【主人公が●んじゃってる】なんて……そんなのアリ!?
ごくフツーの小学生だったはずなのに、目が覚めたらゾンビになっちゃってた、くいなちゃん。それでも気を取りなおして、学校に通うことにしたんだけど、ちょ~たいへん!毎日がハラハラドキドキそして大爆笑(なんで!?)だらけ。次の章でなにがおきるか、まっったく予測不能な、最強ゾンビガール学園コメディ。しかも、な、なんとさし絵イラストがカラー!!みんな、ぜったいぜったい、見ててよねっ!
6 頼人くん、チクチクする
頼人(らいと)くんに、せおわれてるうちに、わたしは思いだしていたんだあ。
赤ちゃんだった頼人くんを、おんぶさせてもらったこと。
小さくて、ふわふわしてて、あったかかったなあ……。
「それがいまじゃ、わたしがおんぶしてもらってる。大きくなったねえ」
「しみじみしてるばあいかぁ! くいな、おもいし、すっごく冷たいんだよ!」
走りながら、苦しそうな声で頼人くんが言った。
「なにそれ、失礼な!」
ちょっと、現実逃避くらいさせてよーっ!
「事実だろっ。あああ、やっとついた、はあ……」
ついたのは、体育館の裏。
頼人くんが、わたしをなるべくそっと、おろしてくれる。
保健室にいく、と先生に言ったものの、よく考えれば、養護の先生にさわられたら、まずい。
どこか人がいないところへいこう、ということになったんだ。
「はあ、はあ……。ぼくまで死にそうだ……」
頼人くんは、地面にすわりこんで、肩で息をしてる。
「ごめんね、頼人くん。迷惑かけて」
「……いいよ、別に。これ、シューズ、……というか、足」
頼人くんがゼエゼエ呼吸しながら、シューズに入ったままの、わたしの右足をわたしてくれる。
「ありがとう!
……でも、この足どうしよう? このままじゃ、うわばきにはきかえられないから、教室へもどれないし……」
そのとき!
ガラガラガラ―――ッ!
うしろから大きな音がして、わたしたちはそろって飛びあがった。
「おこまりですか~!?」
体育館のトビラの中からあらわれた、その小さなすがたは……えええっ!?
「とわさん!?」
「ええっ!? とわちゃん、なんでうちの学校にいるの!」
パニックになるわたしたちにかまわず、とわちゃんはトコトコやってきてしゃがみこむ。
「あ~、足がとれちゃったんだ。じゃあ、トワがチクチクしてあげる!」
へ? チクチク?
とわちゃんは、どこからか小さな黒い箱をとり出した。
「じゃーん! ゾンビ用おさいほうセットだよぉ~」
おさいほうセット!?
「ま、まさか、それで……っ!?」
頼人くんの顔が、青くなった。
「そーだよ。この針と糸で、くいなちゃんの足をくっつけるんだよ。時間がたったら、糸はとけてなくなるから、だいじょうぶだよ」
「へええ、すごいなあ……」
わたしは納得してしまった。
生きてる人だって、傷口や体の一部を縫って、つなげられるんだもんね。
ゾンビも同じなんだあ。
「それじゃ、いそいでチクチクしちゃうねっ」
とわちゃんが、針と糸を手にとる。
ちょっと、こわい気もするけど……ゾンビになってから、わたし、痛みの感覚は、ないんだ。
だから、足がとれたのにも、気づかなかったくらい。
「う、うん。よろしくっ」
わたしが、返事をしたとき、
「ちょっと待った――――――――――――――っ!」
頼人くんが、さけんだ。
「もうしわけないけど、この作業で、お金がいくらかかるのか、先に教えてもらいたいんだ」
「おかね? ええ~っと……」
とわちゃんは、こくびをかしげる。すると、
「頼人さんも、知恵をつけてきましたなあ。ええですよ。ご請求書は、こちらです」
出たっ!
とわちゃんの肩の上に、あのヘンな色の虫……カクリコが!
カクリコは、請求書をくわえてる。
わたしと頼人くんが、紙をのぞきこむと……
「ゾンビ用おさいほうセット、5千円……。足をくっつける作業料、ご、50万円っ!?」
金額を見て、わたし、すっとんきょうな声をあげちゃった!
「おさいほうセットはしょうがないにしても、作業料、高すぎない!?」
わたしが抗議すると、カクリコはすました顔でこたえた。
「とわさんは天才死霊術師(ネクロマンサー)でっせ? このくらい、いただくのがトーゼンですわ」
「そ、それはそうかもしれないですけどっ!」
そんな大金、おばあちゃんに、もうしわけなさすぎるよーっ!
でも、足がとれたままじゃ、やっぱりこまるし……どうしたらいいのっ!?
と、わたしがパニックになっていると、
「あのさ、とわさん。じゃあ、ぼくがかわりに縫うのって、むりかな?」
と、頼人くんが、しゃがんで視線をあわせ、とわちゃんに話しかけてる。
「ううん。チクチクするだけだよー?」
「ちょ、ちょっと、とわさん!?」
と、あわててカクリコが止めるけど、
「ジグザグになっても、時間がたったら糸が消えちゃうからへーきだよ。やってみる?」
と、とわちゃんが針を差しだす。
「アカーンッ! とわさんっ!」
カクリコの、あせったような声を気にせず、頼人くんは針を受けとった。
「うん! ぼくが、くいなを縫うよ!」
――そんなワケで。
チクチク……チクチク……チクチク
頼人くんが針と糸を使って、わたしの右足をつなげていってる。
「頼人くん、縫い目がそろっててキレイだね」
「家庭科の成績は、けっこういいからね」
集中した表情のまま、頼人くんが返事をする。
ホントに、なんでもできちゃう子だね、頼人くん。
「ああ、本日の稼ぎが……。死霊術師協会の上司に、どやされますわ……」
頭にのったカクリコは、ブツブツ言ってるけど。
当のとわちゃんは、ぜんぜん気にしてないみたいに、
「じょーず! おにいちゃん、じょーずだねえ」
なんて、ちっちゃなお手々をぱちぱちして、ほめてくれている。
そうだ。とわちゃんに、ききたいことがあったんだ!
「ねえ、とわちゃん。わたしがおもいっきりボールを蹴ったら、とんでもない弾丸シュートになっちゃったの。
しかも、足がとれちゃって……。なんで、こんなことに?」
ネクロマンサーのとわちゃんなら、知ってるよね。すると、
「えっとね。いきてるニンゲンは、ぜんぶの力を出せないよーになってるの。体が、こわれないよーに」と、とわちゃん。
「???」
「つまり、脳が、無意識にリミッターをかけとるんですわ」
カクリコが、つけたしてくれる。
「骨や筋肉が、動きの負担にたえられず壊れることが、あらへんように。でも、くいなさんの肉体は、死んでますからな。脳のリミッターが、かかってへんのですわ」
「だからね、くいなちゃんが、ほんきでエイッてすると、びーっくりパワーが出ちゃうのー」
「びーっくりパワーって……ああ! わたしが目覚めたとき!」
知らない男の子(頼人くんだったんだけど)に急接近されて、びっくりして思わず手で押したら、すごいいきおいでカベまでぶっとばしちゃったっけ。
「わたしの体に、そんなパワーが……生きているときは、へなちょこだったのに!」
自分の両手を、まじまじと見つめちゃったよ。
「うっかり本気を出さないでよ。また手や足がとれたら大変だし、ものを壊しちゃったら弁償しないといけなくなるから……」
と、頼人くんに、クギをさされたときだった。
ん?
なんだか、わたしたち以外の視線を感じたような。
キョロキョロと、あたりを見まわした。けど、だれのすがたもない。
気のせいかな……?
第7回につづく
↓本には、こんな感じで、もっと楽しいしかけがいっぱい! 絶対見てね♫
書誌情報
- 【定価】
- 880円(本体800円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324061
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