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ものがたり

『絶体絶命ゲーム』〈奈落編〉14・15巻 2冊無料ためし読み 第4回


恐怖に支配された「子どもたちの地獄」――〈奈落〉。その地に送りこまれた春馬と未奈。
しかし春馬は、わざとゲームに負けて、ここにきたのだ、行方不明の親友を探して――。
〈奈落編〉の完結となる16巻の発売前に、一気読み! 「絶体絶命ゲーム」でしか味わえない、圧倒的なおどろきとスリル。大人気シリーズの最先端を、この機会にどうぞ!


【これまでのお話は…】
やっとのことで「奈落Ⅰ区」をぬけ、「Ⅱ区」へやってきた春馬と未奈。
廃墟の工場のような建物の前に立って、2人を待っていたのは、あの秀介だった!
しかし、親友の春馬を見ても、秀介は口をきかないまま、行ってしまい――!?
秀介はなぜ、ここにいるのか? 春馬はそのナゾにせまっていく!

 





※これまでのお話はコチラから

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0    待ちかまえる7人

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パチッパチッパチッ……

 暖炉から、薪のはじける音が聞こえている。

 教室よりもひとまわり広い部屋に、おしゃれな応接セットがおかれている。

 壁に設置された大きなモニターに、林の中を歩く武藤春馬と滝沢未奈が映っている。

「……いいですね。この2人は、優秀です。なかなかの逸材ですよ」

 日焼けした肌に端整な顔立ちの青年、甲斐ユウヤがモニターを見ながら言った。

「ユウヤは、春馬と未奈に、Ⅱ区にきてほしいのか?」

 長い黒髪に白い肌の少年、吉良鏡一が聞いた。

 ユウヤと鏡一は、『奈落』Ⅰ区と色違いのポンチョのような服をはおり、中にはイギリスの近衛兵の制服のような、Ⅱ区の制服を着ている。

「そうですね。今、Ⅱ区に所属しているのは7人。あと2人くらいは、いてもいいですね」

「あの2人が仲間か……」

 鏡一が、モニターの未奈をじっと見る。

「……滝沢未奈か。ここには、いないタイプだな」

「どうしたんです、鏡一は彼女が気になるんですか?」

「あぁ、そうだな。頭がよくて、度胸があって、かわいい。すごく気になるよ。春馬と付きあっているのかな?」

「それはわかりませんが、2人のきずなはかたそうですよ」

 ユウヤが答えると、鏡一が楽しそうな顔をする。

「多分、付きあってないな。おれ、未奈と付きあっちゃおうかな」

 鏡一の言葉に、ユウヤは顔をくもらせる。

「ここは交際禁止ではありませんが、強引なのはダメですよ」

「わかっているよ。女子には、やさしくしないとね」

「……それなら、七菜が春馬をもーらーおう」

 2人の話を聞いていた大きな瞳に七色の髪の少女、林田七菜が言った。

 七菜はメイド服を着ている。

「トラブルメーカーは、おとなしくしておいてくれ」

 鏡一が言うと、七菜が眉をひそめて言う。

「七菜はトラブルメーカーじゃないわ。自由奔放なだけよ」

「それで、七色の髪にして、ここの制服を着ないで、メイド服を着ているのか」

 鏡一は、あきれている。

「そんなことより、瀬々兄弟がきてないじゃない」

 七菜が、口をとがらせて言った。

「あの兄弟も、おとなしく言うことを聞くタイプじゃないですから……」

 ユウヤが、ため息まじりに言った。

「『あの兄弟も』の『も』って、もしかして、七菜もってこと?」

 七菜に問いつめられて、ユウヤが苦笑いする。

「あぁ、ユウヤまで、ひどい!」

「ごめんなさい。悪い意味じゃないんですよ」

 そう言ったユウヤを、七菜がにらみつける。

「どう考えても、悪い意味じゃない。まぁ、いいわ。そんなことより、重要なことがあるわ」

「……重要なことって、春馬のことですか?」

 ユウヤが聞くと、七菜は機嫌をなおして言う。

「そうよ。七菜は、絶対、春馬をゲットしてやる。……ロックオン!」

「はぁぁぁぁ……」

 聞こえよがしのあくびが聞こえてきて、七菜が目をむける。

 茶色の髪に涼しげな瞳の美人、Ⅱ区の制服を着た藤木アリスが大きな口をあけている。

「なーに、アリス? 七菜に、なにか言いたいことでもある?」

「あなたたちがだれと付きあってもいいけど、わたしたちがここにいる目的は忘れないでよ」

 アリスが、しっかりした口調で言った。

「わかってますよ、優等生のアリスちゃん」

 七菜が挑発するが、アリスは相手にしないでユウヤに聞く。

「あの2人、Ⅰ区から出てこられたからって、簡単にⅡ区に入らせていいの?」

「そうですね。簡単なテストくらいは必要ですかね」

「はーい。その役目は、七菜にやらせて。春馬と未奈をリアルで見てみたい」

 七菜が、手をあげて言った。

「まぁ、いいでしょう」

 ユウヤが答えると、七菜が部屋を出ていこうとして立ちどまる。

「あれ、秀介って、ここにいなかった?」

「さっき、出ていったよ。どうせ、春馬と未奈が勝つよって、退屈そうな顔で言ってた」

 鏡一が言うと、七菜が首をかしげる。

「……でも、優勝したのは宝来有紀じゃない」

「春馬と未奈は、いっしょに戦った平野康明たちを救うために、わざと優勝しなかったんです。そういうところも、ぼくが気に入ったところです」

 ユウヤはそう言うと、モニターの春馬と未奈をじっと見る。

「あの2人、本当に仲間になってほしいですね」


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