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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ プププ温泉はいい湯だな♪の巻』第5回 デデデ大王の大発見


カービィたちが、力を合わせて温泉で村おこし!? すてきな観光地を作って、メタナイトやドロッチェ、エフィリンたちを招待しよう♪ 2024年3月13日発売のつばさ文庫『星のカービィ プププ温泉はいい湯だな♪の巻』の先行ためし読みだよ!

◆第5回
サンセット村ににぎわいを取りもどすためにはどうしたらいいか、プププランドの住民たちと、サンセット村のチップとリーファンの会議、スタート!
みんなが集まるこの場を取りしきるのは……もちろん、偉大なあの人!?

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デデデ大王の大発見

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 みんなは、大きなテーブルをかこんで席についた。人数の多いワドルディ隊は、かべぎわにずらっと整列している。

 デデデ大王が言った。

「では、会議を始めるぞ。議長はもちろんオレ様だ。意見のあるヤツは手を上げろ」

「はーい、はーい、はーい!」

 カービィが元気よく手を上げて言った。

「ぼく、レストランは食べほーだいがいいと思う! メニューは、たくさんあったほうがいいと思う! 3000種類ぐらいあると、すごくいいと思う!」

 コックカワサキが手を上げた。

「むちゃ言わないでくれよ、カービィ。まずは、この近所で釣れる魚と、森になっているフルーツを調べて、それに合わせたメニューを考えるよ」

「フン、くだらねえ。料理なんて、食えりゃいいんだよ、食えりゃ」

 にくたらしげな声がした。

 店の外をウロウロしていたボンカースが、窓からのぞきこんで、聞こえよがしにつぶやいたのだ。

 チリーが、あきれて言った。

「ボンカース、そんなところでウロウロしてないで、中に入ればいいのに」

「え? オレにも話し合いに加わってほしいだと? しょうがないヤツらだぜ」

 ボンカースは、ワドルディたちを押しのけて、うれしそうに店の中に入ってきた。

 こわい目でみんなを見回して、ボンカースは言った。

「それじゃ、ためになる意見を言ってやるとするか。いいか、レストランでは、パワーのある料理を出せ。筋肉がモリモリになるヤツだ。そして、よろず屋では、体をきたえるグッズを売れ。ダンベルとか、なわ飛びとかだ」

 ナックルジョーが、ガッツポーズで叫んだ。

「うぉー、大賛成ッス! ボンカースと、初めて気が合ったッス!」

 みんながいっせいに、自分の意見を言い始めた。

「いらないわよ、ダンベルなんて! それより、リボンとか、ブローチとか、おしゃれグッズがほしいな」

「ボクは、ひえひえグッズを売るといいと思うよ。アイスまくらとか、かき氷機とか」

「ダメだ、そんなの売ったら、この村のみんながカゼひいちまうだろ! オレは、あつあつグッズがいいぜ。ストーブとか、こたつとか!」

 がやがやと、大さわぎになってしまった。

 そこへ、声を上げたのは、バンダナワドルディ。

「待って、みんな。これじゃ、会議にならない……どうか、聞いて……お願い……聞いてくださぁぁい!

 バンダナワドルディは、せいいっぱい声を張り上げた。

 めずらしいバンダナワドルディの大声を聞いて、みんな、おどろいて口をつぐんだ。

 バンダナワドルディは赤くなり、声を小さくして続けた。

「ぼくらが作りたいのは、オバチャんさんが作ろうとしていたような、村を元気にするお店……遠くからもお客さんが来てくれる、すてきなお店やレストランです。そのためには、ここでしか食べられないお料理とか、ここでしか買えないおみやげなど、サンセット村ならではの名物が必要だと思います」

「名物……だって?」

 リーファンが、頭の葉っぱをゆらせた。

「そんなもの、何もねえよ。この村にしかない名物って言ったら、せいぜい、すっぱすぎて食べられないフルーツぐらいだ」

 カービィは、フルーツのすっぱさを思い出して、ブルッとふるえた。

「あ、あれはダメ! 食べたら、顔がキューッてなっちゃう! ぜったい、食べられない!」

 コックカワサキが、おどろいて言った。

「食べられない!? カービィが!? そんなフルーツがこの世にあるなんて、信じられない。それは、貴重な名物になるかもしれない!」

「ダメだよー! 食べられないフルーツなんて、名物にならないよ!」

 みんな、真剣に考えこんだ。

 バンダナワドルディが言った。

「フルーツ以外に、何かないかな? アクセサリーになりそうな、美しい貝がらとか」

 バーニンレオが、頭を振った。

「山の中だぜ。貝がらなんて、ねえよ」

「めずらしいお花は?」

 チリーが言った。

「お花はいっぱい見たけど、どこにでもある花しかなかったよ」

「それじゃ、きれいな石ころとか?」

 バウンシーが言った。

「ないわね。ちっともきれいじゃない、ふつうの石ころばっかりよ」

「うーん……それじゃ、名物にはならないね。なにか、『サンセット村に行ってみたい!』って思ってもらえるような、観光の目玉があるといいんだけど……」

 みんな、頭をしぼって意見を出し合ったが、なかなか名案は浮かばない。

 しばらく議論が続いた後――ついに、デデデ大王が荒々しく立ち上がった。

 バンダナワドルディは、キラキラした目で大王を見上げて言った。

「大王様! 何か、いいアイデアを思いついたんですか?」

「オレ様は、あきた!」

 デデデ大王は、大きく両手を突き上げて叫んだ。

「……え? あきた……って……?」

「こんなつまらん話し合い、あきたわい! オレ様は、息ぬきをしてくる。オレ様がもどるまでに、良い案を考えておけ。いいな!」

 そして、デデデ大王はさっさと店を出て行ってしまった。

 カービィが叫んだ。

「なんでー!? デデデ大王は、ぎちょーでしょ!? ぎちょーって、えらいんでしょ!? それなのに、勝手に出て行っていいの!?」

 ボンカースが、ニヤリと笑って言った。

「好きにさせとけ。どうせ、デデデ大王なんて、役に立たねえんだから。ここからは、オレが議長をやってやるぜ!」

 チリーが、小声で言った。

「ボンカースのヤツ、ブツブツ言ってたくせに、すっごいノリノリじゃないか。議長をかって出るなんて」

 ボンカースは、ギロリとチリーをにらんだ。

「あぁ? なんか言ったか、まゆげ雪だるま」

「ま、まゆげ雪だるま!? ボク、そんな名前じゃないよ! チリーだよ!」

「とにかく、おまえら、アイデアをどんどん出せ! 出さねえヤツは、ぶっ飛ばすぞ! オラオラオラ!」

 ボンカースは、議長席にふんぞり返り、一同をにらみつけた。

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 さて、店を出たデデデ大王は、のんびり歩きながら、両腕をぐるぐる回した。

「ふぅ、つかれたわい。じっと座っているのも、なかなかの重労働だな。つかれたときは、カフェでゆっくりするのがいちばん……」

 と、思ったが、この村には、カフェがない。

「むむむ……それなら、公園のベンチで一休み……」

 この村には、公園すらない。

「むむむむむむ……」

 デデデ大王は、立ち止まってしまった。

 デデデ城のまわりなら、コックカワサキのレストランもあるし、気持ちのいい公園や広場もある。ウィスピーウッズの木かげで、お昼寝することもできる。

 しかし、このサンセット村には、そんな場所がまったくないのだ。

「なんという村だ! ゆっくり、休むこともできんとは……」

 デデデ大王は、仕方なく、また歩き出した。

 いつのまにか、村を出ていた。でこぼこの山道をたどり、奥へと進んでいく。

 気がつけば、でこぼこ道もなくなっており、先へ行くのがむずかしくなってきた。

「むぅぅ……村に帰るとするか。さんぽすらできんとは、なんと、つまらん場所だ!」

 引き返そうとしたデデデ大王だが――そのとき。

 何やら、ふしぎなにおいがすることに気がついた。

 ツンとするにおいだ。良い香りというわけではないのだが、なんとなく、興味を引かれる。

「……なんだ、このにおいは?」

 大王は顔をしかめながらも、気になる匂いに引きつけられて、足を速めた。

 草をかき分け、斜面(しゃめん)を登り、木々の枝にしがみついて、たどり着いた場所には――。

「こ……これは……!?」

 大王は、目の前に広がる光景を見て、大声を上げた。

 そこにあったのは、なんともぶきみな泉だった。

 底のほうから、フツフツと泡がわき上がっている。少し近づいただけでも、モワッとするほどの高温だ。

 そして、水――というより、お湯の色は、底が見えないほど濃い水色だった。

「こ、これは……毒の泉! こんなキケンな泉を、このままにしてはおけんぞ!」

 デデデ大王は血相(けっそう)を変えて、駆け足でサンセット村に引き返した。

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 村に駆けこんだデデデ大王は、道ばたにしゃがみこんでいるワドルディに、つまずきそうになった。

「うわっ!? 何をしている、きさま!」

「あっ、大王様!」

 顔を上げたのは、メガネをかけた、かしこそうなワドルディだった。片手に、虫めがねを持っている。

「なんだ、ものしりか。何をしてるんだ?」

 このワドルディは、なんでもよく知っているので、みんなから「ものしりくん」と呼ばれている。

 ものしりワドルディは、大王を見上げて答えた。

「会議が長引いている間に、この村のことを調べておこうと思いまして。村に咲いている花や、土の性質などを調べていたところなのです」

「そんなものより、調べてほしいことがあるのだ」

 大王は、山の奥で見つけた、ぶきみな泉のことを話した。

「あんな泉が近くにあるなんて、キケンすぎるわい! ただちに、みんなをひなんさせなくては!」

 けれど、ものしりワドルディは、メガネをキラリと光らせてつぶやいた。

「水色のお湯……ふしぎなにおい……それは、もしかして!」

 ものしりワドルディは、くるっと向きを変えた。

「行きましょう、大王様! 調査が必要です!」

「な、何!? ちょっと待て、ものしり! うかつに近づくのはあぶないぞ。マスクや手ぶくろを用意して……」

「大丈夫です。ぼくの考えが正しければ!」

 ものしりワドルディは、走り出した。

 ものしりと言っても、小さなワドルディを、一人でキケンにさらすわけにはいかない。

「待てー! こら、待つのだ!」

 デデデ大王は、やむなく、ものしりワドルディを追いかけた。

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 二人は、においをたよりに突き進み、あのぶきみな泉にたどりついた。

 ものしりワドルディは、お湯をよくたしかめるために、泉のふちでかがみこんだ。

 あわてたデデデ大王が叫んだ。

「下がれ、ものしり! あぶない……!」

「大丈夫です、大王様。このお湯は、やはり……」

 ものしりワドルディは、おちついて報告しようとしたが、デデデ大王はあせって、ものしりワドルディに飛びついた。

「下がっていろ! ここは、オレ様にまかせ……うわあああ!」

 いきおいのつきすぎたデデデ大王は、ものしりワドルディを飛びこえて、ブクブクと泡立つ水色の泉に、まっさかさまに飛びこんでしまった。

「ああ!? 大王様!」

 ものしりワドルディは、悲鳴を上げた。

 デデデ大王は、泉から顔を上げて、じたばたしながら苦しそうにうめいた。

「ぐはぁぁっ……オレ様も、ここまでか! 毒の泉にやられるなんて……無念だ……!」

「しっかりしてください、大王様! この泉は、毒じゃありません!」

「うむ、毒では……毒では………………ない……?」

 デデデ大王は、きょとんとして、立ち上がった。

 泉は浅く、デデデ大王のおなかぐらいまでしか、お湯がなかった。

 デデデ大王は、てれかくしで、大声を出した。

「フ、フン! もちろん、毒なんかじゃないわい。オレ様には、最初から、わかっていたがな!」

「お湯の温度はいかがですか? 熱すぎませんか?」

「ちょうど良いわい。お風呂みたいに、気持ちがいいぞ。むむ……からだのしんから、ポカポカしてきたわい」

「やっぱり!」

 ものしりワドルディは、うなずいた。

「大王様、これは、温泉ですね」

「……何? 温泉?」

「それも、とびっきり質のいい源泉(げんせん)です。すばらしい大発見ですよ、これは……!」

 ものしりワドルディは、興奮して飛びはねた。

 デデデ大王は、しゃがみこんで肩までお湯にチャプチャプつかりながら、たずねた。

「発見だと? この温泉が……?」

「はい。パイプをつないで、このお湯をサンセット村まで運ぶのです。大浴場を作れば、それが、みんなが遊びに来てくれるような、観光の目玉になります! サンセット村を、一大温泉地にするのです!」

「温泉地……」

 デデデ大王は、ザパーンとしぶきを上げて、温泉から飛び出した。

「なんと、すばらしい考えだ! よくやったぞ、ものしり!」

「いえ、ぼくではなく、大王様のおかげです。大王様が、この温泉を発見したのですから。そればかりか、お湯の温度や成分を確かめるために、みずから進んで温泉に飛びこんでくださいました! なんて勇気ある行動でしょう!」

 ものしりワドルディは、そんけいのまなざしでデデデ大王を見上げた。

 デデデ大王は、びしょぬれのガウンをしぼりながら、胸を張った。

「フフン。ま、偉大なる支配者として、当然のことをしたまでだ」

「さすがです、大王様!」

「では、さっそく村に戻るぞ! オレ様の大発見を、みんなに知らせるのだー!」

「急ぎましょう、大王様!」

 デデデ大王とものしりワドルディは、大よろこびでサンセット村に駆けもどった。

     


会議をぬけだしておさんぽをしたおかげで、ものしりくんといっしょに、温泉を大発見したデデデ大王。これは、きっと、サンセット村ににぎわいを取りもどす、ステキな観光の目玉になるはず! いよいよ、村おこし大作戦が本格的に始まりそうです!!
このあと、新しい仲間がふえたり、カービィたちに大ピンチが起こったり!?
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