KADOKAWA Group
ものがたり

〈奈落編〉クライマックス『絶体絶命ゲーム16』先行ためし読み 第2回

―――――――――――――――――――

4 瀬々兄弟、あばれる!

―――――――――――――――――――

「敗者復活戦で負けたうさ晴らしにきたぞ!」

 大器はそう言うと、となりにいた晩成といっしょにウォーターガンをかまえる。

「ルー、これはどういうことだ?」

 春馬が聞いた。

「いきなりだけど、『絶体絶命ゲーム』の第1ゲームです」

 ルーの言葉に、ゲーム参加者たちはとまどう。

「……と言っても、まずはウォーミングアップです。瀬々兄弟のウォーターガンの謎の液体から逃げるという単純なものです。この先に10の個室があります。そこまで、逃げてください。謎の液体のかかった量の少ないチームが勝ちです」

「負けたら、なにか罰はあるの?」

 未奈が質問した。

「罰はないけど、勝ったチームはあとのゲームで有利になります」

「敗者復活戦のあと、ルーが瀬々兄弟といっしょにレクリエーション・ルームから出ていったのは、この計画を指示するためだったんだな」

 春馬が言うと、「計画の裏側まで話さないでくださいよ」とルーがおどける。

「おい、そろそろ、はじめさせてくれ!」

 大器が言うと、ルーがうなずく。

「それでは、第1ゲーム、スタートです」

 ゲーム参加者は、いっせいに建物の奥に走っていく。

「「パーティーだぜ!」」

 大器と晩成は叫ぶと、ゲーム参加者にむけてウォーターガンを放つ。

「な、な、なに? いきなりゲームなの?」

 とまどいながら走りだした栄太郎は、足がもつれて転んでしまう。

「ハイ、ジ・エンド!」

 大器が、転んだ栄太郎にむかってウォーターガンを放つ。

   ビチョ!

 黒くてドロドロしたスライムのような液体が飛びだし、真正面から栄太郎にかかる。

「うわぁ! この液体、どろどろして気持ち悪いな。それに、くさいぞ!」

 そう言いながら、栄太郎は鼻をおさえた。

「奥の部屋に着替えを用意してあるので、そこまで、逃げてください」

 ルーに言われて、栄太郎は液体のついた服のまま走っていく。

 大器と晩成はウォーターガンを放ちながら、ほかの参加者を追いかける。

 ゲーム参加者たちは、うす暗い中をばらばらに走っていく。

「春馬、なにを考えているの?」

 走りながら聞いてきた未奈に、春馬はぶっきらぼうに答える。

 春馬は、未奈と視線を合わせずにこたえた。

「ぼくは、秀介といっしょにいたいだけだ。未奈、このゲームには、ぼくが勝つよ」

「あたしも負けないわ」

 未奈が言いかえした。

「みんな、地面がぬかるんでるところがあるから、気をつけて」

 前を走っていたユウヤが言った。

「本当だ、走りにくいな」

 春馬も、ぬかるみを走る。

「うわぁ、マジ!」

 七菜が、ぬかるんだ地面に足をとられて派手に転んだ。

「七菜、ご愁傷様!」

 晩成が転んだ七菜にむかって、ウォーターガンを放つ。

「うわぁぁぁぁぁぁ……」

 七菜も、どろどろの液体をかけられた。

 みんなが逃げまわる中、蘭々だけは柱のかげにかくれている。そして、

「攻撃は最大の防御なり!」

 蘭々は、柱のかげから飛び出ていくと、大器にむかって走っていく。

「おもしれぇ! くさい液体をぶっかけてやる!」

 大器が、蘭々にむけてウォーターガンを放つ。

 蘭々は、俊敏な動きで液体をよける。

「すばしっこいやつだな!」

 大器が、くやしそうに言った。

「瀬々大器ごときが、スピードでわたしに勝とうなんて、10万年早いのよ!」

 蘭々が、大器に襲いかかろうとする。

   ド————ン!

 その瞬間、横から走ってきたルーが、蘭々を蹴りたおした。

「————ごめんなさい、参加者からの攻撃は、なしのルールなのよ。言い忘れていました」

 ルーが、あやまる。

「蘭々、ジ・エンド!」

 大器が、蹴りたおされた蘭々にむけてウォーターガンを放った。

「オエッ……。なによ、この液体! くさくて、どろどろしていてチョーキモイ!」

 どろどろの液体にまみれた蘭々が、泣きそうな声で言った。

 晩成は走りながら、今度は未奈にウォーターガンを放つ。

 未奈の背中に、どろどろの液体がかかる。

「うわぁ! くさい!」と未奈。

 大器は、逃げる鏡一にむけてウォーターガンを放つ。

 どろどろの液体が、鏡一にも命中する。

「うわぁ、どろどろで気持ち悪いなぁ……」と鏡一。

 春馬は、うす暗い中をひたすら走っていた。

「あれは……」

 少し前を、亜久斗が走っている。

 晩成が亜久斗を追いかけているのが見える。

 うす暗い先に、部屋のドアがある。

「あそこが、部屋だな。……えっ!」

 全力で走っていた春馬だが、いきなり、足下の地面が消えた。

   ドン!

「これって、落とし穴もあったのか!?」

 春馬の落ちた穴は、深さは1メートルほどで、はいあがることはできるが……。

 大器が、穴のそばに走ってくる。

「春馬、残念だったな。ジ・エンドだ!」

 大器がそう言って、春馬にむけてウォーターガンを放つ。

 どろどろの液体が、春馬にかかる。

「うわぁ、くさい!」

 そのとき、亜久斗を追いかけていた晩成が、大器のもとにやってくる。

「どうした、晩成?」と大器。

「あと少しのところまで、亜久斗を追いつめたんだけど、弾切れだ。液体がなくなった」

 晩成が、残念そうに言った。

「おれも、春馬にあびせたので終わりだ」

 大器が言った。

「みなさん、お疲れさまです。瀬々大器、瀬々晩成のウォーターガンの液体がなくなったので、第1ゲームは終了します」

 ルーが言うと、うす暗いホールに照明がともる。

 ホールの奥に、ドアが10個並んでいる。

「同じタイプの部屋を1人1つ、全部で10室用意したので、部屋に入ってください」

 ルーが言うと、柱のかげにかくれていたユウヤがやってきて質問する。

「第1ゲームの勝敗は、どうやって決めるんだ?」

「それは、部屋に入ってから発表します。みなさん、部屋に入ってください。特に、どろどろの液体をかけられた人は、くさいから、早く部屋に入ってください」

 ルーが、鼻をおさえながら言った。

 ゲーム参加者が、部屋の前に集まってくる。

 春馬は、両チームの服装をちらりと見た。

 未奈のチームは、未奈、栄太郎、鏡一はどろどろの液体まみれだが、亜久斗とメイサには、ほとんど液体はかかっていない。

 春馬のチームは、春馬、七菜、蘭々は液体がかかっているが、アリスとユウヤは少ししか液体はかかっていない。

 勝敗の判断基準はわからないが、見た目だと未奈のチームが勝っているようだ。

「この部屋に入ってもいいのよね?」

 七菜が、確認する。

「ハイ、入ってください。すぐに、着替えと食事を用意します」

 ルーが言うと、七菜が部屋に入る。

 春馬たちも、部屋に入った。

『絶体絶命ゲーム16 もどれ春馬!ライバルたちが奈落に集結!!』につづく


Ⅲ区への昇格か、それとも、元の場所にもどるのかを賭けたゲームが始まった!
春馬の本当の気持ちはどこに? 亜久斗がやってきた理由は?
ぜひ、本でたしかめてね!


書籍情報

〈奈落編〉の完結となる最新16巻は、4月9日(水)発売予定!


作: 藤 ダリオ カバー絵: さいね 挿絵: チヨ丸

定価
836円(本体760円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323347

紙の本を買う

電子書籍を買う


その他の連載はこちらからチェック!▼



この記事をシェアする

ページトップへ戻る