
デデデ城でおるすばん中のワドルディ隊に、メタナイツたちが『城を渡せ』と襲いかかってきた!? ワドルディたちは力を合わせて、メタナイツに立ち向かう! 2025年7月9日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ ワドルディのおるすばん大決戦!!』は、ワドルディたちが主役の外伝シリーズ! 大注目の新作の、先行ためし読みだよ!!
◆第3回
メタナイトは、コックカワサキの新作デザート試食会へおでかけ中。戦艦ハルバードでは、残されたメタナイツたちが、くつろいだ時間を送っているようだけれど……?
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メタナイツ危機一髪!
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さて、こちらは戦艦ハルバード。
ポップスターにほど近い宙域を、ゆったりと航行中だ。
メタナイトが出かけているので、バル艦長もメタナイツも、思いっきりダラダラしたティータイムを楽しんでいた。
テーブルに、クッキーやせんべいや、紅茶のカップを運んでいるのは、船員ワドルディ。
かつてはデデデ大王の部下で、「ぼうけんくん」と呼ばれていたのだが、ゆえあって、現在は戦艦ハルバードの一員となっている。
「ワドルディ、お茶のおかわりをくれ」
「はい、バル艦長」
ティーカップにお茶をそそぐと、バル艦長は、満足げに言った。
「けっこう、けっこう。最初は、どうなることかと思ったが、おまえもすっかりメタナイト様の部下らしくなったな」
「ほんとですか!」
船員ワドルディは、うれしくなった。
「うむ。船員ワドルディという呼び方が、しっくりくる。以前は、たしか、別の名で呼ばれていたな。なんだったか……」
「はい。以前は、ぼうけ……」
言いかけたとき、トライデントナイトが大声で言った。
「おーい、船員くん! オレは、クッキーがもっと食べたいぜ。おかわり、おかわり!」
船員ワドルディは、あきれて言った。
「食べ過ぎですよ、トライデントナイトさん」
「いいじゃないか、メタナイト様がいないんだから。いつもは、だらしない姿をメタナイト様に見られたくないから、かっこつけてるけどさ!」
トライデントナイトは、お皿の上にクッキーを山盛りにして、にんまりした。
ジャベリンナイトは、調子に乗って、ごろんとソファに寝そべったままクッキーをかじった。
「へへへ、このオレのワイルドな姿を見てくれ! メタナイト様がいないから、こーんな行儀の悪いこともしちゃうんだぜ!」
「あ、ワシもやるだス! ほら、ワシのほうが、行儀悪いだス!」
メイスナイトも、寝転がってズルズルと、紅茶をすすった。
いつもはまじめなアックスナイトまで、クスクス笑って言った。
「オレなんか、寝転がってマンガを読みながら、クッキーとせんべいを同時に食べちゃうぜ。まいったか!」
そのかたわらでは、ブレイドナイトとソードナイトが、おたがいにドーナツを投げ合って、剣先で受け止めている。
二人は、剣に突き刺さったドーナツを、ガツガツ食べながら言った。
「オレたちのドーナツ投げは、ただの遊びじゃないぜ!」
「これも鍛錬(たんれん)、それに、腹ごしらえだ! 戦士にとって、栄養は大事だからな!」
そう言うわりには、どちらもウキウキと楽しそうだ。
船員ワドルディは、あきれて言った。
「もう……みなさん、はめを外しすぎですよ。いくら、メタナイト様がいらっしゃらないからって……」
トライデントナイトが言った。
「オレたちは、いつも、まじめすぎるからな。たまには、息抜きも必要なんだ。戦士の休息ってヤツさ」
「それにしても、やりすぎですよ。ね、バル艦長……」
船員ワドルディは、バル艦長を振り返った。
バル艦長は、紅茶とミルクをいっぺんに口に流しこんで、フガフガしていた。
「ワシだって、負けんぞ! これぞ、きゅうきょくの……フガフガ……ミルク……フガ……ティー……ブホォォォ!」
「何やってんですかー! おそうじするの、ぼくなんですからね! あんまり、散らかさないでくださいよ!」
船員ワドルディが、文句を言ったときだった。
とつぜん、激しいゆれが戦艦ハルバードをおそった。
ダラダラしていたメタナイツたちもバル艦長も、そして船員ワドルディも、ひとたまりもない。全員そろって床に転がり、かべに叩きつけられた。
「うわあああああ!」
「地震だー! みんな、テーブルの下に避難しろ!」
「バル艦長、宇宙戦艦に地震は関係ありません! これは、敵襲……!」
ダラダラしていたメタナイツだが、さすがに、訓練が行き届いている。たちまち、全員が持ち場について、緊急事態にそなえた。
「船外カメラに切り替えろ! 状況の確認を!」
ロビーの大スクリーンに、映像が映し出された。
それは、信じがたい光景だった。
メタナイツたちも、船員ワドルディも、言葉を失って映像を見つめた。
恐ろしい、闇の気配をまとった巨大な戦艦だ。しかも、その外見は――。
「ま……まさか……戦艦ハルバード……!?」
バル艦長のうめき声が、ロビーにひびいた。
そう。スクリーンに映っているのは、まさに戦艦ハルバード。
戦艦ハルバードが、戦艦ハルバードに、攻撃を仕掛けている……!
「どういうことだス!?」
「落ちつけ! 敵は、戦艦ハルバードのにせものだ!」
「そ、そんな……戦艦ハルバードは、宇宙最強の戦艦なんだ! にせものなんて、造れるはずがない……!」
と、そのとき。
通信席のアックスナイトが叫んだ。
「敵艦から、通信です! 受信します!」
スクリーンの映像が切り替わった。
メタナイツたちは、ぼうぜんとした。
「ま、まさか……!」
「メタナイト様!」
スクリーン越しに、こちらを冷たく見つめているのは、まさしく、メタナイトそっくりの仮面の騎士だった。
それだけではない。彼の後ろには、部下らしき戦士たちまで、きちんと整列していた。
メイスナイトが、ふるえ上がって言った。
「ワシらが、だらしなさすぎたんだス! それで、メタナイト様がお怒りに……!」
トライデントナイトが、頭をかかえてジタバタしながら言った。
「メタナイト様は、早くも、新しい部下を連れていらっしゃる! オレたちは、クビってことだぜ!」
ジャベリンナイトが、ガバッとひれふして叫んだ。
「も、も、申しわけありません、メタナイト様! もう、ぜったい、寝っ転がっておやつを食べたりしません!」
「オ、オレたちだって、今後はけっして、ドーナツを投げて遊ばないとちかいます!」
「ワ、ワ、ワシもですぞ! もう二度と、紅茶とミルクをいっしょに飲んだりしませんぞ……!」
アックスナイトが、冷静に言った。
「待ってください。あれは、メタナイト様ではありません」
「……なに? だが……」
「よく見てください。似ているけど、ちがいます」
メタナイツたちは、こわごわ、スクリーンを見つめた。
たしかに、アックスナイトの言うとおり。そこに映っている騎士は、メタナイトにそっくりだが、彼本人ではなかった。
仮面からのぞく目の光が、メタナイトよりずっと冷たい。全身から、ぞっとするような悪意がにじみ出ている。
バル艦長がつぶやいた。
「メタナイト様のにせもの……だと? フ……フハハ! 笑わせる!」
バル艦長は、いきなり自信を取りもどして、胸を張った。
「にせものなど、取るに足らん! どうせ、見せかけだけのヘナチョコに決まっておるわ! あの戦艦だって、きっと、ただのハリボテだ! 恐れることはないぞ、一斉射撃をおみまいだ! ドカーンといけ!」
「はっ! 総員、配置に……」
アックスナイトが、言いかけたときだった。
スクリーンに映った、にせもののメタナイトが、おもむろに片手を上げた。
顔は仮面におおわれているのに、なぜか、冷たい笑いを浮かべたように見えた。
にせメタナイトは、片手をゆっくり横にすべらせた。
まるで、「全滅せよ」と言い渡すかのように。
「な、何をする気だ……?」
バル艦長が、あわててアックスナイトに命じた。
「船外カメラに切り替えろ。あやつが何をたくらんでいるか、確かめるのだ!」
「は、はい!」
スクリーンの映像が、ふたたび、船外カメラに切り替わった。
にせものハルバードの艦砲が、すべて、こちらに向けられようとしていた。えものにねらいを定めた、凶暴なけものを思わせる動きだ。
バル艦長が絶叫した。
「はぎゃぁぁぁぁ!? ううう撃つ気かぁぁ!?」
「落ちついてください、艦長! あんなの、ハリボテに決まってます!」
「そうだス! 戦艦ハルバードの超高性能装甲を、撃ちぬけるはずがないだス!」
しかし。
無数の艦砲が、いっせいに火を噴いた!
ドォォォォォン!
すさまじい衝撃がおそいかかる。
「あひえぇぇぇ!」
「きゃあああああああああああ!」
「あっさり撃ちぬかれただス――!」
宇宙最強をほこる戦艦ハルバードの装甲にヒビが入り、メリメリと不吉な音を立て始めた。
「ぬぬぬー! 反撃だ! 撃ち返せー!」
「ダ、ダメです! 艦砲がやられました!」
「ぜ、全員、退避――! 小型艇に乗りこめ――!」
バル艦長が、まっさきに駆け出した。非常用の小型艇ドックに向かって。
「ひゃぁぁぁぁい!」
「み、みんな、急げー!」
「ま、待ってください! 助けてぇ!」
船員ワドルディは、おそいかかる激震に耐えきれず、よたよたと転びそうになった。
「うりゃぁぁ、何をしてる!」
「つかまれ! 急ぐんだ!」
メタナイツたちは、力を合わせて船員ワドルディをかつぎ上げ、ますますスピードを上げた。
全員が小型艇に飛び乗った、次の瞬間。
ますます威力を増した一斉砲撃が、ふたたびハルバードにおそいかかった!
ブァァァァァァン!
なんと、なんと。銀河最強とうたわれた戦艦ハルバードが、真っ二つに裂けた。
無敵のはずの艦体が、無惨に砕け、黒煙につつまれる。
その黒煙を裂いて、小型艇が飛び出した。
ぐんぐんと、全速力で、戦艦ハルバードから離れていく。その中では、バル艦長とメタナイツ、そして船員ワドルディが、ギュウギュウ詰めになっていた。
「せ、せまい……!」
「仕方ないぜ、これは予備だからな。メインの小型艇は、メタナイト様が使ってらっしゃるんだ」
「バル艦長、おなかがじゃまです!」
「うるさい、ワドルディ!」
ブレイドナイトが言った。
「それにしても、今のは何者だったんだろう? 信じられないくらい、メタナイト様にそっくりだったが……」
ソードナイトが、うなずいた。
「ああ。それに、戦艦ハルバードにそっくりな戦艦まで用意しやがって!」
船員ワドルディが、バル艦長のおなかの下からはい出して、言った。
「でも、メタナイト様より、ずっと残酷そうでしたよ。戦艦だって、ハルバードとちがって、ものすごく荒っぽい攻撃をしてきたし……」
「うーむ……ただのにせものにしては、強すぎるな……」
と、そのとき。
「まずい! 来るぞ!」
敵艦の様子に気を配っていたブレイドナイトが叫び、操縦桿(そうじゅうかん)に飛びついた。
「回避ぃぃぃー!」
次の瞬間、なぞの戦艦が、閃光を放った。
小型艇めがけて、ビーム砲を撃ってきたのだ。
間一髪! 回避が間に合った。小型艇に、損傷はない。
けれど、一行は震え上がった。
「ま、まだ攻撃する気かぁぁ!」
「こっちには、兵器がないんだぞ! ひきょう者!」
もちろん、抗議の声なんて、届くはずもない。
バル艦長が叫んだ。
「とにかく、逃げるのだ! スピードなら、負けんぞ!」
「は、はい!」
小型艇は出力を上げ、全速力で逃げ出した。
けれど、なぞの戦艦は、追撃をゆるめない。ゆっくり向きを変えて、小型艇を追ってくる。
「な、な、なんと、しつこい!」
「敵は本気です! 本気で、オレたちを全滅させる気なんだ!」
小型艇は、スピードは出るものの、あまり長い距離を航行することはできない。しばらくは逃げ回れるかもしれないが、いずれは、追いつかれてしまう。
「どうすればいいんだ……!」
「この小型艇じゃ、勝負にならない! こっちにも戦艦が必要だ!」
「だが、ハルバードはもう……!」
「ハルバードの代わりの戦艦なんて、ないだス!」
メタナイツたちが、頭をかかえたときだった。
バル艦長が、いきおいよく顔を上げた。
「そうだ! ワシに、名案がある!」
「名案!? なんですか、艦長!」
「戦艦がないなら、地上で戦えば良いのだ!」
「地上……?」
「要塞だ! 兵器をそなえた要塞に立てこもれば、あの戦艦と戦うことができる!」
アックスナイトが、とまどって言った。
「要塞って言われても……そんなもの、どこに……?」
「あるではないか! ポップスターに!」
バル艦長は、目をらんらんと光らせて叫んだ。
「さいわい、ポップスターは、すぐ近くだ。凶悪にせもの軍団にやられる前に、ポップスターに――プププランドに着陸するのだ!」
ジャベリンナイトが言った。
「待ってください、バル艦長。プププランドは、のんき者ぞろいの、平和な場所ですよ。要塞なんて、ないです」
「ある! デデデ城だ!」
バル艦長の言葉を聞いて、ひっくり返りそうになったのは、船員ワドルディ。
「デデデ城~!? しっかりしてください、バル艦長! デデデ城は、お城です! 要塞じゃないです!」
「だが、このままでは、あいつらの思うがままだ! ぜったいに、助からんぞ!」
重い言葉だった。船員ワドルディも、メタナイツたちも、ゾッとした。
ソードナイトが、つぶやいた。
「……案外、いい作戦かもしれないな」
ブレイドナイトが、考えこみながら言った。
「しかし、デデデ城が要塞代わりになるかな? あのデデデ大王の城じゃなぁ……」
船員ワドルディが、ムッとして言った。
「何を言ってるんですか。デデデ城は、プププランドの偉大なる支配者、デデデ大王様のお城ですよ。プププランドを守るための戦力が、かんぺきにととのっています。デデデ城なら、どんな敵とだって戦える……」
船員ワドルディは、ハッとして、言い直した。
「だ、だからって、勝手に乗りこんでいいわけじゃないですけど。ああ、でも、しかたないです! デデデ大王様に、お願いしましょう!」
バル艦長が、張りきって言った。
「よぉし、決まりだ! アックスナイト、ただちに、デデデ城に連絡を!」
「はっ!」
アックスナイトは、大急ぎで、通信装置に飛びついた。
のんびりダラダラすごしていた戦士の休日が、まさかの大ピンチに早変わり!? 闇をまとった戦艦に乗る、メタナイトのにせものは、いったい何者!?
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