2026年7月発売予定の小説『星のカービィ 夢幻の歯車 霧につつまれた大事件!?』が、どこよりも早く読めちゃう、先行ためし読みスタート!
大人気発売中の『星のカービィ 夢幻の歯車を探せ!』に続く、飛行機乗りのカービィのお話だよ。いつものプププランドとはちがう、別の世界の物語の世界へ飛びこもう!
◆第2回
とつぜん、街じゅうに広がった霧のせいで、煙突が詰まってしまった! みんな大弱りしていたけれど、旅のすご腕煙突掃除屋さん・マルクが来てくれたから、もうだいじょうぶ! …と、思っていたら、前回の事件でおなじみの『あの人』がチョコレート・タウンに来ているようで…? これは、これから新たに事件が起こる予感!?
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霧の中の魔法使い
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霧におおわれたチョコレート・タウンの街路を、一人の旅人が歩いていく。
耳つきの青いフードを深くかぶり、白いマントをはおっている。
荷物は、大きなスーツケース一つだ。
旅人――マホロアは、あたりを見回してつぶやいた。
「ひどい霧だネェ……ダレのしわざか知らないケド、なかなかやるネ!」
彼には、わかっていた。
この霧は、自然現象ではない。
だれかが、魔法で作り出したものだ。
おそらく、古代機械を手に入れるために。
とすると――見きわめなければならない。
その魔法使いは、敵なのか。それとも、利用できる相手なのか。
マホロアは顔を上げた。
霧のせいで、空は見えない。けれど、はるか高いところには、かがやくばかりに美しい船が浮かんでいるのだ。
こころをもつと伝えられる伝説の船、ローアが。
ローアは今、すべての機能を停止している。たとえるならば、ねむっている状態だ。
ねむりを覚ますためには、とてつもない魔法の力が必要になる。
そう、古代機械の力が。
マホロアは、かつて、ローアのために、古代機械の歯車を手に入れようと考えたことがあった。
結局、その願いはかなわなかったけれど、彼はあきらめていなかった。
ゆっくり歩みを進めながら、マホロアは、決意をこめてつぶやいた。
「待っててネ、ローア。今度こそ……ボク、ローアをよみがえらせてみせるヨォ!」
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さて、マルクが街にやって来てから、数日が過ぎた。
霧はあいかわらず晴れないが、マルクのおかげで、街じゅうの煙突がきれいになり、スス問題は解決した。
うわさによれば、ひかりのまちでも、マルクは活躍しているそうだ。最初は、貴族たちから冷たい目を向けられていたマルクだが、今ではその腕を見こまれ、引っぱりだこの大人気だという。
そんな、ある日の午後。
おなかをすかせたカービィは、おやつを食べようと、カフェに向かった。
デデデ工場の近くにある「ドロッチェ・カフェ」だ。この店は、カービィやデデデ社長たちのたまり場になっている。
店の人気メニューは、チョコレートをたっぷり使ったデザートだ。
以前は、あまいお菓子は超高級品で、かぜのまちの住民はめったに口にすることができなかった。
が、古代機械がチョコレートを生み出すようになったおかげで、今ではみんなが好きなだけチョコレートを食べることができる。
いつものとおり、カフェには、デデデ社長とワドルディがいた。
「やっほー、ワドルディ、デデデ社長。今日は、なにを食べてるの?」
カービィは、ワドルディのとなりにすわった。
ワドルディが言った。
「デデデ社長は、本日のスペシャルデザート、チョコレートケーキと、チョコレートがけフルーツと、ホットココアのセット。ぼくは、チョコレートパフェだよ」
「わあ、おいしそう! ドロッチェ、ぼく、スペシャルデザートセットと、チョコレートパフェ十人ずつ前ね」
ガツガツとデザートセットを食べていたデデデ社長が、ムッとしてどなった。
「ドロッチェ、オレ様もチョコパフェ十人前、いや二十人前追加だ! カービィには負けられん!」
「はいはい」
店長のドロッチェは、お菓子作りの名人で、カービィたちとは顔なじみ。彼らのおそるべき食欲をよく知っているので、おどろきもせずに注文を受けた。
まもなく、スペシャルセットやチョコレートパフェが運ばれてきた。カービィが言った。
「ドロッチェのお店も、マルクに煙突掃除してもらってるの?」
ドロッチェは、うなずいた。
「ああ、もちろん。こうして店を開けられるのは、あいつのおかげさ」
デデデ社長が言った。
「それはなによりだ。それにしても、この霧は、いつになったら晴れるんだろうな? 毎日、寒いし、ジメジメするし、気がめいるわい」
「そのことなんだが……実は、ちょいと気になる話があるんだ」
ドロッチェは、他の客がいないのをいいことに、イスにすわりこんだ。
「気になる話って?」
「メタナイトから聞いたんだが、最近、ひかりのまちで立て続けに事件が起きてるらしい」
「事件……?」
「盗難事件さ。貴族の館が次々に狙われ、宝石や美術品などが盗まれてるそうだ」
「ええ!?」
カービィたちは、おどろいた。
ドロッチェは、声をひそめて続けた。
「事件が起き始めたのは、霧の発生と時期が同じ。どうやら、犯人は霧を利用して姿をかくし、犯行におよんでるらしいんだ。貴族たちは、ふるえ上がってるそうだぜ。どれだけ警備を厳重にしても、犯人はいつの間にか侵入して、お宝を盗んでいくんだと。それこそ、霧のようにな」
カービィが、心配そうに言った。
「メタナイトも? なにか、盗まれちゃったの?」
「いや、今のところ、被害にはあってない。あいつは強気で、犯人を必ず捕まえてみせると息巻いてるんだが……」
と、そのとき。
ドアが開いた。ドロッチェはすばやく立ち上がり、にこやかに言った。
「いらっしゃいませ! お好きな席へどうぞ」
入ってきたのは、ピンク色の髪をした、キリッとした女性だった。かたくるしい制服を、きっちり着こんでいる。
かぜのまちでは、見たことのない顔だ。
彼女は店内を見回すと、きびしい声で言った。
「ここが『ドロッチェ・カフェ』ですわね。このあたりでは、いちばん人気のある店だと聞いていますわ」
ドロッチェは、笑みを消して言った。
「……そりゃ、どうも。で、あなたは?」
「ワタクシは、ひかりのまち警察署の署長スージーですわ」
「警察署長さん? いったい、うちになんの用で?」
「実は、最近、ひかりのまちで盗難事件が相次いでいますの。その捜査のため、駅やホテル、カフェなど、ひとが集まる場所で、証言を集めることにしましたのよ」
カービィたちは顔を見合わせた。たった今、その事件のことを話題にしていたところだ。
ドロッチェが言った。
「そいつは、ご苦労さま。だけど、事件が起きてるのは、ひかりのまちでしょう? どうして、かぜのまちを調べてるんです?」
すると署長スージーは、きっぱりと言った。
「あら、当然ですわ。ひかりのまちは、貴族の街。盗みをはたらくような不届き者など、一人もいません。犯人は、かぜのまちのヤバンな住民に決まっていますわ」
「なんだと!?」
デデデ社長が血相を変えて、スージーをにらみつけた。
ワドルディがハラハラして止めようとしたが、社長の怒りはおさまらない。
「決めつけるな! かぜのまちには、泥棒なんておらんわい!」
カービィも言った。
「ぼく、この街のみんなのこと、よく知ってるよ。悪いヤツなんていないよ!」
スージーは、ツンとして、つぶやいた。
「住民同士で、かばい合っているというわけですわね。フン、おろかしい」
「なに?」
「とにかく、あやしいと感じることがあれば、なんでも証言しなさい。最近、急にぜいたくな暮らしをするようになった者はいませんこと?」
「そんなヤツ、おらんわい!」
デデデ社長は、敵意をむき出しにしてどなった。
署長スージーは、そっくり返って言った。
「かくしごとをすると、ためになりませんわよ。とにかく、気づいたことがあったら、すぐに通報しなさい」
そして署長スージーは、さっさと店を出て行ってしまった。
デデデ社長は、怒り心頭。
「なんだ、あいつは! なんの証拠もないのに、オレ様たちを疑うなんて、失礼なヤツだ!」
ワドルディが言った。
「事件が続いていて、警察もピリピリしてるみたいですね」
「フン! 泥棒がつかまらないのは、警察が無能だからではないか!」
カービィが言った。
「かぜのまちに、犯人がいるはずないよ。みんな、なかよしだもんね!」
ドロッチェが言った。
「とは言え、ひかりのまちの貴族が、盗みをはたらくとも思えないな」
デデデ社長が、ジロッとドロッチェをにらんだ。
「なんだ? おまえまで、かぜのまちに犯人がいると言いたいのか?」
「いや、そうじゃない。かぜのまちの住民でも、ひかりのまちの貴族でもないとすると……犯人は……」
ドロッチェのつぶやきは、とても小さくて、だれにも届かなかった。
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その晩も、マルクはデデデ社長の家に、夕食を食べに来た。
もちろん、カービィも。
みんなで集まって、パーティのようなごちそうを食べるのが、一日の終わりのお楽しみになっている。
ワドルディお手製のキノコ・ピザやクリームシチューを食べながら、デデデ社長が言った。
「そういえばな、マルク。今日、ひかりのまちの警察署長が、ドロッチェの店にやって来たのだ」
「え? 署長さんが?」
「うむ。ひかりのまちで起きてる盗難事件を調べてるんだそうだ」
それを聞くと、マルクは表情をくもらせた。
「ボクがお掃除してるお屋敷でも、何軒か、被害にあってるのサ。大切な宝石とか美術品を盗まれちゃったんだって。気の毒なのサ。でも、ひかりのまちの事件なのに、どうして署長さんがかぜのまちにまで?」
「ヤツめ、かぜのまちの住民を疑っているのだ。まったく、失礼なヤツだったわい!」
デデデ社長はスージーの顔を思い出して、不機嫌になった。
ワドルディが、心配そうに言った。
「マルクさんは、だいじょうぶですか? ひかりのまちに出入りしていて、警察に疑われたりしませんか?」
マルクは、にっこりして答えた。
「ボクはだいじょうぶなのサ。警察署の煙突も掃除してるから、署長サンとも顔見知りなのサ。それに、ボクがひかりのまちにいるのは、昼間だけなのサ。夕方には、門を通ってこっちに帰ってくるし、門番さんがちゃんと出入りをチェックしてる。泥棒事件が起きるのは夜だから、ボクは関係ないのサ」
それを聞いて、三人は、ホッとした。
カービィが言った。
「そういえば、マルクは、どこで寝てるの?」
「え?」
「夕方、お仕事が終わったら、いつもデデデ社長の家でシャワーを浴びて、ごはんを食べるよね。お食事のあと、ぼくといっしょに帰って、とちゅうの道で別れて……夜は、どこで寝てるの?」
デデデ社長が言った。
「うむ、実は、オレ様もそれが気になっていたのだ。マルク、どこのホテルに泊まってるか知らんが、なにかと不便ではないか? オレ様の家に泊まっていいんだぞ。部屋は、たくさんあるからな」
するとマルクは、笑顔で言った。
「ボクは、ホテルには泊まってないのサ。毎晩、気に入った場所で野宿をしてるのサ」
「え!? 野宿!?」
「うん、公園とか、空き地とかで」
デデデ社長は、うろたえて言った。
「なんてことだ、かわいそうに! やっぱり、うちに泊まれ。遠慮はいらん」
「ありがとう。社長サンは、やっぱり、思いやりがあるんだな。さすが、街いちばんの名士って言われてるだけのことはあるのサ」
「ま、街いちばんの名士……? オレ様が、か?」
デデデ社長は、目をぱちくりさせた。そんなこと、これまでに一度も言われた記憶がない。
マルクは、大きくうなずいた。
「ボクは、あちこちの家を回ってるから、いろんなウワサを聞いてるのサ。かぜのまちのみんなが、社長サンのことを、ほめちぎってるのサ。だれよりも、やさしくて、勇気があって、かしこいって!」
「そ……そうか!? みんな、そんなことを……ま、オレ様としては、当たり前のことをしているだけなんだが。わはは……わはははははは!」
デデデ社長は、のけぞって笑った。
ワドルディが言った。
「え、えっと……マルクさん、野宿なんて、だいじょうぶですか? 夜は冷えるし、つらいのでは?」
「ううん、ボク、野宿が好きなのサ。霧のせいで星空は見えないけど、外の空気は気持ちいいのサ。ボクは旅の煙突掃除屋だから、野宿には、なれてるのサ」
「そうですか……マルクさんは、本当に欲のない、きれいなこころの持ち主なんですね!」
ワドルディは感動し、マルクに尊敬のまなざしを向けた。
カービィが言った。
「マルクは、まだまだずっと、ぼくらの街にいてくれるんだよね?」
「うん、もちろん! みんなが困ってるのを、放っておけないからな。霧の問題が解決するまではここにいるのサ」
「わぁい! ずっと、毎晩、パーティができるね!」
カービィは、大よろこび。
すかさず、デデデ社長が言った。
「パーティには大賛成だが、おまえは来なくていいぞ。マルクのためのパーティだからな!」
「えー! ぼくがいるほうが楽しいよね、ね、マルク?」
マルクは笑いながら、うなずいた。
「うん! おいしいものは、みんなで食べるほうがいいのサ。ボクは、孤独(こどく)な旅人だから、いつも一人ぼっちだったのサ……こんなふうに、こころのこもったごちそうを、みんなといっしょに食べられるのは、とってもしあわせなのサ!」
「マルクさん……」
ワドルディは、目をうるませた。
「ぼく、毎晩、おいしい料理をたくさん作ります。みんなで、楽しくパーティをしましょうね」
「わぁい、パーティ、パーティ!」
カービィが、大きく手をたたいた。
「まったく! おまえのためのパーティじゃないわい!」
文句を言いながらも、デデデ社長もうれしそう。
楽しい食事会は、夜おそくまで続いたのだった。
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さて――その食事会のあと。
マルクは、カービィと別れて、霧につつまれた夜道を一人で歩いていた。
ならんだガス灯が、ぼんやりと道を照らしているが、霧が立ちこめているため、ほとんど視界がきかない。
けれど、マルクの足取りに迷いはなかった。
彼の顔には、これまでにカービィたちには見せたことのない表情が浮かんでいた。
「――フフン! この街は、おひとよしばっかりだな。おだてに弱い社長サン、感動しやすいワド坊やに、食い意地いっぱいのカービィ……おっほっほ、仕事がやりやすいのサ!」
邪悪さを秘めた、ぶっそうな声だ。
「さて、と。それじゃ、さっそく、今夜の仕事に取りかかるとするか……」
つぶやいたときだった。
前方から、小さな人影が歩いてくる。
霧のため、ほとんど姿は見えないが、マルクにはその存在がはっきり感じ取れた。
「……ん? アイツ……」
ほぼ同時に、相手もマルクに気づいたらしい。
二人は、すれちがいざま、足を止めて互いを見た。
旅人だろうか。大きなスーツケースを引きずっている。耳つきのフードを深くかぶっているので、顔立ちはよく見えない。
「…………」
「…………」
二人は、無言で、バチバチッと視線をかわした。
しかし、それも一瞬のこと。フードの旅人は、プイッと顔をそむけて、歩き出した。
マルクはすばやく振り返ったが、すでに、フードの旅人は気配を消していた。
「今のヤツ……タダモノじゃないな。おそらく、ボクと同じく、魔法の使い手……か」
マルクは、けわしい表情で、考えこんだ。
前回のお話『星のカービィ 夢幻の歯車を探せ!』にも登場したマホロアが、ふたたびチョコレート・タウンにやってきた! マルクもなにやらたくらんでいることがあるみたいだし、いったいどうなっちゃうの!?
次回『犯人をつかまえろ!』をおたのしみに!(6月26日公開予定)
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