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【先行ためし読み!】怪盗レッド30 第4回


2人1組の正義の怪盗「怪盗レッド」をやっている、アスカとケイの物語、とうとう完結!
1%の希望があるなら、つかみとる――それが、怪盗レッドだ!
全世界にむけ、はなたれた「終わり」の仕掛け。世界が壊れるまでの残り時間は、たった7日。平和だったこれまでの日常が、終わる!? そんなこと、わたしたちが、させないっ! 動くのは、たった6人の精鋭。一度以上、「敵」として、全力でぶつかったことのあるもの同士だからこそ……背中をまかせて戦える!
角川つばさ文庫の歴史に輝く「怪盗レッド」が、とうとう最終決戦。どうか、見届けて!(全5回、公開は2026年6月30日(火)まで)


 

■幕間



 白里響は、拘置所(こうちしょ)にやってきていた。

 むかうところは決まっている。

 前回きたとおりに手つづきをすませて、中を進む。


 わびしく、ひんやりとした空気が満ちた通路を進み、面会室で待っていると。

 ゼスが透明な壁のむこう側にやってきた。


「――またきたのか、元・名探偵さん。だが歓迎するよ。なにせ、毎日ヒマだからな」


 イスにすわったゼスは、うすら笑いをうかべる。

 響はゼスの様子を観察してから、小さく息を吐いて、言った。


「狙いどおり、おまえの作ったウィルスはいま、世界を終わらせようとしている」

「それはよかった。あれは最高傑作だ」

 ゼスは、満足そうな顔をしていた。


「このあいだもきいたな。――おまえがなぜ、わざわざ単独行動をして、警察に捕まったのか。そして、タキオンはおまえの奪還に動かなかったのか。

 ようやくわかった」


 ゼスからの返事を期待したわけじゃない。

 響は、ふたたび口を開いた。


「――おまえが、もうすでに、タキオンでの仕事を終えていたからだったんだな」


 ようやく理解したときには、遅かった。


 なぜゼスが、単独であんな事件をおこしたのか。

 それ以外の幹部が参加しなかったのか。


 ウィルス開発を終えて、もはや役割のないゼスに、ニックもタキオンもかまうことがなかった。

 ゼスの単独行動は、ちょうどいい目くらましでもあったのかもしれない。


「ま、そういうことだ。だからニックに言って、最後に自由にさせてもらったのさ。どうせ滅びる世界だからな」


「なるほど。世界の終わりを、ここでむかえるのが、おまえの望みだったというわけか……?」

「わるいか? すごしてみれば、静かでいい場所なんだ」

 ゼスは部屋を見まわして、肩をすくめる。


「――――それは、ちがうだろう」


 響のするどい言葉に、ゼスの動きが止まった。

「なに?」

 ゆっくりと、響にむきなおり、にらみつける。


「おまえがここにいるのは高みの見物をするためじゃない。ここならうまく身を隠せるからだ」

「なにを言ってる? おれの作ったウィルスは、どこにいようが関係ない。世界中の、すべての機能が終わるんだ」

「そうじゃない。おまえがここにいれば、タキオンの――ニックからの注意がうすれる。それが本当の狙いなんだろう」


「……なにをバカなことを」

 ゼスは、ゆっくりと左右にかぶりをふる。

「ニックの望みは、世界を終わらせることだ。幹部のおまえたちも、それに協力している。

 だが、――――本当に、おまえは世界を終わらせたいと思っているのか?」


 響はまっすぐに、ゼスを見すえる。

「……………………」


「ここにいれば、だれかに希望を託すチャンスが生まれる――と。そう考えたんじゃないのか、ゼス。

 ぼくは、それを受けとりにきた」


 重く長い沈黙が、部屋に流れる。

 響とゼスは、おたがいに目をそらさないまま、にらみあっていた。


 1分か、3分か。それとも、もっと長くか。

 ふっと、先に視線をそらしたのは、ゼスだ。


「……名探偵というのは、本当にうっとうしいな」


 ゼスが、独り言のように言って、舌打ちする。

 そして、同じようにつづけた。


「カオス・キャッスルだ。

 そこに、ウィルスのマスターデータを、3つに分けて隠してある。ニックにも秘密でな」


「ウィルスの、マスターデータ……!」


 響がおもわず、声をあげる。

「ああ。そいつがあればワクチンが作れるかもしれないな……まあ、手に入れられれば、だが?」

 ゼスはニヤリと笑う。


「よりによって、カオス・キャッスルに、か」

 響は顔をしかめる。

「決着をつける場所として、ちょうどいいだろ?

 世界が終わるのか、救われるのか。おれはここで、のんびりと結果を待たせてもらう」

 ゼスは、メモ用紙にすらすらと地図を描き、響に手わたしてくる。


「まあ、期待しないで待っててやるよ、――――名探偵」

「素直じゃない依頼人でも、応えてやるさ」

 響は立ちあがると、メモをジャケットの内ポケットにしまい、その場をあとにする。


 その胸にひめた、1枚のメモが。

 世界を救う「鍵」になる。


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