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マホロアが作ったテーマパーク『マホロアランド』に、カービィたちをご招待! 今度のマホロアは、いったい何をたくらんでいるの!?
8月5日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ おいでよ、わいわいマホロアランド!』の先行ためし読みだよ!
◆第4回
マホロアが『なりきりおめん』を使って、カービィとメタナイトの本心を聞いた夜が明けて……。そうやって始まったマホロアランド2日目に、意外な事件が起こる!?
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うれしいお客サマ
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次の日も、いいお天気だった。
カービィたちは早起きをして、朝ごはんを食べるためにレストランに向かった。
カービィは、イラストつきのメニューをすみからすみまで見て、うっとりと目をかがやかせた。
「マホロアサンド、マホロアパンケーキ、マホロアトースト、マホロア丼、マホロアみそしる……うわあ、みんなおいしそう! 選びきれないよ!」
デデデ大王は、不敵(ふてき)に笑った。
「フフン、オレ様は、選んだりせんぞ! ぜんぶだ。ぜんぶ持ってこい!」
「あー、ぼくも! ぼくも、ぜんぶ! マホロアだんごと、マホロアプリンもね!」
「はーい、ただいま!」
ワドルディたちが、いそがしく走り回って、料理を運んでくる。
マホロアの笑顔が描かれたマホロアパンケーキ、のりやタマゴでマホロアを表現したマホロア丼、マホロアの顔が三つならんだマホロアだんご……。
「うわあ、どこから食べよう!? まよっちゃう!」
「おいおい、みそしるの豆腐にまで、ちっちゃなマホロアの顔がかいてあるぞ。やりすぎだわい、マホロアのヤツ」
「でも、おいしいね! ぜんぶ、すっごく、おいしいね!」
「うむ! 絶品だわい!」
カービィとデデデ大王は、きそい合うように、ガツガツと大量の朝ごはんをたいらげていった。
デデデ大王は、マホロア丼をかきこみながら、バンダナワドルディを呼んだ。
「おい、ワドルディ。帰るまでに、このレストランのレシピをぜんぶ覚えろ!」
料理を運んでいたバンダナワドルディは、めんくらって言った。
「レシピ……ですか?」
「そうだ。デデデ城に帰っても、毎日、こんなうまい料理が食いたいわい。マホロアの顔はいらんが、味を再現するのだ!」
「それは……むりです」
バンダナワドルディは、もうしわけなさそうに言った。
デデデ大王は、ムッとした。
「なぜだ。おまえら、マホロアを手伝って、料理を作っているんだろうが。作り方を覚えるぐらい、カンタンではないか!」
「ぼくら、くわしいレシピは教わっていないんです。マホロアが作った料理を、あたためたり、盛りつけたりするだけなので……」
「なんだ、それは! くわしい作り方を聞いておけ!」
「それは、できません。マホロアの秘伝のレシピなので、だれにも教えられないんだそうです」
「なんて、ケチくさいヤツだ。マホロアめ……」
デデデ大王は、うらみがましく、ブツブツ言った。
メタナイトは「マホロアパンケーキセット」をゆうがに食べていたが、ふと顔を上げてデデデ大王を見た。
「そういえば、デデデ大王。ゆうべのことだが」
「ああ? なんだ?」
「気にかかっているのだ。なぜ、急にあんな話をする気になったのだ?」
デデデ大王は、きょとんとした。
「あんな話? なんのことだ」
「まさか、わすれたわけではあるまい。ゆうべ、君が私の部屋に来て……」
そこへ、マホロアが近づいてきたので、メタナイトは話をやめた。
「ヤァヤァ、おはよう、ミンナ。ゆうべは、よくねむれたカナ?」
マホロアは、カービィたちを見回した。
明るくふるまっているが、どことなく、元気がない。きのうの張り切った様子にくらべると、声は小さいし、目もどんよりしているようだ。
カービィが気づいて、言った。
「おはよう、マホロア! どうかしたの? なんだか、元気がないみたい」
「エ……エット……そんなこと、ないヨォ!」
マホロアは、ひらひらと片手を振った。
そのとき、レストランのドアが開いて、一人のワドルディが駆けこんできた。
「た、たいへんです! みなさん、来てください! たいへんですー!」
デデデ大王が、ムッとして、しかりつけた。
「なんだ、そうぞうしい。食事中だぞ」
「は、はい、ごめんなさい。でも、たいへんなんです。とにかく、来てください!」
ワドルディは、ぜいぜいと息を切らせており、説明ができそうにない。
デデデ大王は立ち上がった。
「なんだと言うのだ。大事な食事中に……」
デデデ大王を先頭に、カービィとメタナイト、そしてマホロアも、外に出てみた。
そこには、思いもかけない光景が広がっていた。
まっさおな空に、巨大な船が浮かんでいる。
純白の船体に、大きなつばさをそなえた帆船だ。
カービィとデデデ大王は、同時に叫んだ。
「ローア――!?」
そう、マホロアランドの上空にあらわれたのは、天かける船ローア。
はるかな昔、なぞに満ちた古代の星ハルカンドラで造られた船で、こころを持つと言われている。
カービィたちは、しばらくぶりに見るローアの姿に、みとれてしまった。ゆうゆうと空に浮かぶローアは、圧倒的(あっとうてき)に力強く、美しかった。
メタナイトが、つぶやいた。
「なぜ、ローアがここに……マホロアを、さばくためにやって来たのだろうか」
カービィが聞き返した。
「え? さばくって?」
「マホロアがおかした罪を、ローアは、まだゆるしていないのだ。マホロアに罰をあたえるために、やって来たということだ」
マホロアは、ぼうぜんとして、ローアを見上げていた。メタナイトの言葉も、聞こえていないようだった。
メタナイトは、静かにマホロアを見つめて、言った。
「これで、はっきりしたな、マホロア。私たちをゆだんさせ、だまそうとしたのだろうが、その作戦は失敗だ。ローアには、おまえの本心など、すべてお見通しなのだ……」
しかし、そのとき、高い声がひびいた。
「ちがいます、メタナイト様!」
「……なに?」
メタナイトは、おどろいて振り返った。
さけんだのは、レストランから走り出てきたバンダナワドルディだった。
バンダナワドルディはローアを見上げて、続けた。
「ローアは、マホロアをさばきに来たんじゃありません。遊びに来たんです」
「あ……遊び……?」
「マホロアランドに、遊びに来たんです!」
バンダナワドルディは、ローアに向かって、大きく手を振った。
ローアは、こたえるように、ゆっくりオールを動かした。
バンダナワドルディは、はずむ声で言った。
「なんとなく、ローアの気持ちが伝わってきませんか? ほら……ローアは、うれしいんですよ。マホロアランドがオープンして、うれしいんです!」
カービィも、飛びはねながら叫んだ。
「おーい、ローア! こんにちは、ローア! 下りておいでよ、いっしょに遊ぼうよ!」
デデデ大王が言った。
「ばかもの、どうやって遊ぶのだ。ローアは、アトラクションに入りきらんわい」
「あ、そうか」
ローアはゆうゆうと空をただよい、マホロアランドのはずれの高台に着陸した。
帆が風をはらんで、大きくふくらんだ。
カービィが言った。
「ローア、気持ちよさそうだね。まるで、おひるねしてるみたい」
バンダナワドルディが、マホロアを振り返って、たずねた。
「マホロアが、ローアを呼んだの? 招待状を出したの?」
「ウ……ウウン……」
マホロアは、頭を振った。目はじっと、ローアを見つめたまま。
バンダナワドルディが言った。
「え、そうなの? それじゃ、どうしてローアは、ここがわかったんだろう?」
すると、カービィが笑いながら言った。
「ローアは、なんでもわかっちゃうんだよ。マホロアのことは、ぜんぶお見通しなんだ」
メタナイトは深く息をはいて、言った。
「……どうやら、そのようだ。てっきり、ローアはマホロアを見捨てたものと思っていたのだが……とんだ考えちがいだった。すまない」
そのとき、マホロアがいきおいよく走り出した。ローアがいる高台に向かって。
「ローア! ワァイ、ローア!」
マホロアは何度も飛び上がり、手を振って叫んだ。
「ボク、やったヨォ! テーマパーク、作ったヨォ! 見ててネ、ローア! マホロアランドを、お客サマでイッパイにしてみせるヨォ!」
ローアからは、もちろん、返事はない。
ただ、「わかった」というように、オールが一度だけゆらりとゆれた。
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そのとき――マホロアも、カービィも、だれも気づいていなかったけれど。
ローアの後ろで、異変が生じていた。
空間がゆがみ、星型の穴が開く。
その穴から、数体のいきものが転がり出てきた。
すぐに、何事もなかったように、穴はふさがってしまった。
マホロアの夢だったマホロアランドに、ローアが遊びに来てくれた! うれしいお客サマをむかえたマホロアは、元気いっぱい、今日も支配人のお仕事にとりかかります!
でも、『だれか』がマホロアランドに入りこんできたみたい……?
次回「対決! 爆裂ボンバーラリー!!」をおたのしみに!(8月11日公開予定)
『星のカービィ おいでよ、わいわいマホロアランド!』は2023年8月5日発売予定!
作:高瀬 美恵 絵:苅野 タウ 絵:ぽと
- 【定価】
- 792円(本体720円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046322340
『星のカービィ 刹那の見斬りで悪を断て!』好評発売中!ためし読みも公開中だよ♪
大人気発売中『星のカービィ 天駆ける船と虚言の魔術師』もためし読み公開中!
作:高瀬 美恵 絵:苅野 タウ 絵:ぽと
- 【定価】
- 1,320円(本体1,200円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- B6判
- 【ISBN】
- 9784041116197
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