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ものがたり

スペシャルれんさい『ぼくらのオンライン戦争』第5回


宗田理さんの「ぼくらシリーズ」書き下ろし新作をどこよりも早くヨメルバで大公開! 
ぜひ、れんさいを読んで、みんなの感想を聞かせてね。感想はコチラ
ぼくらのオンライン戦争』は2023年3月8日発売予定です! お楽しみに♪

 

登場人物


菊地英治

菊地英治(きくちえいじ) 中2 いたずらを考える天才。


中山ひとみ

中山ひとみ(なかやまひとみ) 中2 水泳が得意。


相原 徹

相原 徹(あいはらとおる) 中2 仲間をまとめる。


☆100秒でわかる! ぼくらシリーズの動画はコチラ



第5回

 来々軒(らいらいけん)に集まったのは、英治(えいじ)、相原(あいはら)、柿沼(かきぬま)、日比野(ひびの)、安永(やすなが)、天野(あまの)、谷本(たにもと)、佐竹(さたけ)、中尾(なかお)、宇野(うの)、立石(たていし)、秋元(あきもと)、ひとみ、久美子(くみこ)の十四人だった。

「いつも思うけど、来々軒のラーメンは絶品だ。見た目がシンプルだから簡単に作れそうだけど、こういう味を出すのは本当に難しいんだぜ」

 ラーメンを食べおえた日比野が、ウンチクを語りながら満足そうに大きなお腹をさすっている。

「うまいのはわかるけど、日比野は食いすぎだよ。おい宇野、ぼやぼやしてると食うものがなくなっちまうぞ」

 英治がテーブルの上に並んだ料理を指さしながら言った。

「う、うん」
 




 宇野がゆっくりとはしを伸ばしたとき、となりにいた安永が、残っていた餃子(ぎょうざ)を三つまとめて、はしでつまみ上げて小皿にのせると、

「そんな調子だから、シマリスって言われるんだよ。ママの昼飯で腹がいっぱいなのか?」

と言って、宇野の前にその小皿を置いた。

「そんなことないよ」

 宇野がぼそぼそ言いながら、餃子を口に運んだ。

「マスター、ごちそうさまでした。今日もめちゃくちゃおいしかったです。片づけはぼくたちがやりますので、ゆっくり休んでください」

 英治が純子の父親の義介(よしすけ)に言うと、みんなもいっせいに、

「ごちそうさまでした!」

と声を上げた。義介は、

「じゃあ頼んだよ」

と言って、店の奥へと姿を消した。

「それで勉強合宿だけど、柿沼くんのおじいさんの別荘(べっそう)でやるんだって?」

 ひとみがきいた。

「軽井沢(かるいざわ)にある広い家らしいぜ」

「去年の夏、カッキーはそこに閉じこめられて、勉強がずいぶんはかどったみたいだ」

 天野に続いて英治が言った。

「はあ、軽井沢まで行って勉強かあ。わたしは気が進まないな」

 久美子がため息をついた。

「そうだよね。ねえ菊地(きくち)くん、勉強は半分なんでしょ。あとの半分は何するの?」

 ひとみはずっとそれが気になっていた。

「それは、カッキーが答えます。柿沼くん、どうぞ」

「では発表します。別荘をおれたちの秘密基地に改造します!」

「えー!?

 女子たち三人と、いま初めてそのことを聞いた男子たちがいっせいに叫んだ。

「秘密基地って、子どもの時にあこがれたよなあ。隠れ家(かくれが)みたいなやつだろ?」

 立石は興奮している。

「イメージはまさにそれだ。でも、もっと本格的なのがいいよな。大人に干渉されない、おれたちだけの基地にしようぜ」

「そこでみんなで楽しく遊ぼうってわけか。それはいいな」

 秋元も気持ちが高ぶってきた。

「去年の廃工場(はいこうじょう)でも、本当はそういうのをやりたかったんだ。だけど大人たちに、いちいちじゃまされちゃったからな」

 相原がくやしそうに言うと、

「でも、あれはあれですげえ楽しかったぜ」

 英治が満足そうに答えた。

「秘密基地ではどんなことをするつもり?」

 純子がきいた。

「そりゃ、いろんなことをするつもりだよ。家じゅうを迷路にしたり、肝試(きもだめ)ししたり。プールでは泳ぎ放題だし、テニスもやり放題。庭でバーベキュー・パーティーなんかもできるぞ」

 柿沼の頭の中はアイディアでいっぱいだ。

「おもしろそう! だけど、別荘をそんなふうにしちゃっていいの?」

「それに関してはじいちゃんの許可をとってないけど……、何とかなるよ。あとで元通りにしとけばいいんだ」

 柿沼は、特に気にしていないようだ。

「じゃあ、今年はわたしたちもしっかり参加させてもらおうね」

 久美子がひとみと純子の顔を見た。

「でも、男子と一緒に別荘に泊まるのはちょっとまずくない?」

 ひとみが言うと、久美子と純子が同意した。

「それなら心配いらない。すぐそばに、夏だけ営業してるペンションがあって、そこのオーナーの人と知り合いなんだ。三人一部屋でよければ貸してくれると思う」

「本当?」

 女子たち三人の顔が一瞬にして輝いた。

「そんなにおれたちと泊まるのがイヤなのかよ」

 日比野が文句を言ったが、

「あたりまえでしょ」

と、ひとみに一瞬で言いかえされてしまった。

「それから、お金についてだけど、交通費プラス、向こうで秘密基地を作るための資金が必要だ。参加する者は『相原進学塾(しんがくじゅく)』の夏期講習代として、親から一人一万円もらってきてくれ」

 相原がまわりを見まわしながら言った。

「うちの親、普通だったら、そんな大金出してくれないだろうけど、『相原進学塾』の名前を出せば、まずだいじょうぶだ。いい作戦考えたな」

 佐竹が感心していると、

「高校に入ったら、バイトして返すと言えばいいんだ。これは高校に入るための夏期講習なんだろ? まあ、おれは高校には行かねえけどな」

 安永が冷めた調子で言った。

「そういう安永だって別荘には行くんだろ?」

 英治の質問に、安永が当然とばかりにうなずいたので、みんな大笑いになった。

「カッキー、出発日はどうする? 秘密基地とか塾のテキストとか、いろいろと準備をしなくちゃいけないから」

 相原がきいた。

「男子は五日後、女子はそれ以降、ペンションの予約が取れた日からでどうだ?」

「いいんじゃないか」

「みんなと一緒に行けないのは、ちょっと残念だけどね」

 純子は少しさみしそうにしたが、

「仕方ないよ。だって、わたしたちはVIP(ブイアイピー)待遇(たいぐう)なんだから」

ひとみはカラッとしている。すると、

「そうそう。ひとみたちはVIPだから、のんびり来ればいいよ。その間に、おれたちがびっくりするような秘密基地作っとくからさ」

 英治が、からかうように言った。

「なんかその言い方、カチンとくるなあ」

「ひとみ、乗せられちゃダメ。わたしたちは、思う存分楽しませてもらえばいいんだよ。その代わり、つまらないもの作ってたら承知しないからね」

 久美子が英治にやり返したので、ひとみはすぐに機嫌を直した。

「では参加できるやつは、明後日までにおれのところに連絡をくれ」

 相原の言葉が解散の合図になった。

 英治たちが店の外に出ると、太陽はだいぶ西に傾(かたむ)いていたが、まだ強烈な熱気を放っていた。

「はやく軽井沢に行きたいなー」

 英治は、思わずそんな言葉を口にしていた。



*お話の続きは、新刊『ぼくらのオンライン戦争』を読んでみてね!
 


『ぼくらのオンライン戦争』は3月8日発売予定!


作:宗田 理 絵:YUME キャラクターデザイン:はしもと しん

定価
836円(本体760円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322005

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