
メタナイトが、海の怪物・キングフロッツォ討伐に挑む! 好評発売中のつばさ文庫『星のカービィ メタナイトと魔石の怪物』は、メタナイトが主人公の外伝第4弾!! 大人気外伝のためし読みを、今すぐチェックしよう☆
◆第4回
メタナイトたちが怪物・キングフロッツォの退治をすると聞いて、家を飛び出していってしまったピエトロの孫娘・ルチア。メタナイトに敵意を燃やすルチアが、海上で出会った船の正体は……?
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いきなり船バトル!?
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ルチアは帆船の甲板(かんぱん)に立って、青い髪を風になびかせながら、水平線を見つめていた。
「キングフロッツォは、オレがぜったい、この手でぶっ倒す。よそ者なんかに、手出しはさせねえ!」
決意を新たに、こぶしをにぎったときだった。
ルチアは、すぐ近くに、見覚えのある白い帆船(はんせん)が航行していることに気づいて、びっくりした。
「あれは、メタナイトたちが乗ってきた船じゃねえか! どうして!? このルチア号が、追いつかれるなんて……!」
ルチアは、目をギラッと光らせて、つぶやいた。
「オレのじゃまは、させねえぜ! 覚悟しな、メタナイト!」
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……実は、それは、メタナイトたちの『夕映えのハーモニー号』ではなかった。
そっくり同じ型の『朝焼けのメロディ号』。つまり、カービィやデデデ大王、ワドルディ隊を乗せた船だった。
カービィたちは、本格的な船旅に、大はしゃぎ。
船の冷蔵庫に用意されていたデザートを食べ散らかし、ドリンクを飲み散らかし、すっかりリゾート気分だった。
「ウッホホーイ! 極楽だわい!」
デデデ大王は、甲板のデッキチェアに寝そべって、トロピカルドリンクを片手に、くつろいでいる。
カービィは、両手にカップケーキを持ってぱくぱく食べながら、言った。
「これを食べ終わったら、つりをしようっと。おっきなおさかなをつるぞー!」
バンダナワドルディが、甲板をそうじしながら言った。
「カービィ、つりもいいけど、ぼくらの目的は、タコ退治だよ。忘れないでね」
「もちろん、忘れてないよー! 早く出てこい、キングタコッツォ!」
「キングフロッツォだよ……」
と、そのとき。
マストに上って、双眼鏡(そうがんきょう)であたりを警戒(けいかい)していたぼうけんワドルディが、声を上げた。
「たいへん、たいへん! あやしい船が近づいてきます! まっくろな帆に……うわあ、ドクロのしるし! あれは、海賊船です!」
「え? 海賊?」
みんな、ぼうけんワドルディを見上げた。
バンダナワドルディが、にっこりして言った。
「伝説の海賊、ピエトロ船長ってひとかな? 海賊だけど、いいひとなんだよね」
デデデ大王が、デッキチェアからむっくり起き上がって言った。
「大ダコの足を切り落としたとかいう海賊だな。いちおう、あいさつをしてやろう。残る七本の足はオレ様のものだと、宣言してやるわい」
カービィも、ウキウキして言った。
「ピエトロさんも、タコ焼きパーティによんであげようよ! いろんなお話を聞きたいよ!」
しかし。
ぼうけんワドルディは、双眼鏡ごしに目をこらし、緊迫(きんぱく)した声を上げた。
「ピエトロ船長は、引退したって聞きました! あの船に乗ってるのは……あっ、女の子です! 青い髪の女の子です!」
デデデ大王が、きょとんとして言った。
「女の子だと? ピエトロとは別の海賊なのか……?」
と、その瞬間。
ドバァァァァン!
轟音がひびき、海面に盛大な水柱が上がった。
すさまじい衝撃が、『朝焼けのメロディ号』をおそう。
「うわああああ!?」
「ひゃぁぁぁぁぁ!」
カービィもデデデ大王もワドルディたちも、悲鳴を上げて、甲板をころころと転がった。
ぼうけんワドルディは、落っこちないようにマストにしがみついて、叫んだ。
「砲撃です! 海賊船が、大砲を撃ってきました!」
「なんだと――!?」
ぼうけんワドルディは、双眼鏡ごしに目をこらし、報告を続けた。
「敵は、やる気まんまん! また砲撃がきます! たいへん! 戦わなきゃ!」
ぼうけんワドルディは、マストから飛び下りた。
続けざまに、二発目、三発目の砲撃がおそいかかった。
直撃はしなかったが、周囲にバンバンと水柱が上がる。
『朝焼けのメロディ号』は、荒れる波にもまれて、木の葉のようにゆれた。
デデデ大王が、わめいた。
「ええい、ふとどきな海賊め! 許せんわい! デデデ大王様にケンカを売るとどうなるか、思い知らせてやる! ワドルディども、こっちも大砲で反撃だ!」
『朝焼けのメロディ号』は、ただの観光用の帆船ではない。勇者たちの冒険にも耐えられるよう、本格的な兵器を積みこんでいるのだ。
しかし、ワドルディたちは、兵器の扱いなんて、なれていない。
「え、えっと、大砲って、どうやって撃つの……?」
「ばくはつしたら、どうしよう!?」
うろたえるばかりで、だれも、大砲に近よることすらできない。
デデデ大王は、かんしゃくを起こして、どなった。
「ええい、大砲は、もういい! ぶき屋、オレ様のハンマーを持ってこい!」
「は、はい!」
ぶき屋ワドルディが、大急ぎでハンマーをかついで来た。
どうぐ屋ワドルディが、カービィに言った。
「ぼく、カービィさんが使えるよう、『コピーのもと』を準備してます! ファイアでもアイスでもソードでも、なんでもそろってます!」
カービィは、飛び上がって叫んだ。
「ありがとう、どうぐ屋くん! それじゃ、ソードをお願い!」
「はい!」
カービィは、どうぐ屋ワドルディから『コピーのもと』を受け取り、くるっと一回転した。
たちまち、カービィの姿が変化した。
緑色のぼうしに、大きな剣。おなじみ、ソードのコピー能力だ!
デデデ大王が、ハンマーを振り上げて、叫んだ。
「悪い海賊を、ぶちのめすぞ! 船をもっと近づけろ!」
舵を取っていたワドルディが答えた。
「よーそろ! 敵船に接舷(せつげん)します!」
『朝焼けのメロディ号』は、はげしい砲撃をものともせず、黒い海賊船に向かっていった。
デデデ大王が、敵船に乗り移る体勢になって、叫んだ。
「行くぞ! みなの者、オレ様に続けー!」
「おー!」
ワドルディたちが、ときの声を上げた。
中でも張りきっているのは、ぼうけんワドルディ。
初めての大ぼうけんに、やる気をみなぎらせ、大声を上げた。
「海賊め、ぼくが、やっつけてやる! 思い通りには、させないぞ!」
もちろん、カービィも、おくれは取らない。
「いちばん乗りは、ぼくだもんね! 海賊め、かくごしろー!」
カービィ、デデデ大王、そして大勢のワドルディたちが、いっせいに海賊船に飛び移ろうとした――そのとき。
無数の火矢が、『朝焼けのメロディ号』めがけて、放たれた。
海賊船ルチア号のひみつ兵器、ウルトラ・デンジャラス・ファイアー・ウェポンだ!
予想外の攻撃に、カービィたちは、びっくりぎょうてん。
「うわああああ! 火が!」
「たいへん! 火事になっちゃう!」
甲板の荷物や、マストや、帆に、火が回ろうとしている。
ワドルディたちは、大あわてで、消火に向かった。
「海の水をくんで! 早く!」
「バケツをもっと持ってきてー!」
カービィもデデデ大王も、戦うどころではない。
「どうぐ屋くん、ウォーターのコピーのもとをちょうだい! ウォーターで、火を消すよ!」
「バケツを貸せ! ええい、ワドルディども、やけどするぞ! オレ様の後ろにかくれろ!」
てんやわんやの『朝焼けのメロディ号』のみんなは、まったく気づいていなかったが――。
この騒ぎの間に、ひとりのワドルディが、海に落ちていた。
ぼうけんワドルディだ。
張り切りすぎた彼は、だれよりも早く海賊船に飛び移ろうとして、足をすべらせてしまったのだ。
「た、た、たすけてー! 大王さまぁ!」
波間をあっぷあっぷしながら、声を限りに叫んだが、その声は、さわぎにかき消されてしまった。
デデデ大王もカービィもワドルディたちも、消火にかかりっきりで、まるで気づいていない。
「た……たす……け……!」
海水が、ようしゃなく口の中に流れこんでくる。
もはや、声も出せない。
「…………! ……!」
目が見えなくなり、意識が遠のいていく。
ぼうけんワドルディは、そのまま気を失ってしまった。
ルチアのかんちがいの砲撃で、ぼうけんワドルディが大ピンチ!? ぼうけんくんは、ボロボロになったカービィたちの船はどうなっちゃうの!?
次回「ぼうけんワドルディのゆくえ」をおたのしみに! (4月13日公開予定)
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