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第3回 「晴海さくらは変わり者?」/『ともだち弁護士リッカ』ためし読み


角川つばさ文庫小説賞《金賞》受賞作の意欲作★
『ともだち弁護士リッカ 転校生は正義のミカタ!?』が、もうすぐ発売! 
発売前にドドンと【ためし読み】しちゃおう!


わたし、六法律花の夢はカッコイイ弁護士になることっ! 1年生にまちがえられちゃう「おちび」な6年生だけど、ナカミには法律とあきらめないココロがつまってる。転校した学校でおこる事件だって、絶対見のがさない! 「呪いの手紙事件」に、「宿題の神様事件」。犯人だと疑われてる子たち、ホントにそうなのか!? モヤモヤしているのにだまっているのは、もうイヤなんだ。真相をあきらかにするため、やろうよ、「おたすけ裁判」! もちろんわたしが、こまってる子の弁護士になるから――!



『ともだち弁護士リッカ 転校生は正義のミカタ!?』
(夢乃ひいろ・作 霧海ななせ・絵)
4月8日発売予定!





 【3】 晴海さくらは変わり者?

「ね、リッカちゃんって呼んでいい? さっき、すごかったね!」

 二十分休みになったら、美咲たちが寄ってきた。

 髪の毛を左右の耳横でお団子にした子は、岡恵麻(おか・えま)。美咲と同じユニフォームを着ている。

「うん、カッコよかった! 法律ってちょっとおもしろそうだね」

 ゆるふわボブの大人っぽい子は、西田雪子(にしだ・ゆきこ)。

 スラッと背が高くて、百六十センチはあるんじゃないかな。放送委員会をやってるんだって。

 三人にほめられて、うれしくてニヤニヤしちゃう。

 大好きな法律がきっかけで友達がふえるなんて、サイコーだよ!

「ま、あたしは推しを愛でるほうがいいけどっ。リッカちゃんも読んでみて♪ ヒーローのビジュは眼福だし、ヒロインと出会ってすぐにキスするシーンもドキドキするよ♡」

 美咲が推し小説を見せてくれたけど……。

 表紙! イケメンが女子にあごクイしてる!?

「目を覚ませ美咲! いきなりあごクイにキス!? 不同意わいせつ罪で完全アウトだぞッ!」

 思わず『ミニ六法』をひらいて、美咲に条文を見せた……。

 が、「なにそれー。リッカちゃん、やっぱおもしろーい」と、ケラケラ笑われてしまった。

 わたしは真剣なんだけどな。

 しょんぼりしてたら、美咲の笑い声が突然やんだ。

「……美咲?」

 美咲の視線の先には、わたしじゃなくて恵麻と雪子。

 雪子が恵麻に耳打ちして、二人でくすくす笑ってる。

 美咲はグッとこぶしをにぎって、真一文字に口をむすんでいた。

 そのとき、

「ドッヂやる人、校庭に集合な!」

 茶色のふわふわした髪の男子が、ボールを持って元気いっぱいの声をあげた。

「あとで虎牙(たいが)が二組のメンツも連れてくるから、クラス対抗戦やろうぜ」

 あっという間にクラスメイトが集まって、にぎやかになる。

「樹(いつき)ー、ウチらも行くよ!」

 恵麻の声がはずみ、樹と呼ばれる男子に返事した。

「樹はね、バスケクラブのキャプテンなの。足も速いしノリいいし、学校で一番モテるんだよ」

 恵麻が小声で教えてくれた。

「大変! みんな、行っちゃう。ほら、リッカちゃん、ウチらも追いかけよ!」

「よし、わたしは審判役をやる。少しの違反も見のがさない─っ!」

 恵麻たちと教室をでようとしたとき、席でさなぎを見ているさくらに気がついた。

「さくらは、行かないのか?」

 声をかけてみたが、返事がない。

 もう一度呼びかけようとしたら、「ほうっておきなよ」と、美咲にとめられた。

「あの子、一年のときからずーっと一人。ちょっと変わってるんだ」

 腕を組んだ美咲が、宇宙人でも見るような目でさくらを見る。

 雪子と恵麻も同調する。

「教室に盗聴器しかけてるってウワサもあるし……。リッカちゃんも気をつけて」

 三人は「マジでホラー」と、肩をすくめながら笑う。

 盗聴器? 

 いったいなんのために? 

 さくらのことが気になって、ドッヂボールに全然集中できなかった。


              ☆☆☆


 転校一日目はあっという間にすぎて、帰りの会の時間になった。

「はーい、みんな集中」

 宮部先生が、パンと手をたたく。

「春の遠足のお知らせをくばります。今年は……バスで水族館に行きます」

「やったー」と、クラスは大さわぎ。

 イルカショーに、ジンベエザメ見学もあるのか! 

「楽しみだな! さく……ら?」

 ウキウキでとなりをむいたら、さくらはけんめいに引き出しのなかをあさっていた。

「どうした? さがしものか?」

「……いつも持ってる小さいノートがないの。リッカちゃん、見なかった?」

 自己紹介を書いてた緑のノートか。

 わたしは静かに首をふる。

 そのとき、宮部先生の声のトーンが変わった。

「それと、最近学校のまわりで不審者の目撃情報が報告されています。『おうちの人が事故にあった』などと声をかけるようです。だからみなさん、登下校はなるべく一人にならないように」

 不審者? 

 新学期早々、ぶっそうな話だな。

 チラッと、となりのさくらを見たら、まだノートをさがしていた。


「リッカちゃん、いっしょに帰らない? チアクラブ休みなの。先生たちが見まわりするんだって」

 日直が「さようなら」とあいさつしたら、すぐに美咲と恵麻が来てくれた。

「雪子はどうした?」

「雪子は放送当番。あとで親が迎えにくるって」

 下足室からでて、ペチャクチャおしゃべりする。

 初めての転校でドキドキしてたけど、一日目から友達ができて、すごくうれしい。

「あれ? あそこにいるの、さくら?」

 校門のそばで、さくらが桜の木を見あげていた。

 ポニーテールが太陽の光で透けて、サラサラとなびく。

 さくらは宙に舞うピンク色の花びらに手をのばし、パチンと両手ではさんでキャッチした。

 そっとひらいてしばらく見つめ、うれしそうにほほえんで、手に持ったビニール袋に入れる。

「あの子、またヘンなことしてる。ほっとこ」

 美咲たちはあきれたような顔をして、またおしゃべりにもどっていった。

 校門をでて、しばらくたったものの……。

 ダメだ、気になるッ!

「美咲、恵麻、ごめん。先に帰ってくれ」

 まわれ右して、今来た道を走った。

「はぁ……はぁ……。よかっ……た。まだいた」

 さくらは、しゃがみこんで地面に落ちた花びらを集めていた。

「もう帰ったほうがいいぞ。不審者がせまっている!」

 わたしは、さくらの腕をひっぱった。

「リッカちゃん。不審者ってなんのこと?」

「帰りの会で先生が警告していたではないか」

「ノートさがしてて、それどころじゃなくて……。あ、でもだいじょうぶだよ」

 そう言って、さくらはポケットから小さな長方形の機械をとりだした。

 盗聴器─!? 

 はっと息をのんだら、さくらが小さい声で言った。

「これ、ICレコーダーだよ」

 あいしー……れこーだー?

「学校ではいつも録音してるの。あたし、集中すると、大事な話を聞き逃しちゃうから」

 そうだったのか!

 わたしだって、ボーッとしていて、聞き逃すときはある。

 その回数が多かったら、きっとなにか対策をすると思う。

 それなのに勝手に想像して、盗聴器だと決めつけて……はずかしい。

 さくらは「ヘンだよね」とつぶやいて、笑った。

 その笑顔がなんだか悲しそうで、胸がギューッと痛くなる。


 ───『六法さんってさ、変わってるよね』


 ええい! 

 過去のイヤな思い出よ、去れっ!  

「人とちがってていいんだ、さくら! それが『その人らしさ』ってやつじゃないか! いいか、さくらはステキだ。だれがなんと言おうと堂々としてていい。さくらには、自分らしく生きる権利がある! 日本国憲法第十三条にも、はっきりそう書いてある!」 

『ミニ六法』をだいて、右手で指差しドーン!

「ほら、いっしょに帰ろう」

 ランドセルを拾ってわたそうとしたら、

「リッカちゃん、見て」

 さくらが、空にむかって両手をあげた。

 指のすきまからあふれた桜の花びらが、シャワーのようにふりそそぐ。

「あたし、今日、リッカちゃんと友達になれてよかった!」

 さくらの笑顔が輝いて、目の前の景色が、ピンク色に染まった。




『ともだち弁護士リッカ 転校生は正義のミカタ!?』
ためし読み
第4回につづく


書籍情報


作: 夢乃 ひいろ 絵: 霧海 ななせ

定価
858円(本体780円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323897

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