2人1組の正義の怪盗「怪盗レッド」をやっている、アスカとケイの物語、とうとう完結!
1%の希望があるなら、つかみとる――それが、怪盗レッドだ!
全世界にむけ、はなたれた「終わり」の仕掛け。世界が壊れるまでの残り時間は、たった7日。平和だったこれまでの日常が、終わる!? そんなこと、わたしたちが、させないっ! 動くのは、たった6人の精鋭。一度以上、「敵」として、全力でぶつかったことのあるもの同士だからこそ……背中をまかせて戦える!
角川つばさ文庫の歴史に輝く「怪盗レッド」が、とうとう最終決戦。どうか、見届けて!(全5回、公開は2026年6月30日(火)まで)
2 「初代」たちの意外な再会⁉
「心配しすぎなんじゃない? ラドロのビルまでついてくるなんて――お父さんたちってば」
わたしとケイ――そしてなんと、お父さんたち2人で、ラドロのビルの前にいた。
ほかのビルが、少なからず壊されたり、ガラスが割られたりしているのに。
このビルだけは、まるでいつもと変わらないみたいな様子だった。
徒歩だけでここまで移動してきたから、いつもより時間はかかったけど。
ケイは、おかげで体調がよさそうだ。
それにしても、なんでお父さんたちまで……?
だってわたしたちは、仮にも「2代目怪盗レッド」なんだよ?
いままでどんなことでも「いまのレッドはおまえたちだ。好きにしろ」って言ってたのに……。
すると。
「なにを言っているんだ?」
お父さんが、首をかしげてわたしを見る。
「えっ。だってわたしたちが心配だから、ここまで送ってくれたんでしょ?」
「それもないとは言わないが――メインはこっちだ」
そう言って、お父さんは、大股でラドロのビルにむきなおって見あげる。
「えっ!? ちょ、ちょっと、お父さん!?」
お父さんも、いくつもり!?
すると、圭一郎おじさんが、説明してくれた。
「アスカちゃん。今日はね、ぼくと兄さんも、会議に参加するんだよ」
「へ? ……えええええっ⁉」
ラドロでの、対ブラック・タキオン対策の話しあいに?
お父さんたちが?
な、なんでっ!?
「……おまえたちだけにまかせて、高見の見物をしていられる状況じゃないからな」
お父さんは、街の様子にするどく視線をめぐらせる。
ピリピリとした空気の中、歩く人は、げっそりと疲れ果てた表情をしているか、目をギラギラさせているか。
割れたガラスがのこる店のドアが、世界の変化をはっきりと物語っていた。
「それはそうだけど……」
「心配しなくて大丈夫だよ。いまの怪盗レッドが、アスカちゃんとケイだってことには、変わりない。2人の行動に口をはさむつもりはないよ」
圭一郎おじさんが言って、にっこりと微笑む。
「そ、それは心配していないけど……それだと、美華子さんは?」
世界がこうなってから、まだ情報をきいてない。
「1週間前に、ヨーロッパに買いつけにいくと言っていたからな。むこうで足止めされているはずだ。連絡をとる手段もないから、様子もほとんどわからないが……まあ、あいつなら大丈夫だろう」
って言いつつも、お父さんは心配そう。
「そっか。飛行機も全部止まってるもんね」
美華子さんなら、きっと無事――だと思っても、連絡がとれていないのは、心配だ。
「それも、おれたちがこの事態を解決すればいい問題だ!」
お父さんは、明るく言った。
この状況でも、大きく口を開けて笑えるのが、お父さんらしいや。
わたしたち4人はそろってラドロのビルに入っていく。
「きたか」
エントランスで、サクスが待っていた。
サクスがいつもいっしょにいる、有栖ちゃんのすがたは見あたらない。
「有栖ちゃんは?」
わたしは歩きながら、サクスにきく。
「自宅にいる。代わりの警備をつけているから、とりあえず安全だ」
「そっか。ありがと」
「おまえから礼を言われる筋あいはない」
サクスは冷たく応じる。
口調こそ感情はないけれど、サクスなりに有栖ちゃんを心配しているんだと思う。
有栖ちゃんからも伝わってくるけど、意外といいやつだもんね、サクスって。
……見た目は、はこわいけど。
そのままサクスは、非常階段のドアを開けると、階段を上がっていく。
エレベーターは止まっているから、とうぜん階段だ。
話しあいをする会議室が、いつもの30階だと……わたしはともかく、ケイや圭一郎おじさんは大丈夫かな?
そう思っていると、5階まで上ったところで、サクスがドアを開けた。
あ、いつもの階とちがう?
5階には、灰色のカーペットの床に、通路が左右に延びていた。
ふつうのオフィスに見える。
通路を左側に進み、サクスがひかえめにノックしてから、ドアを開けた。
「失礼します。お連れしました」
サクスがていねいな口調で、頭を下げる。
「わるいな、サクス。案内係をさせて」
中には、アルフォンスさんが、ソファにすわっていた。
壁ぎわには、恭也も立っている。
「今日の会議は、ここなんだね。上まで歩いて上るのかと思っちゃった」
「さすがに、脱出もままならない高さでやるわけにも、いかないだろ、子猫ちゃん」
恭也が、片手を上げて、わたしにこたえる。
それも、そうか。
――新スカイタワーの事件のあと、恭也と会うのは、はじめてだけど。
あいかわらずの、かるさ。
いつもと同じなのが、ちょっと安心しちゃうな。
そこへ、部屋のまんなかを大股につっきって、うちのお父さんが、ずかずかと歩いていった。
アルフォンスさんの前で立ち止まる。
そして――。
「よう、アルフォンス。生きてたか」
「ふん。わしよりも先にさっさと隠居したやつが、なんの用だ」
アルフォンスさんは、わたしたちにむけたことのないような、不服そうな表情をしている。
「のんびりしたかったんだけどなあ。隠居してられる状況じゃ、なくなったっていうだけだ」
お父さんはそう言って、ドッカリと空いているソファにすわる。
ちょ、ちょっと、お父さん!
マイペースすぎない⁉
しかも、なんか2人の間に、バチバチしたものを感じるし。
「まあまあ。2人とも言いたいことはわかるけど、そのぐらいにしておきなよ」
圭一郎おじさんが2人の間に割って入る。
って、ちょっと待って!
「お父さんたちとアルフォンスさんって、知りあいなの⁉」
あまりに自然すぎて流しそうになっちゃったよ!
そんなの、初耳なんだけど? えっ、前に、きいてたっけ?
「この人とは、昔、何度かターゲットがかちあったことがあってな。そのとき、やりあったことがあるだけだ」
「ええっ……やりあったって、大丈夫なの?」
それって、敵同士だったってことじゃない!?
いまにもケンカをはじめそうな雰囲気だったし!
「大丈夫だ、アスカ。本当にいまも敵同士なら、この人たちが『口ゲンカ』レベルでおさまるわけがないだろう」
ケイが冷静に言って、空いたソファにすわる。
ええ……そういう問題……?
「ケイくんの言うとおりだよ、アスカちゃん。……それにアルフォンスの本心は『ぼくたち初代レッドが、さっさと隠居してたのが気に入らない』ってだけだと思うから気にしなくていいよ」
「日本にきたとき、対タキオンの戦力として、あてにされていたみたいだったからな」
圭一郎おじさんとお父さんが、いつもの調子で話をしている。
そ、そうだったの⁉
初耳なことだらけなんだけど!?
………………でも、そういうことはあり得るかも。
お父さんたちの実力を知っていたなら、日本で助力を求めたいっていうのはよくわかる。
それに敵対していたといっても、憎みあってたって感じには、見えないし。
そんなこと言ったら、わたしと恭也だって一応「敵同士だった」わけだしね……。
「――――うるさい、隠居はだまっていろ。話しあいをはじめるぞ」
アルフォンスさんは、見たこともないほど不機嫌そうだ。
わたしも、あわててケイのとなりにすわった。
「あんな師匠、はじめて見たよ」
恭也もこちらにくると、じつにおもしろそうに、小声で教えてくる。
わたしも、あんなに感情的なアルフォンスさんははじめて見たかも。
顔をつきあわせたメンバーは、以前なら考えられない人たちばっかり。
これって現実なのかな? なんて思っちゃいそう。
でも、あたりまえか。
これからする話しあいは「世界を救うため」のものなんだもん。
少し前なら、まるで荒唐無稽(こうとうむけい)。
これ自体が、予想もしなかった現実なんだよね。