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ものがたり

『絶体絶命ゲーム』〈奈落編〉14・15巻 2冊無料ためし読み 第6回

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17 勝負のゆくえは?

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パチッパチッパチッ……。

 薪のはじける音が聞こえている。

 レクリエーション・ルームの暖炉の前で、春馬、未奈、アリスは、休んでいた。

 鏡一、瀬々兄弟、七菜は、退屈そうに部屋の中をうろうろしている。

 ドアが開いて、蘭々が神妙な顔で入ってくる。

「それで、3回戦の結果はどうなるんだ?」

 鏡一が聞いた。

「────代表に問い合わせたら、今回の『絶体絶命ゲーム』は中止だって……。3回戦の4人を危険な目にあわせたって、怒られちゃった」

 蘭々が、口をとがらせて言った。

「当然よ。春馬になにかあったら、七菜がゆるさないんだから」

 七菜が、むっとした顔で言った。

「春馬に、おまえは関係ないだろう」

 鏡一が、七菜に言った。

「秀介の容態は、どうなんだ?」

 春馬が、心配そうに聞いた。

「心配いらないわ。ユウヤたちがすぐに駆けつけてくれたから、凍傷もないみたい。ちょっと、体が冷えただけだって」

 蘭々の言葉に、春馬はほっとする。

「あぁ、待たせたね」

 そう言って、ユウヤが部屋に入ってくる。

「ユウヤ、どこにいってたんだ?」と鏡一が聞いた。

「ちょっと来客があったんです。まぁ、それはいいです」とユウヤは言葉をにごした。

「春馬と未奈は、これから、どうなるの?」

 アリスが聞いた。

「それなんですが……。蘭々、3回戦の結果は、みんなに知らせましたか?」

 ユウヤに聞かれて、蘭々は「まだよ」と答える。

「3回戦は、中止になったんでしょう」

 未奈が聞いた。

「そうなんですけど、その前に『ギブアップ』をした者がいます。その者は、敗退です」

「ギブアップって、いったい、だれ……?」

 アリスが聞いた。

「秀介よ」

 蘭々が言うと、アリスはげせないという顔で聞きなおす。

「秀介って、なにかのまちがいじゃないの?」

「まちがいないわ」と蘭々。

「雪山の中で、意識がもうろうとして、ギブアップしたのかな?」

 鏡一が言うと、ユウヤが首を横にふる。

「いや、そうじゃないです。秀介に確認したら、自分の意志で『ギブアップ』をタップしたと言っていました」

「そんな……秀介はどんなことがあっても、ここにいると言っていたのに……」

 アリスが、信じられないという顔で言った。

「おそらく、ぼくたちだ……」

 春馬が思いつめた顔で言った。

「どういうことだ?」

 鏡一が、聞いた。

「秀介は、ぼくたちを助けるために、『ギブアップ』をタップして、助けを呼んだんだ」

 春馬が言うと、鏡一が苦笑いして言う。

「秀介らしいな。あいつはなんだかんだで、友だち思いなんだな」

「……春馬のせいよ。春馬がきたせいで、秀介のこころざしが絶たれるかもしれないのよ。それって、本当の友だちがやること!?」

 アリスが感情をあらわに言うと、春馬は返す言葉が見つからない。

「そうじゃないな。これくらいのことで絶たれるようなこころざしだとしたら、それは本物のこころざしじゃないよ」

 鏡一が、おだやかな口調で言った。

「……お取込み中、悪いんだけど、このあとはどうするの? 春馬と未奈を帰らせるの?」

 七菜が、つまらなそうに聞いた。

「うん、それなんだけど……」

 ユウヤがそこまで言って、腕組みをする。

「……ぼく、ここに残るよ」

 春馬が、とうとつに言った。

「えっ!? 春馬、今、なんて……?」

 未奈が聞くと、春馬は決意した顔で言う。

「ぼくは、ここに残る。……未奈、ごめん。悪いけど、1人で帰ってくれ」

「そんな……」

 未奈はぼうぜんとする。

 長い沈黙が降りてくる。

「……春馬が残りたいと言っても、未奈は納得しないだろう」

 鏡一が言うと、未奈がうなずく。

「それなら、リセットして、もう一度やるというのはどうでしょう?」

 ユウヤが聞くと、未奈が首をかしげながら「なにをやるの?」と聞きかえした。

「当然、『絶体絶命ゲーム』ですよ。未奈が勝って春馬を連れて帰るか、未奈が1人で帰るかを、ゲームで決めるんです」

 ユウヤが笑顔で言うと、蘭々が不満そうな顔をする。

「待って、『絶体絶命ゲーム』をやると言っても、あたし1人だし……」

 未奈が言うと、ユウヤが「いいことがあります!」となにかを思いだす。

「春馬と未奈を訪ねて、来客があったんです」

 ユウヤの言葉に、鏡一が驚いて質問する。

「来客って、春馬と未奈を訪ねて、奈落まできたのか?」

「そうなんです。Ⅰ区の解散のドタバタにまぎれてきたらしいですね」

「Ⅰ区の解散があっても、ここまでくるのは難しいだろう?」と鏡一。

「それが、平気な顔でここにやってきたんです。今、客室で休んでもらっているんですけど……。彼らなら、未奈に協力してくれるかもしれません……」

 ユウヤが言ったとき、ドアが開いた。

「未奈、また『絶体絶命ゲーム』をやっているの?」

 ドアの外にいたのは────金髪に左の瞳がコバルトブルー、右の瞳が金色がかった茶色のオッドアイ、聖マリーナ学園の永瀬メイサだ。

「メイサ! どうしてここに!?」

 未奈が驚く。

 メイサのうしろから、春馬と未奈の同級生の花宮栄太郎が顔を出す。

「ぼくが、春馬と未奈が『奈落』にいったと教えたんだ」

 栄太郎が言った。

「あっ……!」

 春馬は、メイサと栄太郎のうしろからあらわれた人物を見て、目を疑った。

 武蔵野市立境中学の三国亜久斗だ。

「なにか、おもしろいことをやっているようだな」

 亜久斗が言った。

「来客って、この3人なの?」

 七菜が聞くと、「そうです」とユウヤが言った。

「なるほど、春馬と未奈のお友だちか……」

 鏡一が、半笑いで言った。

「未奈と来客3人、それと今回のゲームで敗退していない、ぼく、春馬、アリスのチームで、『絶体絶命ゲーム』をやるんです」

 ユウヤが言うと、蘭々が不機嫌そうな顔で聞く。

「また、勝手に『絶体絶命ゲーム』をやろうとしてる……」

「いや、今回は事前に、代表に問い合わせておいたよ」とユウヤ。

「代表は、なんて言ってたの?」

 蘭々の質問に、ユウヤが答える。

「『絶体絶命ゲーム』をやる許可をもらったよ」

「でも、ユウヤのチームは1人少ないけど、いいの?」

 蘭々が、不安そうに聞いた。

「Ⅲ区から1人、レンタルさせてくれた。……蘭々が、ぼくたちのチームだ」

 ユウヤが言うと、鏡一が愉快そうに拍手をする。

「いいね。おもしろそうだ。未奈と3人の来客チーム対『奈落』Ⅱ区とⅢ区と春馬の混合チームだ。おれは高みの見物をさせてもらうよ」

 鏡一が言うと、七菜や瀬々兄弟もうなずく。

「春馬と対決できるなら、ここまできたかいがあったな」

 亜久斗が、そっけなく言った。


ここまでの話が『絶体絶命ゲーム⑮ 天国か地獄か!?奈落Ⅱ区のたくらみ』に入っているよ!

奈落に現れた、亜久斗、メイサ、そして栄太郎。3人は、どうしてここへ――?
そして、「奈落に残る」と言いだした春馬の真意は!?
このつづきは、4月9日発売の『絶体絶命ゲーム⑯ もどれ春馬!ライバルたちが奈落に集結!!』で読んでね。
そんな新刊『絶体絶命ゲーム⑯』が、4月5日(土)からヨメルバでためし読みできるよ。
どこよりも早く読めるからぜったいチェックしてね!

書籍情報


作: 藤 ダリオ 絵: さいね

定価
814円(本体740円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322555

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作: 藤 ダリオ カバー絵: さいね 挿絵: チヨ丸

定価
814円(本体740円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322906

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〈奈落編〉の完結となる最新16巻は、4月9日(水)発売予定!


作: 藤 ダリオ カバー絵: さいね 挿絵: チヨ丸

定価
836円(本体760円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323347

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