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4.やってきた謎の少年
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日曜日の朝。
春馬、未奈、亜沙美は、渋神中学の校門の前に集合した。
『絶体絶命ゲーム』に参加する1年生も、すぐに校門の前にやってきた。
「何回やっても、無駄だよ。奴隷が、おれたちには勝てないよ」
一輝は、あいかわらず生意気だ。
「返り討ちじゃ! バサッ、バサッ、バサッ!」
JJがおどけて、亜沙美を刀で斬るポーズをする。
亜沙美は、無視する。
「ノリがわるいなぁ……。まぁ、いいわ」
JJは、わざとらしく退屈そうにあくびをする。
「あれ、渉は? まだきてないのか?」
一輝が、まわりを見ながら聞いた。
そのとき、あどけない顔の少年が、チューブに入った氷菓子のパペポを食べながらやってくる。
「……よかった。間にあったみたいだ」
「ハァ……? おまえ、だれだ?」
JJが、少年をにらみつけながら言った。
「渉くんが発熱したんだ。それで、ぼくがかわりにきたんだよ」
「おまえが、渉のかわりだって? バカなこと、言うんじゃないよ!」
「でも、ゲームは、3人対3人なんでしょう。参加者が2人しかいないと、不戦敗だよ。それでもいいの?」
少年が言いかえすと、JJは一輝を見た。
「渉は、本当に発熱なのか?」
「うん、そうだよ。でも、熱を出さない人間は、生きてないけどね」
「……おれたちの邪魔はするなよ」
一輝が、はき捨てるように言った。
「もちろん、そんなことはしないよ」
少年はそう言うと、春馬たちを見る。
「紹介がまだでしたね、先輩たち。1年3組の蓬木怜央(よもぎ・れお)です」
怜央はパペポをすいながら、ていねいにあいさつをした。
そのとき、黒のワンボックスカーが、6人の前にとまる。
助手席の窓が開いて、虹子が顔を出す。
「みんな、そろってるな。これで、ゲーム会場まで送るよ」
6人は、ワンボックスカーの後部座席に乗りこむ。
運転席には、黒服の男がいる。
「虹子、ゲーム会場は遠いのかい?」
後部座席から春馬が聞いた。
「すごく遠いよ。でも、心配はいらない。そこまで、眠っていればいいんだ」
虹子はそう言うと、前の座席と後部座席の間にある仕切りを閉めた。
次の瞬間、後部座席に白い煙が流れこむ。
未奈、亜沙美、1年生の3人は、あっという間に気を失う。
「な、なにも、眠らせなくても……、いいだろう……」
春馬も気を失った。
◆
「到着だ。みんな、起きて」
虹子の声で、春馬は目を覚ました。
未奈、亜沙美、1年生の3人も目を覚ます。
ここは……、6人の乗ったワンボックスカーの中だ。
「とりあえず、なんの仕掛けもなかったわね」
未奈に言われて、春馬は苦笑いする。
「『奈落』にいかされたときは、目が覚めたら、いきなり鉄格子の檻の中だったからな」
6人がワンボックスカーをおりると、そこは緑深い山の中だ。
「こっちだよ」
虹子が、どんどん歩いていく。
春馬たちがついていくと、100メートルほどの長さの、今にも壊れそうなぼろぼろのつり橋がある。
橋の50メートルほど下には、たっぷりな水量の川が流れている。
「橋をわたった先にある村に、今回のゲーム会場になる屋敷があるんだ。ついてきて!」
虹子はつり橋を、かろやかな足取りで走っていく。
橋は左右に大きくゆれるが、虹子はかまわずにわたっていく。
「うわぁ、おもしろそうじゃん!」
JJも、つり橋を走っていく。
「おい、ゆれるだろう!」
一輝は、あきれたように言って、橋をわたっていく。
怜央と亜沙美も、橋をわたっていく。
「……未奈、わたれそうかい?」
春馬が、心配して聞いた。
「……わたれるわ。『奈落』にいくときは、飛行機から落とされたのよ」
「そうか、そうだったな。あのときは、ひどい目にあわされたな」
「前までなら、絶対に無理だった。でも、今なら、わたれる……」
「一応、手をつなごうか……?」
春馬がはずかしそうに言って、手をさしだした。
「うん、お願い……、なんて言わないわよ!」
未奈はおどけて言うと、1人でつり橋を歩き始める。
「本当に、大丈夫なのか?」
春馬はつぶやくと、未奈のうしろを歩いていく。
「これ、ハイキングだったら、すごく楽しいのにね……」
未奈が、深い山にかこまれた風景を見まわしながら言った。
「うん、そうだね」
そのとき、突風が吹いて、つり橋が大きくゆれた。
「キャッ!」
未奈がよろけて体勢をくずすと、とっさに春馬がささえた。
そして、春馬は、未奈の手をとった。
「えっ!」
未奈は小さく言ったが、すぐに、春馬の手をにぎりかえしてきた。
川のせせらぎ、鳥の鳴き声が聞こえる。
春馬と未奈は、無言でつり橋を歩いていく。
なにか言えば、この時間が終わってしまいそうな感じがする。
つり橋を無事にわたりきると、2人はなごりおしい気持ちをかくしながら、1年生から見られる前に、いそいで手を離した。
先頭の虹子は、かるい足取りで山道をくだっていく。
春馬たち6人は、虹子についていく。
森にかこまれた道を抜けると、小さな村に出る。
道の横に、村に入る人を見張るように地蔵がある。
「こんな山奥に、村落が……」
まるでタイムトリップしたように、ひっそりと、数軒の古い家がならんでいる。
「春馬、あの人たち……!」
未奈に声をかけられて、春馬が目をむける。
編み笠をかぶり、黒のレインコートを羽織った不気味な男たちが、こちらをじっと見ている。
離れていても、ただならぬ殺気を感じる。
「彼らのことは気にしなくてもいいよ」
虹子は、村のはずれまで、ずんずんと歩いていく。
「ここがゲーム会場になる、土黒家の屋敷だ」
かやぶき屋根で、周囲にくらべても各段に大きな古民家だ。
玄関の引き戸には、『絶体絶命ゲーム ☆』と書かれている。
「まず、ぼくが入るよ。みんなはあとからきて」
虹子が、引き戸を開けると、内側にもう1枚引き戸がある。
2枚の引き戸を引いて、虹子は屋敷の中に入っていく。
「……ミッシェル先輩の命令だから、虹子についてきたけど、あいつって、なにものなんだ?」
一輝が、不思議そうに聞いた。
「よくわかんないけど、転入生のくせに生意気なの。その内、ぎゃふんと言わせてやるわ」
JJが、気に食わなそうに言った。
「この戸に、星が1つついてるけど、レストランでもあるのかな?」
怜央が首をかしげると、一輝が笑う。
「こんなところに、レストランがあるわけないだろう」
「そうか……」
怜央は、戸に書かれた☆をじっと見ている。
「……虹子は、『みんなはあとからきて』って言ってたけど、もう入っていいのかな?」
未奈が、待ちくたびれて聞いた。
「うん、入ってみよう」
春馬は、1枚目の引き戸を開け、さらに2枚目の引き戸も開けて、屋敷に入る。
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