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つばさ文庫のオリジナルストーリー『大盗賊ドロッチェ団あらわる!の巻』をためし読みしよう!
カービィたちは、大切な『宝物』を、ドロッチェ団から守りきることができるのか…!? カービィ、ワドルディ、デデデ大王、そしてメタナイトやドロッチェが登場する、とってもにぎやかなお話だよ。(全5回)
◆第4回
デデデ城に、アクティブレイドの大切なたまごを運びこんだカービィたち。
でも、たまごをねらうドロッチェ団はあきらめない!
はたして、たまごの運命は…!?
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
ドロッチェ団あらわる!
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
その晩(ばん)、カービィはワドルディの部屋でいっしょに寝ることにした。
二人とも、はしゃぎ回ってしまい、なかなか寝つけなかった。
「楽しいねー、おとまりって!」
「うん!」
「えーいっ!」
カービィは、ワドルディにまくらをぶつけた。
「あ、やったな!」
「へへ!」
「えいっ!」
ワドルディも、まくらを投げ返す。
カービィは、よけたひょうしに、ベッドから転がり落ちてしまった。
ベッドの下には――大事なたまごが置かれている。
ワドルディは悲鳴を上げた。
「わあああっ! ごめん、たいへん!」
「だいじょーぶ!」
カービィは空中でくるっと一回転し、たまごをよけて着地した。
ワドルディは、ほーっと胸をなで下ろした。
「良かったぁ……ハラハラしちゃった」
「だいじょーぶだよ」
二人はたまごをのぞきこんだ。
卵は、羽毛で作ったふかふかのクッションに、ひもでしばりつけてある。落ちないようにと、二人で工夫したのだ。
たまごは真っ白で、すべすべしていて、とてもきれいだった。
「この中に、ヒナがいるんだねえ」
「ねむってるんだよ、きっと」
「こんなかわいいたまごをぬすんで、売り飛ばそうなんて! ぜったいにゆるせないよ!」
「うん。しっかり守ろうね」
二人はうなずき合い、ベッドにもぐりこんだ。
ワドルディが、心配そうに言った。
「あいつら、夜中におそってきたりしないかな?」
「だいじょーぶ。警報装置(けいほうそうち)をしかけてあるし!」
「でも、あいつら悪がしこいからなあ。あんな装置(そうち)で、平気かなあ」
「……だいじょーぶ」
「ぼく、いろんなウワサを聞いたよ。ドロッチェ団は、どんなお宝だって、ぜったいにぬすみ出しちゃうんだって」
「……」
「どれほど厳重(げんじゅう)に警戒(けいかい)していても、ふせげないんだって。こわいなあ……」
「……」
「カービィ? どうしたの、だまりこんじゃって。何か作戦を考えてるの……?」
ワドルディは耳をすませてみた。
聞こえてきたのは、カービィののんきな寝息だった。
「すー……すー……すー……」
「……カービィ……もう寝ちゃったの……」
なんだか、心配していた自分がばかばかしくなってきて、ワドルディはゴロンと寝返りをうった。
(だいじょうぶ、だいじょうぶ。カービィも、デデデ大王様もいるんだから。ドロッチェ団なんか、こわくないよ)
すっかり安心して、ワドルディもねむりについた。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
夜は静かにふけていった。
真夜中をすぎて、月が大きく西にかたむいたころ――。
地上からデデデ城のバルコニーめがけて、ひゅっと何かが飛んだ。
かぎづめのついた、長いロープだ。
かぎづめは、バルコニーの柵(さく)にうまく引っかかった。
三つの影が、ピンと張られたロープを伝ってすばやく動き出した。
ドロッチェ、スピン、ストロンだ。マシンに乗りこんだドクは、地上に残って見張り役をしている。
ロープをつたってのぼるのはむずかしいが、三人ともなれたもの。あっという間に、バルコニーにたどり着いた。
ドロッチェは耳をすませて、室内の様子をうかがった。
かすかに聞こえてくるのは、カービィとワドルディの寝息だけ。二人とも、スヤスヤとねむっているようだ。
ドロッチェは部下たちに目で合図をし、ポケットから細い針金を取り出した。
針金を窓のカギあなに差しこみ、音もなくカギをはずしてしまう。わずか三秒ほどの早わざだった。
ドロッチェはそっと窓を開けた。
部屋にすべりこんだのは、ドロッチェとスピン。からだが大きすぎるストロンは、静かに行動するのが苦手なので、バルコニーに残っている。
彼がついてきたのは、戦闘(せんとう)になった時のための用心だった。
(――あったぞ)
ドロッチェは、目くばせでスピンに伝えた。
たまごとクッションは、ベッドのわきに置かれている。ドロッチェとスピンは、しのび足で近づいた。
カービィとワドルディは、昼間のつかれで、ぐっすりとねむりこんだまま。
(――よし)
ドロッチェとスピンはうなずき合い、二人がかりで、羽毛のクッションごとたまごを持ち上げようと――。
その時だった。
ガラガラガラ――ッと、大きな音がした。
クッションに、細い糸がむすび付けられていた。
糸の先は、あきカンや石ころで作った警報装置(けいほうそうち)につながっている。
カービィとワドルディが、二人で工夫してしかけておいたのだ。
ドロッチェの顔がひきつった。
「しまった……!」
「ん……?」
ワドルディが、目をこすりながら起き上がった。
おどろきのあまり硬直(こうちょく)しているドロッチェ団の二人と、ばっちり目が合ってしまった。
たちまち、ワドルディのねむけはふき飛んだ。
「わ……わわわああ! 出た、ドロッチェ団だ―――!」
ワドルディの悲鳴がひびきわたる。
カービィが、寝ぼけた顔でからだを起こした。
「んー? どうしたの、ワドルディ……ドロップ……? どこどこ? 食べたい……」
「カ、カービィ! ドロッチェ団だよ! ドロッチェ団の襲撃(しゅうげき)だよ―!」
「トロロ……? うん、ぼく、トロロ好き……ねぎトロ巻きも好き……」
「起きてよー、カービィ!」
ワドルディがゆさぶっても、カービィは寝ぼけっぱなし。
そのすきに、ドロッチェは気をとり直していた。
「行くぞ、スピン!」
「だ、団長!」
ドロッチェは警報装置(けいほうそうち)の糸を引きちぎると、サッとマントをひるがえした。
たまごとクッションをかかえて、窓から飛び出していく。
スピンも、急いであとに続いた。
「待て――!」
ワドルディが大声を上げた。
ようやく、カービィは目をさました。
「どうしたの、ワドルディ!?」
「たいへんだよ、カービィ! ドロッチェ団が!」
「ドロッチェ団!?」
カービィはふとんをはねのけ、ベッドから飛び下りた。
その目にうつったのは、バルコニーから逃げようとしているドロッチェとスピンのうしろすがた。
「待て!」
カービィは二人を追いかけて、バルコニーにかけよった。
その前に立ちふさがったのは、巨大なハンマーを手にしたストロン。
「団長のジャマは、させない……」
「たまごを返せ――!」
「カービィ、おまえの相手はオレだ……」
ストロンはハンマーを振り上げ、全力をこめて打ち下ろした。
カービィは、ピョンと身軽に飛びのいて、攻撃をかわした。
神殿でのバトルは、『ファイア』の力があったから有利に戦えた。けれど、今、カービィはコピー能力を持っていない。
今のカービィが使える攻撃は、せいぜい、空気を吸いこんではき出す「空気弾」だけ。これでは、ストロンのような巨漢(きょかん)には通用(つうよう)しない。
「覚悟(かくご)しろ、カービィ……」
「やだ……!」
再びおそいかかるハンマーの攻撃を、カービィがかろうじてかわした時。
「どけ、カービィ! そいつは、オレ様が引き受ける!」
どなり声とともに、おどりこんできたのは、デデデ大王だった。
ストロンのハンマーと同じくらい大きなハンマーを手にしている。ぐっすりねむっていた大王だが、警報装置のガラガラという音を聞いて飛び起き、かけつけてきたのだった。
大王はストロンに飛びかかった。
二つのハンマーが、火花を散らしそうな勢いでぶつかり合う。
力くらべのようにハンマーを押し付けながら、二人はにらみ合った。
ストロンの声がふるえた。
「むぅ……バカぢからめ……」
「おたがいさまだ!」
二人とも顔を真っ赤にし、相手を押し返そうとする。
デデデ大王はさけんだ。
「何してる、カービィ! おまえはドロッチェを追いかけろ!」
「うん! ありがとう、デデデ大王!」
カービィは、大王とストロンのわきをすり抜けて、バルコニーから飛び降りた。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
月光が明るくかがやくプププランドの平原――。
ドロッチェたちは、ドクが用意したマシンに乗りこみ、いちもくさんに逃げていく。
「待て〜! どろぼ〜!」
カービィはさけびながら、一味(いちみ)を追いかけた。
ドロッチェたちは、あせっていた。
「もっとスピードが出ないのか、ドク!?」
「ど、どうしたんじゃ。超高速スピードで走れるように改造したんじゃが……」
「改造する前のほうが明らかに速かったぞ……」
「団長、このままでは、追いつかれます!」
ふだんはのんきなカービィだが、本気を出せばだれにも負けない。
今、カービィはたまごを取り返すために必死だった。ドクの改造失敗マシンでは、とても逃げ切れない。
「待てってば〜!」
間近まで追いついたカービィは、思いっきり空気を吸いこみ、はき出した。
空気弾が、マシンにたたきつけられた。
もちろん、マシンを爆破(ばくは)するほどの威力(いりょく)はないけれど、バランスをくずすことはできた。
マシンは大きくかたむいてバウンドし、大岩に激突(げきとつ)した。
ドロッチェたち一味(いちみ)は、かんいっぱつ、マシンを脱出していた。
はずみで、たまごが宙に投げ出された。
「あぶないっ!」
カービィはたまごをめがけて飛び上がったが、ドロッチェのほうが一瞬早かった。
空中でたまごをキャッチし、くるっと回って着地。
「ふぅ……助かった」
ドロッチェは、たまごが無事なことを確認して、ため息をついた。
「返せ!」
カービィはさけんで、ドロッチェに飛びつこうとした。
それをはばんだのは、スピンが投げつけた手裏剣(しゅりけん)だった。
手裏剣(しゅりけん)は、カービィの足元の地面につきささった。
「お宝はいただくぜ、カービィ!」
「渡さないよ!」
しかし、カービィには武器がない。
それに、味方もいない。三対一では、いくらカービィでも勝ち目はなさそう。
「ドク、スピン。あとはたのんだぞ」
ドロッチェはマントをひるがえした。
「おまかせください、団長!」
「カービィ、オレたちが相手だ!」
二人に行く手をはばまれて、カービィは大声を出した。
「そこをどいて! たまごを返せ!」
「返してほしければ、オレたちを倒すんだな!」
「よぉし……!」
武器はないけれど、あきらめるわけにはいかない。せめて、空気弾で戦うしかない。
カービィが覚悟(かくご)を決めて、息を吸いこんだ時だった。
「うるさぁぁーい!」
大声がひびいたかと思うと、何かが走り寄ってきた。
黄緑色で、水のしずくのような形をした、小さな生き物だった。とんがった頭の両わきに、二つの黄色い電気球をくっつけている。
カービィがさけんだ。
「あ、スパーキー!」
「うるさいよ、カービィ。今、何時だと思ってるの? うちの前で大さわぎされて、目がさめちゃったじゃないか!」
スパーキーはプププランドの住民の一人。姿はかわいいが、意外に短気で、おこらせるとこわい。スパーキーの頭についている電気球は、パチパチと音を立てて、小さなイナズマのような光を放っていた。ひどくおこっている証拠(しょうこ)だ。
「スパーキーのおうち……?」
カービィは振り返ってみた。
なるほど、小さな家が建っている。
「スパーキー、ここに住んでるんだ……」
「そうだよ! ひとんちの前で、夜中に大さわぎしないでよ! せっかくいい夢をみてたのに……!」
スパーキーはプンプンおこっているが、カービィは目をかがやかせた。
「良かった〜! ありがと、スパーキー! ちょうどいいところに来てくれて!」
「え? ちょうどいい……って?」
「力をかしてよ!」
カービィは大きく口をあけた。
これは、「すいこみ」の体勢。そう気づいたスパーキーは、あわてふためいた。
「ま、まさかボクをすいこむ気!? やめろ、カービィ!」
「ちょっとだけ! すぐ、元通りにするから!」
「や〜め〜ろ〜!」
スパーキーは必死に抵抗(ていこう)しようとしたが、カービィのすいこみパワーにはかなわない。
カービィはからだをそらせて、思いっきり息をすいこんだ。
スパーキーは宙(ちゅう)を飛び、カービィにすいこまれてしまった。
たちまち、カービィの頭の上に、緑色の火花のようなかんむりがあらわれた。
スパーキーから、『スパーク』をコピーしたのだ。
「これで、よし! 行くぞ〜!」
カービィのからだが、電気をおびて、明るくかがやき始めた。
あっけにとられていたドクとスピンは、やっと、われに返った。
「まずいぞ!」
「カービィめ……!」
スピンが手裏剣(しゅりけん)をかまえたが、もう遅い。コピー能力さえあれば、カービィは無敵だ。
「そーれ!」
いさましい声とともに、スパークさくれつ!
カービィのからだから飛び散ったイナズマが、ドクとスピンに命中した。
スピンはイナズマに直撃されて、ひっくり返った。感電してしまったため、しばらく動けそうにない。
ドクのマシンは、キュルキュルときみょうな音を立てて、デタラメに飛び回り始めた。予想外の電気が流れこんできたせいで、回路がショートしてしまったらしい。
「ひぃ! なんてことじゃ!」
ドクは必死にマシンをコントロールしようとしたが、マシンの暴走は止まらない。何度もバウンドしながら、平原のかなたへ飛び去ってしまった。
部下たちはやっつけた。残るは、団長のドロッチェ一人。
カービィは、全速力でドロッチェを追いかけ始めた。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
たまごをかかえて全力疾走(ぜんりょくしっそう)していたドロッチェは、気配を感じて振り返った。
「待て〜! ドロッチェ!」
カービィが、もうスピードで追いかけてくる。
ドロッチェはギョッとした。
「あいつ、もうスピンとドクを片づけたのか? やるな……!」
ドロッチェはスピードを上げたが、本気のカービィにはかなわない。
「たまごを返せ〜!」
カービィがさけぶ。ドロッチェは振り返って、さけび返した。
「むちゃな攻撃はよせ! たまごに……」
たまごに当たったらどうする気だ、と言いたかったのだが、おそかった。
カービィは、ドロッチェの背中めがけて特大のイナズマをはなった。
ドロッチェはとっさにからだを丸めて、たまごを守った。
特製のマントが衝撃(しょうげき)をやわらげてくれたが、それでもダメージは大きい。
「……うっ!」
ビリビリと電気が走り、ドロッチェはうずくまってしまった。
カービィがかけよって、たまごをうばい取った。
念入りに、たしかめてみる。たまごにはかすり傷一つなく、無事だった。
「良かったぁ……!」
「くっ……カー……ビィ……」
ドロッチェは、うめき声を上げた。
全身がしびれているので、うまく口をきくことができない。
カービィはくるんと一回転して、『スパーク』のかんむりをはずした。
かんむりはたちまち、スパーキーのすがたにもどった。
スパーキーは、電気球をピカピカさせて抗議(こうぎ)した。
「カービィ! ひどいよ! ボクの睡眠(すいみん)をジャマしたばかりか、すいこむなんて……!」
「ごめん、ごめん! おかげで助かっちゃった。ありがとね、スパーキー!」
「ふん、すっかり目がさえちゃったよ! おやすみ、カービィ」
「おやすみなさ〜い!」
スパーキーは、電気球をピカピカさせながら家に帰っていった。
カービィは、ドロッチェを見下ろした。
「しびれさせちゃって、ごめんね。しばらくじっとしていれば、なおるから。じゃあね」
「待……て……」
「もう、たまごには手を出さないでよ。おやすみ、ドロッチェ」
カービィはたまごをクッションごと大事にかかえると、デデデ城へと引き返していった。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
スパーキーもカービィも去ったあと、残されたドロッチェは、ぼんやりとひとり言を言った。
「たまごでは……ないんだ……カービィ……」
ドロッチェは立ち上がろうとしたが、手足のしびれはなかなか取れず、力が入らない。
彼はあきらめて、たおれたまま休むことにした。
あおむけにひっくり返って、しばらくじっとしていると―。
夜空のかなたに、キラリと光るものが見えた。
「……」
ドロッチェは、その光をじっと見つめた。
星ではない。光はしだいに強く、大きくなってくる。
「……やっと……来たか」
ドロッチェは目をとじて、ふーっと長いため息をついた。
なんとかドロッチェ団をふりきって、たまごを守りきったカービィたち。
でも、ドロッチェの「たまごではない」という言葉の意味って、いったい何!?
それに、ドロッチェのもとに、だれかが来たみたい。そいつも、カービィたちの敵になるの…?
次回、「第5回 メタナイトのうらぎり!?」をおたのしみに!
『星のカービィ 大盗賊ドロッチェ団あらわる!の巻』れんさい第5回(11月11日更新予定)に続く
作:高瀬 美恵 絵:苅野 タウ 絵:ぽと
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