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4 瀬々兄弟、あばれる!
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「敗者復活戦で負けたうさ晴らしにきたぞ!」
大器はそう言うと、となりにいた晩成といっしょにウォーターガンをかまえる。
「ルー、これはどういうことだ?」
春馬が聞いた。
「いきなりだけど、『絶体絶命ゲーム』の第1ゲームです」
ルーの言葉に、ゲーム参加者たちはとまどう。
「……と言っても、まずはウォーミングアップです。瀬々兄弟のウォーターガンの謎の液体から逃げるという単純なものです。この先に10の個室があります。そこまで、逃げてください。謎の液体のかかった量の少ないチームが勝ちです」
「負けたら、なにか罰はあるの?」
未奈が質問した。
「罰はないけど、勝ったチームはあとのゲームで有利になります」
「敗者復活戦のあと、ルーが瀬々兄弟といっしょにレクリエーション・ルームから出ていったのは、この計画を指示するためだったんだな」
春馬が言うと、「計画の裏側まで話さないでくださいよ」とルーがおどける。
「おい、そろそろ、はじめさせてくれ!」
大器が言うと、ルーがうなずく。
「それでは、第1ゲーム、スタートです」
ゲーム参加者は、いっせいに建物の奥に走っていく。
「「パーティーだぜ!」」
大器と晩成は叫ぶと、ゲーム参加者にむけてウォーターガンを放つ。
「な、な、なに? いきなりゲームなの?」
とまどいながら走りだした栄太郎は、足がもつれて転んでしまう。
「ハイ、ジ・エンド!」
大器が、転んだ栄太郎にむかってウォーターガンを放つ。
ビチョ!
黒くてドロドロしたスライムのような液体が飛びだし、真正面から栄太郎にかかる。
「うわぁ! この液体、どろどろして気持ち悪いな。それに、くさいぞ!」
そう言いながら、栄太郎は鼻をおさえた。
「奥の部屋に着替えを用意してあるので、そこまで、逃げてください」
ルーに言われて、栄太郎は液体のついた服のまま走っていく。
大器と晩成はウォーターガンを放ちながら、ほかの参加者を追いかける。
ゲーム参加者たちは、うす暗い中をばらばらに走っていく。
「春馬、なにを考えているの?」
走りながら聞いてきた未奈に、春馬はぶっきらぼうに答える。
春馬は、未奈と視線を合わせずにこたえた。
「ぼくは、秀介といっしょにいたいだけだ。未奈、このゲームには、ぼくが勝つよ」
「あたしも負けないわ」
未奈が言いかえした。
「みんな、地面がぬかるんでるところがあるから、気をつけて」
前を走っていたユウヤが言った。
「本当だ、走りにくいな」
春馬も、ぬかるみを走る。
「うわぁ、マジ!」
七菜が、ぬかるんだ地面に足をとられて派手に転んだ。
「七菜、ご愁傷様!」
晩成が転んだ七菜にむかって、ウォーターガンを放つ。
「うわぁぁぁぁぁぁ……」
七菜も、どろどろの液体をかけられた。
みんなが逃げまわる中、蘭々だけは柱のかげにかくれている。そして、
「攻撃は最大の防御なり!」
蘭々は、柱のかげから飛び出ていくと、大器にむかって走っていく。
「おもしれぇ! くさい液体をぶっかけてやる!」
大器が、蘭々にむけてウォーターガンを放つ。
蘭々は、俊敏な動きで液体をよける。
「すばしっこいやつだな!」
大器が、くやしそうに言った。
「瀬々大器ごときが、スピードでわたしに勝とうなんて、10万年早いのよ!」
蘭々が、大器に襲いかかろうとする。
ド————ン!
その瞬間、横から走ってきたルーが、蘭々を蹴りたおした。
「————ごめんなさい、参加者からの攻撃は、なしのルールなのよ。言い忘れていました」
ルーが、あやまる。
「蘭々、ジ・エンド!」
大器が、蹴りたおされた蘭々にむけてウォーターガンを放った。
「オエッ……。なによ、この液体! くさくて、どろどろしていてチョーキモイ!」
どろどろの液体にまみれた蘭々が、泣きそうな声で言った。
晩成は走りながら、今度は未奈にウォーターガンを放つ。
未奈の背中に、どろどろの液体がかかる。
「うわぁ! くさい!」と未奈。
大器は、逃げる鏡一にむけてウォーターガンを放つ。
どろどろの液体が、鏡一にも命中する。
「うわぁ、どろどろで気持ち悪いなぁ……」と鏡一。
春馬は、うす暗い中をひたすら走っていた。
「あれは……」
少し前を、亜久斗が走っている。
晩成が亜久斗を追いかけているのが見える。
うす暗い先に、部屋のドアがある。
「あそこが、部屋だな。……えっ!」
全力で走っていた春馬だが、いきなり、足下の地面が消えた。
ドン!
「これって、落とし穴もあったのか!?」
春馬の落ちた穴は、深さは1メートルほどで、はいあがることはできるが……。
大器が、穴のそばに走ってくる。
「春馬、残念だったな。ジ・エンドだ!」
大器がそう言って、春馬にむけてウォーターガンを放つ。
どろどろの液体が、春馬にかかる。
「うわぁ、くさい!」
そのとき、亜久斗を追いかけていた晩成が、大器のもとにやってくる。
「どうした、晩成?」と大器。
「あと少しのところまで、亜久斗を追いつめたんだけど、弾切れだ。液体がなくなった」
晩成が、残念そうに言った。
「おれも、春馬にあびせたので終わりだ」
大器が言った。
「みなさん、お疲れさまです。瀬々大器、瀬々晩成のウォーターガンの液体がなくなったので、第1ゲームは終了します」
ルーが言うと、うす暗いホールに照明がともる。
ホールの奥に、ドアが10個並んでいる。
「同じタイプの部屋を1人1つ、全部で10室用意したので、部屋に入ってください」
ルーが言うと、柱のかげにかくれていたユウヤがやってきて質問する。
「第1ゲームの勝敗は、どうやって決めるんだ?」
「それは、部屋に入ってから発表します。みなさん、部屋に入ってください。特に、どろどろの液体をかけられた人は、くさいから、早く部屋に入ってください」
ルーが、鼻をおさえながら言った。
ゲーム参加者が、部屋の前に集まってくる。
春馬は、両チームの服装をちらりと見た。
未奈のチームは、未奈、栄太郎、鏡一はどろどろの液体まみれだが、亜久斗とメイサには、ほとんど液体はかかっていない。
春馬のチームは、春馬、七菜、蘭々は液体がかかっているが、アリスとユウヤは少ししか液体はかかっていない。
勝敗の判断基準はわからないが、見た目だと未奈のチームが勝っているようだ。
「この部屋に入ってもいいのよね?」
七菜が、確認する。
「ハイ、入ってください。すぐに、着替えと食事を用意します」
ルーが言うと、七菜が部屋に入る。
春馬たちも、部屋に入った。
『絶体絶命ゲーム16 もどれ春馬!ライバルたちが奈落に集結!!』につづく
Ⅲ区への昇格か、それとも、元の場所にもどるのかを賭けたゲームが始まった!
春馬の本当の気持ちはどこに? 亜久斗がやってきた理由は?
ぜひ、本でたしかめてね!
書籍情報
〈奈落編〉の完結となる最新16巻は、4月9日(水)発売予定!
- 【定価】
- 836円(本体760円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046323347
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