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第2回 「はじめまして! 六年一組」/『ともだち弁護士リッカ』ためし読み


角川つばさ文庫小説賞《金賞》受賞作の意欲作★
『ともだち弁護士リッカ 転校生は正義のミカタ!?』が、もうすぐ発売! 
発売前にドドンと【ためし読み】しちゃおう!


わたし、六法律花の夢はカッコイイ弁護士になることっ! 1年生にまちがえられちゃう「おちび」な6年生だけど、ナカミには法律とあきらめないココロがつまってる。転校した学校でおこる事件だって、絶対見のがさない! 「呪いの手紙事件」に、「宿題の神様事件」。犯人だと疑われてる子たち、ホントにそうなのか!? モヤモヤしているのにだまっているのは、もうイヤなんだ。真相をあきらかにするため、やろうよ、「おたすけ裁判」! もちろんわたしが、こまってる子の弁護士になるから――!



『ともだち弁護士リッカ 転校生は正義のミカタ!?』
(夢乃ひいろ・作 霧海ななせ・絵)
4月8日発売予定!





 【2】 はじめまして! 六年一組

「よかった。ここにいたのね、六法(むつのり)さん」

 ふりむくと、優しそうな女性の先生がいた。

「はじめまして。担任の宮部梨絵子(みやべ・りえこ)です。桃千小は広いから、下足室にくるのも迷ったでしょう」

 先生は申しわけなさそうに眉毛をさげたが、迷ったのではなく色々あっただけだ。

 先生のあとについて階段をのぼる。

六年一組の教室に入ったら、みんなが身をのりだした。

「わ、かわいー♡」

「え? 一年生!?」

 ささやき声はどんどん広がって、教室がさわがしくなる。

「今日からクラスの仲間になる、六法律花(むつのり・りっか)さんです。六法さん、自己紹介お願いします」

 先生が、黒板に大きくわたしの名前を書いた。

 ドキドキする胸の前で愛読書─ピンク色の表紙の『ミニ六法』─をだきしめて、すぅっと息をすう。

「栗木町から来た六法律花です! 将来の夢は弁護士になること! 質問があったらなんでも聞いてください!」

 よし、言えた!

 教室中をくまなく見まわす。……ってあれは!

「さっきの……。岸本静流(きしもと・しずる)ではないかっ」

 そうか。同じクラスだったな……。

「はいはーい! その本はなんですか? あっ、あたし山城美咲(やましろ・みさき)っていいまーす」

 ハーフアップの活発そうな女の子が手をあげた。チアリーディングのユニフォームを着ている。

「これは『ミニ六法』。法律が書かれている本だ」

「ホーリツ?」

 美咲が首をかしげる。

「法律というのは、みんなの暮らしや安全、自由を守る、国が決めたルールだ。たとえば学校給食では、絶対に牛乳をださなくてはいけないという法律があったり……」

「へー……。ねぇねぇ、それより六法さんは推しとかいるの? あたしは〜……」

 うう。わかってはいたけど、法律には興味ゼロか……。

 ちょっとさみしい。

 この『ミニ六法』は、前の学校の親友・芽々(めめ)がくれた、わたしの宝物なんだけどな。


 それからは、どとうの質問攻撃。

 好きな動画を聞かれて、『くらしの法律チャンネル☆』と答えたところで、「六法さん、キャラつよ〜♪」と、クラスが笑いのうずにつつまれた。

「では、みなさんも順に自己紹介してください。六法さんはあそこの席……なんだけど……」

 先生の言葉にハッとする。

 この流れ……。また一番前の席になってしまうのではないか?

「だいじょうぶです! わたし、成長期なので!」

 ずっとあこがれていた後ろの席♪ ルンルンで、すわったものの……。

「見えないでしょ? おれと席替わろ」

 前の席の岸本静流が立ちあがる。

 ……くぅぅ。また助けられてしまった。

 新しい席は、窓ぎわの前から二番目。黒板もちゃんと見える。

 ほっとひと息ついてたら、右の腕がツンツンされた。

「……これ、落ちたよ」

 となりの席の子が、『ミニ六法』にはさんでいたしおりを拾ってくれた。

 ポニーテールに、眼鏡の奥のミステリアスな瞳。

 いちご色のくちびる、凛としたオーラ。

 机の上には虫かごが置いてある。

 木の枝にぶらさがっているのは、さなぎ?

「お気づき、感謝する! お名前を教えてくれないか!?」

「えっ……と、晴海(はるみ)さくら……です」

 もしやびっくりさせてしまったか?

 よし、ここは声量をおとし、とびきりのスマイルで。

「晴海さんのこと、さくら、って呼んでもいいかな? わたしのことはリッカと呼んでくれ」

 さくらは手でほおをつつみ、うんうんうなずいた。

 やった!

 桃千小で、初めての友達だ!

「そのさなぎ、さくらのか? 羽化するのが楽しみだな♪」

「……うん!」

 さくらの顔がパッと明るくなって、笑顔がはじけた。

「では、つぎは晴海さん、自己紹介をお願いします」

「は、はいっ」

 さくらが緑色の小さなノートを持って、黒板の前に立ったけど……。

 ─シーン。

 みんなが注目するなか、さくらはノートを見たまま動かない。どうしたのかな。

「晴海さん、だいじょうぶ? 言えそうですか?」

 宮部先生が心配そうに聞いたけど、さくらはふるふると首をふるだけ。

「クラス替えしたばっかりで、緊張しますよね」

 宮部先生は優しくほほえんで、さくらをはげます。

 さくらはなにも言わずに席にもどり、にぎりしめたノートを見つめて、ため息をついた。

『晴海さくらです。好きな色は緑で、将来は虫の研究者になりたいです。仲良くしてください』

 のぞき見するつもりはないが、となりだから見えてしまう。

 カンペまで用意してたなんて……。人前で話すのが苦手なのかな。



「気にするな、だいじょうぶだ」

 さくらは「……うん」と小さく返事したけど、またしょんぼりとうつむいた。

「……では、自己紹介も終わったので、クラス委員を決めましょう。立候補ありますか?」

 えっ、今日いきなり?

 宮部先生の言葉に、教室がざわつきはじめる。

 これは、みんなもとまどっている?

「あの! 先生、それ……少し決めるのが早すぎませんか?」

 思わず口にだしたら、みんなが、めっちゃこっち見た─! 

 ええい! こうなったら覚悟を決めるぞ。

「相手のことを知る時間がないまま委員を選ぶのは、公職選挙法第百二十九条に違反します!」

 立ちあがって、『ミニ六法』をにぎる手に力をこめる。

「まずは、仲良くなってからにしませんか? そのあとでやりたい人が立候補して、だれがいいかをみんなで決める。─そのほうが絶対いいです!」

 心臓がバクバクしてる。

 ふと、後ろを見たら、岸本静流が目をまん丸にしていた。

「なるほど。とってもよい意見ですね。では、クラス委員は、来週金曜日の学活で決めましょう」

 先生がそう言ってくれて、わっ、と教室のあちこちから拍手がおきた。

「六法さん、すげー!」

 もしかして、わたし、みんなの役に立てた?

 思わず小さなガッツポーズを決めていたら。

「やるじゃん」

 ふりむくと、岸本静流がほおづえをついて、笑っていた。




『ともだち弁護士リッカ 転校生は正義のミカタ!?』
ためし読み
第3回につづく


書籍情報


作: 夢乃 ひいろ 絵: 霧海 ななせ

定価
858円(本体780円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323897

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