの、最高すぎる~!』

 

『明日、さっこといっしょに、さくらの家にプレゼント渡しに行くね~』

 

『話いっぱい聞かせて! 私もいろいろ報告があるから、女子会しよう!』

 

『楽しんでね!』

 

 ふたりからのメッセージがうれしくて、ほおがゆるむ。

 

 さっこの報告も楽しみだな。

 

『ありがとう! 緊張するけど楽しんでくるね。明日、楽しみにしてる!』

 

 ふたりにメッセージとスタンプを送ると、スマホの時計が目に飛びこんできた。

 

 約束の10分前だ。

 

 そのとき――……。

 

「吉川」

 

 少し低めの大好きな声が、上からふってきた。

 

 どきん!

 

 とたんに、私の胸は高鳴り始める。

 

 顔をあげると、そこには――。

 

「悪い。待たせたな」

 

 伊吹先輩が立っていた。

 

「先輩……! おはようございます!」

 

 いつものように、ガバッと頭をさげる。

 

 先輩は苦笑いして、私の頭をぽんとなでた。

 

「部活じゃないんだから、そんなにかしこまるなよ」

 

「はっ。そうでした」

 

 つい、クセでやってしまった……!

 

 緊張とはずかしさで、あわててしまう。

 

 ちらりと目線をあげると、伊吹先輩が私を見下ろしている。

 

 あたりまえだけど、本物の伊吹先輩だ。

 

 まちあわせ場所に、本当に伊吹先輩が来た……!

 

 しかも、すっっっごくかっこいい!

 

 いつもより、ちょっと大人っぽい……かも。

 

 思わず見つめてしまっていたら、先輩がふしぎそうに言った。

 

「……? どうした?」

 

「先輩、かっこいいです……」

 

 あっ、しまった!

 

  私はあわてて口を手でふさいだ。

 

 キュンとしすぎて心の声がもれてしまった……!

 

 そんな私を見て、先輩はふっと笑った。

 

「まぁ、デートだからな」

 

「……っ。『デート』……!」

 

 先輩の口から聞くその言葉に、いっきに顔が熱くなってしまった。

 

「顔、真っ赤。お前さ、俺のこと好きすぎだろ」

 

「うっ……。そ、そうですけど! いや、なに言わせるんですか!」

 

 なんだか、あわてすぎて、よけいなことまで言ってしまっている気がする。

 

「ははっ。そんな感じでいいから。今日は、『先輩と後輩』じゃないだろ」

 

「……そうでした」

 

 学校では『先輩と後輩』だけど……。

 

 今日は、『カレカノ』なんだよね。

 

 さすがに敬語はなくせそうにないけれど、部活のときみたいに、かしこまらなくてもいいってことだ。

 

「私、楽しみすぎて緊張しちゃってました」

 

 へへって照(て)れ笑いをすると、先輩はじーっと私を見つめた。

 

「………………?」

 

 先輩は、それっきり、口を閉ざしてしまった。

 

 もしかして、この髪形、にあってなかった?

 

 春色ワンピ、どこかヘンだったかな……?

 

 急に不安になってきてしまって、私は思い切って聞いてみた。

 

「あ、あの……。今日の私、なにか、ダメ……でしたか?」

 

 そう言うと、先輩ははっとしたような顔になった。

 

「いや、悪い。ふつうに見とれてた」

 

「えっ!?」

 

「にあってるよ。すげーかわいい」

 

「!!」

 

 え……。え!? 

 

 今、『すげーかわいい』って言ってもらった……!?

 

 おどろきすぎて口をパクパクしていると、先輩がいじわるに笑った。

 

「なにその反応」

 

「せ、先輩……。私、今、夢でも見てるんでしょうか……」

 

「なんだよそれ。現実だって」

 

「い、いえ、なんだか……信じられなくて」

 

「本心に決まってるだろ。ていうか、好きな人に言わないで、だれに言うんだよ」

 

「す、『好きな人』……!」

 

 その言葉に、トドメを刺されてしまった気持ちになる。

 

 まだ、まちあわせしただけで、デートが始まってもいないのに!

 

「へぇ」

 

 にやりといじわるに笑った先輩は、私の耳元でささやいた。

 

「好きだ」

 

「!!」

 

 な、ななななにこれ!

 

 いじわるだってわかってるのに、ぼぼっと顔が熱くなってしまう。

 

 だ、ダメだ。

 

 私の精神力が、まちあわせただけでなくなっちゃう!

 

 よゆうたっぷりの様子でほほえむ先輩に、がんばってキリッとした顔を向けた。

 

「先輩、『好き』のムダづかいはやめてください!」

 

「じゃあ、もう言わない」

 

「えっ。それは困ります!」

 

「あははっ」

 

 もう! もう……!

 

 初デートなのに、からかわれ放題だよー!

 

「このままだと、ここで日が暮れるな」

 

 先輩はひとしきり笑ったあと、私の頭をぽんぽんした。

 

「じゃあ、そろそろ行くか」

 

「はい!」

 

 先輩は、ぎゅっと私の手をにぎって歩き出した。

 

 先輩と手をつなぐの、ぜんぜんなれなくてドキドキしちゃうよ。

 

 でも、とってもうれしい。

 

 先輩の大きな手って、たのもしくて、すごく安心するんだ。

 

 今日は、最高にすてきな日になるに違いないって確信した。

 

 

 

『先輩と後輩』じゃなくて、『カレカノ』としてすごす、はじめての日。
まちあわせした瞬間から、先輩の言葉と行動にドキドキが止まりません……!
次回、いよいよ、先輩との初デートが始まります!(10月5日公開予定)

 


最新刊『君のとなりで。(9)』10月13日発売!



「一生、となりにいてください」――さくらと伊吹先輩の物語、完結編!
吉川さくら、12歳。ずっと想い続けてきた伊吹先輩が、吹奏楽部を引退。
そして、ついに中学校を卒業する日がやってきた。
これでお別れ…じゃ、ない!? 卒業式の次の日・さくらのお誕生日に、先輩とデートすることに。
でも、伊吹先輩ファンクラブのメンバーに見つかってしまって、大ピンチ!
ふたりの関係は、どうなっちゃうの…!?
さくらと伊吹先輩、いっしょにすごした時間と絆、そして想いがいっぱいの、シリーズ最終巻です!


作:高杉 六花 絵:穂坂きなみ

定価
748円(本体680円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046321657

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『君のとなりで。(1)~(8)』も好評発売中!


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