
メタナイトが、海の怪物・キングフロッツォ討伐に挑む! 好評発売中のつばさ文庫『星のカービィ メタナイトと魔石の怪物』は、メタナイトが主人公の外伝第4弾!! 大人気外伝のためし読みを、今すぐチェックしよう☆
◆第3回
何人もの勇者が挑んでも、倒すことがかなわなかった怪物・キングフロッツォに、ただひとり一太刀をあびせた大海賊・ピエトロ船長のもとに向かったメタナイトたち。はたして、怪物を倒すための手がかりをつかむことはできるのか!?
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伝説の大海賊
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メタナイトたちは順調な船旅を続け、ピエトロが住む小島に到着した。
岩浜から、手作りらしい小さな桟橋(さんばし)が伸びている。そこに、小さな帆船(はんせん)がとまっていた。
まっくろな帆をかかげている。帆には、星型の眼帯をつけたドクロのマークが描かれていた。
バル艦長が気づいて、言った。
「あの船は、海賊船ですかな。ピエトロ殿の船でしょうか」
アックスナイトが言った。
「もう、海賊は引退したと聞きましたが……それに、あの船は海賊船にしては小型です。釣り船か何かじゃないですか」
「だが、帆にドクロのマークが描かれてるぞ」
「昔の紋章を、今も使い続けてるんでしょうかね」
メタナイトたちは、『夕映えのハーモニー号』を停めて、船を下りた。
小道を奥へ進んだところに、一軒の小屋が建っていた。丸太をしっかり組み上げた、がんじょうそうな小屋だ。
小屋のまわりには、何種類もの野菜を植えた畑が広がっている。
まっしろなヒゲをはやした老人と、青い髪の女の子が、楽しそうに歌いながら、くわを振るっていた。
「オレたちゃ海賊、ねらうはお宝」
「海の彼方にゃ明日がある、ヨーホー!」
「いかりを上げて、進めよ、進め」
「どんな怪物も怖くない、ヨーホー!」
メタナイトたちが近づいて行くと、二人は気づいて、歌をやめた。
老人は、古びた海賊帽をかぶっており、片目を眼帯でかくしている。片足は義足だった。
彼は、ふしぎそうにたずねた。
「……どなたですかな?」
メタナイトが言った。
「とつぜんの来訪、おゆるし願いたい。私は、メタナイトと申す者」
「メタナイトですと? あなたが、あの……?」
おどろいた様子の老人に、青い髪の女の子がたずねた。
「知ってるのか、じいちゃん」
「ああ、銀河に名をはせる、強い騎士さんだよ。あのメタナイト殿が、こんな小島に、何の用があって?」
「貴殿が、海賊のピエトロ殿だろうか。キングフロッツォについて、話を聞かせていただきたく、無礼を承知でうかがった」
「…………」
ピエトロは、表情を引きしめて、たずねた。
「もしや、キングフロッツォと戦うおつもりなのかね?」
メタナイトは、うなずいた。
「そのとおり」
「……ふむ……」
ピエトロは、じっくりとメタナイトを見つめた。
しかし、青い髪の女の子が、ふきげんそうに叫んだ。
「だれだか知らねえが、よそ者が首をつっこむんじゃねえよ! 大ケガしたくなかったら、とっとと帰んな!」
ピエトロは、怖い顔で女の子をしかりつけた。
「ルチア! 口をつつしみなさい。メタナイト殿、くわしい話を聞かせてもらおう。さあ、中へ」
ピエトロは小屋のドアを開け、メタナイトにうなずきかけた。
女の子は、ほおをふくらませて、どなった。
「なんだって!? どうかしてるぜ、じいちゃん! よそ者なんかに、キングフロッツォ退治をまかせられるかってんだ……!」
しかし、ピエトロはさっさと小屋に引っこんでしまった。
メタナイトと部下たちも、彼に続いた。
「……ちぇっ! じいちゃんの、ばか!」
女の子は舌打ちし、メタナイトの背をにらみつけた。
メタナイトたちは、居間に通された。
居間といっても、テーブルとイスがあるだけの質素(しっそ)な部屋だ。けれど、きちんと片付いていて、まじめな暮らしぶりがうかがえた。
老人は、メタナイトたちにイスをすすめて、話し始めた。
「あらためて、自己紹介をしよう。ワシが、ピエトロだ。こちらは、孫のルチア」
ルチアは、ふくれっつらでメタナイトをにらんでいたが、ピエトロから「あいさつをしなさい」と注意され、ふてくされた口調で言った。
「オレは、大海賊ピエトロのあとつぎ、ルチアだ。ルチア船長と呼びな!」
「お会いできて光栄だ、ルチア船長」
メタナイトは軽く頭を下げ、ピエトロに向き直った。
「ピエトロ殿。貴殿は、かつて、キングフロッツォと戦ったことがあるそうだな。しかも、ヤツの足を一本切り落としたと聞いている」
「……うむ」
「その後、多くの冒険者が挑んだが、キングフロッツォはふしぎな魔石を持っており、みながその術にかかって、戦意を失ってしまうという。貴殿が戦ったときは、どうだったのだ? 貴殿は、術にかからなかったのか?」
ピエトロが口を開くより早く、ルチアが叫んだ。
「教えてやることないぜ、じいちゃん! じいちゃんのかたきは、オレが討つって決めてるんだから! こんなヤツ、追い返しちゃおうぜ!」
ピエトロが、けわしい声でルチアをしかりつけた。
「だまりなさい、ルチア。お客人に無礼な口をきくんじゃない。礼儀を守れないなら、出て行きなさい」
「……フンッ!」
ルチアは立ち上がり、わざとドタドタと乱暴な足音を立てて、居間から出ていった。
ピエトロは、深く頭を下げてわびた。
「申し訳ない。ワシが甘やかしたせいで、とんだ礼儀(れいぎ)知らずに育ってしまって……」
「……いや」
「悪い子ではないのだ。ただ……」
ピエトロは、自分の義足に手をふれた。
「ワシは、キングフロッツォとの戦いで、片足と片目を失った。それで海賊をやめて、この島でおとなしく暮らすことにしたのだ。ルチアは、それを悔しがっていてな……自分の手でキングフロッツォをたおし、ワシのかたきを討とうとしているのだ。そこへ、あなたがあらわれたものだから、手柄(てがら)をうばわれそうで、カリカリしているのさ」
「なるほど」
メタナイトはうなずいた。
バル艦長が、目を細めて言った。
「ふむふむ。態度は乱暴だが、こころはやさしい女の子なのだな……」
すると、ピエトロは、うれしそうにうなずいた。
「ありがとう! じまんの孫なのだよ」
メタナイトが言った。
「ルチア殿には申し訳ないが、私が、この手でキングフロッツォをたおすつもりだ。ヤツが持つ魔石の術にかからぬ方法があるなら、教えていただけないだろうか」
ピエトロは、首を振った。
「それは……ワシにも、よくわからん。あのときは、夢中で剣を振り回しただけだ。たまたま、運良く、魔石の光を目にする前に足を切り落とすことができたのだろう」
「……そうか」
「力になれず、申し訳ない」
ピエトロは、頭を下げた。
メタナイトは言った。
「いや、気にしないでほしい。勝手に押しかけて、こちらこそ申し訳なかった」
「術を破る方法がない以上、メタナイト殿といえども、キングフロッツォをたおすことは不可能だろう。無念だろうが、あきらめたほうが……」
ピエトロは、さとすように言った。
けれど、メタナイトはきっぱり答えた。
「あきらめはしない」
「……メタナイト殿?」
「かならずや、ヤツをたおす方法があるはず。それを、見つけてみせる」
メタナイトの目は、力強い光を放っていた。
ピエトロは、小さなため息をついた。
「……あなたを止めることは、できないのだろうな。ならば、せいぜい、ご一行の無事を祈っておくことにしよう」
「ありがとう。最後に、もう一つ。キングフロッツォが出没する海域を教えていただけないだろうか?」
「よかろう。こちらへ」
ピエトロは立ち上がり、となりの部屋へ続くドアを開けた。
そこは、居間とは打って変わって、ぶっそうなふんいきの部屋だった。
壁一面に、いろいろな武器がかざられている。
剣、オノ、ヤリ、短刀、ムチ、銃……中には、どのように使うのかよくわからないような、めずらしい武器もあった。
メタナイツたちは、おどろきの声を上げた。
「うわあ! すごい武器庫じゃないか!」
「ちょっとした武器博物館みたいだぞ!」
ピエトロはほほえみ、ちょっと得意げに言った。
「ワシのじまんの武器コレクションだ。たくさんの海賊たちからぶんどった、戦利品でね。なかなかお目にかかれないほどの、名品ぞろいだぞ」
メタナイトは、ふと、たなの上に飾ってある写真立てに目を止めた。
若いころのピエトロが写っている。場所は、船の上だろう。
快活な笑みを浮かべているピエトロの頭の上に、赤くて丸いものがのっていた。
タコだ。頭にバンダナを巻いた、かわいらしい小さなタコが、陽気に足を振り上げている。まるで、おどっているかのようだ。
「これは?」
メタナイトがたずねると、ピエトロはあわてて写真立てを伏せた。
「な、なんでもないよ。ワシの若いころの写真だ」
「……ふむ」
メタナイトはそれ以上たずねようとはしなかった。
ピエトロは、壁にかかっている大きな地図を示した。
「これは、惑星マリーノの全図だ。ここが、この島。ここが、首都マリノア市……そして、このあたりがキングフロッツォの出没場所だ」
バル艦長は、ピエトロが指さす場所をたしかめて、言った。
「居場所がわかれば、もう勝ったも同然。ただちに向かいましょう、メタナイト様」
「うむ。急ごう……」
メタナイトが、身をひるがえそうとしたとき。
「……むむ?」
ピエトロが、あわてたような声を上げた。
彼は、机の上の置かれていた紙きれを取り上げ、まっさおになった。
気づいたメタナイトが、たずねた。
「ピエトロ殿? どうかしたのか?」
「書き置きだ。ルチアの……!」
ピエトロは、紙きれの文字を読み上げた。
「『怪物タコのやろうは、かならず、オレがぶったおす! よそ者なんかに、手出しはさせねえ! 見てろよ、じじい! 大海賊ルチア』」
バル艦長が、あぜんとして言った。
「書き置き……ということは、ルチアちゃんは、まさか家出を……!?」
「あの……大ばかもの!」
ピエトロは、窓に飛びついた。
窓ごしに、桟橋(さんばし)が見える。
黒い帆の海賊船が、今まさに、出港していくところだった。
「ルチア! ばかもの、もどりなさい! ルチアー!」
ピエトロは窓をあけて叫んだが、海賊船は、速度をゆるめさえしなかった。
ピエトロは、壁ぎわに取りつけられた通信機に飛びつき、ボタンをはげしくたたいた。
「ルチア、ルチア、聞こえるか!? 返事をしなさい!」
ガーガーという雑音にまじって、ルチアの声が聞こえてきた。
「うるせえぞ、じじい。オレは今、船の操縦でいそがしいんだ。じゃますんな!」
「すぐにもどりなさい! バカなことを考えるんじゃない!」
「バカは、じじいゆずりだぜ!」
通信はブチッと切れてしまい、もう、ピエトロがいくら呼びかけても、つながらなかった。
「ルチア……なんという、無謀(むぼう)なことを……!」
ピエトロは、がっくりと肩を落とした。
メタナイトがたずねた。
「あの船は? すごい速度だが……」
「あれは、海賊船ルチア号。記録的なスピードが出る、最新型の帆船だ。ワシが、あの子の誕生日に、プレゼントしてやったものなんだ」
それを聞いて、バル艦長が怒り出した。
「誕生日に帆船だとー!? 豪華すぎるわ! なんで、そんなに孫に甘いのだ!」
「う、うむ……ルチアが海に興味をもってくれるのがうれしくて、つい……まさか、こんなことになるとは……」
ピエトロは、うなだれた。
メタナイトは言った。
「そんなに心配せずとも良かろう。ルチア殿は、魔石の術を破る方法を知らないのだろう? だったら、戦う気をなくして、無事にもどってくるはずだ」
「とは言っても、あの子はまだ子ども。ひとりで遠洋に出たことなど、ないのだ。海には、キングフロッツォだけではなく、さまざまな危険がひそんでいる。万が一、大きなサメにおそわれたら……はげしい嵐が来たら……!」
ピエトロは、しゃべっているうちに、どんどん不安がこみ上げてきたらしく、頭をかかえた。
「ワシが行ってやりたいが、この足では、船に乗れん! メタナイト殿、どうか、どうか、あの子を助けてやってくれ!」
けれど、メタナイトは、冷たく答えた。
「ことわる。みずから戦うと決めた者を、止めようとは思わない」
「……メタナイト……!」
「だが、ルチア殿は、私の目的にとって、じゃまになる。キングフロッツォをたおすのは、私だ。彼女に先をこされるわけにはいかん」
メタナイトは、ちらっとピエトロを見た。
「ルチア殿が、私の行く手をさえぎるなら、とらえざるをえない。ついでに、この島に連れ帰ることになるだろう」
ピエトロは、ホッとしたように、うなずいた。
「……ありがとう。武運を祈るよ、メタナイト殿。何かあったら、ここに連絡をくれ」
ピエトロは、連絡先をメモして、メタナイトに渡した。
「行こう、諸君!」
メタナイトはサッとマントをひるがえし、『夕映えのハーモニー号』に向かった。
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彼らが出て行ったあと。
ピエトロは重いため息をつき、部屋のすみに置いてある、大きな金庫に手をかけた。
ダイヤル錠(じょう)を合わせると、ギィィ……と重い音を立てて、とびらが開いた。
中におさめられていたのは、一振りの剣だった。
柄の部分に、むらさき色の、大きな宝石がはめこまれている。
ピエトロは、暗い目で宝石を見つめた。
低いつぶやきが、もれた。
「ルチア、メタナイト……あきらめろ。キングフロッツォは、おまえたちには、倒せん。ぜったいに」
キングフロッツォを倒すため、ひとりで出発してしまった少女海賊・ルチアを追って、メタナイトが出発! でも、ピエトロの「キングフロッツォは、おまえたちには、倒せん」というつぶやきには、いったいどんな意味があるの? ピエトロは、何をかくしているの……? 気になる続きは、次回「いきなり船バトル!?」をチェック! (4月12日公開予定)
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