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17 勝負のゆくえは?
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パチッパチッパチッ……。
薪のはじける音が聞こえている。
レクリエーション・ルームの暖炉の前で、春馬、未奈、アリスは、休んでいた。
鏡一、瀬々兄弟、七菜は、退屈そうに部屋の中をうろうろしている。
ドアが開いて、蘭々が神妙な顔で入ってくる。
「それで、3回戦の結果はどうなるんだ?」
鏡一が聞いた。
「────代表に問い合わせたら、今回の『絶体絶命ゲーム』は中止だって……。3回戦の4人を危険な目にあわせたって、怒られちゃった」
蘭々が、口をとがらせて言った。
「当然よ。春馬になにかあったら、七菜がゆるさないんだから」
七菜が、むっとした顔で言った。
「春馬に、おまえは関係ないだろう」
鏡一が、七菜に言った。
「秀介の容態は、どうなんだ?」
春馬が、心配そうに聞いた。
「心配いらないわ。ユウヤたちがすぐに駆けつけてくれたから、凍傷もないみたい。ちょっと、体が冷えただけだって」
蘭々の言葉に、春馬はほっとする。
「あぁ、待たせたね」
そう言って、ユウヤが部屋に入ってくる。
「ユウヤ、どこにいってたんだ?」と鏡一が聞いた。
「ちょっと来客があったんです。まぁ、それはいいです」とユウヤは言葉をにごした。
「春馬と未奈は、これから、どうなるの?」
アリスが聞いた。
「それなんですが……。蘭々、3回戦の結果は、みんなに知らせましたか?」
ユウヤに聞かれて、蘭々は「まだよ」と答える。
「3回戦は、中止になったんでしょう」
未奈が聞いた。
「そうなんですけど、その前に『ギブアップ』をした者がいます。その者は、敗退です」
「ギブアップって、いったい、だれ……?」
アリスが聞いた。
「秀介よ」
蘭々が言うと、アリスはげせないという顔で聞きなおす。
「秀介って、なにかのまちがいじゃないの?」
「まちがいないわ」と蘭々。
「雪山の中で、意識がもうろうとして、ギブアップしたのかな?」
鏡一が言うと、ユウヤが首を横にふる。
「いや、そうじゃないです。秀介に確認したら、自分の意志で『ギブアップ』をタップしたと言っていました」
「そんな……秀介はどんなことがあっても、ここにいると言っていたのに……」
アリスが、信じられないという顔で言った。
「おそらく、ぼくたちだ……」
春馬が思いつめた顔で言った。
「どういうことだ?」
鏡一が、聞いた。
「秀介は、ぼくたちを助けるために、『ギブアップ』をタップして、助けを呼んだんだ」
春馬が言うと、鏡一が苦笑いして言う。
「秀介らしいな。あいつはなんだかんだで、友だち思いなんだな」
「……春馬のせいよ。春馬がきたせいで、秀介のこころざしが絶たれるかもしれないのよ。それって、本当の友だちがやること!?」
アリスが感情をあらわに言うと、春馬は返す言葉が見つからない。
「そうじゃないな。これくらいのことで絶たれるようなこころざしだとしたら、それは本物のこころざしじゃないよ」
鏡一が、おだやかな口調で言った。
「……お取込み中、悪いんだけど、このあとはどうするの? 春馬と未奈を帰らせるの?」
七菜が、つまらなそうに聞いた。
「うん、それなんだけど……」
ユウヤがそこまで言って、腕組みをする。
「……ぼく、ここに残るよ」
春馬が、とうとつに言った。
「えっ!? 春馬、今、なんて……?」
未奈が聞くと、春馬は決意した顔で言う。
「ぼくは、ここに残る。……未奈、ごめん。悪いけど、1人で帰ってくれ」
「そんな……」
未奈はぼうぜんとする。
長い沈黙が降りてくる。
「……春馬が残りたいと言っても、未奈は納得しないだろう」
鏡一が言うと、未奈がうなずく。
「それなら、リセットして、もう一度やるというのはどうでしょう?」
ユウヤが聞くと、未奈が首をかしげながら「なにをやるの?」と聞きかえした。
「当然、『絶体絶命ゲーム』ですよ。未奈が勝って春馬を連れて帰るか、未奈が1人で帰るかを、ゲームで決めるんです」
ユウヤが笑顔で言うと、蘭々が不満そうな顔をする。
「待って、『絶体絶命ゲーム』をやると言っても、あたし1人だし……」
未奈が言うと、ユウヤが「いいことがあります!」となにかを思いだす。
「春馬と未奈を訪ねて、来客があったんです」
ユウヤの言葉に、鏡一が驚いて質問する。
「来客って、春馬と未奈を訪ねて、奈落まできたのか?」
「そうなんです。Ⅰ区の解散のドタバタにまぎれてきたらしいですね」
「Ⅰ区の解散があっても、ここまでくるのは難しいだろう?」と鏡一。
「それが、平気な顔でここにやってきたんです。今、客室で休んでもらっているんですけど……。彼らなら、未奈に協力してくれるかもしれません……」
ユウヤが言ったとき、ドアが開いた。
「未奈、また『絶体絶命ゲーム』をやっているの?」
ドアの外にいたのは────金髪に左の瞳がコバルトブルー、右の瞳が金色がかった茶色のオッドアイ、聖マリーナ学園の永瀬メイサだ。
「メイサ! どうしてここに!?」
未奈が驚く。
メイサのうしろから、春馬と未奈の同級生の花宮栄太郎が顔を出す。
「ぼくが、春馬と未奈が『奈落』にいったと教えたんだ」
栄太郎が言った。
「あっ……!」
春馬は、メイサと栄太郎のうしろからあらわれた人物を見て、目を疑った。
武蔵野市立境中学の三国亜久斗だ。
「なにか、おもしろいことをやっているようだな」
亜久斗が言った。
「来客って、この3人なの?」
七菜が聞くと、「そうです」とユウヤが言った。
「なるほど、春馬と未奈のお友だちか……」
鏡一が、半笑いで言った。
「未奈と来客3人、それと今回のゲームで敗退していない、ぼく、春馬、アリスのチームで、『絶体絶命ゲーム』をやるんです」
ユウヤが言うと、蘭々が不機嫌そうな顔で聞く。
「また、勝手に『絶体絶命ゲーム』をやろうとしてる……」
「いや、今回は事前に、代表に問い合わせておいたよ」とユウヤ。
「代表は、なんて言ってたの?」
蘭々の質問に、ユウヤが答える。
「『絶体絶命ゲーム』をやる許可をもらったよ」
「でも、ユウヤのチームは1人少ないけど、いいの?」
蘭々が、不安そうに聞いた。
「Ⅲ区から1人、レンタルさせてくれた。……蘭々が、ぼくたちのチームだ」
ユウヤが言うと、鏡一が愉快そうに拍手をする。
「いいね。おもしろそうだ。未奈と3人の来客チーム対『奈落』Ⅱ区とⅢ区と春馬の混合チームだ。おれは高みの見物をさせてもらうよ」
鏡一が言うと、七菜や瀬々兄弟もうなずく。
「春馬と対決できるなら、ここまできたかいがあったな」
亜久斗が、そっけなく言った。
ここまでの話が『絶体絶命ゲーム⑮ 天国か地獄か!?奈落Ⅱ区のたくらみ』に入っているよ!
奈落に現れた、亜久斗、メイサ、そして栄太郎。3人は、どうしてここへ――?
そして、「奈落に残る」と言いだした春馬の真意は!?
このつづきは、4月9日発売の『絶体絶命ゲーム⑯ もどれ春馬!ライバルたちが奈落に集結!!』で読んでね。
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書籍情報
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- 814円(本体740円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046322906
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- 836円(本体760円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046323347
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