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【スペシャルれんさい】『星のカービィ ワドルディのおるすばん大決戦!!』第5回 デデデ城を守れ!


デデデ城でおるすばん中のワドルディ隊に、メタナイツたちが『城を渡せ』と襲いかかってきた!? ワドルディたちは力を合わせて、メタナイツに立ち向かう! 2025年7月9日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ ワドルディのおるすばん大決戦!!』は、ワドルディたちが主役の外伝シリーズ! 大注目の新作の、先行ためし読みだよ!! 

◆第5回
メタナイトの留守中、闇をまとったなぞの戦艦に襲われ、撃墜(げきつい)されてしまった戦艦ハルバード。メタナイツたちは、命からがら、プププランドにたどりついたけれど……? 

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デデデ城を守れ!

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 小型艇は、なぞの戦艦を振り切って、なんとかプププランドに到着した。

 まず一行が向かったのは、コックカワサキのレストラン。メタナイトに報告し、指示をあおぐつもりだったのだが――。

「なんとぉ!? メタナイト様が、いない!?」

 コックカワサキから事情を聞いて、バル艦長たちはおどろいた。

「どうなってるんだ!? カービィのにせものまで、あらわれたなんて……」

「とてつもない緊急事態だぞ!」

「メタナイト様を探しに行かなくては……!」

 コックカワサキが、困り顔で言った。

「ぼく、探してみたんだけど、どこにもいないんだよ。メタナイトさんの通信機に連絡しようとしても、つながらないんだ。たぶん、あの黒いカービィみたいな子が、妨害(ぼうがい)してるんだと思うよ」

「なんてことだ……!」

 メタナイツたちは、がくぜんとした。

 ソードナイトが言った。

「こうしちゃいられないぜ。グズグズしてたら、あの凶悪なにせもの軍団が攻めこんでくる!」

 ブレイドナイトが、うなずいた。

「その通りだ。メタナイト様をたよらず、オレたちだけで切り抜けるしかないんだ」

 アックスナイトが言った。

「最初の計画どおり、デデデ城に立てこもることにしましょう。バル艦長、指揮をお願いします!」

「むむむむ……わかった! 行くぞ、諸君!」

 バル艦長は、表情を引きしめた。


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 さて、一行がレストランを出て行ったあと。

 コックカワサキは、考えこんだ。

「にせもの軍団? デデデ城に立てこもる? いったい、どういうことだろう。何が起きてるのかなあ……」

 今、デデデ城には、ワドルディたちしかいないはずだ。そこに、メタナイツたちが立てこもるということは……。

「何がなんだか、さっぱりわからないけど、これは……もしかして!」

 コックカワサキは、すぐれた料理人であると同時に、レストランを大繁盛させている商売人でもある。

 商売人のカンをはたらかせて、コックカワサキはキラッと目を光らせた。

「ビジネス・チャンスの予感……よぉし!」

 コックカワサキは、ウキウキして、キッチンに飛びこんだ。


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 レストランを出た一行は、丘の上にそびえるデデデ城を見上げた。

 ジャベリンナイトが言った。

「たしかに、すごい城だよな。大きいし、がんじょうだ」

 バル艦長が、腕組みをして言った。

「うむ。あれなら、要塞として、りっぱに通用するぞ。みごとなものだ」

 船員ワドルディが、心配そうに言った。

「だけど、バンダナせんぱいたちは、ぜったい、ぼくらのことを警戒してますよ。中に入れてくれないと思いますけど」

「そのときは、やむをえん。力ずくでも、城をうばうのだ!」

 アックスナイトが言った。

「でも、ワドルディたちを攻撃するわけにはいかないでしょう。あの子たちは、戦士じゃないんですから」

 メタナイツたちと船員ワドルディは、大きくうなずいた。

 トライデントナイトが言った。

「攻撃じゃなくて、話し合いで、なんとかしましょうよ。スクリーンごしじゃなく、会って話せば、きっとわかってもらえます」

 ソードナイトが、賛成した。

「それがいい。とにかく、城に近づいてみよう」

 ジャベリンナイトが言った。

「船員くんが先頭に立つといいんじゃないか? おまえの姿を見れば、城にいるワドルディたちだって、信用してくれるだろう」

 船員ワドルディは、うなずいた。

「そうですね。ぼくが、みんなと話します。それじゃ……」

 彼が歩き出そうとしたとき。

 ビュゥゥゥゥ!

 とつぜん、小さな竜巻が起きた。

「うわぁぁっ!」

 バル艦長は、あわてて、艦長帽を押さえた。

 船員ワドルディも、自分のぼうしを押さえようとしたが、一瞬おそかった。

 彼のぼうしは、竜巻に巻きこまれて、舞い上がった。

「あっ、ぼくのぼうし!」

 彼がメタナイトの部下になったとき、ワドルディ隊のみんなが贈ってくれた、たいせつなぼうしだ。

 船員ワドルディは追いかけようとしたが、ぼうしは風に乗り、空高く運ばれていく。

「わあっ……ぼくのぼうしが……」

 船員ワドルディは、なみだぐんだ。

 バル艦長が、船員ワドルディの頭をポンポンとたたいて言った。

「泣くんじゃない。今は、ぼうしよりも、大事なことがあるだろう」

「でも……でも……」

「ワシらには、あの凶悪なにせもの軍を打ち負かすという、大事な使命がある。もちろん、おまえにも、たいせつな役割があるのだぞ」

 船員ワドルディは、バル艦長を見上げた。

「ぼくの……役割……?」

「当然だ。おまえだって、メタナイト様の部下のひとりなのだからな」

 船員ワドルディは、ハッとして、うなずいた。

「そうでした! ぼく、ワドルディ隊を説得できるように、がんばります!」

「よろしい。では、行くぞ――デデデ城へ!」

 一行は、力強い足取りで、デデデ城へと歩き出した。


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 デデデ城のバルコニーでは、バンダナワドルディが、双眼鏡をかまえていた。

 小型艇が、遠くの原っぱに着陸したところまでは確認できたが、そのあとのことは、木立にさえぎられて見えなかった。

 じっと、目をこらしていると。

 双眼鏡の視界に、小型艇の乗組員たちが歩いている姿が飛びこんできた。

「あっ、いた! こっちに向かってくる!」

 ワドルディたちが、たずねた。

「どんなヤツらですか、バンダナせんぱい?」

「バル艦長のにせものも、いますか?」

 バンダナワドルディは、双眼鏡をかまえたまま、言った。

「うん、バル艦長さんやメタナイツさんたちにそっくりだよ……それに、ワドルディっぽい子もいる!」

 これを聞いて、ワドルディたちは、どよめいた。

「え!? ぼうけんくんですか!?」

「ぼうけんくんがいるっていうことは、にせものじゃない……!?」

「ううん!」

 バンダナワドルディは、けわしい声で言った。

「あのワドルディっぽい子、ぼくらにそっくりだけど、ぼうしをかぶってないよ」

 ものしりワドルディが、頭を振って言った。

「ぼくらが贈った、あのぼうしをかぶってない? ならば、それは、ぼうけんくんじゃありませんね」

 どうぐ屋ワドルディが、プンプンして叫んだ。

「ヤツら、ぼくらをだまそうとして、ぼうけんくんっぽい子を用意したんだ! だけど、ぼくらがプレゼントしたぼうしのことまでは知らなかったんだよ」

 バンダナワドルディは、うなずいた。

「あいつらは、変装の名人なんだね。いくらそっくりでも、ぜったいに、信用しちゃダメだ」

「お城を守りましょう!」

「おー!」

 ワドルディたちは団結して、声をそろえた。


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 さて、メタナイツたちの一行は、船員ワドルディを先頭に、デデデ城に近づいていった。

 いつもは開け放たれている城門が、固く閉ざされている。窓もすべて閉められ、城は静まり返っていた。

 アックスナイトが言った。

「ワドルディたち、ずいぶん警戒してるようですね」

 トライデントナイトが言った。

「とにかく、中に入れてもらおう。船員くん、たのむぞ」

「はい!」

 船員ワドルディは、前に進み出て、声を張り上げた。

「みんな、おひさしぶりー! ぼくだよ、ぼうけんワドルディだよ!」

 しかし、城門は開かない。

 バル艦長が言った。

「ここで叫んでいても、中には聞こえないのではないか?」

 ジャベリンナイトが、うなずいた。

「そうかもしれませんね。なんとか、城門を開けてもらう方法はないかな……」

 バル艦長が、進み出て、城門を強くたたいた。

「開けてくれ! だいじな話があるのだ!」

 しかし、デデデ城は、しんと静まり返ったまま。

 バル艦長はカリカリして、アックスナイトに言った。

「アックスナイト、おまえの武器を貸せ」

「え? 武器? 何をするつもりで……」

「つべこべ言わんと、貸すのだ」

 バル艦長は、アックスナイトの武器のオノを、強引にうばい取った。

「見ておれ……うりゃあ!」

 バル艦長は、オノを振り上げた。

 びっくりしたアックスナイトが、叫んだ。

「バル艦長ー!? 何をするんですかー!」

 バル艦長は、オノを振り上げた姿勢で、答えた。

「安心せい。門の金具をこわすだけだ」

「ダメですよ、そんな乱暴なことしちゃ!」

「だが、こうでもせんことには、中に入れんではないか。グズグズしていたら、ヤツらが攻めてくるぞ!」

 そのとき、城門の上にある小さな窓が開いた。

 顔をのぞかせたのは、バンダナワドルディだ。

 バル艦長は、ホッとして叫んだ。

「よし、バンダナワドルディが出てきたぞ。おーい、バンダナくーん! 君に話があるのだ! 城門を開けてくれ……」

 しかし、バンダナワドルディは、けわしい目でバル艦長をにらみ、片手を上げて叫んだ。

「みんな、準備はいい? よーい、はっしゃー!」

 すると、たくさんある窓がいっせいに開いた。

 そこから、おてだまのような小さな袋が、次々に飛んできた。

「むむ……ん? なんだ?」

 バル艦長は、ぽかんと口をあけた。

 飛んできた袋は、バル艦長の頭に当たって、破裂した。

 ブワァァン!

 とたんに、バル艦長は飛び上がってせきこんだ。

「ぐほほほほぉぉ! な、なんだ、これ……は……ぐげほほほほほほほぉぉぉ!」

 袋から飛び散ったのは、コショウとトウガラシ!

 メタナイツたちも、船員ワドルディも、地面に転がって、のたうち回った。

「げげげげほほほほぉぉ! か、仮面のすきまから、コショウが……!」

「目、目が……見えません……!」

「はっくしょん! へっくしょん!」

 どうぐ屋ワドルディが、窓から顔を出して叫んだ。

「どうだ、まいったか!」

「ぐぁ、げほっ、がほほほほほほほぉぉ――!」

 一行は、なみだを流し、くしゃみを連発しながら、逃げ出した。


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 なんとか発作はおさまったが、アックスナイトが、いまいましげに言った。

「ぐぐっ……せきこみすぎて、のどが痛いぜ。ワドルディどもめ……!」

「みな、これをなめろ」

 バル艦長が、ポケットからあめ玉を取り出して、みんなに配った。

「のどあめ……ですか? バル艦長、なんで、こんなものを?」

 バル艦長は、クールに、フッと笑って答えた。

「ワシは、戦艦ハルバードの艦長として、常に気を引きしめておる。日々、最悪の事態にそなえ、準備をおこたらないのだ」

 メイスナイトが、気づいて言った。

「あ、これ、まとめて買うと、おかし屋の割引クーポンがもらえるヤツだス。バル艦長は、本当に、割引に弱いだスね」

「う、うるさい! いらんなら、返せ!」

「いるだス、いるだス!」

 メタナイツたちは、のどあめのおかげで、ようやく元気を取り戻した。

 バル艦長が、はげしい怒りをこめて言った。

「それにしても、なんと凶悪な攻撃をしてくるのだ! ワドルディどもめ、ゆるさんぞ!」

 船員ワドルディが言った。

「もとはと言えば、バル艦長のせいですよ。城門をこわそうとしたりするから」

 アックスナイトが言った。

「だが、あのコショウ・トウガラシ爆弾は、艦長がオノを振るう前から、準備していたにちがいないぞ。オレたちを、撃退するためにな。ワドルディたち、やる気まんまんじゃないか」

 船員ワドルディは、うなずいた。

「あっちには、ぶき屋くんやどうぐ屋くんがいますからね。ワドルディ隊を、なめちゃダメです」

「ああ――そうらしい。ヤツらは、あなどれないぜ!」

 アックスナイトは、グッと片手をにぎりしめた。

 トライデントナイトも、張り切った声で言った。

「ワドルディたちは戦士じゃないと思ってたが、まちがってたようだ。ヤツらは、オレたちと同じく、はえぬきの戦闘集団だ!」

 メイスナイトも、不敵な声で言った。

「手かげんは、いらないだス。こうなったら、本気を出すだス」

「え――!?」

 船員ワドルディは、飛び上がった。

「ワドルディ隊を攻撃するんですか!? 本気で!?」

「そうさ!」

 メタナイツたちは、声をそろえた。

 ブレイドナイトが言った。

「話し合いが、できそうにないからな。なに、安心しろ。あいつらが降参したら、すぐにゆるしてやるさ」

 ジャベリンナイトが言った。

「とは言え、おまえは、つらい立場だよなあ。もとの、なかまなんだから」

「……はい……」

 船員ワドルディは、しょんぼりと、うなだれてしまった。

 バル艦長が言った。

「ならば、デデデ城に帰るか?」

「……え!?」

 船員ワドルディは、おどろいて顔を上げた。

 バル艦長は、しんみりと目をとじて、続けた。

「今なら、まだ間に合う。おまえに、つらい思いをさせたくはない。ワドルディ隊に、帰るがいい」

 メタナイツたちは、しーんとして、船員ワドルディを見つめた。

 船員ワドルディは、声をうわずらせて叫んだ。

「い……いいえ! いいえ!」

 バル艦長は、目をあけた。

 船員ワドルディは、両手をぎゅっとにぎって、言った。

「ぼくは、戦艦ハルバードの一員です! みなさんといっしょに、戦います!」

 トライデントナイトが言った。

「だけど……いいのか? つらいだろう?」

「大丈夫です。ぼくは、メタナイト様の部下でいたいんです。だから、何があっても、バル艦長の指示にしたがいます!」

「……なんと……ふぉぉぉぉぉ!」

 バル艦長は、感きわまって、長いため息をついた。

「りっぱだぞ、船員ワドルディ。では、ともに行こう。デデデ城を、手に入れるぞ!」

「はい!」

 ジャベリンナイトが言った。

「しかし、さっきみたいに城門を攻撃しても、またコショウ・トウガラシ爆弾でやられますよ。別の作戦を考えないと」

 アックスナイトが言った。

「小型艇には、非常用の道具がいくつか積んであります。それを使って、こういう作戦はどうでしょう?」

 アックスナイトは、ゴニョゴニョと小声で、作戦を話し始めた。

     


ついに始まってしまった、デデデ城をめぐるワドルディ隊とメタナイツの大バトル! ワドルディ隊がデデデ城を守りきるのか、はたまたメタナイツが城をうばってしまうのか!?
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