最悪の地【奈落】から生きて帰ったことで、さらに伝説的存在になった春馬と未奈。
けれど、そんなころ渋神中では、なんと春馬たちの学年である2年生の全員が、1年生の奴隷にされて、ひどい目にあっていたのだ――!
「春馬が帰ればなんとかしてくれる!」と待っていたみんなのために、春馬はふたたびゲームをすることに…!!
この立場をひっくりかえすには、もう一度、絶体絶命ゲームやるしかない!? ーーそして、春馬と未奈の関係にも変化が……。
読みどころいっぱいの絶体絶命ゲーム最新巻をためし読み!(全3回・水曜日更新、公開は2026年5月6日(水)まで)
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3.転校生のおんがえし?
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廊下に、おかっぱボブの小柄な女子がいる。
「「土黒虹子(つちくろ・にじこ)!」」
そのすがたを見て、春馬と未奈が、大きな声を出した。
『奈落』Ⅰ区の鉄格子のはまった部屋に、閉じこめられていた、あの土黒虹子だ。
いまはなぜか、未奈と同じ、渋神中の制服を着ている。
「春馬、未奈、ひさしぶり。2人なら、『奈落』から出てくると思ったよ」
「虹子は、どうしてここにいるんだ?」
春馬が、不思議に思って聞いた。
「転校してきたんだ。……前に言っただろう、ぼくたちが会うのは運命だ」
クラスメイトたちの視線を感じた虹子が、自己紹介する。
「ぼくは、土黒虹子だ。1年1組に転入してきたばかりだ。よろしくな」
クラスメイトたちが、不安そうにざわめく。
今、2年生は1年生の奴隷なのだ。
「虹子は友だちなの。……ふつうに話しても、大丈夫よ」
未奈が、緊張しているクラスメイトたちに言った。
「土黒って、めずらしい名字だよねえ。もしかして、都市伝説で有名な『ドクロ一族』だったりして……?」
栄太郎が、その場をなごませるように言った。
「よくわかったな。ぼくは、その『ドクロ一族』だ」
「えっ!? またまた、冗談だよね?」
「ぼくは、冗談は言わない」
長い沈黙のあと、
「ひぇぇぇぇぇ……」
栄太郎は、聞いたことのない悲鳴をあげた。
「おい、栄太郎。失礼だぞ」
春馬が注意した。
「ご、ご、ご、ごめんなさい……。で、でも、『ドクロ一族』って……、ほ、ほ、本当に、実在するの?」
「ここに実在している。ところでおまえは、ぼくの一族のこと、どれくらい知っているんだ?」
「そ、そ、それは……」
「いいから、聞かせろ」
虹子に言われて、栄太郎は震える声で説明する。
「……と、都市伝説で言われていることだけど……『ドクロ一族は、国が公にはできない闇の仕事を担っている、日本で最恐の一族』だと……」
「そうか。だいたい、当たってる。ただ、今は国からの仕事はしてないようだ」
「ちなみに、『国が公にできない闇の仕事』ってなにかな……?」
栄太郎の質問に、虹子は冷たい笑顔で答える。
「それを知ったら、今夜から眠れなくなるぞ。……それでも、知りたいか?」
「い、いえ、知りたくありません」
栄太郎が、すかさず否定した。
「それがいい。……それよりも、春馬はそんなに『絶体絶命ゲーム』をやりたいのか?」
虹子は、春馬たちの会話を聞いていたようだ。
「ゲームがやりたいわけじゃない。今の2年生の立場を、回復したいんだ。それには……」
春馬が言いかけると、虹子がさえぎる。
「その話は知ってるから、説明はいらない。要するに、『絶体絶命ゲーム』で1年生と戦いたいのだろう」
「そうだけど……。それには、生徒会長のミッシェル先輩の許可が必要なんだ。でも、それができなくて、こまっているんだよ」
「実を言うと、ぼくはミッシェルと話してきたんだ。そうしたら、『絶体絶命ゲーム』の再戦を許可してくれた」
「それ、本当なのか!?」
春馬が、目を丸くして言った。
「ミッシェルに、文句は言わせない。……そうだった、証拠があるんだ」
虹子はスマホを取りだした。
スマホのディスプレイに、青ざめた顔のミッシェルが映る。
録画した映像らしい。
『……「絶体絶命ゲーム」の再戦は、すべて土黒虹子にまかせました。わたしは、もう、この件には、一切関与しない。1年生と2年生で、勝手にやってくれ……』
ミッシェルの映像はそこで終わる。
「……ということだ」
虹子が、満面の笑みで言った。
「ミッシェル先輩、ずいぶん、顔色わるかったわね」
未奈の言葉を、虹子は聞こえないふりをする。
「それに、かなりふるえていたようだ」
春馬の言葉にも、虹子は無反応だ。
博学なミッシェル先輩なら、『ドクロ一族』のうわさを聞いたことがあるだろう。
虹子が、その一族だと、知っていたのかもしれない。
「場所と案内人は、ぼくの一族が用意する。——場所がどこになっても、春馬は、『絶体絶命ゲーム』をやるだろう?」
急な展開に、春馬はまだ気持ちが追いつかない。
「そうだな……」
「あれ、どうしたんだ? 『絶体絶命ゲーム』をやりたかったんじゃないのか?」
躊躇している春馬に、虹子が不思議そうに質問した。
「そのゲームで、ぼくたちが勝ったら、2年生は元の生活にもどれるんだよね?」
「それを望むなら、そうなる。……前にも言ったけど、ぼくは卑怯なことはきらいだ。だから、ゲームは公平におこなう」
「その心配はしてない。……ところで、ぼくたちが負けたら、どうなるんだ?」
春馬の問いに、虹子がにやりと笑った。
「あぁ、その話はまだだったな。春馬たちが負けたら、2年生は奴隷のままだ。それと……」
「なんだ?」
春馬の脳裏に、不安がよぎった。
「……春馬には、土黒家の仕事を手伝ってもらう」
「そ、そ、それって春馬が、闇の仕事をやるということ?」
未奈が、あわてた口調で質問した。
「くわしくは、ぼくも知らない。でも、どうやら、土黒家の連中は、春馬に興味を持ったみたいだ」
「春馬、やめよう。闇の仕事なんて、絶対にダメよ」
未奈が言うと、虹子が首を横にふる。
「それなら、勝てばいいんだ」
「まぁ、そうなんだけど……」
つぶやいた春馬は、悩んでいる。
『絶体絶命ゲーム』の再戦は、2年生全員が望んでいることだ。
でも、負けたら春馬は、ドクロ一族の仕事を手伝わないとならない。
それなら、断るか……?
いや、でも、こんなチャンスを逃していいのか?
虹子の言うとおり、ゲームに勝てばいいんだ。
「ちょっと、春馬と2人だけで話をさせて……」
未奈が、春馬を教室のすみにひっぱっていく。
「あたし、いやな予感がするわ」
「ぼくも同じだ。……でも、このままじゃ打開策はないだろう?」
「でも、負けたら、闇の仕事なのよ」
「わかってる。わかっているけど……」
春馬が迷っていると、いらいらした虹子がやってくる。
「まだ決まらないの。……今の環境の居心地がわるいなら、自分の力で変えるしかないんだ。それには、挑戦するしかないんだ」
「本当に、ゲームは公平なんだな?」
春馬が確認する。
「ぼくは卑怯なことはきらいだ。何度も言わせるな。それから、ゲームは1チーム3人のチーム戦だ。メンバーは、自分たちで決めていい」
虹子の話を聞いて、未奈の気がかわる。
「春馬、やろう」
「急に、どうしたんだ?」
「あたしもいっしょにゲームをやるわ。そうすれば、絶対に負けないわ」
未奈の力強い言葉に、春馬の迷いは吹っ飛んだ。
「そうだな。ぼくには、未奈がいるんだな」
「もう1人は、ぼくがやるよ」
栄太郎が立候補するが、未奈が首を横にふる。
「昨日まで入院していたんだから、栄太郎はダメよ。まずは、身体を万全にして」
「そんな、もう元気だよ」
「わたしがやるわ!」
そう言って、亜沙美が教室に入ってくる。
「亜沙美、どうして?」
春馬が問うた。
「さわがしいから、きてみたのよ。……そんなことより、『絶体絶命ゲーム』に参加する残りの1人は、わたしよ」
「亜沙美が『絶体絶命ゲーム』に出たいと言うなんて、なにか、わけがあるのかい?」と春馬。
「1年生からゲームに出る3人は、入学式と同じで、一輝、渉。それに、JJでしょう?」
「おそらく、そうだと思うけど……。3人を知っているのかい?」
「JJのことだけね。……彼女は、剣道部よ」
亜沙美は、怒りのこもった声で言った。
「この前、話をしていた1年生の剣道部員って、JJのことだったんだな」
春馬が言うと、、亜沙美はうなずく。
「うん、あたしは、亜沙美でいいわよ」
未奈が言うと「ぼくもだ」と春馬が答えた。
栄太郎も、ほかのクラスメイトも納得の顔をしている。