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【先行連載】第10回つばさ文庫小説賞《特別賞》受賞作『学校の怪異談 真堂レイはだませない』第13回2-4 呪われてしまったの! 怪文書が、こんなにも!


こわい話にはウラがある?
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アンケートもあるので、ぜひ、連載を読んで、みんなの感想を聞かせてね!
『学校の怪異談 真堂レイはだませない』は2022年12月14日発売予定です! お楽しみに♪

表紙・もくじページ

【2-4 呪われてしまったの! 怪文書が、こんなにも!】

「あれが相談者の、小日向比奈(こひなた ひな)さん。ボクと同じ二年生だ」

 小日向さんは短いツインテールに、つり目がちの目をした、勝ち気な印象の人だった。

「気が強そうな人ですね……」

「気が強い人は苦手?」

「基本、人は苦手です」

「じゃあ、どんな人なら得意なの?」

「あきらかに、わたしより弱い人とか」

「聞かなきゃよかったな」

「言わなきゃよかったです」

「柊より弱い人って、赤ちゃんとか?」

「赤ちゃんは苦手ですね、なに考えてるかわからなくて」

「きみが言うか」

「……たぶん、人はみんな苦手です」

「ふうん。だから柊はいつもうつむいているのか」

「そうですね……人の視線は怖いので」

「なにか、トラウマでもあるのかな? いや、話したくないならムリには聞かないけれど」

「いえ、たぶん生まれつきです。それか前世でモグラだったとき、人からにらまれたとか」

「前世がモグラなのは確定なんだ」

「……わたしのおばあちゃんが昔、言ってくれたんです。『ムリに人と目を合わせなくていい。むしろ、イヤなら合わせるな』って」

「いいおばあさまだ」

「そう思いますか? ほかの親戚(しんせき)からは、そんなこと言うなって批判(ひはん)されてましたが」

「ボクは賛成だね。海外じゃ、人と目を合わせて話すのがマナー違反の国もある。いちばん大事なのはそこじゃない」

 じゃあ、いちばん大事なことってなんですか――と聞こうとして、わたしは気づく。

「っ! せ、先輩、後ろ!」

「後ろが、なんだい?」

「小日向さんの後ろに、は、背後(はいご)に、幽霊がいます……!」

 どうして、いまのいままで気づかなかったんだろう。

 その幽霊は体が半透明で、なんというか、存在感がたよりない。息を吹きかければ消えてしまいそうな、そんな儚さがあった。

「背後に? ふうん、そうか。柊には、そう見えるのか」

 先輩は声を弾ませる。先輩には見えていないってことは、やっぱり、あれは幽霊なんだ。

 よかった。透明なのに幽霊じゃなければ、3Dホログラムやら、VR空間に入りこんだ可能性やらを疑わなきゃいけないところだった。

「柊、幽霊はどんな姿かな?」

「智聡中(ちさとちゅう)の制服を着た、ポニーテールでメガネの少女です。大人っぽい顔立ちなので、たぶん上級生かと」

「うむ、悪くないな。柊にはそう見える。その事実が、いちばん大事なのかもね」


 先輩は自分に言い聞かせるかのようにつぶやき、歩きはじめるのだった。

 距離が近づくにつれ、わたしの目は、やはり幽霊に引き寄せられる。

 幽霊は、小日向さんをじっとにらみつけていた。

「遅かったじゃないの、比奈は待ちくたびれたわ!」

 わたしと先輩の姿を認めたとたん、小日向さんは口を開いた。

「比奈は戦争と差別の次に、待たされるのが嫌いなの!」

 つり目がちの目が、さらにつり上がっている。

 やっぱり、気が強い。人は見かけによらないと言うけれど、見かけはその人の大事な一部なんだから、ムシはできない……と、思う。

「悪かったよ、このとおりだ」

 ぜんぜん悪びれていない声で、ウィンクする先輩。いや、どのとおりだよ。

「まあ、比奈も、ちょっと怒りすぎたわ……」

 小日向さんはポッと顔を赤らめた。……おそるべし、美少年効果。

「さて、小日向比奈さん。きみは、ボクらにどんな相談があるんだろう?」

「もちろん妖怪についてよ!」

 なにが『もちろん』なのかも気になったけど、わたしは『妖怪』に引っかかる。

 妖怪? 幽霊じゃなくて?

妖怪おすんうぇについてよ!」

 お、おす……? え、なに?

「おすんうぇ、おすんうぇ、うん、なつかしいな。ひさしぶりに聞いたよ、おすんうぇ」

「先輩、知ってるんですか?」

「この学校に古くから伝わる怪談(かいだん)さ。通称、おすんうぇの怪――いや、正しくは、おすんうぇの怪文書(かいぶんしょ)、か」

「か、怪文書?」

 怪文書って、出どころも書いた人もわからない、正体不明の怪しい文書のこと、だっけ。

「うむ。智聡中に住み着く妖怪おすんうぇは、生徒に怪文書を送る。その怪文書には必ず、最後にアルファベットでosnwe!と書いてあるんだ」

 先輩は指を動かして、空中に文字を書いた。

「それが名前の由来だよ。osnwe!は、おすんうぇって読めるだろう?」

 ああ、なるほど。わたしもスペルを覚えるために、friend(フレンド)をフリエンドって読んだりする。

「そう、その怪文書が、比奈のもとに届いたのよ!」

 

 

 

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『学校の怪異談 真堂レイはだませない』は、いよいよ明日2022年12月14日発売予定です!
ぜひ続きもチェックしてくださいね♪


※実際の書籍と内容が一部変更になることがあります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・伝承等とは一切関係ありません。


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作:星奈 さき 絵:negiyan

定価
770円(本体700円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322104

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