KADOKAWA Group
NEW ものがたり

【先行ためし読み!】『くいなちゃんはゾンビ!』 第3回


【主人公が●んじゃってる】なんて……そんなのアリ!?
ごくフツーの小学生だったはずなのに、目が覚めたらゾンビになっちゃってた、くいなちゃん。それでも気を取りなおして、学校に通うことにしたんだけど、ちょ~たいへん!毎日がハラハラドキドキそして大爆笑(なんで!?)だらけ。次の章でなにがおきるか、まっったく予測不能な、最強ゾンビガール学園コメディ。しかも、な、なんとさし絵イラストがカラー!!みんな、ぜったいぜったい、見ててよねっ!




 

3 墓場で出会ったいろんなヤツら



 そのあと、おばあちゃんと頼人(らいと)くんが、いろいろ説明してくれた。

 信じられない内容ばかりだったけど、もう信じるしかなかった。


 じっさい、ね。

 自分の手首をさわっても、し――――ん。脈がないの!


 そりゃそうだよ、心臓が、止まってるんだからね。

 それなのに、動けるってことは……。


 自分が、その……

「ゾンビ」だってことを認めないと、説明がつかない!


 わたしが死んで、8年経ってることも。

 テレビや、本や、インターネットを見せられて、納得した。


 わたしが死んでるあいだに、感染症で世界中が大変だったり、人気アイドルグループが解散したり、買ってもらったばかりだったはずのゲーム機の、新しい機種が発売されてたり……!

 いろんなことがおきていた。


 まるで、浦島太郎状態だよ!


   ●


 夕暮れどき、わたしは、頼人くんとおばあちゃんといっしょに、ある場所にきていた。


 そこは――墓地。

 なんでかって? それは……


 お父さんとお母さんの、お墓参りをするためだよ。


 8年前の事故で、わたしのお父さんとお母さんは、亡くなっていた。

 ゾンビには、ならなかったんだって。


 命を失ったのは同じなのに、ゾンビになったのは、わたしだけ。

 でも、目を覚ましていなかったから、お葬式には出られなかった。

 だから、今日はそのぶん……。


 お墓には、たしかに2人の名前がきざまれていた。

 わたしの記憶にある、最後の日付といっしょに。

 お墓の前で、わたしは両手をあわせて、目を閉じる。


 お父さん、お母さん。くるのが遅くなって、ごめんね……。


 一応、そんなふうに心の中で語りかけたけど、ぜんぜん信じられない。

 目を覚ましたときからずっと、わるい夢を見ているみたい。

 あの日に、かえりたい。

 お父さんとお母さんに、会いたい。

 どうして、どうして、わたしだけが……!

 目を開けて、となりにいるおばあちゃんに言った。


「ねえ、おかしいね。お父さんとお母さんのことを思うと、すごく苦しくて、悲しい。それなのに、涙が出ないんだ……」


 泣きそうな声でわたしが言うと、おばあちゃんは、いたましそうな顔になった。

「くいな、それは……」

 そのときっ!


「あのね、それはね、くいなちゃんがゾンビだからだよ? なみだのもとは、けつえきだから。ゾンビは、泣けないんだよぉ」

 とつぜん、甲高い子どもの声がきこえてきた!


 えっ? えっ?

 見まわすと、近くの石塔の上に、ちっちゃい子が、ちょこんっと、すわってる!


「ひゃあーっ! オバケッ!」

「トワは、オバケじゃないよぉ」



 悲鳴をあげたわたしに、女の子は、無邪気な、かわいらしい声でこたえる。

「……へ?」

 よく見れば、女の子にはちゃんと足があって、真っ黒いドレスから、ぶらぶらさせてる。

 見ためは、幼稚園児くらい?

 ものすごく、この場にそぐわない。

 あっ、石塔の上にすわるなんて、あぶないよって、ちゃんと教えてあげなきゃ!

 でも、なんでそんなところに……。

 と、わたしがとまどってると、女の子が先に口をひらいた。


「くいなちゃん、はじめましてっ。黄泉津永遠(よもつ・とわ)だよ。これから、ず――――っとよろしくねっ」

「あ、はい。よろしく……???」


 なにこれ。

 墓場で、なんでこんなちっちゃい子と、ニコニコ、あいさつをかわしてるの、わたし?


「くいな。この方、見ためは幼いけど、すごいのよ」

「うん。この子が処置してくれたおかげで、くいなはゾンビになれたんだよ。なんでも、その世界では有名な、最年少にして天才死霊術師(ネクロマンサー)なんだとか……」

「ええっ、そうなの!?」

 おばあちゃんと頼人くんの言葉に、とびあがるわたし。

 女の子は、石塔の上から、うれしそうに言う。


「うんっ! トワね、ゾンビさんのおしごとが、いっちばんとくいなんだ~!」


 ネクロマンサー……この子が……?

 おばあちゃんの話では、どうやらネクロマンサーも、死んだ人を、だれでもゾンビにできるってわけじゃないんだ。

 わたしが、トクベツに、めずらしい体質だったみたい。

 それにしても、ネクロマンサーっていうのが、わたしよりちっちゃい子だなんて意外すぎる!


 そのとき、とわちゃんのほうから、なにやら別の声がした。

「さて、みなさん? お墓参りもけっこうなんですけど、はやくおうちへ帰ったほうが、ええんちゃいますか?」

 そう言いながら、とわちゃんの肩の上に、ぴょいっと、あらわれたのは……


 ぎゃ――――! 虫~~~~~~~!

 なんか、ヘンな色してる!

 さらに、言葉しゃべってる――――! しかも関西弁を!!!


「くいなちゃん、この子はね、カクリコっていうんだよ~」

「どうも、カクリコです~。とわさんのマネージャーみたいなもんを、やらせてもろてます」

 しゃべる虫が、マネージャー……。

 あまりのことに固まってるわたしに、カクリコと名のった虫はなぜかニタリとした(気がした)。


「自己紹介は、このへんにしときまして……。わてらが、わざわざ忠告にきた理由をわかってまっか? このまま外におったら、くいなさんの体がドッロドロ☆になってまうからでっせ!

 …………はっ!?


「ドドドドド、ドドドドドドド、ドッロドロ!?」


 びっくりしすぎて、五・七・五のリズムをきざんじゃったよ!

 体がドロドロって、まさかっ!?


「くいなさん? あなた、自分が死んでることをわすれたら、あきませんで」

 そう言うと、とわちゃんの肩の上の虫さんが、器用に首をかしげて、わたしをにらんだ(!)。

「せやないと、よけいなお金が、かかりまっせ。われわれ死霊術師協会としては、そのほうがもうかって、ありがたいんですけども。ねえ、ひばりさん?」

 名前を呼ばれたおばあちゃんは、あわてはじめた。

「ご忠告ありがとう。は、はやく帰りましょう、くいな! 頼人も!」

「う、うん……」


「今回の出張代は、サービスしときますさかい。またお会いしましょうね~」

「くいなちゃん、ばいばーい!」

 虫さんと、とわちゃんの声に、ふりむくと……ええっ、もう石塔の上に、いない!

 な、なんなの、あの子ーっ!

 オバケみたいに、消えちゃったよ!


「くいな、はやく!」

 先にいる頼人くんが、呼んでる。

「う、うん!」

 とにかく、わたしたちは、いそいで家に帰ったんだ……!



 家につくなり、わたしは混乱しながら、たずねた。


「おばあちゃん! わたし、もう外に出られないのっ? 死ぬまでずっと、おうちでひきこもってなきゃいけないのっ? あっ、もう死んでるけど!」

「くいな、おちつきなさい」


「やだよ、そんなの……! なんのために生きてるのか、わかんないよ! あああ、もう死んでるんだけど!

 ややこしいなあ~っ! それはともかく!

 カクリコって虫さんの言葉が正しいなら、わたしのこれからの生活、地獄みたいだよ……!


「くいな。そんなことには、ならないよ」

「へっ?」

 頼人くんが、きっぱりと言った。

「ひばりさんから、とわさんに、もうたのんであるんだよ。くいなが目を覚ましたからには、なんとかふつうの生活をおくれるようにしてあげてくれって。……まあ、お金はかかるみたいだけど」

「そ、そうなの? おばあちゃん」

 わたしの声に、おばあちゃんがうなずいた。


「あの子……ていうか、お供の虫さんがねえ。なかなか商売上手なのよね。……よく言えば」

「わるく言えば?」と、わたしがきくと、

「とっても、がめついの」

守銭奴って言うんでしたっけ? あ、虫だけど」と、頼人くん。

 ひえーっ! とわちゃんは、あんなにちっちゃくて、かわいいのに!?


「でも、くいなが心配することはないのよ。お金がかかるっていっても、わたしとくいながくらしていくのに、こまるほどじゃないから。安心しなさい」

 おばあちゃんが、わたしを見つめて、ほほ笑んだ。

「本当に? わたし、外に出られるの?」

「ええ。今日は、いそいでお墓参りにいったからね。次は、ちゃんと準備すれば、だいじょうぶ」

「よ、よかった~!」


 だったら……。

 さっきから、考えていたことがある。

 わたしは、おばあちゃんにむかって言った。

「外出しても問題ないなら、おねがいがあるの」

「なに?」


「学校だよ。わたし、学校に、また通いたい」


「くいな……」

 おばあちゃんが、おどろいている。

「だって、わたし、いきなりぜーんぶ、なくなっちゃったんだよ?」

 5年生の秋には、宿泊研修があるはずだった。

 6年生になれば修学旅行。

 それから先は、あんまりイメージできないけど、中学生になって、高校生になって。

 その先だって……。


 未来が、まるごとなくなっちゃったんだ。

 ……そして、大切な家族――お父さんとお母さんも。

「ぜんぜん、納得できないよ。よくわからないけど、わたし、よみがえったからには……生きてるときにできるはずだったこと、できるだけ、ぜんぶやりたいの! ……ダメ?」

 わたしは、必死におばあちゃんを見あげる。


「でも、きっとすごく苦労するわよ。それに、もしあなたの正体を、みんなに知られたら……」

 それは、そうかもしれない。

 ゾンビが学校生活をおくるのは……むずかしいのかも。

 だけど、わたしは……。

 そのとき、


「ひばりさん。いいじゃないですか。くいなを、学校へいかせてあげませんか」

「頼人くん!?」

 声をあげたわたしを、頼人くんは、ちらっと見てから、


「くいなの言うとおりです。くいなはもう、8年っていう時間と、両親を、うばわれているんだ。そのうえ、これから、なんにもできないなんて……あんまりじゃないですか


 力強く言ってくれた。

「それに、ぼくはいま、くいなと同じ浪明学園の5年生です。くいなのそばにいられます」

 おばあちゃんを相手に、堂々とした態度。

 わたしのうしろをぴょこぴょこついてきた、あの頼人くんとは思えない。


「なにかあれば、ぼくが守りますから」

 たよりがいがある子になっちゃって!

「頼人くん、ありがとうっ!」

 わたしは思わず、頼人くんの両手をにぎる。

 と、頼人くんが、ちょっとこまった顔をした。


「………………あの、くいな……言いづらいんだけど、人の手をにぎったりしないほうがいいよ。すご――――――く冷たいのが、バレるから」

「はっ、そうだった!」


 わたし、死んでるんだった!

 わたしは、あわてて両手を引っこめたのだった……。


第4回につづく

↓本には、こんな感じで、もっと楽しいしかけがいっぱい! 絶対見てね♫





書誌情報


作: 平河 ゆうき 絵: からあげたろう

定価
880円(本体800円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046324061

紙の本を買う


その他の連載はこちらからチェック!▼



この記事をシェアする

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • LINEでシェアする
ページトップへ戻る