「サキヨミ!」シリーズで大人気★七海まち・待望の新作『ウタヨミ! 呪いの百人一首を封印せよ!』は、闇の百人一首の封印をといちゃったヒメと、謎のクール男子・嵐(らん)がいどむ、和歌バトル×学園ストーリー! 9月9日(水)の発売にさきがけて、ドキドキの【ためし読み】を特別に先行公開するよ★
『ウタヨミ! 呪いの百人一首を封印せよ!』
(七海 まち・作 ぎんいろ・絵)
9月9日発売予定
3 入学式
「では、新入生が退場します」
入学式が終わり、わたしたち新入生は列になって体育館を後にした。
保護者席のお父さん、わたしにぶんぶん手をふってて、ちょっと恥ずかしかったなあ。
昨日の男子がいるかも! と思ったけれど、さいわい(?)姿は見かけなかった。
一年一組の教室に到着して、席につく。
ひとつ前の席が、なぜか空席だ。お休みしてるのかな?
「えー、あらためて、入学おめでとう。まずは、明日からの予定を説明します」
メガネをかけた男の人――担任の先生が話しはじめる。
でも、ソワソワしちゃって、ぜんぜん話が入ってこない。
(友達作らなきゃなのに、まだだれとも話せてない……!)
先生の話が終わったら、すぐに動き出さなきゃ。
教室をこっそり見まわす。すると、ろうか側の席に、髪の長い女の子を見つけた。
色白の横顔が、上品できれいだ。背筋がすっとのびた姿勢も、なんだかすごくかっこいい。
あんな子と友達になれたら、すてきだなあ。
(顔もふんいきも、ちょっと、お母さんに似てるかも……)
わたしの顔は、どっちかっていうとお父さん似。
中身も、お母さんとはぜんぜんちがう。
わたしは運動も勉強もだめだし、ものすごく不器用。
お母さんと同じく百人一首が好きだし、数珠も受け継いだけど。わたしはお母さんみたいには、とうていなれないだろうな。
そんなことを考えていたら、ガラッと教室のドアが開いた。
「すいません、遅れました」
そう言って現れた男子の顔を見た瞬間。
(あっ⁉)
ドキッと、胸がはねた。
昨日、ほこらのそばで出会った男子だ!
「入学式から遅刻ですか。東堂嵐(とうどう・らん)くん」
先生が、眉をひそめて言う。
――東堂嵐。
出席番号順のクラス名簿で、わたしの前にあった名前だ。
「すみません。ちょっと、ケンカして」
その言葉で、クラスの空気がピキッと固まった。先生が、顔をひきつらせて言う。
「ケンカ、と言いましたか?」
「大丈夫です、口ゲンカなんで」
ぶっきらぼうに答えると、男子――東堂くんは、つかつかとわたしのところまでやってきた。
昨日と同じ鋭い目つきで、ぎろりとわたしを見る。
(ひいっ!)
「は、早く席につきなさい、東堂くん」
先生に言われて、東堂くんはわたしの前の空席に座った。
まさか、同じクラスだなんて思わなかった。
(し、しずごころなく、はなのちるらん……!)
制服のポケットに入っている数珠を、上からぎゅっとにぎる。
今日、くわしい話をしてくれるって言ってたけど。
ほこらのこと、もう一度謝って、きちんと元にもどしたほうがいいよね。
いやでも、その前に!
なんとしても、今日のうちに友達を作りたい!
「――では、今日は以上です!」
あっ! 先生の話、終わった!
がたがたっと立ちはじめたみんなとともに、あわててカバンを持って立ちあがる。
髪の長い女の子はというと、ひとりで教室を出ていくところだった。
(ああっ、待って!)
急いで追いかけようとした、そのとき。
「オイ」
「ヒッ⁉」
がしっと、肩をつかまれた。
東堂くんが、エモノをねらうタカのような目で、わたしをにらみつけている。
「話があるって言ったよな。何、帰ろうとしてるんだよ」
「ち、ちがうよ! わたしはただ、友達を……」
「友達?」
東堂くんの眉間にシワがよる。その迫力に、ぴきっと体がこわばる。
「えっと……な、なんでもないです……」
「そうか。じゃ、ついて来い」
東堂くんはわたしの腕をつかむと、引きずるように教室を出ていった。
そのままろうかをぐんぐん進み、空き教室の中に入る。
「ちょ、ちょっと、腕、痛い!」
「あ、悪い」
わたしの言葉に、東堂くんはぱっと手を離した。
「つい、力が入った。大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫」
東堂くんはわたしの前に立つと、石みたいな無表情でわたしを見た。
「何も知らないみたいだから、一から話すぞ。よく聞けよ」
「えっと……話って、昨日のほこらのこと、だよね」
ドキドキしながら言うと、東堂くんは「そうだ」とうなずいた。
「ごめんなさい。たおしちゃったこと、ずっと気になってたんだ。あれ、元にもどさないと――」
「その必要はない。あの後、きちんと元どおりにもどされた」
「あっ、そうなの? よかった」
「いや、よくはない」
表情を動かさずに言った東堂くんに、ぴゃっとちぢこまる。
「そ、そうだよね。神様の家をたおしちゃうなんて、いいことじゃないよね」
「ちがう。あのほこらは、神様の家じゃない。『闇札』という呪いを封じたものだ」
「――へ?」
呪い?
ぽかんとしたわたしをよそに、東堂くんは続ける。
「『闇札』は、江戸時代に作られた呪いの百人一首だ。それを封印した四人の子孫が『封じ手』となり、あのほこらを守ってきた。おまえは昨日、その封印を解いてしまったんだ」
(――呪いの、百人一首!?)
東堂くんの顔を、じっと見つめる。からかっている……ようには見えない。
「おれの言ってること、信じられないか?」
「あっ、いや、えっと!」
まずい、顔に出てた?
あわてて表情を引きしめると、東堂くんは小さく息をついた。
「まあ、そうだよな。気持ちはわかる。でも、信じてくれ。おまえが信じてくれないと、おれたち封じ手は使命を果たせない」
「封じ手、って?」
「ほこらを守り、呪いから人々を守る使命を持つ者のことだ。おまえもおれも、封じ手の家に生まれた人間なんだ」
えええ……?
どういうこと?
「?」で頭がいっぱいのわたしに、東堂くんは真剣なまなざしを向けた。
「このままだと、闇札の呪いにかかる人間が出てくる。そうなる前に闇札を回収して、ほこらにもどす。それがおれたち封じ手の使命だ」
そう言うと、とつぜんわたしの手を取った(ひゃっ⁉)。
「数珠はどうした?」
「え、数珠? それなら、ポケットに……」
白水晶の数珠を取り出すと、東堂くんは自分の左手をつきだした。昨日も見た、青い数珠。
「この数珠は、おれたちが封じ手であるあかしだ」
「あかし、って……これは、お母さんから受け継いだものだよ?」
「ヒメノさんだけじゃない。初代の封じ手から代々ずっと受け継がれているものだ」
どきっとして、思わず東堂くんの顔を見つめる。――今、「ヒメノ」って言った?
「どうして、お母さんの名前を知ってるの?」
そう。「ヒメノ」は、お母さんの名前。
わたしの名前の「ヒメ」は、お母さんの名前からもらったものだ。
「言っただろう。おれたちは封じ手の家の人間。昔から、強いつながりがあるんだ」
「だから、わたしの名前も知ってたの?」
「そうだ」
闇札。封じ手。お母さんの数珠。
東堂くんの言葉が、頭の中でぐるぐると回りだす。
真剣な顔つきに、落ち着いた声。とても、うそを言っているようには見えない。
「封じ手」っていう特別な家同士だったなら、東堂くんが数珠を見てわたしの名前を言い当てたことも、お母さんの名前を知っていることも、説明がつく。
――だけど!
「ごめん。やっぱり、よくわからない。うちはどこにでもある普通の家だし、そんなこと、お父さんやお母さんからも聞いたことないよ」
「ちがう。おまえは、封じ手だ。おまえの中には、力が宿っている」
「力?」
「闇札を封じる力だ。ヒメノさんが亡くなったとき、その力を引き継いでいるはずだ」
はっと息をのむ。
「――お母さんの力を、わたしが引き継いだ?」
ふるふると首をふる。
「まさか。お母さんならともかく、わたしにそんな、力だなんて……」
「いや、ある。おまえはヒメノさんと同じ力を、たしかに持っているんだ」
東堂くんは、力のこもった目でわたしを見た。
口をついて出そうになった百人一首を、ぐっとのみこむ。
「――ちがう。そんなわけない。だってお母さんとわたしは、ぜんぜんちがう!」
「あっ、おい待て!」
東堂くんの声にかまわず、わたしは空き教室を飛び出した。
★<ためしよみ・第4回>へ続く★
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