角川つばさ文庫小説賞《金賞》受賞作の意欲作★
『ともだち弁護士リッカ 転校生は正義のミカタ!?』が、もうすぐ発売!
発売前にドドンと【ためし読み】しちゃおう!
わたし、六法律花の夢はカッコイイ弁護士になることっ! 1年生にまちがえられちゃう「おちび」な6年生だけど、ナカミには法律とあきらめないココロがつまってる。転校した学校でおこる事件だって、絶対見のがさない! 「呪いの手紙事件」に、「宿題の神様事件」。犯人だと疑われてる子たち、ホントにそうなのか!? モヤモヤしているのにだまっているのは、もうイヤなんだ。真相をあきらかにするため、やろうよ、「おたすけ裁判」! もちろんわたしが、こまってる子の弁護士になるから――!
『ともだち弁護士リッカ 転校生は正義のミカタ!?』
(夢乃ひいろ・作 霧海ななせ・絵)
4月8日発売予定!
【4】 不審者、あらわる
「リッカ〜、はやくおきろー。遅刻するぞ〜!」
リビングからパパの声。
カーテンを勢いよくあけ、お気に入りの服に着替えたところで、トントン、とノックの音。
おばあちゃんと、ネコのキャロットが入ってきた。
「あらぁー。りっちゃん、今日も愛らしかぁ。キューピーちゃんみたいやねぇ」
きゅ、キューピー!?
……おかしいな。どこからどう見ても、こんなにキマってるのに。
「朝ごはんできとるよ。はやくおいで」
おばあちゃんの足にシッポをまきつけながら、キャロットが「ふにゃ」と短く鳴く。
「こら! 笑うな! 人をばかにするのは侮辱罪。いけないことだぞ」
リビングに行くと、ちょうどパパが牛乳をそそいでいるところだった。
この家は一階が店舗、二階が住居になっている。
パパが念願の「便利屋むつのり」を開業することになって、となり町から引っ越してきたんだ。
便利屋は、お客さんからたのまれたことを、なんでもやるのが仕事。
草むしりや家の修理、ユーレイのおはらいまで、引き受けちゃうんだって。
「……はっ! もうこんな時間ではないか!」
朝ごはんを牛乳で流しこみ、急いでランドセルを背負う。
「行ってきます!」
『ミニ六法』をだきしめて玄関をでたら、さくらが待っていた。
「おはよう、リッカちゃん」
「おはよう、さくら!」
きのう、朝いっしょに登校しようって約束したんだ。
さっそく、虫と法律についての推しトークがとまらない!
うれしくて、スキップしたくなってきた。
「おはよ」
すずしい顔でわたしたちを追いこしていったのは岸本静流だ。
歩くの速いな。あっという間に見えなくなったぞ。
おしゃべりしながら歩いていたら、信号でもなんでもない歩道でさくらが急に立ちどまった。
「あれ? 虎牙のおじいちゃん?」
視線の先には、シニアカーにのったお年寄りがいた。
六年二組、戸田虎牙(とだ・たいが)のおじいちゃん。
さくらと同じマンションに住んでいるんだって。
不安そうにキョロキョロしてるけど、なにかあったのか?
わたしたちに気づいたおじいちゃんは、さくらの腕をつかんでカッと目を見ひらく。
「虎牙が事故にあったんだ!」
事故!?
「教室の窓から落ちたんだ。学校から電話があった」
わたしは、さくらと顔を見合わせた。
学校の窓は、半分だけしかあかない仕組みになっている。落ちるなんてこと……ないはず。
「ご老人、それはたしかか?」
「ああ。さっきここで病院代を先生にわたした。左手の甲に、カラスの入れ墨をした男の先生だ。知らないか? 虎牙の担任だと言っていたが」
そんな先生いた? それに病院代?
うちの市は、子どもは無料のはずだ。
「まさか……不審者?」
悪い予感に、胸がザワザワする。
「虎牙に連絡とれた! 今、教室にいるって」
さくらのスマホの画面には、虎牙が映ってた。
『じいちゃん、電話気づかなくてごめん。ぼくは元気だよ!』
「あぁ……。虎牙。よかった……。虎牙になにかあったら、ワシはもう……」
おじいちゃんは安心して泣きくずれる。
『だれかに病院代をわたしたって本当? なにをとられたの?』
「二十万円と……金のネックレス」
電話のむこうで、虎牙が『それ……母さんの大事な……』と肩を落とした。
『とにかく、すぐ行くから! さくら、ちょっとじいちゃん見ててくれない?』
「わかった」と言って、さくらは電話を切った。
しばらくしたら虎牙と警察官がやってきて、わたしとさくらはそのまま学校に行った。
転校二日目も楽しかったし、夜ご飯は大好きなおばあちゃんの肉じゃが。
でも、朝のことが気になってあまり食べられなかった。
「リッカ、元気ないじゃないか。学校でなにかあったのか?」
「ううん。そうじゃないけど……」
パパに今朝のことを話したら、おばあちゃんの手から、はしが落ちた。
びっくりしたキャロットが「にゃご」と鳴いて、とびあがる。
「……それ、詐欺電話たいね。うちにもきたんよ」
「その話、くわしく聞かせてくれないか!?」
「おばあちゃん、一人で店番しとったと。そしたらお店の電話ば鳴ってね。『娘さんが交通事故にあったから、病院代を持ってきてほしい』って男の人に言われたったい」
事故、病院代。同じ手口だ。
「でもほら、おばあちゃんに娘はおらんけん。正実さんは今アメリカやし、『まちがい電話ではありませんか?』って聞いたったい。そしたら舌打ちされて電話が切れたんよ」
おばあちゃんの子どもは、パパと大阪に住んでるおじさんだけ。
国際弁護士のママはアメリカ・ニューヨークに出張中。
でも、もしおばあちゃんに娘がいたら……。
心配で、だまされることだってあったかもしれない。
「これ、虎牙くんのおじいちゃんのことじゃないか?」
パパがテレビの音量を大きくした。
夜のニュース番組のアナウンサーが「また南野市で、お年寄りをねらった詐欺事件がありました」と、しんみょうな顔で伝えている。
「被害者は今わかってるだけでも四人だって。うちも気をつけないとな」
ふだんはへらへらしてるパパだけど、たのもしく見えるよ。
「ところで、彰(あきら)は仕事うまくいったんね? アヤネさん、といったかねぇ。若い女のお客さん」
「それがなー、大成功! ほら、商店街に『ヘアサロン・モモハナ』って美容院あるだろ? アヤネさんは美容師で、そこで知り合ったんだ。そうだ、リッカも今度行ってみたら? 子どものお客さんも多いんだってさ」
パパは缶ビールをのみほした。
「いやぁー、それにしても大変だったばい。迷子のネコをさがすのに屋根にまでのぼったんだぞ」
酔っぱらったせいか、博多弁でペラペラとしゃべりだす。
それにしても、子どもにも人気の美容師さんか。
どんな人なんだろう?
わたしも、いつか切ってもらいたいな!
☆☆☆
「リッカちゃん、ちょっと来て」
次の日の休み時間。
美咲に手をひかれて、階段の踊り場に連れていかれた。
美咲がポケットからそっと取りだしたのは、ぐちゃぐちゃにやぶれた手紙。
「見て……これ、あたしがきのう恵麻の机に入れた手紙。今朝、教室のゴミ箱に捨てられてたの」
ひどいな……。
「人の手紙を勝手に読むのは信書開封罪、やぶるのは器物損壊罪。これは、りっぱな犯罪だぞ」
わたしが説明すると、美咲は「そうなんだ……」と、ふうっと息をついた。
「手紙には、なにが書いてあったんだ?」
「べつに普通の内容だよ。『恵麻へ☆ 遠足のバス、いっしょにすわろう♡』って」
なんてことない友達どうしのやりとりだ。
それがなんでやぶかれて、捨てられたんだろう。
「これは見すごすわけにはいかないな」
わたしがそう言うと、美咲が、やぶれた手紙をぎゅっとにぎりしめる。
「そうだよね。リッカちゃんに相談してよかった。あたし、絶対に犯人さがして、謝らせる!」
「ちょ……っと待って、美咲! まずは先生に相談を……」
美咲は全身をキャンプファイヤーみたいに燃えあがらせながら、ドスドスと行ってしまった。
わたし、美咲をたきつけてしまったのか……?
どうしよう。そんなつもりはなかったのに。
『ともだち弁護士リッカ 転校生は正義のミカタ!?』
ためし読み
第5回につづく
書籍情報
- 【定価】
- 858円(本体780円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046323897
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