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【スペシャルれんさい】『星のカービィ ワドルディのおるすばん大決戦!!』第4回 にせものの見分け方


デデデ城でおるすばん中のワドルディ隊に、メタナイツたちが『城を渡せ』と襲いかかってきた!? ワドルディたちは力を合わせて、メタナイツに立ち向かう! 2025年7月9日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ ワドルディのおるすばん大決戦!!』は、ワドルディたちが主役の外伝シリーズ! 大注目の新作の、先行ためし読みだよ!! 

◆第4回
今日も、あくびが出るほど平和なプププランド。デデデ城では、おるすばん中のワドルディたちが、いつも通りおしごとの真っ最中。
そんな中、とつぜん、大トラブルが始まっちゃった!!??? 

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にせものの見分け方

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 デデデ城では、ワドルディたちが、いつもと同じように、楽しくはたらいていた。

 そうじ、せんたく、ゴミ出しに、アイロンがけ。デデデ大王は留守だが、しごとは山積みだ。

「おっしごっと、おっしごっと、たのしいな!」

「おっそうじ、おっそうじ、きれいだな!」

 部屋のそうじが終わったら、窓ふきに取りかかる。

 ワドルディたちは、みんな、窓ふきが大好きだ。城の窓をぜんぶピカピカにすれば、明るい日の光が、さんさんと入ってくるからだ。

「大王様は、ぽかぽかのおひさまが大好きだもんね」

「おひさまポッカポッカ、窓はピッカピッカ、うれしいな!」

 みんなで歌いながら、窓ふきを終えた。

 リーダーのバンダナワドルディが、みんなに言った。

「おつかれさま! それじゃ、お昼ごはんのしたくをしよう。はいたつくんには、栄養たっぷりの、たまごのおかゆを作ってあげようね」

「はーい!」

 ワドルディたちが、元気よく返事をしたときだった。

 通信が入ったことを示すベルが鳴り、ランプがピカピカと光った。

 しかも、ふだんの緑ランプではなく、「緊急事態」を示す赤ランプだ。

「あれ? 緊急通信だね。だれからだろう?」

 バンダナワドルディを先頭に、ワドルディたちは通信室に急いだ。

 スクリーンに映し出されたのは、けわしい表情のバル艦長だった。

 バンダナワドルディは、おどろいて言った。

「バル艦長さん……何か、ごようですか?」

「重大かつ緊急の用件だ。デデデ大王に代わってくれ」

「大王様は、今、おるすです。コックカワサキの新作デザート試食会に行ってるので」

 すると、バル艦長は、ハッとしてうなずいた。

「試食会か。なるほど、そうだった。メタナイト様も招かれている、あの試食会だったな。ワシとしたことが、忘れていたわい」

 バル艦長は、いきおいこんで、うなずいた。

「よし! デデデ大王が不在ならば、むしろ好都合!」

「は?」

「なんでもない。つまり、今、デデデ城には君たちしかいないのだな? リーダーの君が、デデデ城の責任者というわけだな?」

「え……え……ええっと……?」

 バンダナワドルディは、とまどった。

「はい。ぼくが、ワドルディ隊のリーダーで、おるすばんをまかされていますけど……それが、何か……」

「君に要求する。ただちに、デデデ城をわれわれに明け渡したまえ」

「……………………へ?」

 バンダナワドルディも、その他のワドルディたちも、目をぱちくりさせた。

「何を言ってるんですか、バル艦長さん。意味がわかりません」

「説明している時間はないのだ。『要求』が聞き入れられないというなら、『命令』に切り替えるぞ。これは、命令だ。ただちに、デデデ城を、われわれに明け渡せ!」

 ワドルディたちは、ざわついた。

 ひとりのワドルディが、心配そうに言った。

「どういうことでしょう? なんで、バル艦長さんは、あんなことを?」

 ものしりワドルディが、小声で言った。

「バンダナせんぱい。気をつけましょう。なんとなく……陰謀の香りがします」

「え!? いんぼー!?」

「ええ。様子がおかしすぎます。この人物は、本当に、バル艦長なのでしょうか」

「どういうこと?」

 とまどうバンダナワドルディに、ものしりワドルディは重々しくささやいた。

「以前、メタナイト様に変装してあばれ回った悪党がいましたよね。こいつも、ひょっとすると、あのときのような……」

「にせものってこと!?」

 バンダナワドルディは、ごくりとつばを飲んでみんなの顔を見回し、小声で言った。

「そうだね。このバル艦長っぽいひとが、本物かどうか、たしかめなくちゃ」

「問題は、どうやってたしかめるか、ですが」

「大丈夫。ぼく、いい考えがあるよ」

 バンダナワドルディは、キリッとして、スクリーンに向き直った。

「バル艦長さん。ひとつ、お願いがあります」

「お願いだと?」

「ぼうけんくんと話をさせてください」

 これを聞いて、ワドルディたちは、顔をかがやかせた。

 いいアイデアだ。ワドルディ隊の一員だったぼうけんワドルディが、一緒にいるなら、このバル艦長は本物ということになる。

 しかし。

 スクリーン上のバル艦長は、首を振って言った。

「ぼうけんくん? なんだ、それは。知らんな。いいから、とにかく、城を……」

「この、にせものめー!」

 バンダナワドルディは、バッチーンと通信をたたき切った。


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「あれ? 通信が、とちゅうで切れてしまったぞ。どうした、こら」

 バル艦長は、きょとんとして、通信装置をたたいた。

 「……」

 背後に、なんとなく怒りの波動を感じて、バル艦長は振り返った。

 くっつきそうなくらい近いところに、メラメラと怒りを燃やす、船員ワドルディの顔があった。

「なんですかぁ、今のは!」

 船員ワドルディは、顔をまっかにして、バル艦長をどなりつけた。

「なんで、ぼくのこと、『知らん』なんて言ったんですかー!」

「え? おまえの……?」

「ぼうけんくんは、ぼくです! ワドルディ隊では、そう呼ばれてました!」

「え? ……あ!」

 バル艦長は、やっと思い出して、目をパチパチさせた。

「そうだった。すっかり忘れておった」

「忘れておった、じゃありませんよー! おかげで、通信を切られちゃったじゃないですか!」

 アックスナイトも、ガミガミと言った。

「こちらからの通信は、完全にブロックされてしまいました。もう、取り返しがつきませんよ!」

 メイスナイトも、プンプンしながら言った。

「ものすごく、感じが悪かっただス。えらそうで、いばりすぎだス!」

 ソードナイトとブレイドナイトも、バル艦長にきびしく詰め寄った。

「オレたちが口をはさもうとしても、押しのけるし!」

「交渉の仕方が、なってない! あれじゃ、ワドルディたちが怒るのも当然だ!」

 みんなからにらまれて、バル艦長はたじたじとなった。

「ワ、ワシは……あの凶悪にせもの軍をたおすために、なんとしてでもデデデ城を手に入れなくてはならんと必死で……」

 船員ワドルディが、ぶんぶんと頭を振って言った。

「だからって、言い方が最悪です! ぼくのことも、忘れてるし!」

「いや、おまえを忘れたわけじゃなくて……船員ワドルディという呼び名になじみすぎて、昔の名前を忘れてしまっただけで……」

「知りませんよ、もう!」

 船員ワドルディは、ツーンとそっぽを向いた。

 バル艦長は、すっかりしょげ返ってしまったが――とつぜん、顔を上げて叫んだ。

「そうだ! いいことを思いついたぞ!」

 ブレイドナイトが、しらけて言った。

「どうせ、ろくなことじゃないだろ」

「いや、聞け。メタナイト様に、ご指示をあおぐのだ。この緊急事態をご報告すれば、ただちに試食会を切り上げ、ワシらを率いてくださるはずだ」

 メタナイツたちも、船員ワドルディも、おどろいた。

「なんと。本当にいい考えだ!」

「そうだそうだ、もめてる場合じゃない」

「早く、メタナイト様に連絡を……!」

 バル艦長が、ふたたび通信装置に手をかけたときだった。

 ジャベリンナイトが、血相(けっそう)を変えて叫んだ。

「うわっ、たいへんだ! にせもの戦艦ハルバードが、また攻撃してくるぞ!」

 全員がスクリーンを見た。

 ハルバードにそっくりな戦艦が、ビーム砲を発射!

 小型艇はガクンと大きくゆれた。バル艦長は、顔を引きつらせた。

「いかん、通信機能がやられたぞ!」

「ど、どうしますか、艦長! このままでは……!」

「プププランドだ! とにかくプププランドに逃げこむのだ!」

 他に、助かる道はなかった。

 小型艇はスピードを上げ、プププランドを目ざした。


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 さて、こちらはデデデ城。

 ものしりワドルディが、メガネをクイッと押し上げて言った。

「やはり、にせものでしたね。さすがは、バンダナせんぱい。ぼうけんくんの話題を出したのは、すばらしいアイデアでした。本物のバル艦長なら、ぼうけんくんを知らないはずがありませんからね」

 バンダナワドルディは、うなずいた。

「バル艦長さんに変装して、城を明け渡せなんて。とんでもない悪党だよ!」

「でも、見破ることができて、よかったです。あぶないところでした」

「うん。だけど、まだ安心はできないよ。敵が、かんたんにあきらめるとは思えない。お城をうばうために、きっと攻めてくるはずだよ」

 ワドルディたちは、心配そうに顔を見合わせた。

「そんな……どうしましょう、バンダナせんぱい」

「コックカワサキのお店に連絡しよう。大王様に、知らせなくちゃ。メタナイト様にも、バル艦長さんのにせものがあらわれたって、報告しておこう。それから、お城を守れるように、武器の準備も進めないと。大王様がお帰りになったら、すぐに戦えるように!」

「はい!」

 ワドルディたちは、さっきまでののんびりした様子とは打って変わって、真剣な顔でうなずいた。

 バンダナワドルディは、通信機のスイッチを入れ直し、コックカワサキの店を呼び出した。

 スクリーンに映ったコックカワサキに、バンダナワドルディは言った。

「こんにちは、コックカワサキ。今日の試食会、急に行けなくなって、ごめんね。それで、急ぎの用件なんだけど……デデデ大王様に代わってもらえる?」

 コックカワサキは、困った表情で言った。

「デデデ大王は、いないよ」

「……え?」

「デデデ大王もメタナイトさんもカービィも、いないんだ」

 バンダナワドルディは、おどろいた。

「どうして!? もう試食会は終わったの!?」

「ううん、そうじゃなくってね。話せば長くなるんだけど……」

「手みじかに! お願い!」

「うん……カービィのにせものが、あらわれたんだよね。そいつが、新作デザートをぬすんで、逃げ出しちゃったんだ。三人は、そいつを追いかけていったってわけ」

「カービィのにせもの……!?」

 バンダナワドルディは、青ざめた。

 コックカワサキは続けた。

「ぼく、近所を探してみたんだけど、三人とも見つからないんだ。にせものカービィも、ぬすまれた新作デザートも、行方不明のままだよ」

「……わかった! 何か、手がかりがつかめたら、知らせてね!」

 バンダナワドルディは通信を切った。

 話を聞いていたものしりワドルディが、真剣な目をして言った。

「バル艦長ばかりか、カービィさんのにせものまであらわれたなんて! 敵の正体はわかりませんが、とんでもない大事件が起きていることは、まちがいないですね」

「うん。しかも、カービィも大王様もメタナイト様も、カービィのにせものを追いかけてる。つまり、デデデ城には、しばらく戻って来られないかもしれないんだ」

 バンダナワドルディは、両手をぎゅっとにぎりしめて、続けた。

「ぼくらだけで、お城を守るしかないってことだよ。デデデ大王様がお帰りになるまで、どんな敵が攻めてきても、守りきらなくちゃ!」

「ぼくらだけで……!?」

 ワドルディたちは、まっさおになった。

「そ、そんなこと、できるでしょうか……」

「できるか、じゃない。やるしかないんだ」

 バンダナワドルディは、きっぱりと言った。

 ワドルディたちは、目を見開いて、バンダナワドルディを見つめた。

 みんなの目が、かがやいた。

「バンダナせんぱい! かっこいいです! せんぱいの言うとおりです!」

「力を合わせて、がんばりましょう! お城を守り抜きましょう!」

 ぶき屋ワドルディが、手を上げて言った。

「ぼく、お城の武器を整備します。大砲も、すぐに使えるように準備します!」

 どうぐ屋ワドルディも言った。

「ぼくも、お城の守りを固めるための道具を作ります。どんな敵が攻めてきたって、追い払いましょう!」

「がんばろう、おー!」

 ワドルディたちは、勇ましく声を上げた。


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 カービィたちは、逃げ回るシャドーカービィを追いかけていた。

「待てってばー!」

「オレ様のデザートを返せー!」

 シャドーカービィは足が速い。それに、ちらりと姿を見せたかと思うと、すぐに木立の間にかくれてしまうので、つかまえることができない。

 メタナイトが、足を止めて言った。

「やみくもに追いかけても、無駄なようだ。ここは、おちついて考えよう」

 デデデ大王が、息を切らせて言った。

「考えるだと? 何をだ?」

「そもそも、シャドーカービィの目的は、何なのだろう。なんのために、このような行動をしているのだ?」

 カービィが言った。

「決まってるよ。ぼくらのおやつを、横取りするためだよ」

「それなら、こんなに逃げ回る必要はないだろう。私たちを振り切って、食べれば良いだけだ」

「あ、そっか。じゃあ……うーん……?」

 カービィは、考えこんだ。

 メタナイトは、真剣な口調で言った。

「他にも何か異変が起きていないか、調べる必要がありそうだ。私の部下たちに連絡してみよう」

 メタナイトは小型通信機を操作したが、すぐに、頭を振った。

「……通じない。どうやら、電波が妨害(ぼうがい)されているようだ。これも、シャドーカービィのしわざか」

「まったく、腹立たしいわい!」

「なんとかして、この森から脱出しなければ。私の部下たちに連絡ができれば、こころ強いのだが……」

 メタナイトは、部下たちを、信頼しきっていた。

 まさか、戦艦ハルバードが大破して、部下たちが必死で逃走中だなんて、この時点ではわかるはずもなかった。

     


メタナイツたちの小型艇で、デデデ城で、カービィたちのところで、それぞれ、いろんな事件が大発生! メタナイツたちは、デデデ城を目ざして着陸しようとしているけれど、むかえるワドルディ隊は、撃退する気まんまん!! このあと、いったいどうなるの!?
次回「デデデ城を守れ!」をおたのしみに! (7月4日公開予定)



『星のカービィ ワドルディのおるすばん大決戦!!』は2025年7月9日発売予定!


作: 高瀬 美恵 絵: 苅野 タウ 絵: ぽと

定価
814円(本体740円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323590

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つばさ文庫「星のカービィ」シリーズは2023年で10周年! 10年分の大冒険でいっぱいの特集ページだよ!!



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作: 高瀬 美恵 絵: 苅野 タウ 絵: ぽと

定価
814円(本体740円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323071

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定価
1,320円(本体1,200円+税)
発売日
サイズ
B6判
ISBN
9784041116197

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