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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ ミュージックフェスで大はしゃぎ!の巻』第2回 惑星ルフランへ


カービィたちが、音楽の都(みやこ)ルフランで開かれる、ミュージックフェスに参戦! 優勝するのは、いったいだれ!? 2023年12月13日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ ミュージックフェスで大はしゃぎ!の巻』の先行ためし読みだよ! 

◆第2回
戦艦ハルバードとの通信で、アックスナイトから『惑星ルフランで、すばらしいお祭りが開かれる』という話を聞いたカービィとデデデ大王。
お祭りと聞いて、いてもたってもいられなくなった二人がとった行動とは……? 

 

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惑星ルフランへ

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「うひょひょーい! 祭りだ、祭りだ~!」

「おまつり、おまつり! えんにち、えんにち! わぁい!」

 カービィたちは、ワープスターに乗りこんで、惑星ルフランをめざしている。

 乗っているのは、カービィとデデデ大王、バンダナワドルディの三人。さらに、ワープスターは、ロープで大きなカゴを引っ張っており、そこにはおおぜいのワドルディたちがぎゅうぎゅうづめになっていた。

 ワープスターは、すさまじいスピードで宇宙空間を飛んでいく。

 ひとりのワドルディが、ぎゅっと目をつぶって叫んだ。

「大王様! 惑星ルフランまで、あと、どのくらいですか!?」

 デデデ大王は、振り返って答えた。

「知らんわい! ワープスターが、勝手に連れて行ってくれるはずだ!」

 カービィが言った。

「うーん、でも、このカゴに長いあいだ乗ってたら、ワドルディたちがくたびれちゃうよ」

 バンダナワドルディがつけ加えた。

「ワープスターで中継ステーションまで行って、そこで、ルフラン行きの宇宙船に乗りかえることにしましょう。みんな、もうすぐだよ、がんばって!」

「はいっ!」

 ワープスターは猛スピードで飛び続け、ワドルディたちは、なんとか一人も落っこちることなく、中継ステーションにたどり着いたのだった。

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 中継ステーションの広いホールは、おおぜいの観光客で、ごった返していた。

 バンダナワドルディは、ワドルディたちがまいごにならないよう、めんどうをみるのにいそがしい。

「みんな、ちゃんと手をつないで。勝手に行動しちゃ、ダメだよ」

「はーい、せんぱい」

 ワドルディたちがぎょうぎよくならんでいるところへ、小さなスーツケースを引いた少年が、早足で近づいてきた。

 フードを深くかぶっている。フードの下からのぞいている髪は、燃えるようにまっかな巻き毛だった。

 少年は、手元のきっぷを見ながら歩いていて、ワドルディたちに気づかなかった。

 ドーン! 

ぶつかってしまい、ひとりのワドルディがひっくり返った。

 赤毛の少年は、あわてて声を上げた。

「うわっ!? ご、ごめんなさい、ボク、前をよく見てなくて……大丈夫!?」

「大丈夫です」

 ころんだワドルディは、クルッと一回転して立ち上がった。

「ケガはない? ほんとに、ごめんね」

 少年は、ていねいにあやまった。

 デデデ大王は、少年が手にしているチケットに目をとめて、言った。

「ルフラン行きのチケットだな。なるほど、おまえも、ルフランに行くのか」

「……え? あ、うん……そうだけど……」

 少年は、なぜか顔をこわばらせて、うつむいてしまった。

 デデデ大王は、いきおいこんで言った。

「ルフランについて、くわしいのか? ならば、教えろ。ルフランでいちばんのおすすめは、何だ!?」

 少年は、大王のいきおいにおどろいて、おずおずと答えた。

「……おすすめ? そりゃ、一流コンサートホールとか、有名な音楽家が集まるライブハウスとか、いろいろあるけど……」

 デデデ大王は、イラッとして叫んだ。

「だれが、そんな話をしとるか! オレ様が知りたいのは、食い物のおすすめだ!」

「……え? え? 食い物……って」

 カービィが、ちからをこめて叫んだ。

「ルフランで、いちばんおいしいお店はどこ!? おすし屋さんでも、ラーメン屋さんでも、ケーキ屋さんでもいいよ! 最高においしいお店を教えて!」

「だまれ、カービィ。オレ様は、やっぱり肉が食いたいぞ! おすすめのステーキ屋か焼肉屋かハンバーグ屋を教えろ!」

 ふたりにつめよられて、少年は、たじたじとなった。

 バンダナワドルディが、あわてて助けに入った。

「もちろん、音楽のおすすめも教えてほしいです。ミュージックフェスには、たくさんの音楽家が出演するんですよね。おすすめの音楽家は、だれですか……?」

 すると、少年は、急にふきげんになって言った。

「さあ。知らないな」

「え? でも……」

「ボクは、音楽なんて大っきらいなんでね。ルフランに帰るのは久しぶりだし、なんにも、わからない。ごめんね」

「あ、あの……」

「じゃあね!」

 少年はフードを深くかぶり直し、早足で歩き去ってしまった。

 デデデ大王が、ブツブツと言った。

「せっかく、グルメ情報を聞き出そうと思ったのに……カービィがずうずうしいから、逃げられてしまったわい」

「えー! ずうずうしいのは、デデデ大王だよ!」

「フン! 何を言うか!」

 ケンカが始まりそうなので、バンダナワドルディが急いで話題を変えた。

「今のひと、ちょっと、ふしぎな感じでしたね。ルフランに帰るのは久しぶり……って言ってましたから、ルフラン生まれだと思うんですけど。なのに、音楽が大っきらいだなんて……」

「きっと、ものすごいおんちなんだろう。カービィみたいに」

 デデデ大王に悪口を言われて、カービィは飛び上がって抗議(こうぎ)した。

「ぼくは、おんちじゃないよー! ぼくの歌は、みんなをメロメロにしちゃうんだから!」

「みんなをヘロヘロにしちゃう、の、まちがいだろう。おんちすぎて、聞いたヤツはみんなヘロヘロになって気絶してしまうんだわい」

「ちがうよー! デデデ大王には、わからないんだよ。ぼくの歌のすばらしさが!」

 言い合っている間に、アナウンスがひびいた。

「ルフラン行きの便にお乗りのお客様は、ゲートにお急ぎください。くり返します、ルフラン行きの便にお乗りのお客様は……」

 デデデ大王は、さっそく駆け出した。

「ひゃっほー! オレ様がいちばん乗りだ!」

「あ、待ってよ! いちばんは、ぼくだよ!」

「走っちゃダメですー、大王様、カービィ!」

 一行は、ドタドタと搭乗(とうじょう)ゲートに向かった。

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 カービィたちが、大さわぎしながら去ったあと。

 さっきの少年が、トボトボとスーツケースを引きながら、ゲートに向かっていた。

「……兄さんたち、ミュージックフェスに出るのかな……どんな曲を演奏するのかな……」

 小さな声でつぶやいたあと、彼は軽く頭を振り、腹立たしげに続けた。

「ふん、どうでもいいや、そんなこと。音楽なんて……ミュージックフェスなんて……くだらない!」

 彼の表情は、ほかの観光客たちの明るい笑顔とは反対に、暗くかげっていた。

     


みんなで、いざ、惑星ルフランへ! そして、『音楽なんて大っきらい』という、フードをかぶった少年も、ルフランへ……。いろんな思いをのせて、宇宙船が飛びたちます!
次回「音楽祭は大にぎわい」をおたのしみに!
 (12月1日公開予定)


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9784046322357

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