―――――――――――――――――――
3 扉を開けろ!
―――――――――――――――――――
春馬と未奈は門をくぐって、大きな木製の扉の前にやってくる。
しかし、扉は閉まっている。
「ここを開けてくれ!」
叫びながら、春馬が押しても引いても、扉はぴくりともしない。
「どうなっているんだ?」
春馬は困惑する。
「開けてください!」
ドンドンドン!
未奈が扉をたたくと、カタカタカタ……と音がする。
鎖が巻きあげられて、粗末なはね橋が上がっていく。
「扉をたたくと、はね橋が上がる仕組みだったのか?」と春馬。
オオカミたちは堀のきわまでやってくるが、橋が上がっていて、こちらにはこられない。
「……間一髪で助かったみたいね」
未奈が、ほっとした表情で言った。
「いや、建物に入るまでは、安心できないよ」
春馬が言うと、扉を見ていた未奈がなにかに気がつく。
「……ここになにか描かれているわ」
扉の表面に、文字や図形が描かれているが、汚れていてよく見えない。
「いいものがあるよ」
春馬は、扉の横においてあった柄の長いほうきを手にする。
「ちょっと掃除させてもらうよ」
春馬は、ほうきで扉の汚れをおとした。
城に入りたかったら、この問題を解きなさい。
問題。
一筆書きで、横にある9つの点をすべて通るように直線でつなぎなさい。
線の折れ曲がった回数が少ないときは、城に入れます。
線の折れ曲がった回数が多いときは、はね橋が下ります。
なにもしなくても、3分後、はね橋が下ります。
直線を描くときは、木箱にはいっているインクを使うこと。
問題の横に、直径5ミリの黒丸が7センチ間隔で、縦に3列、横に3段ならんでいる。
「これって、9点を一筆書きする、有名な問題よね」
未奈が、拍子抜けした顔で言った。
「そうだけど、曲がる回数が指定されていないのは、どうしてかな?」
春馬が、首をかしげる。
「折れ曲がる回数の正解は、3回だったわよね」
未奈が言うと、春馬が解説する。
「うん、そうだ。右上の点から中央の点を通って左下の点、そこで折れて左の中の点を通って左上の点を通りこしたところで折れて、中央の上の点から右の中点を通りこして、そこで折れて右下の点を通って中央の下の点を通るんだ」
「こういうのはどうかな?」
未奈は指で、扉に描かれた9つの点をなぞる。
「これなら、折れ曲がる回数は2回よ」
「うん、いいアイディアだ」
そう言った春馬だが、まだ納得していなかった。
「インクは、木箱の中にあるって書いてあったわね」
未奈がさがすと、扉の下に木箱がある。
中には、細い筆とインクのボトルがはいっている。
「描くわよ!」
未奈が筆を持ったとき、春馬がとめる。
「いや、待って!」
「どうしたの?」
「なにか、いやな予感がするんだ」
春馬はそう言って、じっと考える。
カタカタカタ……と音がして、巻きあげられた鎖が下ろされていく。
はね橋が、ゆっくりと下りていく。
「3分たったみたい。……描くわよ!」
未奈が筆の先にインクをつけようとしたとき、春馬がひらめいた。
「これは、ひっかけ問題だよ!」
「えっ、どういうこと?」
「問題文に、インクの指定はあるけど、筆の指定はない」
「そうだけど……。もう、時間はないわよ」
はね橋は、どんどん下りていく。
堀のむこうで、オオカミたちが待ちかまえている。
「筆がインクといっしょに木箱にはいっていたら、それを使うものだと思いこむ。でも、ほかのものでもいいんだ。例えば……」
春馬は、扉の横においてあったほうきを手にとる。
「そうか。そういうことね!」
未奈が、春馬の持ったほうきの穂先にインクをかける。
数匹のオオカミがはね橋を駆けて、春馬と未奈にむかってくる。
「こうすれば、折れ曲がりの回数は、0だ!」
春馬は、ほうきで太い1本の線を横に引いた。
その線は、9つの点の上を通っている。
瞬間────春馬と未奈の立っている床が、開いた。