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マホロアが作ったテーマパーク『マホロアランド』に、カービィたちをご招待! 今度のマホロアは、いったい何をたくらんでいるの!?
8月5日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ おいでよ、わいわいマホロアランド!』の先行ためし読みだよ!
◆第3回
マホロアランドで遊ぶカービィたちのところに、ワドルディ隊も合流!
ワドルディ隊は、マホロアランドのレストランやおみやげ売り場、アトラクションの係員として働くことに。
にぎやかで楽しい一日が終わりそうな、そのとき、何かが起こる……?
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二人の本当の気持ち
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そのあと、カービィたちは、落ちてくるたまごをすばやくつかまえる「たまごきゃっちゃ」や、地面をくだく力だめしの「ギガトンパンチ」など、楽しいアトラクションでたっぷり遊んだ。
ワドルディたちがキャストに加わったおかげで、レストランやおみやげ売り場も活気づき、マホロアランドはますますにぎやかになった。
レストランのメニューは、マホロアの顔をかたどった「マホロアバーガー」や「マホロアパフェ」など、すみからすみまで、マホロアづくし。
おさらやカップにも、マホロアの笑顔がプリントされている。
デデデ大王が、あきれて言った。
「マホロアのやつ、目立ちたがり屋だな! こんなに押しつけがましいレストランは、初めてだわい!」
メタナイトが小声で言った。
「デデデ城だって、あっちもこっちも、君の肖像画(しょうぞうが)だらけではないか」
「うむ? なにか言ったか?」
「別に。このレストラン、マホロアだらけなのは気に入らんが、味はすばらしいな」
「うん! すごく、おいしいよね!」
カービィは、がつがつとメニューをたいらげて、ごきげんだった。
「ぼく、マホロアバーガー二十個おかわり! あと、マホロアおにぎりと、マホロアうどんと、マホロアサラダと、マホロアだんごと、あと、あと……!」
「はーい、ただいまお持ちします!」
いそがしく料理を運んでいるのは、ワドルディたちだ。
バンダナワドルディが、カービィの前におさらを置き、にっこりして言った。
「メニューはぜんぶ、マホロアが考えたんだって。お肉や野菜のバランスがよくて、おいしいよね。レシピを考えるときの参考になるよ!」
カービィもデデデ大王も、大満足でうなずいたが、メタナイトが低い声でささやいた。
「なんとも、奇妙(きみょう)だと思わないか。アトラクションにワナはしかけられておらず、レストランのメニューも極上。あのマホロアにしては、まともすぎる」
カービィが、ふしぎそうにたずねた。
「え? どういうこと?」
「マホロアが、なにもたくらんでいないとは思えないのだ。私たちを満足させておいて、うらでなにかをしかけてくる可能性が……」
そのとき、マホロアがカービィたちのテーブルにやって来たので、メタナイトは口をつぐんだ。
マホロアは、カービィたちを見回して、たずねた。
「ミンナ、楽しんでるカナ? お料理の味は、どう?」
カービィがさけんだ。
「すっごくおいしいよ! さいこーだよ! ぼく、たくさんおかわりしちゃった!」
マホロアは、両手を口に当てて笑った。
「それはよかった……ククク! よろこんでもらえて、ボク、うれしいヨォ! お食事のあとは、ホテルでゆっくり休んでネ! 広いおふろも、ふかふかのベッドもあるヨォ!」
メタナイトが、探るように言った。
「ところで、マホロア。一つ、たのみがあるのだが」
「エ? たのみって?」
「私がとつぜん消えてしまって、部下たちが心配しているだろう。戦艦(せんかん)ハルバードに、連絡を取りたいのだ」
すると、マホロアは笑顔でうなずいた。
「モチロン、いいヨ! 通信ルームがあるから、好きに使ってネ!」
「……そうか。感謝する」
マホロアは、あいそよく言った。
「それじゃ、ボクはこれで失礼するヨ! ミンナは、このあと、ホテルでゆっくり休んでネ! また明日、会おうネ!」
マホロアは、ふわふわと、レストランを出ていった。
メタナイトはつぶやいた。
「部下たちとの連絡も自由……か。私を部下から切りはなしておいて、なにかしかけてくる気かと思ったが、ちがうようだ。マホロア……なにを考えているのか……」
そんなメタナイトの気持ちには、まったくおかまいなく、カービィとデデデ大王は満足しきっていた。
「あー、おなかいっぱい! もう食べられなーい!」
「あまいぞ、カービィ。オレ様もおなかいっぱいだが、ホテルには、おかしの食べほうだいがあるのだ! まだまだ食うぞ!」
「あ、そうだった。よーし、ホテルまで思いっきり走って、おなかをへらすよー!」
「おー! 競走だ、カービィ!」
二人はいきおいよく、レストランを飛び出していった。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
マホロアランドのとなりに建てられたマホロアホテルには、それぞれの部屋が用意されていた。
「わあ、すてきなおへや!」
カービィはベッドに飛び乗って、はしからはしまで、ごろごろ転がった。
ベッドは大きく、ふかふかだった。今すぐ、ぐっすりねむれてしまいそうなほど、気持ちがいい。
けれど、すぐにねむってしまうのは、もったいない。テーブルの上には、山ほどのおかしが用意されている。
「やったぁ、食べほうだい、食べほうだい!」
さっき、レストランでおなかいっぱいになったばかりだが、カービィはおかしに飛びついた。
クッキー、チョコレート、シュークリームに、アップルパイ。どれを食べても、とろけるようなおいしさだ。
「んんん~! おいしい!」
のどがかわいたカービィは、水をのもうと、ベッドルームのとなりにあるキッチンに向かった。
キッチンのじゃぐちには、いくつものボタンがついている。
「えっと……『お水』『こうちゃ』『オレンジジュース』『りんごジュース』『レモンソーダ』『あったかいお茶』……すごいや、なんでも出てくるの!?」
カービィは、「オレンジジュース」のボタンを押してみた。
すると、じゃぐちから、オレンジジュースがふき出した。
「うわああ! なんでも、のみほうだいだ! 次は、こうちゃにしようっと!」
カービィは、コップにジュースやお茶をたくさん入れて、ベッドルームにもどった。
おかしを山ほど食べ、ジュースやお茶をのみ、ベッドでごろごろし、また、おかしを食べ、ごろごろし……。
「うーん! ごくらく、ごくらく!」
カービィは、しあわせいっぱいだった。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
いっぽう――ホテルの地下にある支配人室では。
マホロアが、一人で考えこんでいた。
「カービィとデデデ大王は、マホロアランドを楽しんでるみたいだケド……ホントはどうなのかナァ……ボクのこと、まだ、うたがってるのかナァ? メタナイトは、カンゼンにボクのこと敵だと思ってるし……なんとかしたいナァ……でも、ボクの話なんて、聞いてくれそうにないナァ……」
そのとき、ふと、部屋のすみに置いてある大きな箱に目がとまった。
パッと、いい考えがひらめいた。マホロアは箱に駆けよって、ふたを取った。
中には、たくさんのおめんが入っている。
昼間、みんなが遊んだおめんに似ている。けれど、ここにあるのは、ただのおめんではなかった。
マホロアが魔力をそそぎこんだ、特製のおめん――「なりきりおめん」だ。
なりきりおめんをかぶれば、顔だけでなく、姿や声までも、そっくりになりきることができるのだ。
「コレだ……! コレを使えば、カービィやメタナイトのホンネを聞けちゃうヨ……」
マホロアは、二枚のなりきりおめんを取り出した。
「今なら、カービィもメタナイトも、部屋に一人きり……クックック……またとないチャンスだヨォ!」
マホロアは張り切って、なりきりおめんをかぶった。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
コンコン、と部屋のとびらがノックされた。
おかしをほおばっていたカービィは、ドアに駆けよった。
「はーい……だれ?」
「コンバンハ、カービィ! ボクだヨォ!」
ろうかに立っているのは、バンダナワドルディだった。
いや――どこから見てもバンダナワドルディなのだが、少し様子がおかしい。目つきがするどいし、なんとなくソワソワしているようだ。
けれど、カービィはまったく気づかずに言った。
「あ、ワドルディ! 遊びに来てくれたの?」
「ウン! カービィが、タイクツしてるかもしれないと思ってネ!」
「わーい! どうぞ、入って!」
カービィは、バンダナワドルディ(?)を部屋に招き入れた。
バンダナワドルディは、部屋を見回して言った。
「ステキなお部屋だネェ! カービィは、このお部屋、気に入ったのカナ?」
「うん、もちろん! ベッドはふかふかだし、おかしもおいしいよ。それに、じゃぐちから、
ジュースやお茶が出てくるんだよ! ワドルディのおへやは?」
「ウン! ボクのお部屋もステキだヨォ!」
「まどから見えるけしきも、きれいだよね。ほら、見て! マホロアランドに、明かりがともってるよ!」
カービィは、バンダナワドルディの手を取って、まどぎわに連れて行った。
昼間はにぎやかだったマホロアランドも、今は静まり返っている。
けれど、しんぴ的な光がマホロア城や広場を照らしており、とても美しかった。
「ワァ……キレイだナァ。ネェ、カービィ。今日は、楽しかった?」
「うん! すごく楽しかったよ! ワドルディは、お仕事で、たいへんだったね」
「ウウン、ボク、お仕事が好きだから、いいンダ。マホロアのお手伝いができて、楽しかったヨ」
「そうなの? だったら、よかった!」
「あのネ、カービィ……」
バンダナワドルディは、そっぽを向いて、言った。
「ボク、マホロアから聞いちゃったんだケド……マホロアはネ、ずーっと前から、テーマパークを作りたかったんだって!」
「ふーん? そうなんだ」
「ウン。だけど、そのコトをわすれて、宇宙を支配するっていう夢に取りつかれちゃったンダ……それで、カービィたちをだまして、利用したンダ……」
「ひどいよね!」
カービィは、力をこめて言った。
バンダナワドルディは、声を低くして、続けた。
「……だけどネ、そのあと、マホロアは、いろんな目にあった……らしいヨ。苦しい旅をして……そして、思い出したンダ……ずっとずっともってた夢……銀河一のテーマパークを作って、みんなをよろこばせたいっていう夢を」
「ふぅん……」
カービィは、ちょっと考えて、言った。
「じゃあ、マホロアは、もう、ぼくたちをだましたりしないのかな?」
「ウン! カービィが……カービィたちが、マホロアランドで楽しんでくれたら、たぶん、マホロアは、うれしい……んじゃないかナァ?」
「そうかぁ」
カービィはにっこりして、クッキーをつまんだ。
「じゃ、ぼく、明日マホロアに言おうっと。すっごく楽しいよって」
「ワァイ! マホロア、きっと、よろこぶヨォ! マホロアは、ホントは、カービィとトモダチになりたいンダ……って! そう言ってたヨ!」
「ほんと? じゃ、ぼく、トモダチになるよ」
カービィがそう言うと、バンダナワドルディはくるっと背を向けた。
なにか言いかけたけれど、言葉がうまく出てこない。
そんなバンダナワドルディを見て、カービィは、力強く言った。
「心配しなくても、だいじょーぶだよ! もし、またマホロアがうらぎったら、ぼくがボッコボコにやっつけちゃうからね!」
バンダナワドルディは振り向いて、飛び上がった。
「ボッコボコォォ!? エー!? ひどいヨ、カービィ! トモダチなのに!」
「トモダチだって、悪いことしたら、ぼく、怒るよ。だから、だいじょーぶ!」
バンダナワドルディは、あぜんとしていたが、急に笑い出した。
「……ククク……アハハ! そうだよネ! そうこなくっちゃネ! さすがはカービィだヨォ!」
「え? なぁに?」
「ウウン、なんでもないヨ! それじゃ、ボク、もう帰るネ!」
「え? いま来たばっかりなのに? いっしょに、おかしを食べようよ……」
「ウウン、また、明日ネ! オヤスミ、カービィ!」
バンダナワドルディは、なぜかウキウキした様子で、カービィの部屋を出て行った。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
メタナイトは、ホテルの通信ルームを使って、部下たちに連絡をした。
バル艦長をはじめ、部下たちは心配していたが、メタナイトと話すことができて、ひと安心した様子だった。
「戦艦ハルバードにも異状なし……か。わからん。マホロアの狙いは、なんなのだ?」
メタナイトは考えこみながら、自分の部屋にもどった。
すると――とつぜん、コンコンととびらがノックされた。
メタナイトは、ドアに歩みよった。
「だれだ? 私に、なにか用か?」
ドアを開けてみると、そこに立っていたのは、デデデ大王だった。
ただ、なんとなく様子がおかしい。
目つきがするどく、ソワソワしている。
メタナイトは、ふしぎに思いながら、デデデ大王(?)を部屋に招き入れた。
「君か。なにか話でもあるのか?」
「ウ、ウム! マホロアのことだ……ワイ!」
「マホロア? なにかあったのか?」
メタナイトは、けわしい表情でたずねた。
デデデ大王は、顔をそむけて言った。
「別に、なにもない……ワイ! ただ、メタナイトは、マホロアをうたがいすぎだと思う……ワイ!」
「なんだって? 急に、おかしなことを。君こそ、マホロアに、こころをゆるしすぎているのではないか?」
「そんなコトはないワイ! マホロアは、わりと、いいヤツだワイ!」
「私は、そうは思わない」
メタナイトがきっぱりと言うと、デデデ大王は小声でぶつぶつ言った。
「まったくネェ……うたがい深すぎるネェ、メタナイトは」
「なに?」
「なんでもないワイ。メタナイトは、マホロアのこと、きらいなんだネェ……だワイ!」
「好ききらいの話ではない。信用ならないと思っているだけだ」
メタナイトはまどぎわに歩みより、美しい夜景をながめた。
「マホロアが、なぜ私たちをここへ呼びよせたのか、理由がわからないのだ。ぜったいに、なにかたくらんでいると思うのだが……」
デデデ大王は、じれったそうに言った。
「たくらんでなんか、いないワイ。マホロアは、テーマパークを作るのが、ずっと前からの夢だったンダ……って、言ってたワイ!」
「信じられるか、そんなこと。覚えているだろう、ヤツがなにをしたのか」
デデデ大王は言い返そうとして、グッと言葉につまった。
メタナイトは続けた。
「ヤツはわれわれをだまし、天かける船ローアを道具のようにあつかい、宇宙を支配しようとたくらんだのだぞ。自分こそ万能の天才と、うぬぼれきってな」
「……ウ……ウム……」
「だが、結局は敗れて、姿を消した。みじめなものだ。最後には、あの慈悲(じひ)深いローアにまで見捨てられるとは」
デデデ大王は息を止めて、立ちすくんだ。
メタナイトは夜景を見ながら続けた。
「ヤツは話そうとしないが、ひとりぼっちになって、きっと、闇をさまよい続けていたのだろうな。さびしい、怖い、みじめな気持ちをかかえたまま……」
デデデ大王はうつむき、トボトボと部屋を出て行こうとした。
メタナイトは、ぽつりと、つぶやいた。
「そこからはい上がってきた強さには、感服(かんぷく)する」
デデデ大王は、足を止めて振り返った。
「……エ?」
「やつは、信用ならん。だが、こころの強さは本物だと思う。だからこそ、ゆだんできないのだ」
デデデ大王は、ドアに手をかけて、あわてたように言った。
「フ、フーン! そうなんだネ! フーン!」
「……デデデ大王?」
「なんでもないワイ! オヤスミだワイ!」
デデデ大王は、そそくさと部屋を出て行った。
メタナイトは、ふしぎそうに、つぶやいた。
「なにか、様子がおかしかったが……どうしたことだ?」
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
メタナイトの部屋を出たデデデ大王は、急ぎ足で、地下の支配人室にもどった。
とびらを閉めて、おめんに手をかける。
デデデ大王のおめんをはずすと――そこにあらわれたのは、マホロアだった。
マホロアは、バンダナワドルディとデデデ大王のおめんを箱にもどしながら、ひとり言を言った。
「カービィは、ボクとトモダチになるって。ククク! ホントに、おひとよしだネェ! クククク……!」
ふと、マホロアの笑い声がとぎれた。
「……カービィと話すだけで、オワリにしておけばよかったナァ……メタナイトなんて、話すんじゃなかったナァ……」
マホロアは、うなだれた。
「ヒトリボッチ……さびしい……怖い……みじめ……ローアにも見捨てられて……ローア……」
マホロアの声は、だんだん小さくなっていった。
片手でぐいっと目をこすって、マホロアは言った。
「フン! やっぱり、イヤなヤツだヨ、メタナイトは!」
魔力をこめたふしぎなアイテム『なりきりおめん』で、カービィとメタナイトの本当の気持ちを知ったマホロア。
マホロアの心には、メタナイトに言われた言葉がつきささったみたい。
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