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カービィたちが、音楽の都(みやこ)ルフランで開かれる、ミュージックフェスに参戦! 優勝するのは、いったいだれ!? 2023年12月13日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ ミュージックフェスで大はしゃぎ!の巻』の先行ためし読みだよ!
◆第4回
はじめておとずれる惑星ルフランで、デデデ大王とはぐれてしまったバンダナワドルディとワドルディ隊。なんとか、二人を探し出したいところですが、いったいどうなってしまうでしょう……?
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
すてきな出会い
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デデデ大王やカービィとはぐれてしまったワドルディ隊は、大声で叫んでいた。
「大王様ぁ! 大王様、どこですかぁ!」
「カービィ! カービィ!」
二人を探し回ったが、まったく見つからない。
「どうしましょう、バンダナせんぱい……」
「うーん……とにかく、大王様たちが行きそうな場所を当たってみよう。屋台がありそうな場所……広場とか?」
バンダナワドルディは町の地図を確かめた。
「町のまんなかに、ミュージック広場っていう場所があるみたいだね。とりあえず、ここに行ってみよう」
「はーい!」
「はーい!」
ワドルディたちは、わちゃわちゃと、ミュージック広場に向かった。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
ミュージック広場は、歴史ある音楽の博物館「ルフラン音楽堂」のある大広場。市民や観光客たちなど、おおぜいのひとでにぎわっていた。
屋台もいくつか出ているが、大王やカービィは見当たらない。
「ここにもいないか……次は、どこを探せばいいんだろう……」
考えこんだバンダナワドルディに、ひとりのワドルディが言った。
「せんぱい、見てください。あそこに、何かが、かざられています」
「え?」
広場の真ん中に、ふしぎな物が展示されていた。
ガラスケースの中に、ギターがおさめられている。流れ星のようなかたちをした、美しいギターだ。
ケースの前に、説明文が書いてある。バンダナワドルディは言った。
「なになに……これは、レジェンド・ギターっていうんだって」
「れじぇんど……?」
「レジェンドっていうのは、『伝説』っていう意味らしいよ。この星には、はるかな昔から受けつがれてきた、レジェンド楽器っていう楽器があるんだ。音楽の精霊がやどっていると言われるほどの、すばらしい楽器で……このギターは、そんなレジェンド楽器のひとつなんだって」
「うわあ……すてきですね!」
目をキラキラさせているワドルディたちに、バンダナワドルディは説明文を読んで聞かせた。
「レジェンド楽器は、ふだんは、ルフラン音楽堂の地下にある特別室に保管されている。今回は、100回目の音楽祭を記念して、たくさんのレジェンド楽器の中から、特別にこのレジェンド・ギターを広場に展示することとしたんだって」
「わあ……」
ワドルディたちは、うっとりして、レジェンド・ギターに見入った。
バンダナワドルディも、説明文からギターに視線を移した。
――と、その瞬間。
「…………!?」
バンダナワドルディは、寒気を感じて、息をのんだ。
レジェンド・ギターから、何かよくない妖気のようなものが、ただよい出している感じがする。
もちろん、目に見えるわけではないけれど。レジェンド・ギター全体が、黒い影におおわれているように思える。
バンダナワドルディがふるえていることに気づいたワドルディたちが、心配そうにたずねた。
「どうかしたんですか、バンダナせんぱい?」
「う、ううん。なんでもない……けど……」
バンダナワドルディは、おそろしくなって、レジェンド・ギターから目をそむけた。
全身に、びっしょりと汗をかいていた。
クラクラとめまいがして、立っていられなくなりそうだった。バンダナワドルディは深呼吸をして、自分に言い聞かせた。
「なんでもない。このギターは、ルフランの宝物なんだから。気のせい、気のせい……」
バンダナワドルディはレジェンド・ギターに背を向けて、早足で歩き出した。
おどろいたワドルディたちが、追いかけてくる。
「バンダナせんぱい? なにかあったんですか?」
「う、ううん。なんでもないよ」
「でも……」
「とにかく、大王様とカービィを探さなくちゃね!」
バンダナワドルディは、から元気を出して叫び、レジェンド・ギターのことを頭から追い払った。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
「大王様ー!」
「カービィさーん!」
それからしばらく、ワドルディたちは、デデデ大王とカービィの名前を呼びながら、歩き回った。けれど、ふたりは見つからない。
みんな、だんだん元気がなくなり、声も小さくなってきた。
「大王さまぁ……」
「………………さまぁ……」
足を引きずっているワドルディたちを見て、バンダナワドルディは言った。
「みんな、つかれちゃったよね。おなかも、すいた?」
「……はい」
ワドルディたちのおなかが、いっせいに、ぐーっと鳴った。
こらえてきた心細さや、足のつかれ、腹ペコ具合が、一気に押し寄せてきて、ワドルディたちはその場ですわりこんでしまった。
バンダナワドルディは、みんなをはげまそうとして、言った。
「ぼく、なにか食べる物を買ってくるね。みんな、ここで待ってて!」
「バンダナせんぱい……」
「さっきの広場に、屋台が出てたからね。この、おこづかいで……」
バンダナワドルディは、がま口さいふを取り出そうとして、ビクッとした。
「え……!? ない!?」
「バンダナせんぱい!?」
「おさいふが、ない!」
バンダナワドルディは、あわてふためいた。
たしかに、がま口さいふをしっかり身につけていたはずなのに、見当たらない。からだじゅうをバタバタはたき、逆立ちまでしてみたが、さいふはなかった。
バンダナワドルディは、まっさおになった。
「落としちゃったんだ……! 全財産が入ってたのに……!」
デデデ大王は見つからない。さいふも、ない。しかも、ここはプププランドから遠くはなれた星。知り合いなんて、ひとりもいない。
「せん……ぱい……」
「ぼくたち……どうなっちゃうんでしょう……」
心細さがいっせいに吹き出して、ワドルディたちは泣き出した。
最初は「しくしく」という小さな泣き声だったのだが、それは、あっという間に最大音量になった。
「ううううう……うううううっ!」
「えっ……えええっ……ひっく……ひっく!」
「うわああああああん! わああああああん!」
「大王様ぁぁぁ! あああああん! 大王様ぁぁぁぁ!」
「みんな、おちついて。大丈夫。大丈夫だから……」
バンダナワドルディは、みんなをなぐさめようとしたが、自分もなみだがポロリと浮かんでしまった。
どうすれば良いのだろう。まもなく、夜になる。
今晩、寝るところも決まっていないのに、いったい、どうすれば……。
バンダナワドルディも、仲間たちといっしょにうずくまって、泣き声を上げそうになったときだった。
「……キミたち、どうしたんですか? 大丈夫?」
心配そうな声がした。
ワドルディたちは、顔を上げた。
ぼうしをかぶった赤い巻き毛の少年が、立ち止まって、気がかりそうにワドルディたちを見ていた。
バンダナワドルディは、ハッとして言った。
「あ、あなたは……中継ステーションで会ったひとですね……?」
赤い巻き毛は、中継ステーションで出会った、音楽ぎらいの少年にそっくりだった。
しかし、少年は、きょとんとした。
「中継ステーション? なんのことですか? ボク、そんなところには行ったことがありませんが……」
「え? じゃあ、ひとちがい?」
考えてみれば、ステーションで会った少年はフードをかぶっていたので、バンダナワドルディは顔をよく覚えていなかった。
赤い巻き毛が似ていると思ったのだが、記憶があやふやだ。
「ごめんなさい、まちがえました」
「いいんですよ。それより、キミたち、どうして泣いてるんですか? なにか、こまったことがあるんですか?」
と、そのとき、返事の代わりに、ワドルディたちのおなかがグーッと鳴った。
巻き毛の少年は、目を丸くして言った。
「あっ、キミたち、おなかがすいてるんですね!?」
「え……えっと……あ……はい……」
バンダナワドルディも、ワドルディたちも、赤くなった。
「それなら、ボクの店に来ませんか?」
「店?」
「この近くで、レストランをやってるんです。すぐに料理を作りますから」
ワドルディたちは、ぱぁっと顔をかがやかせた。
けれど、バンダナワドルディは、しょんぼりして言った。
「ありがとうございます。でも、ぼくら、おかねがないんです。おさいふを落としてしまって……」
「そんなの、気にしないで! おなかペコペコの子たちを、ほうっておけませんよ。さあ、いらっしゃい」
少年は、歩き出した。
バンダナワドルディはまよったが、ここは、見知らぬ少年の親切に、ありがたく頼ることにした。
「ありがとうございます!」
ワドルディたちは立ち上がり、少年のあとについて行った。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
少年のレストランは、大きな建物の一階にあった。
店内は広く、カベのあちこちに、トランペットやサックス、タンバリンなど、さまざまな楽器がかざられている。音楽の都(みやこ)ルフランらしい店だ。
「すわっていてください。すぐに料理を作りますからね」
少年がキッチンに引っこむと、いいにおいがただよってきた。ワドルディたちは、ワクワクして待った。
まもなく、料理が運ばれてきた。ごろごろ野菜のクリームシチュー、あつあつのエビグラタン、ミートソースたっぷりのパスタ、とろけるチーズのピザ、みずみずしいレタスのサラダ……どれも、最高においしそうだ。
「さあ、どうぞ、めしあがれ」
「わあ! いただきまーす!」
ワドルディたちは、夢中で料理にかぶりついた。
「うわああ、おいしい! ぼく、こんなおいしいシチューを食べたの、はじめて!」
「このピザも! 生地がモチモチだよ! おいしい~!」
バンダナワドルディは、リーダーらしく、みんなをたしなめようとした。
「みんな、おぎょうぎよく食べなきゃ。ガツガツ食べたら、やけどしちゃうよ」
でも、バンダナワドルディ自身も、空腹には勝てなかった。料理はどれもおいしくて、次から次へ手がのびてしまう。
「うわあ! これも……こっちも……おいしい!」
あんなに心細かった気もちが、うんと楽になっていく。あたたかい料理は、からだもこころも、満たしてくれた。
赤毛の少年は、ニコニコしてみんなを見守った。
バンダナワドルディは、深々と頭を下げた。
「ほんとに、ほんとに、ありがとうございました。おかげで、助かりました!」
「よかった。キミたちは、観光客ですね?」
「はい。ぼくら、ワドルディっていいます。プププランドから来ました」
「ボクは、ブラス。プププランドって、どんなところですか? ボク、行ったことがなくて……」
バンダナワドルディが、答えようとしたときだった。
カランカランとベルの音がして、店のとびらが開いた。
「あ、いらっしゃいませ!」
ブラスは入り口に駆け寄って、客を出むかえた。
入ってきたのは――。
「え!? メタナイト様!?」
バンダナワドルディが、叫んだ。
「……む?」
メタナイトは、ずらりとテーブルについたワドルディたちを見て、おどろいた。
後ろにいたメタナイツたちも、次々に声を上げた。
「あれ、ワドルディたちじゃないか!」
「意外なところで会うもんだな」
たのもしいすがたを見て、ワドルディたちは、歓声を上げた。
「うわあああ! メタナイト様たちだ……!」
「よかった! 知ってるひとたちに会えて!」
心細さは、かんぜんに吹き飛んだ。ワドルディたちはホッとして、大きく息をついた。
バンダナワドルディが、たずねた。
「メタナイト様たち、どうして、ここに?」
「たまたま、レストランの看板が目についてな。ちょうど空腹を感じ始めたところだったので、入ってみることにしたのだ」
メタナイトは、ワドルディたちを見回して、たずねた。
「君たちだけか? デデデ大王とカービィの姿が見えないようだが?」
「はい。はぐれてしまって……」
「なるほど。彼らのことだ、食べ物を探して暴走したというわけか」
「えーと……はい……」
「心配だろうが、ほうっておけ。食欲が満たされたら、そのうち出てくるだろう」
メタナイトと部下たちは、テーブルについた。
料理が運ばれてきた。メタナイトたちが食事をしているあいだに、バンダナワドルディは、店内をぐるっと見回してみた。
カベにかざられているたくさんの楽器は、どれもピカピカに手入れされていた。大事にされていることが、伝わってくる。
「あの楽器は、ぜんぶ、ブラスさんが演奏するんですか?」
ブラスは、笑顔で答えた。
「ぜんぶってわけじゃありませんよ。ボクは、トランペットが得意なんです。お店がひまなとき、よく練習してるんですよ」
バル艦長が食事の手を止めて、ブラスを見た。
「ほう。では、ひとつ、お聞かせ願えんかな? ルフランの住民たちは、みんな音楽家だというではないか。せっかくルフランに遊びに来たのだから、すばらしい音楽を聞いてみたいものだ」
すると、ブラスはにっこりして、トランペットを手に取った。
「それじゃ、聞いてください。ボクが大好きな曲です」
ブラスは、トランペットをかまえて、吹き始めた。
ウキウキするような、楽しい曲が流れ出した。思わず、おどり出したくなるほどだ。
「わあ!」
「すてきな曲だね!」
ワドルディたちは、目をかがやかせて、からだを左右にゆらした。バル艦長やメタナイツたちも、食事を忘れて聞き入っている。
曲が終わると、ブラスはぺこりとおじぎをした。ワドルディたちも、メタナイトとその部下たちも、大きな拍手を送った。
バンダナワドルディが言った。
「すてきな演奏でした! ありがとうございました!」
ワドルディたちも、口々にほめたたえた。
「すごく楽しい曲でした! ぼく、ワクワクしちゃいました!」
「ぼくも! 感動しました!」
バル艦長が言った。
「トランペットは、こんなにも楽しい音が出る楽器なのだな……いやはや、おそれいった。もしや、あなたは、有名な演奏家なのでは?」
ブラスは、照れたように答えた。
「いえ、そんな……有名ってほどじゃありませんけど、トランペットの大会では、何度か優勝したことがあるんですよ」
「やはり! ただものではなかったか!」
みんな、また、大きな拍手をした。
メタナイトがたずねた。
「ところで、店内には、トランペットの他にもいろいろな楽器があるが、だれが演奏するのだ? 貴殿(きでん)には、仲間がいるのだろうか?」
「……いいえ。仲間は、いないんです……」
ブラスの顔が、急に、くもった。
「それなら、なぜ、こんなにたくさんの楽器が?」
「ボクは、たくさんの楽器で曲をかなでる、ビッグバンドというスタイルにあこがれているんです。でも……同じ夢をもつ仲間が、ぜんぜん見つからなくて。楽器だけは、たくさん集めたものの、かざっておくことしかできないんです」
悲しそうな声を聞いて、ひとりのワドルディが、パッと手を上げた。
「それなら、ぼく! ぼく、ブラスさんといっしょに楽器を弾きたいです!」
すると、他のワドルディたちも、次々に手を上げた。
「ぼくも! いつもタンバリンを練習してるから、じょうずにたたけます!」
「ぼくは、リコーダーが吹けます! 大王様から、ほめられたことがあります!」
ブラスは、目をまるくした。
「え? ほんとうに? ほんとうに、ボクといっしょに演奏してくれるんですか?」
バンダナワドルディは、にっこりした。
このすてきなレストランで、ブラスといっしょに一曲でも合奏できたら、きっと良い思い出になるにちがいないと思ったのだ。
「もちろんです! ぼくら、ブラスさんのようにじょうずではないですけど、みんな、楽器は大好きなんです」
「ありがとう! うれしいです!」
ブラスは、顔を赤らめて、お礼を言った。
バル艦長が言った。
「そういうことなら、ワシだって……協力してやらんでもないぞ。もちろん、メタナイト様のおゆるしがあれば、だが!」
メタナイトは、うなずいた。
「かまわん。ルフランに滞在(たいざい)している間は、好きに行動したまえ」
「おお! ありがとうございます!」
メタナイツたちも、張り切って叫んだ。
「やったぁ、オレも、何か弾いてみたい!」
「オレも! 楽器を習ったことはないけど、音楽は大好きなんだ!」
「がんばって練習するぞ!」
ブラスは、笑顔で言った。
「ボクが教えてあげますよ。みんなで練習して、ミュージックフェスに出ましょう!」
「え? ミュージックフェス……?」
ブラスは、大きくうなずいた。
「はい! それが、ボクの夢なんです。ミュージックフェスに、ビッグバンドとして出場するのが! だけど、メンバーがそろうわけがないと思って、あきらめていたんです。まさか、こんなにたくさんのメンバーが、一気に集まるなんて! うれしいなあ。みなさんのおかげですよ!」
ブラスは、夢いっぱいの表情で、天井を見上げた。
バンダナワドルディは、ことの大きさに気づいて、たじろいだ。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「え?」
「ミュージックフェスって、たしか、ルフラン音楽祭のさいごの日に開催される、すごいコンサートですよね?」
「ええ」
「ものすごい演奏家が、たくさん出演して、いちばんを決めるんですよね?」
「そうです。特に、今回は100回目の特別大会ですからね! 最高の演奏家が集まりますよ!」
ブラスは、目をキラキラさせて叫んだ。
「む、む、無理です!」
バンダナワドルディは、ちからいっぱい、頭を振った。
「ぼくら、このお店の中で、ブラスさんといっしょに合奏できたら楽しそうだと思っただけなんです! まさか、ミュージックフェスなんて、考えてもみませんでした!」
ワドルディたちも、真剣な顔で、うなずいた。
バル艦長が、腕を組んで、うなった。
「うむ……ワシも、まさか、そこまでの難題とは思わなんだぞ。残念ながら、初心者のワシらには、とうてい無理……」
「おもしろい」
と、メタナイトがつぶやいた。
バル艦長は、首をかしげて、メタナイトを見た。
「は? メタナイト様、今、なんと?」
「おもしろい、と言ったのだ。おおぜいの演奏家が、得意の楽器をかまえ、腕をきそい、最強の覇者(はしゃ)を決める。真剣な決闘にも似た、熱き戦いだ……武人の血がさわぐというものではないか?」
仮面の下の目が、するどくキラリと光った。
バル艦長は、あわてて腕組みをほどき、叫んだ。
「も、もちろんですとも! ワシも、今、そう言おうと思っておりました! メタナイト様の部下たるもの、相手が手ごわければ手ごわいほど、闘志がわくに決まっております! まさか、無理なんぞと弱音を吐くわけがありませんわい! ワハハハ!」
メタナイツたちも、ビシッと姿勢を正して言った。
「オレたちは、はげしい戦いを何度も切り抜けてきた戦士。なんだってやれます!」
「きびしい特訓には、なれてますからね。大丈夫です!」
「ぜったい、優勝するだス~!」
ブラスは、感激して、目をうるませた。
「みなさん……ありがとうございます!」
ワドルディたちは、ワイワイと盛り上がっているメタナイツたちと、大よろこびのブラスを見て、しーんとした。
バンダナワドルディは、考えこんだ。
デデデ大王がここにいたら、なんと言うだろう?
きっと、メタナイトに負けてたまるかとばかりに、やる気を出すにちがいない。
それどころか、ブラスの背中をバシッとたたいて、こう言うだろう。
――オレ様がついてるんだ、怖いものなしだぞ! かならず、優勝してやるわい!
バンダナワドルディは、両手をギュッとにぎりしめて、つぶやいた。
「……そうだ。大王様なら、きっと、そうおっしゃる。弱音なんか吐いたら、大王様にしかられちゃう……!」
まるで、デデデ大王のたましいが乗り移ったかのように、勇気がわいてきた。
「ブラスさん、さっきの言葉は取り消します!」
バンダナワドルディは、力強く言いはなった。
ワドルディたちも、バンダナワドルディの考えを読み取ったように、いっせいにうなずいた。
ブラスは、びっくりして、バンダナワドルディを振り返った。
「え? それでは……」
「ぼくらも、がんばって練習します! いっしょにミュージックフェスに出ましょう! ぜったい、ぜったい、優勝しましょう!」
「ワドルディさんたち……! ほんとうですか!? ありがとうございます!」
ブラスは、ワドルディたちひとりひとりの手をにぎった。
「がんばりましょう。全力で、練習しましょう! ミュージックフェスまで、あと九日です!」
「なにィィ!? 九日ァァ!? たったの!?」
大声を上げてのけぞったのは、バル艦長。
アックスナイトが、あきれたように言った。
「パンフレットに書いてあったじゃないですか、ルフラン音楽祭は十日間にわたって開催されるって。今日が一日目なんだから、最終日までは、当然あと九日ですよ」
バンダナワドルディが、うなずいて言った。
「九日あれば、たっぷり練習できますよ。もちろん、きびしい特訓をしなくちゃいけませんけど」
ブラスが言った。
「ボクが教えますから、大丈夫。みなさん、ついて来てくれますね!?」
「おー!」
ワドルディたちは、はりきって、声をそろえた。
メタナイトは当然だというふうにうなずき、闘志満々のメタナイツたちも、ためらうことなく手を突き上げて「やるぞー!」と叫んだ。
バル艦長は、腕を組んで、豪快(ごうかい)に笑った。
「……ウウ……ワハハハ! ワシには、九日も必要ないぞ! 三日でじゅうぶん! ワハハハハ!」
バル艦長の顔には、キラリと、冷や汗が光っていた。
そんなこんなで、ブラスといっしょに、ビッグバンドでミュージックフェスに参加することになった、バンダナワドルディ、ワドルディ隊、メタナイト、メタナイツたち。本番まで、あと九日! 猛特訓が始まります!!
さてそのころ、歌い出したカービィと、ロッカ、デデデ大王、店のマスターはどうしているでしょうか?
次回「めざせ優勝!」をおたのしみに! (12月15日公開予定)
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