つばさ文庫7月刊『四つ子ぐらし(23)大ピンチ!? ドキドキの参観日』発売直前! 大ピンチの始まりだった『四つ子ぐらし(22)出会いと別れの新学期』のラストシーンから、23巻の物語の始まりを、発売に先がけてためし読みで大公開!!
どこよりも早く、気になる展開をチェックしちゃおう!
四つ子たちの最大のヒミツ『姉妹四人だけでくらしている』ことが学校のみんなにバレちゃうかもしれない!? いったい、どうしたらいいの!!??
今回から、2026年7月8日発売予定の『四つ子ぐらし(23)大ピンチ!? ドキドキの参観日』を、発売日に先がけて読めちゃうよ。チェックしてね!
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先行ためし読み第2回
『ウワサを流したのは』
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とある、四月の、月曜日の朝。
『もうすぐ四月二十五日。私たち姉妹の誕生日だ!』
『誕生日は、どんなふうにすごそうかな? どんなケーキを食べようかな?』
って、ひそかにワクワクしていた私は、高いところからつきおとされたような気分になった。
「ウワサが広がっているんです。宮美家の四つ子ちゃんたちが、子どもだけでくらしているって」
登校してすぐ、校庭で、狩野菜々(かのう なな)さんっていう女の子から、そんなことを報告されたんだ。
「えっ…………!?」
姉妹は、おどろきで固まった。
ポニーテールにピンクの髪飾りの、宮美一花ちゃん。
ツインテールに赤い髪飾りの、宮美二鳥ちゃん。
三つ編みに水色の髪飾りの、私・宮美三風。
ハーフアップに紫色の髪飾りの、宮美四月ちゃん。
私たち四人は、顔も声もそっくりな、四つ子の四姉妹。
私たちは、国の、『中学生自立練習計画』の参加者で、自立の練習をするため、子ども四人だけでくらしているんだ。
そのことは、かぎられた人にしか伝えていない、私たちの重要なヒミツだ。
それなのに……。
『四つ子ちゃんたちが、子どもだけでくらしている』
そんなウワサが広がっているなんて。
「……本当、なんですか?」
狩野さんは、さらに声を落として問いかける。
どう答えよう?
頭は真っ白だ。
一花ちゃんは顔をこわばらせ、二鳥ちゃんは言葉を失い、四月ちゃんは青ざめている。
このままじゃ、私たち姉妹のヒミツが、学校のみんなにバレちゃうよ……!?
――と、思った瞬間。
「ああっ! わああっ――答えなくていいです! 困らせてすみません!!」
狩野さんが、いきおいよく、バッと頭を下げた。
「「「「へっ?」」」」
一花ちゃんも、二鳥ちゃんも、四月ちゃんも、そして私も、思わず目が点になる。
答えなくて、いいの?
「あぁっ、本当にすみません! わわわ、私ってば推しの皆さんを困らせるようなマネを――ごごご、ごめんなさい!」
早口で言って、再びペコペコ頭を下げる狩野さん。
なんだか、とんでもなく大あわてって感じだ。
それに、『推しの皆さん』って、なんのことだろう?
……あ、そっか。
一瞬疑問に思ったけど、すぐにわかった。
狩野さんは、あやめ中学の生徒で結成されている、四つ子ファンクラブ・花鳥風月のメンバー。
つまり、狩野さんの『推し』は、私たち四つ子ってことか……。
な、なんだかはずかしいな。
そう思ったとき、狩野さんが続けて言った。
「あのっ、答えてもらわなくてもいいんですけど、そういうウワサがあるのは本当でして……! そのウワサが大きくなってきてるので、私、四つ子の皆さんのことが心配でつい……!」
かなりあわてているけど、真剣な口調だ。
狩野さんは、私たち四つ子のことを、本当に心配してくれているんだね。
それがわかると、緊張が少しだけゆるんだ。
そして、
『今、ファンクラブの中で一体何が起こっているのか、たしかめて解決しなきゃ』
って、冷静な気持ちになれたんだ。
一花ちゃんも、落ちつきを取りもどしたようすで声をかける。
「狩野さん」
「ハイッ!」
「ああ、そんなにかしこまらないで。ウワサのこと、くわしく話を聞いていいかしら?」
「もちろんです!」
「ありがとう。それじゃ、目立たないよう、あっちの校舎裏のほうで――」
そうして、私たち四つ子と狩野さんの五人は、こそこそと、校舎裏へ移動したんだ。
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ひんやりとした日陰になっている校舎裏には、だれもいなかった。
私たちはさっそく輪になり、狩野さんから話を聞いた。
「ウワサの出どころは、四つ子ファンクラブ・花鳥風月の、堀口羽音(ほりぐち はのん)さんです。堀口さんは、二年五組で、私と同じクラスです」
「ああ、あの子」
一花ちゃんは知っているようすだ。
「頭の左右で髪をちょこっとだけ結んでる、声の高い子でしょ? 女子バスケ部の練習を、時々のぞきに来るのよ。『一花さんがんばってー!』って」
「そ、そうなんだ」
「一花は人気者やなあ」
私と二鳥ちゃんが感心すると、
「堀口さんは一花さん推しなので……」
と、気まずそうに狩野さんが答え、すぐに話を本筋にもどす。
「ええと、堀口さんは四つ子ちゃんのファンなので、いつも四つ子ちゃんの情報をあれこれ集めているんです。でも、『四つ子ちゃんのご両親を見たことがある』という人を、一人も見つけられなかったそうなんです。だから、『四つ子ちゃんは、お母さんやお父さんと離れてくらしているんじゃない? 子どもだけでくらしているのかも』って、一昨日くらいからファンクラブのグループメッセージで流しはじめて……そうしたら、グループメッセージはその話で持ちきりになって……」
なるほど……。
私は、苦い気持ちで息をついた。
一花ちゃんも二鳥ちゃんも四月ちゃんも、困ったような顔をしている。
『四つ子ちゃんのご両親を見たことがある』という人を、一人も見つけられなかったのは当たり前だ。
私たち、お母さんやお父さんと離れてくらしているどころか、会ったことすら一度もない。
お母さんの四ツ橋雅さんは、失踪していてゆくえがわからないし、お父さんにいたっては、顔も名前もわからないんだもの。
そのことは、ごく親しい友達以外にはナイショにしているんだ。
ややこしくて、重い話だし、説明するのもちょっぴり辛いし……。
それに何より、もし、たくさんの人に知られてしまったら、引かれたり、反対に注目されたりして、今までみたいに姉妹四人で平和にくらすことができなくなっちゃいそうだから。
だまっていると、狩野さんが続けた。
「私はファンクラブのみんなに、『そんなウワサを流すのはよくないよ。四つ子ちゃんは、ウワサのことを知ったらすごくイヤな気持ちになるよ。だからやめて』って伝えたんです」
「ありがとう。そんなウワサを流されるのは本当に困るわ。だって、私たちが危ない目にあうかもしれないもの。たとえば、『子どもだけでくらしているんだな』って思われたら、泥棒にねらわれやすくなったり――」
「あっ」
狩野さんが、一花ちゃんの指摘を受けて息をのんだ。
「そうですよね……! ウワサを止められなくて本当にごめんなさい。その……堀口さんは――というか、『知りたい派』の人たちは、私の注意をあんまり聞いてくれなかったんです」
「『知りたい派』?」
「なんやの? それ」
私と二鳥ちゃんが首をかしげると、「あ、すみません」と、狩野さんは説明を加えてくれた。
「四つ子ちゃんのファンクラブは、今、二つのグループに分かれているんです。ひとつは、『四つ子ちゃんのことならなんでも、なんとしても知りたい』という、『知りたい派』。もうひとつは、『四つ子ちゃんの学校生活を静かに見守ろう』という、『見守る派』です。私は見守る派で、堀口さんは、知りたい派のリーダーなんです」
ふんふん、と、私たち四つ子は同時にうなずく。
「見守る派の先輩たちが卒業して、新一年生が入会して、ファンクラブの人数が増えて……そうしたら、だんだん、四つ子ちゃんのことを、アイドルあつかいっていうか、まるで芸能人にするみたいにキャーキャー言う人が増えてきて……」
「つまり、様々な理由が重なり、知りたい派の勢力が増してきたということですね」
「そうなんです」
狩野さんは、四月ちゃんの言葉に、申し訳なさそうにうなずいて続けた。
「それに、知りたい派の人たちって、集団になると暴走しちゃうっていうか、人に迷惑がかかりそうなことでも、その場のノリでやってしまうことがあって……」
「なるほどなあ。『赤信号みんなで渡ればこわくない』やないけど――」
「ちょっとやそっとの注意じゃ、聞いてくれないのね」
二鳥ちゃんと一花ちゃんが、イヤそうに言った。
私と四月ちゃんも、つい顔を見合わせた。
はっきりとは言いにくいけど、正直、迷惑だな……。
「私、知りたい派が行きすぎたことをするのを止めたいんです。家族についてのウワサを流されたり、あれこれしつこく聞かれたりするのって、本当に辛いことだから……」
ぎゅっとこぶしをにぎってそう語る狩野さんの目は、とても真剣だ。
私たちの気持ちを、心からわかってくれているみたい。
……でも、なんだか、それだけじゃない気もして、私はかすかに引っかかった。
そんなとき、みんなを見回して、四月ちゃんが確認するように言った。
「まとめると、こうですね? 『ウワサは現在、ファンクラブ内のみで流れている』『堀口さんがウワサの発生源』『堀口さんは知りたい派のリーダー』『狩野さんは見守る派で、僕ら四つ子の味方』」
『僕ら四つ子の味方』という言葉を聞いて、狩野さんのほおが、パッと赤くそまる。
「そんなふうに言ってもらえて……私、うれしいです。その、私、よ、四つ子ちゃんのことが、ほんとにす、す……好きなので……っ!」
必死な感じで、せいいっぱい気持ちを伝えてくれた狩野さん。
今はそんな場合じゃないけど、やっぱり照れちゃうな。
狩野さん、ファンクラブに入っているだけあって、本当に私たち四つ子のことが好きなんだ。
私たちのことを一番に考えて、私たちの気持ちを、大切にしようとしてくれているんだね。
一花ちゃんはほほえんでいて、四月ちゃんはちょっぴりはずかしそう。
二鳥ちゃんは、ニカッと笑って力強く言う。
「うちらも味方がおってうれしい! 力を合わせて、なんとかしよ」
すると、みんなが、まじめな顔でうなずきあった。
少しだまったあと、一花ちゃんが考えを言う。
「注目が高まっている今、こっちがヘタにかくそうとすると、知りたい派の人たちがかえって暴走してしまうかもしれないわ。とりあえず、何もせずにようすを見ましょう。――狩野さん」
「ハイッ」
「堀口さんたちに何か動きがあれば教えてちょうだい。お願いね」
「わかりました!」
そうして、私たちは、狩野さんと連絡先を交換してから解散した。
校舎裏の日陰から出ると、のどかな春の日差しがまぶしく感じられた。
もうすぐ、私たち姉妹の誕生日なのに、大変なことになっちゃったなぁ。
昇降口に向かいながら、私は重いため息をついたのだった。
ウワサの出所は、ファンクラブ・『花鳥風月』。いままでファンクラブのメンバーに助けてもらったこともあったけれど、ヒミツがバレちゃうのはなんとかして食い止めないと…!
狩野さんという新しい味方とともに、新たな事件の解決のために動き始めます!
次回『みんなで協力』をおたのしみに!
書籍情報
- 【定価】
- 880円(本体800円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324108
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