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カービィたちが、音楽の都(みやこ)ルフランで開かれる、ミュージックフェスに参戦! 優勝するのは、いったいだれ!? 2023年12月13日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ ミュージックフェスで大はしゃぎ!の巻』の先行ためし読みだよ!
◆第3回
『すばらしいお祭り』に行くために惑星ルフランへやってきた、カービィ、デデデ大王、バンダナワドルディ、そしてワドルディ隊。カービィとデデデ大王は、さっそく、『あるもの』を探して走り出します……!
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音楽祭は大にぎわい
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銀河に名だたる音楽の都(みやこ)、ルフラン。
記念すべき100回目の音楽祭をむかえて、ルフランは、いつにもまして、活気づいていた。
大通りや公園では、腕じまんの音楽家たちが、自由に曲をかなでている。ファンの熱い声援を受けて、音楽で対決する「路上ライブバトル」が始まることも、しばしばだ。
ルフランに到着そうそう、カービィとデデデ大王は、大よろこびで走り出した。
「ひゃっほーい! いいぞ、いいぞ! 祭りだー!」
「おまつり! おまつり! えんにちは、どこ!? ぼく、りんごあめとベビーカステラ食べたい! それに、わたあめと、イカ焼きと、焼きとうもろこしと、あと、あと……!」
ふたりは、初めておとずれたルフランの町なみに、大興奮。
石だたみの大通りを、大はしゃぎで駆けていく。
「待ってくださーい!」
「おいてかないでください、大王様ー!」
ワドルディたちは、ふたりを見失わないよう、必死で追いかけた。
彼らのリーダー、バンダナワドルディが叫んだ。
「どうか止まってください、大王様、カービィ! そんなにはしゃいだら、はぐれてしまいます! 知らない町で、まいごになったら、たいへんです!」
しかし、はしゃぎまくっているデデデ大王とカービィには、そんな声は届かない。
「腹がへったぞー! 屋台はどこだー!?」
「焼きそば! クレープ! かきごおりー!」
ふたりは、どんどんスピードを上げて行く。
「ま、待って……大王様ぁ……カービィ――!」
ワドルディたちの声は、あちらこちらから流れてくる音楽にかき消されてしまった。
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カービィとデデデ大王は、屋台を探して走り回ったあげく、疲れてようやく足を止めた。
「屋台、ないねー。おまつりなのに」
「うむ。実に、つまらん祭りだわい」
「ぼく、おなかへったよー! ペコペコだよー!」
二人が、すっかり元気をなくして、座りこんだときだった。
どこからか、ギターの音色が聞こえてきた。明るく、テンポよく、思わずおどり出したくなるようなメロディだ。
「わ、かっこいい音!」
「フン。音楽じゃ、腹はふくれんわい」
デデデ大王は、そう言いながらも、興味をもって立ち上がった。
二人は、音の方向に駆け出した。
ギターを弾いているのは、革のジャケットを着た、赤い巻き毛の少年だった。
カービィとデデデ大王は、同時に気づいて叫んだ。
「あ、あのひと!」
「中継ステーションで会ったヤツじゃないか。音楽はきらいだなんて言ってたのに……」
「ギター弾いてる! すごく、じょうずだね!」
ギターのかっこいい曲に合わせて、周囲のひとびとが、手拍子をしたり、ピカピカと光る棒を振ったりしている
カービィは、光る棒に目をうばわれた。
「わあ、きれいな棒! あれ、ぼくも、ほしいなあ!」
「フン、棒なんぞ、いくらピカピカ光っても、食えんわい」
デデデ大王は、音楽に聞き入りながら、言った。
曲が終わると、少年は腕をぐるぐる回してジャンプし、叫んだ。
「聞いてくれてありがとう、みんな!」
大きな拍手と、声援がわき起こった。
「かっこよかったよ~、ロッカ!」
「最高だわ、ロッカ! 最終日のミュージックフェス、ぜったい出てね! おうえんに行くから!」
カービィとデデデ大王は、少年に駆け寄って声をかけた。
「また会ったな! きさま、音楽はきらいだなんて、ウソをつきおって!」
「すっごく、かっこよかった! ギター、じょうずなんだね」
「……え?」
ロッカと呼ばれていたギタリストは、きょとんとして、ふたりを見た。
「えーと? どこかで会ったっけ?」
「中継ステーションだわい。きさまが、ワドルディにぶつかって……」
「ルフランのおすすめ料理を教えてほしかったんだ! また会えて、よかった!」
ロッカは、ふしぎそうに首をかしげた。
「……中継ステーション……だって? オレ、そんなとこ、行ったことないぜ。ひとちがいじゃねえか?」
デデデ大王とカービィは、顔を見合わせた。
「……ひとちがい?」
「そっくりだと思うが……うむむ」
思い返してみれば、中継ステーションで出会った少年は、深くフードをかぶっていたから、顔までははっきり見えなかった。
赤い巻き毛や背かっこうが似ていると思ったが、きっと、よく似た別人だったのだろう。
「ひとちがいなら、まあ、いいわい。ところで、きさま、このあたりでうまいレストランを知らんか?」
「屋台でもいいよ! おいしいくし焼き屋さんでも、おいしいりんごあめ屋さんでも、おいしいじゃがバター屋さんでも……!」
ロッカは、ふたりの言葉を聞いて、笑い出した。
「あんたたち、観光客か? ガイドブックを見れば、レストラン情報がたくさん書いてあるだろ?」
「そんなもの、見とらんわい」
アックスナイトから「ルフランのすばらしいお祭り」の話題を聞いたとたんに、ふたりの頭は「縁日」「屋台」「ご当地グルメ」でいっぱいになってしまい、夢中ですっ飛んできたのだ。
ガイドブックなんて、見るはずもなかった。
「それなら、この近くに、おすすめのレストランがあるぜ。オレ、今夜、その店でギターを弾くことになってるんだ。連れてってやるよ」
カービィは、ふしぎに思って、たずねた。
「え? レストランで、ギターを弾くの?」
「ああ。お店の中にステージがあって、演奏を聞きながら食事ができるライブレストランなんだ。ノリノリの音楽と、おいしい食事を同時に楽しめるなんて、最高だろ?」
デデデ大王が言った。
「音楽は、どうでもいいわい。そのレストランには、どんな料理があるのだ?」
「メニューは、いろいろあるよ。ルフランは、おいしいお肉が名物だからな。超ぶ厚いスペシャル・ステーキとか、特製ソースで煮こんだハンバーグとか、とろけるお肉のシチューとか……付け合わせのサラダや食後のデザートも、最高にうまいぜ!」
「うおおおおお!?」
デデデ大王とカービィは、目をかがやかせた。
「行く行く! やったぁ!」
「ステーキ! ハンバーグ! シチュー! カツ丼! さあ、食いまくるぞ~!」
「こっちだよ!」
ロッカに案内されて、二人は、ライブレストランに向かった。
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店は開店したばかりで、まだ、お客がいなかった。
カービィとデデデ大王は、店に駆けこんで叫んだ。
「ぼく、超ぶ厚いステーキ十人前! それと、ラーメンと、からあげと、焼きとうもろこしと、りんごあめと、クリームソーダと、あと、あと……!」
「オレ様は、まずステーキと焼肉二十人前だ! そのあと、カツ丼と牛丼と親子丼と豚丼! 大至急で持ってこい!」
「は……はあ!?」
店のマスターは、目をまるくした。
ロッカが言った。
「お客を連れてきたぜ。とにかく、腹ペコらしいんだ。いっぱい、食べさせてやってくれよな!」
「あ、ああ……そうかい……悪いけどね、お客さんたち。うちには、焼きとうもろこしもラーメンもりんごあめもカツ丼もないんだが……」
「じゃあ、ある物ぜんぶ! メニューの上から下までぜーんぶ、二十人前ずつ!」
「オレ様は、下から上まで、ぜんぶぜんぶ、三十人前ずつだわい!」
「……は……はぁ……!?」
マスターは、あたふたとキッチンに転がりこんで、急いで料理を運んできた。
カービィもデデデ大王も、大きく口をあけて叫んだ。
「ひゃああい、ハンバーグ、ハンバーグ! からあげ、からあげ!」
「うむ、うまい! このステーキ、焼きかげんが最高だぞ。ほめてやる!」
お皿に山盛りの料理が、あっという間にからっぽになっていく。
マスターは、二人の食べっぷりにおそれおののきながら、ロッカに言った。
「……あ、あのなあ、ロッカ。まさか、とは思うが……このふたりが、バンドの新メンバー……なのか?」
ロッカは、笑って首を振った。
「いや、ちがうよ。彼らは、たまたま会った観光客さ。新メンバーは、まだ見つかってないんだ」
「そうか。だが、急がなきゃ、まずいんじゃないのか? このままじゃ、たいせつなミュージックフェスに間に合わないよ」
「まあ、な」
ロッカは、しずんだ表情で、うなずいた。
「なんたって、100回目の記念すべきミュージックフェスなんだ。オレだって、優勝をねらいたいんだけど……」
「息の合うメンバーさえ見つかればねえ。今回のフェスの優勝者には、超スペシャルなごほうびがあるんだろ?」
「ああ。願いごとをひとつだけ、なんでもかなえてもらえるんだってさ」
「ロッカは、優勝したら、何を願うんだい? 金持ちになりたい? それとも、ゴージャスなお城に住みたい、とか?」
「よせよ、マスター。オレは、そんな欲なんて、これっぽっちもねえよ。ただ、みんなの前で最高の演奏をしたいだけで……」
笑おうとしたロッカだが、何やら熱い気配を感じて、振り返った。
カービィとデデデ大王が、目をキラキラかがやかせて、テーブルの上に身を乗り出していた。
「願いごとだと? なんでも、かなうのか!?」
「どんなお願いでもいいんだね!? ぜったいに、かなえてもらえるんだね!?」
ふたりとも、今にもロッカに抱きつきそうないきおいだ。
ロッカは、たじたじとなって答えた。
「も、もちろん、実現できる願いごとだけだぜ。宇宙を征服(せいふく)したいとか、銀河じゅうの宝石を手に入れたいとか、そんなのはダメなんだ」
「当たり前だわい。オレ様の願いごとは、そんなバカげたものではない!」
「そうだよ! ぼくの願いごとは……」
カービィとデデデ大王は、声をそろえて叫んだ。
「なんでも、好きなだけ、食べほーだい!」
「……え」
ロッカとマスターは、たじろいだ。
カービィは、目をうるうるさせて言った。
「お肉もおさしみもケーキもフルーツも……なんでも、好きなだけ、食べていいなんて……なんて、すばらしいんだろう! ミュージックフェスばんざーい!」
デデデ大王も、よだれをたらさんばかりの顔で、言った。
「ロッカ、かならず優勝しろ。そして、オレ様に、ルフラン名物の超うまい肉を、好きなだけ食わせろ! おまえが優勝できるよう、全力でおうえんするぞ!」
「い、いや、それは、ムリ……」
「ムリなことがあるか! 努力するのだ、ロッカ! もっともっとギターがうまくなるように、今から猛特訓だ!」
「そうだよ、ロッカ! がんばって! ぼく、おうえんするするするー!」
ロッカは、ふたりのいきおいに押されながら、両手を振って説明した。
「いや、そうじゃなくて……ミュージックフェスに出演するための、バンドのメンバーが、足りねえんだよ」
それを聞いて、カービィとデデデ大王は、おちつきを取り戻した。
「え? メンバー?」
「足りないとは、どういうことだ?」
「前に組んでたメンバーたちと、その……はなればなれになっちまってさ」
ロッカは言葉をにごそうとしたが、店のマスターが笑って付け加えた。
「ケンカ別れしちゃったんだ。なにしろロッカは、音楽のことになると、口うるさいんでね!」
ロッカは、気まずそうに言った。
「あいつらが、気合の入らねえ態度だったからさ! 音楽にたいせつなのは、何より、熱いハートだってのに! あいつら、ちっとも、わかってねえんだ!」
「ははは。どこかに、いないかねえ。ロッカのギターに負けないくらい、熱い歌を歌えるヤツは……」
「え、歌? 歌えばいいの?」
カービィは、パッと手を上げた。
「だったら、ぼく! ぼく、歌えるよ! 歌、とくいだよ!」
「なんだって!?」
ロッカは、おどろいてカービィを見た。
「ほんとか? キミは、ボーカリストなのか?」
「棒かりんとう? ううん、ぼくはカービィだよ」
「カービィっていうのか。ボーカリストっていうのは、歌を歌うひとのことだよ。うわあ、たまたま出会った観光客が、ボーカリストだなんて……こいつは、奇跡のめぐりあいかもな!」
ロッカは、ガッツポーズを作った。
「カービィ、オレと組まないか? オレのギターに合わせて、歌ってくれよ。いっしょにミュージックフェスに出て、優勝をめざそうぜ!」
「うん、いいよ!」
カービィは、張り切ってうなずいたが、デデデ大王が顔をしかめて言った。
「やめとけ。カービィは、すさまじいおんちだぞ」
カービィは、ムッとして言い返した。
「そんなことないよ。ぼくの歌を聞いたら、みんな感動して、ひっくり返っちゃうんだから!」
「そりゃ、気絶してるだけだわい!」
ロッカが、ケンカになりそうな二人をなだめた。
「まあまあ、おちつけよ。オレは、熱いハートをもった歌い手と、いっしょに演奏したいんだ。カービィには、熱いハートがあるよな?」
「あるある! ぼく、あっつあつの肉まんみたいなハートがあるよ!」
「最高だぜ、カービィ! じゃ、さっそく聞かせてくれよ。オレがギターを弾くから、歌ってみてくれ」
「はーい!」
カービィは店内のステージに立ち、マイクをにぎった。
マスターが、にこにこして拍手をした。デデデ大王は、かんむりを、ギュッとかぶり直した。
「じゃ、始めるぜ! イェイ!」
ロッカは、はでなジャンプを決めて、ギターを弾き始めた。
「いぇい!」
カービィはいきおいよく息を吸いこみ、思いっきり大きな声で、歌い始めた……。
ついに、メタナイトたちがおそれていた事態『カービィが歌う』ことになってしまった!? デデデ大王とロッカ、店のマスターの運命は……!?
いっぽう、カービィやデデデ大王とはぐれてしまったバンダナワドルディとワドルディ隊は、どうしているでしょうか?
次回「すてきな出会い」をおたのしみに! (12月8日公開予定)
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