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第10回角川つばさ文庫小説賞《金賞》受賞作☆
大注目の新シリーズをひと足はやく公開中!
『泣き虫スマッシュ! がけっぷちのバドミントンペア、はじまる!?』は、2022年11月9日発売予定です!
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その日の夜、お風呂から出たあたしは、自分の部屋でベッドに寝転がってもんもんとしていた。
日下部(くさかべ)さんのことが気になって仕方がない。
あの後、日下部さんのお母さんからかんたんに話を聞いた。
日下部さんは野球とバレーボールをやってたけど、どちらも長続きしなかったんだって。
それ以上根ほり葉ほり聞くわけにもいかず、帰ることになっちゃったんだけど……。
日下部さんがスポーツ苦手なのは、そのときにいろいろあったからじゃないかな……。
日下部さんの言葉を思い出す。
ミスしても、がんばっても、背の高さと結びつけられて評価されてきたんだ、日下部さんは。
彼女の気持ちを無視した、身勝手な言葉をずっとあびてきた……。
あたしがバドミントンに誘ってるのも、結局いっしょだ。
日下部さんの才能に夢中になっただけで、彼女の気持ちをろくに考えていない。
ペアを組む相手がほしいっていう、自分の都合ばっかり。
相手の考えを無視してる。ちゃんと聞こうとしていない。
あたしの頭の中では、日下部さんが何度も言った『勝手』という言葉がぐるぐる回ってる。
ふいに、お父さんに言われたことを思い出した。
東京にいたころ、あたしの顔も見ずにお父さんが口にした言葉を。
『バドミントンなんていっしょうけんめいやって、将来なんの役に立つんだ。鶴巻(つるまき)さんとペアを組むのは、別に奈央(なお)じゃなくてもいいんだろ? そろそろ勉強に集中したらどうなんだ、奈央』
……あたし、お父さんと同じじゃん。
自分がいやだったことを、そのまま日下部さんにくり返してる……。
あああ~、だめだ! これじゃあ! とりあえず、寝る!
おふとんに入って、明かりを消した。そっと目を閉じてみる。
でも、ぜんぜん眠れない。泣いている日下部さんの姿が、頭に浮かんじゃうんだ。
どうして、こんなに気になるの?
体育館であのスマッシュを見ちゃったから?
それもあるだろうけど……。
『才能なんかなくても、将来の役に立たなくても、それでもあたしはやりたいの! バドミントンがっ! これだって、思ったんだもん! 好きなんだもん……!』
お父さんにバドミントンをやめろと言われたとき、あたしはそうさけんだ。
スポーツをやろうと言われて傷ついた日下部さん。
スポーツをやめろと言われて傷ついたあたし。
同じかもしれない。
正反対なようだけど、理想を押し付けられて苦しかったのは、同じなのかも……。
どんな自分になりたいか、自分で決めるべきなのに。他人に決めつけられるものじゃないのに。
たとえ、自分の親であっても。
あたしはむくりと起き上がった。部屋の明かりを点け、机に向かう。
今、この気持ちをすぐに形にしないといけない気がする……!
<第7回へとつづく>(11月5日公開予定)
※実際の書籍と内容が一部変更になることがあります。
\小説賞受賞作を応えん/
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つばさ文庫の新シリーズを、ぜひ応えんしてくださいね♪
『泣き虫スマッシュ! がけっぷちのバドミントンペア、はじまる!?』11月9日発売!
信じてみてよ、二人だからできること!
あたし奈央! バドミントンが大好きな小学5年生。
二人で一つのチームを組む「ダブルス」の大切な試合、あたしのせいで負けちゃった。
けれど、このままじゃ終われない!
転校先で出会ったのは、トクベツな才能(!?)をもった、ことりちゃん。
最高の新しいパートナーを見つけた!
でも「スポーツはもう絶対にしない」って完全キョヒ!?
それには、あたしと同じように、「らしさ」を押し付けられたことが関係していて?
「好き」のために一歩をふみ出したいキミへ、勇気をくれる応援ストーリーです!!
作:平河 ゆうき 絵:むっしゅ
- 【定価】
- 770円(本体700円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046322067