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ものがたり

『絶体絶命ゲーム』〈奈落編〉14・15巻 2冊無料ためし読み 第3回


恐怖に支配された「子どもたちの地獄」――〈奈落〉。その地に送りこまれた春馬と未奈。
しかし春馬は、わざとゲームに負けて、ここにきたのだ、行方不明の親友を探して――。
〈奈落編〉の完結となる16巻の発売前に、一気読み! 「絶体絶命ゲーム」でしか味わえない、圧倒的なおどろきとスリル。大人気シリーズの最先端を、この機会にどうぞ!


【これまでのお話は…】
「奈落Ⅰ区」で、ボスたちの言いなりに働かされている少年少女は、「そのチャンスがあったのに、ゲームに参加することをあきらめてしまった者たち」。
モニターごしに彼らが、春馬と未奈のすがたを見まもる中、ゲームは終盤へ――!

 





※これまでのお話はコチラから

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12    ドアを通る条件は?

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 春馬と未奈は、間一髪で第1の部屋を出た。

 目の前に、雪のつもった平原の景色が広がっているが、なにか違和感がある。

「……あれ、建物の外に出たのかな?」

 未奈が、首をひねりながら聞いた。

「いや、これは映像だな」

 春馬が、あたりを見て言った。

 体育館ほどの広さの部屋の壁に、天井からつるされた数台の映写機が、冬の平原を映している。

 壁にある数台の監視カメラがゲーム参加者の行動を撮っている。

「おい、我雄はどうした?」

 先にきていたクジトラが、春馬に聞いた。

「それなんだけど、ぼくにもよくわからないんだ。虹子を追いかけていったあと、ぼうっと床に座りこんで、倒れてしまったんだ。それで、しかたなくおいてきた……」

「……そうか。ゲームのプレッシャーに押しつぶされたんだろう。しょうがないやつだ」

 クジトラは、なぜか納得する。

『第1の部屋から出られた7人、おめでとう。脱落者は、入来我雄やな』

 ぺ・天使の声が、壁に設置されたスピーカーから聞こえてくる。

「我雄はどうなったんだ? 生きているんだろうな!」

 クジトラが、大きな声で聞いた。

『他人を心配する余裕は、なかばい。……今、第2の部屋にいくドアが開いたばい』

 ぺ・天使が言うと、平原の先にある山小屋のドアが開いた。

『いそぐばい。次の部屋に入れるとは、先に着いた……』

 クジトラはぺ・天使の話の途中で、山小屋にむかって駆けていく。

 有紀とエマもあとを追うように駆けていく。

 春馬、未奈は出遅れたが、さらに遅れて康明が走る。

 最後に、虹子が、まったくあせる様子もなく、歩いていく。

 先頭を走っていたクジトラは、ドアの手前で危険を感じて立ちどまった。

 うしろからきたエマは、勢いあまってドアから中に入るが……。

ビリビリビリ!

 電気ショックを受けたエマは、はね返されるようにして床を転がった。

「な、な、な、なによ、これ! どうなっているのよ!」

 エマが、体をしびれさせながら言った。

『話は、最後まで聞くばい。……次の部屋に入れるとは、先に着いた……順番だけでは、決まらないばい。ハハハハハハ……』

 ぺ・天使の笑い声が、スピーカーから聞こえてくる。

 春馬たちも、ドアの前にやってくる。

「ここに入るには、条件があるみたい」

 未奈が、山小屋の壁に設置されているモニターを見て言った。


薪を持っていない者は、山小屋に入れません。


「ここに入るには、薪が必要のようだな」

 春馬が言うと、みんなが視線をめぐらす。

「薪があればいいのね」

 エマがそう言って、部屋の中を歩きまわる。

 ほかの者も、薪をさがして歩きまわる。

 しかし、薪はどこにもない。

『次に進む条件が、わかったみたいやね。ちなみに、そこからの脱出の時間制限はなしばい』

 スピーカーから、ぺ・天使の声が聞こえてくる。

「薪なんて、どこにあるんだよ」

 クジトラが、大声で聞いた。

『それは、これから出るばい。……みんな、気をつけるばい』

「気をつけるって、なによ?」と未奈。

『薪が出るばい!』

 ぺ・天使の声で、7人は身構える。

 天井から、長さ50センチほどの薪が、バラバラと数本落ちてくる。

 7人は、落ちてきた薪をひろおうとする。

「これは、ラッキーだぞ」

 康明のすぐ目の前に、薪が落ちてきた。

「次に進める」

 薪をひろおうとした康明だが、駆けてきたエマに突き飛ばされる。

「うわぁ!」

「邪魔だよ!」

 エマが薪をひろって、これ見よがしに康明の目の前につき出す。

「それは、ぼくのだ!」

 康明が言うと、エマが薪を引っこめてにらみつける。

「ほしいなら、力ずくでとってみな」

「そ、それは……」

「どうなの? わたしと戦う?」

 エマが薪を持ったまま、ファイティングポーズをとる。

「い、いや……」

 康明は小さな声で言うと、うつむいてしまう。

「そう、それでいいのよ。薪、ありがとう」

 エマは薪を手にとると、ドアのほうに歩いていく。

 康明は、それをくやしそうに見ている。

「このままじゃダメだ。……ぼくだって……、やればできるはずだ……」

 康明は、エマにむかって駆けだす。

「その薪は、ぼくのだ!」

 康明が、エマに襲いかかろうとする。

 すばやく振りかえったエマは、薪をふりあげる。

「えっ……!」

 康明は驚いて、その場に尻もちをつく。

「争う必要はない。薪は全員の分あるんだ!」

 春馬が言うと、康明が聞く。

「なに、なに? どういうこと?」

「薪は、7本あるんだ」

 春馬に言われて、康明はきょろきょろとまわりを見る。

 クジトラ、未奈、有紀、虹子、それぞれ薪を持っている。

 そして、春馬は2本の薪を持っている。

「本当だ……」と康明。

「ぺ・天使はぼくたちをあおって、戦わせるつもりだったんだ」

 春馬が、康明に薪を1本渡す。

「これで、全員、薪を持った」

「ありがとう」

 康明が、薪を手にして言った。

「だれも脱落しないのか、つまらないな」

 虹子がつぶやきながら、開いたドアから中に入ろうとする。

 ビリビリビリ!

「うわぁ、うわぁ、うわぁ……。な、な、な、なんだよ!」

 電気ショックで体をしびれさせながら、虹子が言った。

「おかしいな。どうして通れないんだ?」

 春馬が、ドアの前にいく。

「……ねぇ、これ。条件が追加されているよ」

 先にドアの前にきた未奈が、モニターを見て言った。


薪を持っていない者は、山小屋に入れません。

薪は、両手に1本ずつ持っていなければなりません。

1本の薪は、2人まで持つことができます。


「薪は、両手に1本ずつ……。つまり、1人2本必要ということか」

 薪を持ってやってきた、クジトラが言った。

「ここにある薪は、全部で7本。1人2本が必要ということは、3人しか通れないのよ。4人はここで脱落ね。だれが脱落するかは、戦って決めましょう!」

 エマはそう言うと、ファイティングポーズをとる。

 それを見て、未奈があきれる。

「あぁ、もう。……テストのとき、問題は最後まで読むように言われなかったの?」

「言われないわ。だって、テストなんか昼寝の時間よ」

 エマが、開きなおって言った。

「しょうがないな。山小屋に入る条件の最後に、『1本の薪は、2人まで持つことができます。』って、書いてあるでしょう」

 未奈が言うと、エマは首をかしげる。

「だからなに?」

「つまり、2人1組になって、前の人が左右の手で1本ずつ薪を持って、うしろの人が同じようにその薪を持てば、2本の薪で2人がドアを通れるのよ」

 未奈の説明に、エマが納得する。

「あぁ、そういうこと。それで、ここでは何人が脱落するの?」

 横で2人のやり取りを聞いていた、クジトラが言う。

「簡単な計算だよ。薪が2本で2人がここから出られる。4本で4人、6本で6人だ。ここにいるのは、全部で7人だ」

「つまり、脱落は1人ね」

 エマが言うと、その場に緊張が走る。


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