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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ メタナイトと魔石の怪物』第5回 ぼうけんワドルディのゆくえ


メタナイトが、海の怪物・キングフロッツォ討伐に挑む! 好評発売中のつばさ文庫『星のカービィ メタナイトと魔石の怪物』は、メタナイトが主人公の外伝第4弾!! 大人気外伝のためし読みを、今すぐチェックしよう☆ 

◆第5回
カービィたちの乗った船が、かんちがいで少女海賊ルチアの砲撃にあい、大ダメージをくらってしまった! しかも、ワドルディ隊のひとり・ぼうけんワドルディが海に落ちてしまって……。いっぽう、ルチアを追うメタナイトたちが、そのころどうしていたかというと……?
 

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ぼうけんワドルディのゆくえ

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 さて、いっぽう――。

 メタナイトたちが乗る『夕映えのハーモニー号』は、海賊船ルチア号をさがして航海を続けていた。

 港でいちばんのスピードをほこる『夕映えのハーモニー号』だが、さらに上を行く快速のルチア号には、とうていかなわない。

 あっという間に、その船影(せんえい)を見失ってしまったのだ。

 甲板に立ったバル艦長が、ぶつぶつと言った。

「おそるべきスピードですな、海賊船ルチア号! 船の性能もさることながら、ルチアちゃんの操縦(そうじゅう)の腕前にも、おどろきます。そう思いませんか、メタナイト様?」

 しかし、かたわらに立つメタナイトからは、返事がなかった。彼は、水平線を見つめて、何やら考えこんでいる。

 バル艦長は、きょとんとして、たずねた。

「メタナイト様? どうか、されましたか?」

「あ……ああ。すまない。考えごとをしていた」

 メタナイトは、やっと気づいて、バル艦長を見た。

「ピエトロ殿の話が、どうも、引っかかるのだ。彼はかつて、キングフロッツォと死闘(しとう)をくり広げ、足を切り落とした。他の者は、戦うことすらできないのに、だ。たまたま魔石の光が目に入らなかったから、などという話を、信じてよいものか」 

「……え? それは、どういう……」

「ピエトロ殿は、本当は、魔石の術を破る方法を知っているのではないだろうか」

「ええ……!?」

 バル艦長は、目をまるくした。

「だとすると、なぜ、それを言わないのです?」

「わからん。だが、ピエトロ殿は、何かをかくしている気配がある……」

「ひょっとすると、ルチアちゃんが、何か知っているかもしれませんな」

「うむ。追いついたら、聞き出してみるとしよう」

 メタナイトは、ふたたび水平線に目を向けた。

「かくしていると言えば、もう一つ、気になったことがある」

「なんですかな?」

「武器部屋にかざられていた写真だ」

 すると、二人の話を聞きつけたメタナイツたちが、口々に声を上げた。

「オレも、気になってました。ピエトロ殿は、すぐに写真立てを伏せてしまいましたよね。まるで、それ以上くわしく聞かれたくないみたいに」

「チラッとしか見えませんでしたが、若いころのピエトロ殿の写真でした。たしか、頭にタコをのせてた……」

「タコはタコでも、キングフロッツォとは大ちがいだス。かわいい、小さいタコだっただス」

 アックスナイトが、ふと思いついたように、言った。

「ひょっとして、あのタコが、ピエトロ殿の相棒だったんでしょうか? キングフロッツォに、命をうばわれたという……」

 メタナイツたちは、顔を見合わせた。

「あんな小さな、かわいいタコが、巨大なタコにやられちまったっていうのかよ……」

「しかも、ピエトロ殿の目の前で……?」

「ざんこくすぎるだス!」

「そりゃ、ショックで海賊を引退するのも、当たり前だよ」

 メタナイツたちが、言い合っているとき。

 とつぜん、マストの上から声が降りかかった。

「気になる船影を発見! なんだ、あれは……!?」

 みんなからはなれて、見張りの当番についていたジャベリンナイトだ。

 バル艦長が、マストを見上げて、いきおいこんで叫んだ。

「なんだとー!? ルチア号か!?」

「いえ、ちがいます。この『夕映えのハーモニー号』に、そっくりな帆船(はんせん)です!」

 それを聞いて、バル艦長はがっかりした。

「……なんだ、似たような船など、いくらでもあるだろう。そんなものは、いちいち報告せんでいい。ワシらが探しているのは、まっくろい帆の海賊船ルチア号だ」

「でも、まったく同じ型の船で……ただ、ボロボロです。マストも帆も、ほとんど焼け落ちていて……うわあ!? 乗っているのは、デデデ大王! カービィとワドルディたちもいます!」

「なんだと!?」

 バル艦長はけっそうを変えて、へさきに駆け寄り、望遠鏡(ぼうえんきょう)を目に当てた。

 自分で確認して、うなり声を上げる。

「むむむ、まさしく! あの連中、しつこくワシらを追いかけて来たのですな! 相手にしている場合ではないというのに! すみやかにはなれましょう、メタナイト様!」

「待ちたまえ」

 メタナイトも望遠鏡を手にして、カービィやデデデ大王の様子をうかがった。

「様子がおかしい。はげしい攻撃を受けたようにボロボロだし、彼らは、こちらに気づいていない。交代で、次々に海に飛びこんでいる」

「何をしているのですかな? 海水浴……?」

「いや、ちがう。何やら、あせっているようだが……海に落ちた物を探しているのか? あのあせり方からすると、ただの物ではないかもしれん。だれかが落ちたのか……」

「ええ!?」

 バル艦長も、メタナイツたちも、おどろいた。

「とすれば、ワドルディ隊のうちのだれかでしょう!」

「泳げるのか、あの子たち!?」

「たいへんだ! 救助を手伝いましょう!」

「むろんだ。全速前進!」

『夕映えのハーモニー号』は速度を上げ、『朝焼けのメロディ号』のほうへ向かった。

 近づくにつれ、緊迫(きんぱく)した様子が伝わってきた。

 カービィもデデデ大王も、海にもぐっては浮上し、息をととのえて、またもぐる……ということを繰り返している。

 船上のワドルディたちは、大混乱だ。バンダナワドルディがけんめいに指揮を取っているようだが、泣いている者や走り回っている者など、パニック状態が広がっている。

 カービィが、メタナイトたちに気づいて、空中に飛び上がった。

「あ! メタナイト!」

「何があったのだ、カービィ」

 カービィは、宙を飛んで『夕映えのハーモニー号』にせまり、大声で叫んだ。

「たいへんなんだ。ぼうけんくんが、ゆくえふめいなんだ!」

「ぼうけんくん? ワドルディ隊の者か」

「そうだよ。ぼくら、海賊船におそわれてね、その戦いのあいだに、ぼうけんくんがいなくなっちゃったんだよ!」

「なに? 海賊船?」

 メタナイトは、おどろいて聞き返した。

「ひょっとして、まっくろな帆をかかげた船か? ドクロのもようの……」

「そうだよ。メタナイト、知ってるの?」

「われわれは、まさにその海賊船を追っているのだ」

 そこへ、デデデ大王も空を飛んできた。

 つかれきった表情だ。ずっと、ぼうけんワドルディを探していたのだ。

 デデデ大王は、弱々しい声で言った。

「……メタナイト、きさまに頼みがある。オレ様の部下の一人が、海に落ちたらしいのだ。ずっと探してるのだが、見つからん。きさまも、協力してもらえんか……」

「そのことだが。君の部下は、ひょっとしたら海に沈んだのではなく、海賊にとらえられたのではないか?」

「……なに?」

「私は、その海賊船に心当たりがある。海賊といっても、危険な賊ではない。根は、やさしいはずだから、落ちたワドルディを放っておけずに救助したのだろう」

 すると、デデデ大王は、血の気のなかった顔をまっかにしてどなり出した。

「ばかものー! あれのどこが、やさしいのだ! いきなり、大砲をぶっぱなしてきたんだぞ!」

「それは……おそらく、君らの船を、私の乗った船とカンちがいしたのだろう。同じ型だからな」

 デデデ大王は、首をかしげた。

「なに? どういうことだ? きさま、海賊と戦ってるのか?」

「説明している余裕はない。とにかく、私はその海賊船を追う」

「待て待て。オレ様たちも……」

 デデデ大王は言いかけたが、メタナイトが頭を振ってさえぎった。

「君たちの船は、そのままでは航行できまい。修理が必要だ」

「……むむむ」

 デデデ大王は、『朝焼けのメロディ号』を振り返った。

 マストも帆も、まっくろこげだ。メタナイトの言うとおり、修理しなければならない。

「ならば、オレ様を、きさまの船に乗せろ。海賊船まで連れて行け!」

 強引に甲板に降り立とうとするデデデ大王に、メタナイトは言った。

「君たちの船はどうする? カービィにまかせるのか?」

「……む……」

「あのボロボロの船に、君の部下たちを置いて行く気か。みなの不安が、ますますつのるだろう」

 デデデ大王は、もう一度、『朝焼けのメロディ号』を振り返った。

 おおぜいのワドルディたちが、不安そうに行ったり来たりしている。

 それを見て、デデデ大王は、うなずいた。

「むぅ……わかった。オレ様は、港町で船を修理してから、きさまを追いかけることにする」

 船にもどろうとするデデデ大王に、メタナイトは言った。

「港町より、ピエトロ殿の島のほうが近い。行ってみてはどうだろう。ピエトロ殿は、きっと、船の修理に協力してくれるぞ」

「ピエトロ? 海賊か。もう、海賊はうんざりだわい」

 デデデ大王はげっそりして言ったが、カービィが声を上げた。

「ピエトロさんは、まっくろい帆の海賊とはちがって、いい海賊なんだよね。きっと、助けてくれるよ」

「だと、いいがな……」

 デデデ大王は、しぶい顔でうなずいた。

「しかたない。他に方法がなさそうだ。メタナイト、そのピエトロとやらの島を教えろ」

「よかろう」

 メタナイトが合図を送ると、アックスナイトが海図を持ってきて、ピエトロの島の位置を説明した。

 デデデ大王は元気を取りもどし、カービィとともに『朝焼けのメロディ号』に引き返していった。

 ワドルディたちがオールをこぎ、カービィがジェットのコピー能力を使って船を引っぱる。

 ボロボロの『朝焼けのメロディ号』は、ゆっくり動き出した。ピエトロの島へ向けて。

 遠ざかっていく船を見送りながら、バル艦長がメタナイトに言った。

「よろしかったのですかな? まっくろい帆の海賊が、ピエトロ殿の孫だということを話さなくて」

「いずれ、わかることだ。こちらから教えてやることもあるまい。とにかく、われわれは行方不明のワドルディの捜索(そうさく)を行いながら、引き続きルチア殿を追う」 

「はっ!」

 部下たちは、すばやく、それぞれの持ち場についた。


ゆくえふめいのぼうけんワドルディは、いったいどこへ?
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