KADOKAWA Group
ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ 大盗賊ドロッチェ団あらわる!の巻』第3回 デデデ大王は味方?


つばさ文庫のオリジナルストーリー『大盗賊ドロッチェ団あらわる!の巻』をためし読みしよう!
カービィたちは、大切な『宝物』を、ドロッチェ団から守りきることができるのか…!? カービィ、ワドルディ、デデデ大王、そしてメタナイトやドロッチェが登場する、とってもにぎやかなお話だよ。(全5回)

◆第3回

アクティブレイドの大切なたまごをあずかったカービィとワドルディ。
たまごを守るため、デデデ城に運びこんだふたりを待っていたのは、城主の『あの人』!
はたして、たまごの運命は…!?

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

デデデ大王は味方?

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

「おそーいっ! こんな時間まで、どこで遊んでたんだ、ワドルディ!」

 

 デデデ城に帰った二人を待っていたのは、予想どおり、空気がビリビリするほどの大声だった。

 

 声の主はもちろん、このデデデ城の主、デデデ大王。

 

 大王が飛び上がって足をふみ鳴らすと、デデデ城が地震のようにゆれた。

 

「ご、ごめんなさい、大王様!」

 

 ワドルディは転がるように大王の前に進み出て、ひれふした。

 

「つい、時間を忘れてしまって……」

 

「何時だと思ってる! オレ様は腹がペコペコだ!」

 

「すぐに、夕食を作ります! 大王様が大好きなハンバーグを……」

 

「ばかもん! ハンバーグなら、さっきコックカワサキのレストランで食べたばかりだわい!」

 

「え……? でも、おなかがペコペコって……」

 

「あんまり腹が減ったから、本日一回目の夕食を食べに行ったんだ! 二回目は、カップラーメンでがまんしたがな!」

 

「じゃ、じゃあ、ぼくが作るのは……」

 

「三回目の夕食に決まってるだろうがっ! オレ様は腹がへってるんだ! さっさと作れ!」

 

「は、はいっ!」

 

 そのとき大王はようやく、カービィに気がついた。

 

 たちまち、大王の目がつり上がる。

 

「カービィィ―! 何をしにきた!?」

 

「ぼくは……」

 

 たまごを運んできただけだよ、と言い返そうとしたカービィだが、デデデ大王の大声がそれをさえぎった。

 

「さては、デデデ城の食料庫(しょくりょうこ)を襲撃(しゅうげき)する気だな!? そうはさせんぞ!」

 

「ぼく、そんなこと……!」

 

「帰れ帰れ! おまえに食わせる料理はないからな!」

 

「なんでなの、ケチ! ちょっとぐらい食べさせてくれたっていいじゃない!」

 

「いかん! おまえみたいな食い意地のかたまりに食わせたら、あっという間に食料庫(しょくりょうこ)がからっぽになってしまうわい!」

 

「いじわる! ぼくはあきらめないぞ! ぜったいに、ワドルディの作る夕ごはんを食べてみせるからね!」

 

 カービィは飛び上がり、デデデ大王とにらみ合った。

 

「……カービィ、カービィ」

 

 ワドルディが、えんりょがちに声をかけた。

 

「ちがうでしょ。ごはん食べにきたんじゃないでしょ」

 

「え? あ、そうだった!」

 

 カービィは、やっと目的を思い出した。

 

 デデデ大王もようやく、カービィとワドルディが運んできた、たまごに気がついた。

 

 たちまち、大王の目の色が変わった。

 

「おおっ!? なんて大きくて、うまそうなたまごなんだ! そうか、ワドルディ。おまえはこのたまごを取りに行っていて、帰りがおそくなったんだな?」

 

「い、いえ……」

 

「でかした! さあ、そのたまごを使って、さっそく夕ごはんを作るんだ。オムレツがいいかな、それともたまご焼きか……」

 

 デデデ大王は、ぺろりと舌なめずりをした。

 

 カービィが言った。

 

「このたまごは食べられないよ!」

 

「む? なんだと? きさま、ひとりじめする気か!?」

 

「ちがうよ! これは食べ物じゃないんだ。ぼくたち、たまごを守りたいんだ」

 

「守る……だと?」

 

「うん! このたまごはね……」

 

 カービィとワドルディは、デデデ大王に今日のできごとをくわしく話した。もちろん、二人が仲良く遊んでいたことは、ないしょにしながら。

 

 話を聞くうちに、デデデ大王の表情が変わってきた。

 

「うーむ……それで、たまごをあずかってきたというわけか」

 

「うん。お母さん鳥が帰ってくるまで、大事に守るって約束したんだ」

 

 大王は腕を組み、ブツブツとつぶやいた。

 

「そんな大きな鳥で……しかもめずらしい種族か……そいつは、ひょっとすると……」

 

「え? 何?」

 

「いや、なんでもない。そいつは、なんという名前だった?」

 

「名前? えーと……たしか……」

 

 カービィは考えこんだ。聞いた覚えはあるけれど、思い出せない。

 

「ちょっと長い名前だったっけ……たしか……何とかブレ……ブレ……?」

 

 ワドルディが言った。

 

「ブレイド……じゃなかったっけなあ? なんとかブレイド……」

 

「……やはり、そうか」

 

 デデデ大王の目が、にんまりと細められた。

 

「念のため聞くが、その鳥はとても大きくて、見事なトサカがあって、目がギョロッとしてて、くちばしとツメがするどいんだな?」

 

「そうだよ」

 

 デデデ大王は、何やらうれしそうにニタッとした。

 

「よし、決めた! そのたまごを守るぞ!」

 

「え?」

 

「ドロッチェ団などに渡してなるものか! このデデデ大王様がいる限り、どろぼうの好き勝手にはさせんわい!」

 

 たのもしい言葉を聞いて、カービィとワドルディはよろこんだ。

 

「わあ、さすがです、大王様!」

 

「ありがとう、デデデ大王!」

 

「良かったね、カービィ!」

 

「うん! みんなでたまごを守ろうね!」

 

 カービィとワドルディは、思わず手を取り合ってはねまわった。

 

 とたんに、デデデ大王のかみなりが落ちる。

 

「ワドルディ! おまえ、なんでカービィなんかと仲良くしてるんだ!?」

 

「えっ……あ……」

 

「おまえ、まさかオレ様の目をぬすんでカービィと遊んでたんじゃないだろうな?」

 

 デデデ大王は、うたがわしそうな目でワドルディを見た。

 

 ワドルディは、あわてて両手を振った。

 

「ま、まさか! カービィと遊んだことなんて、一回もありません!」

 

「そ、そうだよ。ワドルディのことなんて、知らないっと!」

 

 カービィも調子を合わせる。

 

「本当か? それならどうして、いっしょにたまごを持って帰ってきたんだ?」

 

「こ、これは、その……。たまごを見つけたのは、カービィなんです。ぼくは、たまたまお使いのとちゅうで会って、話を聞いただけで……」

 

 ワドルディは、しどろもどろに言い訳をした。

 

 デデデ大王は、うたがわしげな顔をしながらも、一応うなずいた。

 

「ま、いい。それはともかく……ワドルディ!」

 

「は、はい!」

 

「早く夕食を作れ! オレ様は腹ぺこだと、何度言わせるんだ!」

 

「はいー!」

 

 ワドルディは大いそぎで台所に走った。

 

 カービィが大声で言った。

 

「ぼく、エビフライが食べたいな〜! あとねー、クリームコロッケとポテトサラダとビーフシチューと……」

 

 デデデ大王は、両手を振り上げておこり出した。

 

「何をずうずうしいことを言っとるんだ! おまえに食わせる料理なんて、ないと言っただろうがっ!」

 

「おなかペコペコじゃ、ドロッチェ団と戦えないよ! 食べさせてよ〜!」

 

「だめだ! この城の食料は、すべてオレ様のものだ!」

 

「ふん、ケチ! いいよ、じゃあ、ぼく、お風呂に入ってこよっと」

 

「なんできさまが、オレ様の風呂に、オレ様より先に入るんだあああ〜!?」

 

 デデデ大王の絶叫(ぜっきょう)が、城の外にまでひびきわたった。

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

「……すごい声だ」

 

 城の外の暗がりにうずくまったカゲが、そっとつぶやいた。

 

「がんじょうな城壁(じょうへき)を通して、ここまで聞こえてくるとは。さすがだな、デデデ大王」

 

「カービィだけでも手ごわいのに、デデデ大王まで加わったとなると……やっかいですな、団長」

 

 ひそめた声でささやいたのは、マシンに乗りこんだドクだった。

 

 そばには、スピンとストロンもひかえている。

 

 団長と呼ばれているのは、もちろんドロッチェだった。

 

 あざやかなぬすみの手口で有名な盗賊(とうぞく)だが、その正体はなぞにつつまれている。赤いシルクハットと赤いマントがトレードマークの、華麗(かれい)なる大どろぼうである。

 

 赤いスカーフを首に巻いたスピンが、鼻をこすりながら言った。

 

「なぁに、団長さえいれば、こっちのもんです。今すぐ乗りこんで、お宝をうばっちまいましょうぜ!」

 

 ドロッチェはフッと笑い、シルクハットのつばを、手に持ったステッキで軽く押し上げた。

 

「おちつけ、スピン。力ずくなんてやり方は、スマートじゃない」

 

「でも、団長……」

 

「オレたちは、宇宙をまたにかける大盗賊(だいとうぞく)、ドロッチェ団だ。お宝は、闇(やみ)にまぎれてスマートにいただく。強盗(ごうとう)みたいなマネはしない」

 

「……はい!」

 

 部下たちは、尊敬のまなざしで団長を見つめた。

 

 そう、ドロッチェのぬすみは、いつだってスマートそのもの。どんな警備(けいび)もかるがると突破(とっぱ)するが、だれかをキズつけることはぜったいにない。

 

「やつらが寝静まるのを待つんだ。そよ風のように静かに侵入(しんにゅう)し、やつらのねむりを破らずに、お宝をいただいて去る。これがドロッチェ団のやり方だ」

 

 ドロッチェがそう言い切った時、城の中から小さな生き物がたくさん走り出てきた。

 

 おだんごのような丸いからだに、大きな耳。

 

 ドロッチェ団の戦闘員、チューリンだ。

 

 チューリンたちは、ドロッチェにも数がわからないくらいたくさんいて、みんな同じような姿をしている。

 

小さくて力は弱いけれど、すばしっこく、どこにでも入りこめる。

 

ドロッチェにとっては、スピンたちと同じく、たよりになる部下だ。

 

「チュー!」

 

「チュチュ! チュー!」

 

 チューリンたちは、口々に報告した。

 

 ドロッチェはうなずいた。

 

「思ったとおり。お宝は、ワドルディの部屋に運びこまれたそうだ」

 

「チュー!」

 

「なるほど。ワドルディの部屋は、二階のいちばん東か……あの窓(まど)だな」

 

 ドロッチェは、そびえ立つデデデ城を見上げた。

 

「やつらが寝静まるのを待って、あの窓から侵入する。いいな、そよ風のように静かに、すばやくだぞ」

 

「しかし、団長」

 

 ドクが言った。

 

「もしも、カービィやデデデ大王が目をさましてしまったら、どうしますか? 戦わないわけには、いきませんぞ」

 

「その時は、その時」

 

 ドロッチェは力強く言った。

 

「やつらが攻撃してきたら、もちろん受けて立つ。ただし――」

 

 ドロッチェは、部下たちを見た。

 

「どんなにはげしい戦いになっても、たまごをぜったいに割(わ)らないよう、気をつけろよ」

 

「もちろんです、団長!」

 

 三人は声をそろえた。

 

 ドロッチェは満足げにうなずくと、夜空を見上げてつぶやいた。

 

「カービィとデデデ大王は、たしかに手ごわい。こんな時、ヤツが来てくれれば、百人力なんだが。おそいな……何をしているんだ?」


 


たまごを守るために、デデデ大王も協力してくれそうで、ほっとひといき。
でも、ドロッチェ団はとっても手ごわそう…。カービィたちは、たまごを守りきれるの!?
次回「第4回 ドロッチェ団あらわる!」をおたのしみに!



『星のカービィ 大盗賊ドロッチェ団あらわる!の巻』れんさい第4回(11月4日更新予定)に続く


作:高瀬 美恵 絵:苅野 タウ 絵:ぽと

定価
748円(本体680円+税)
発売日
サイズ
新書変形判
ISBN
9784046314376

紙の本を買う

電子書籍を買う


大人気発売中『星のカービィ ディスカバリー 絶島の夢をうちくだけ!編』ためし読み公開中!




大人気発売中『星のカービィ ディスカバリー 新世界へ走り出せ!編』ためし読み公開中!




大人気発売中『星のカービィ くらやみ森で大さわぎ!の巻』ためし読み公開中!




その他のカービィの本は以下のバナーからチェック♪



©Nintendo / HAL Laboratory, Inc. KB22-P3926



この記事をシェアする

ページトップへ戻る