
5月10日発売予定『さよならは、言えない。(2) ずっと続くふたりの未来へ』を、どこよりも早くためし読みできちゃう先行れんさいスタート!
切ないキュンがいっぱいの感動ストーリー、読んでみてね!(全6回)
発売中の1巻をまだ読んでいない人は、期間限定の1巻まるごとためし読みページをチェック!
◆第5回
目を覚ました玲央(れお)を見て、ある『決断』をした凪(なぎ)。
さっそく凪が起こした行動とは……?
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆
取り消された言葉
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆
「じゃあね、心陽(こはる)。また明日」
「うん! 部活がんばってね」
部活に行った健介(けんすけ)と香奈(かな)を見送って、校門を出る。
全国模試まで、あと1週間。今日は、苦手な国語を重点的にがんばろう!
気合を入れて歩き出したその時、誰かが私の前に立ちふさがった。
「心陽ちゃん、ちょっといいかな」
「えっ」
とつぜん私に声をかけたのは、大鳳学園(おおとりがくえん)の制服を着た、凪!
いつもの大人っぽい笑顔だけど、やっぱり目は笑っていない。
どうして凪が、里見中で私を待ってるんだろう。
もしかして、玲央になにかあったの……?
イヤな予感がして、心がざわめく。
凪は、なにを考えているかわからない表情で、私を見ていた。
「心陽ちゃんに、話があるんだ」
「……っ」
凪が、私の学校に来てまで伝えたい話って、なんだろう。
聞くのが怖いけど、聞かないと絶対に後悔する。
「わかった。ここじゃ目立っちゃうから、あっちの公園に行こう」
田沢(たざわ)さんたちに見つかる前に、移動しなくちゃ。
私が足早に歩き出すと、凪はだまってついてきた。
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆
こわさと不安でいっぱいのまま、凪といっしょに公園のベンチに座る。
少しの沈黙(ちんもく)のあと、凪はおだやかな声で言った。
「玲央の意識がもどったよ」
「えっ。本当!?」
ガバッと顔を上げて凪を見ると、うなずいた。
「うん。奇跡(きせき)的に回復して、会話もできるし、歩くこともできる」
「よかった……! 本当に、よかった……」
緊張(きんちょう)でカチコチだった体から、いっきに力がぬけた。
ホッとして、うれしくて、目の奥が熱くなる。
でも、どうして凪は、わざわざ私に知らせてくれたんだろう。
あんなにはっきりと、『もう玲央につきまとわないで』って、約束するように言ってきたのに。
玲央に近づいてほしくないはずの凪が、私に教えてくれるなんて、ナゾすぎるよ。
「私にそれを伝えるために、わざわざ来てくれたの?」
ためらいながら、思い切って聞いてみる。
凪は、「まぁね」と言って、ちょっと目をふせた。
「僕、心陽ちゃんに言い過ぎたよ。悪かった」
「……えっ。ど、どうしたの?」
とつぜん、凪にあやまられて、アタフタしてしまう。
「玲央が倒れたのは、心陽ちゃんのせいだって言ってしまったけど……。そうじゃなかったのかもしれない」
「どういうこと?」
凪が話しはじめたことは、あまりに意外だった。
「玲央は、ずっと生きる気力を失くしていたんだ」
「えっ……」
玲央が生きる気力を失くしていたなんて、知らなかった。
私の知っている玲央が、そんな状態になるなんて考えられなくて、言葉が出ない。
「でも、最近、少しずつ変わってきた。たぶん、生きたいって欲求が出てきて、苦しくなったんだと思う」
凪は、私に安心させるように優しい声で言ってくれるけど。
玲央は、『生きたい』って思ったら、苦しくなってしまうような状況なの?
玲央って、重い病気なの……?
頭の中に、次々と知りたいことが浮かんでくる。
もしかしたら、質問したら、凪は答えてくれるかもしれない。
でも、もし……すごく、良くない病気だったら……?
今の私は、こわくて、なにも聞けなかった。
顔をこわばらせている私に、凪は言葉を続ける。
「玲央は、生きたいから無理をしたのかも、っていうこと。倒れて病院に逆もどりしてしまったのは、その結果かもしれないから、心陽ちゃんは、自分のことを責めないで」
玲央は、苦しくても、無理をしても、生きたいんだ。
生きようとしてくれているんだ……。
不安になることばかりだけど、そのことに、心からホッとした。
「玲央が生きたいって思ってくれて、よかった……」
思わずつぶやくと、凪はなにかを考えるように口をつぐんだ。
「凪……?」
ふしぎに思っていたら、凪は、少し言いにくそうに低めの声で言った。
「もう玲央に会いに来ないほうがいいって言ったけど、取り消すよ。玲央に会わせてあげることはできないけど、遠目にちらっと見るくらいなら、いいよ」
「えっ!」
「ただし、僕といっしょのときだけね。玲央とふたりっきりで会うのは禁止」
二度と姿を見ることもできないって思ってた玲央を、見ることができる……!?
もう無理だって思っていたことをゆるされて、うれしいけど、急展開すぎて、とまどってしまうよ。
玲央に会えないし、会っちゃいけないって自分に言い聞かせてたから。
『……心陽』
最後に会った日――私が、玲央に『さよなら』を言ったあのとき、名前を呼んでくれた玲央の声を思い出す。
『『さよなら』なんて、言わせないって言ったのに、……ごめん』
玲央はそう言って倒れてしまった。
『さよならなんて、イヤだよ……玲央!』
私のその声は、きっと玲央にとどいていない。
遠くから見ることしかできないのなら、言葉をかけることはできないかもしれないけれど。
せめて、さよならしたくないっていう気持ちだけでも、なんとかして伝えたい。
私にできることがほんの少しでもあるなら、友だちとして、なんでもやりたいよ!
「わかった」
私が大きくうなずくと、少しほっとしたような顔をした凪が言った。
「じゃあ、明日の放課後、美咲野(みさきの)総合病院の入口で待ち合わせしよう」
玲央のために、自分ができることを探すことにした心陽。
凪といっしょに玲央の入院する病院へ向かう、次回 第6回「窓ごしの想い」をおたのしみに。
\期間限定! 発売中の1巻をまだ読んでいない人はチェック!/
『さよならは、言えない。』1巻のまるごとためし読み連載中!
『一年間だけ。』の安芸咲良さん新作『ハッピーエンドはどこですか』先行連載中!
大人気作家・夜野せせりさんの『スピカにおいでよ』1巻冒頭が読める♪
\新シリーズを、先行連載でだれよりも早くおためし読み!/