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マホロアが作ったテーマパーク『マホロアランド』に、カービィたちをご招待! 今度のマホロアは、いったい何をたくらんでいるの!?
8月5日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ おいでよ、わいわいマホロアランド!』の先行ためし読みだよ!
◆第2回
マホロアの作ったテーマパーク『マホロアランド』へやってきた、カービィ、デデデ大王、バンダナワドルディ、メタナイト。
大はしゃぎのカービィとデデデ大王のいっぽうで、バンダナワドルディとメタナイトは「マホロアは今回も何かをたくらんでいるのでは?」と注意して進んでいくけれど……?
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みんなでわいわい! マホロアランド
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風船を追いかけて広場までやって来たカービィとデデデ大王は、大きな声を上げた。
「うわあああ! アイスクリーム屋さん! ドーナツ屋さん!」
「ポップコーンもあるぞ! 機械の中で、ポンポンはじけて、うまそうだわい!」
マホロアランドの広場には、小さな売店がずらりとならんでいた。あげたてのドーナツや、こうばしいポップコーンの香りが、あちらこちらからただよってくる。
ふんすいは高くふき上がり、花だんには美しい花が咲き乱れている。上を見れば、カラフルな三角旗(さんかくき)が何枚もつらなって、パタパタと風になびいていた。
マホロアが言った。
「この広場は、マホロアランドの中心だヨ。食べものや、おみやげの売店がならんでるンダ。花だんのお花は、ゼーンブ、ボクが育てたんだヨォ!」
カービィとデデデ大王は、マホロアの話などそっちのけで、次々に売店をのぞきこんでいる。
マホロアは、二人に言った。
「なんでも、好きなだけ食べてネ。マホロアランドの食べものは、ゼンブ、食べホーダイだからネ」
「なんだと!? 食べほうだい!?」
デデデ大王は飛び上がり、マホロアを振り返った。
カービィも、目をうるませてさけんだ。
「ほんと!? ほんとなの!? アイスクリームもドーナツもポップコーンもいちご大福もチャーシューメン大もりも、ぜんぶ食べていいの!?」
「……エ、エット、いちご大福とチャーシューメンはないケド……あるものは、なんでも食べていいんだヨ!」
「やったぁぁぁぁ!」
「うひゃぁぁぁい!」
カービィとデデデ大王は、広場をかけずり回り、売店の食べものをかたっぱしから食べ始めた。
メタナイトとバンダナワドルディは、にぎやかな広場のふんいきに圧倒(あっとう)されて、立ちつくしている。
マホロアが、にっこり笑って言った。
「マホロアランドには、まだまだ、たくさん楽しいコトがあるンダ! とても、一日じゃ回りきれないヨ。だから、ボク、ホテルも作ったンダ」
「ホテル?」
「ウン。あそこに見える、大きな建物だヨォ」
マホロアが示した先には、まっしろにかがやく、りっぱな建物が建っていた。
「ミンナのお部屋を、ちゃんと用意しておいたヨ! ベッドはふかふかだし、おふろは広いし、おかしは食べホーダイ……」
その一言を聞きつけて、売店めぐりをしていたカービィとデデデ大王が、すっ飛んでもどってきた。
「え!? また、食べほうだい!?」
「おかしを、好きなだけ食っていいのか!?」
「ウン。きっと、気に入ってもらえると思うナァ。何日でも、泊まりたくなっちゃうんじゃないかナァ……」
「泊まる! 泊まるぞ!」
デデデ大王は、力強くさけんだ。
カービィも、負けずに大声を上げた。
「ぜんぶ食べきるまで帰らない! 帰らないったら帰らない!」
マホロアは、うつむいて笑い出した。
「クククッ……気に入ってもらえて、うれしいヨォ。ボクの長年の夢がかなったヨ……」
「長年の夢? どういうことだ?」
メタナイトが聞き返した。
マホロアは顔を上げて、答えた。
「ボク、テーマパークを作るのが夢だったンダ。ミンナが夢中になれる、銀河いちのテーマパークをネ!」
メタナイトは、警戒するように言った。
「それは、初耳だな。初めて会ったとき、おまえはテーマパークの話など一度もしなかったではないか」
「あのときは、ローアを修理するのに夢中だったからネ! 他のコトなんて、考えられなかったんだヨ」
「だが、あれほど私たちを苦しめたおまえが、今さらテーマパークなどと……」
メタナイトはマホロアにつめよったが、デデデ大王が大声でさえぎった。
「おい、マホロア! あそこにあるのはなんだ? おめんがたくさんならんでるぞ」
「ああ、アレはね、おみやげの、おめん屋さんだヨ!」
マホロアは、ホッとしたようにメタナイトからはなれ、おめん屋の屋台に近づいていった。
屋台には、たくさんのおめんがならべられている。
カービィが、びっくりしてさけんだ。
「あっ、ぼくのおめんがある!」
デデデ大王も、自分のおめんを発見して言った。
「これは、オレ様のおめんか。むむむ……ほんもののオレ様は、もっとかっこいいぞ!」
カービィやデデデ大王の他に、メタナイトとバンダナワドルディのおめんもあった。
そればかりではない。
グーイやコックカワサキ、ボンカース、ワドルドゥ、ウィスピーウッズなどなど、カー
ビィたちがよく知っている顔がずらりとならんでいる。
メタナイトは自分のおめんを手に取り、複雑(ふくざつ)そうな様子で言った。
「……なぜ、私のおめんまで? どういうつもりだ、マホロア」
「コレは、マホロアランドのおみやげだヨォ。好きなおめんをつけて、なりきり遊びができるンダ。ためしてみてネ」
マホロアは、バンダナワドルディに、ボンカースのおめんをわたした。
「え? ぼ、ぼくが、ボンカースに……?」
バンダナワドルディは、どぎまぎしながら、おめんをつけてみた。
それを見て、デデデ大王が笑い出した。
「うわははは! おまえは小さすぎて、ちっともボンカースに見えんわい! まあいい、ボンカースになりきって、なにか言ってみろ」
「は……はい……『う、うりゃあ! オレはボンカースだぜ。強いんだぜ!』」
「だめだ! ぜんぜん似とらんわい。オレ様がお手本を見せてやる」
デデデ大王はボンカースのおめんをつけて、乱暴に腕を振り回し、ボンカースの声まねをして言った。
「『どけどけぇ! オレが、プププランドで二番目に強いボンカースだ。ま、デデデ大王様にはかなわねえけどな!』」
「わー! 似てます、似てます、大王様!」
バンダナワドルディは感激して拍手をした。
カービィは、コックカワサキのおめんをつけて言った。
「『ぼくはコックカワサキ! お料理の名人だよ! 今日もカービィのために、おいしいお料理をたくさん作ってあげなくちゃ! 焼きそばと肉まんとバナナパフェとハンバーグとカツ丼とシュークリームとタコ焼きと、あと、あと……!』」
カービィは想像力をふくらませ、おめんの下で、よだれをたらしそうになった。
なりきり遊びは、とても楽しかった。カービィもデデデ大王も、とっかえひっかえ、おめんをつけて、笑いころげた。
「『オレ様はデデデ大王! プププランド一、食いしんぼうでなまけもの!』」
「なんだと、失礼な! ならば、こうだわい。『ぼくはカービィだよ~ん。なにをやってもデデデ大王様に勝てなくて、くやしいよ~ん』」
「あー! ひどい! ちっとも似てないよー!」
メタナイトは、おめんで盛り上がっているカービィとデデデ大王に背を向け、マホロアにたずねた。
「おみやげのおめん……か。なぜ、こんなものを大量に用意したのだ?」
「エ? モチロン、テーマパークには、おみやげが必要だからだヨ!」
「それだけではあるまい。おまえのことだ、なにかたくらみがあって、こんなおみやげを作ったのだろう」
するとマホロアは、じれったそうに身をよじって、言った。
「ちがうヨォ! なんで、そんなに、うたがうんだヨォ! ボク、ホントに、楽しいテーマパークを作りたいだけなんダ。ミンナがよろこんでくれるおみやげはなにかナって、いっしょうけんめい考えたんだヨォ!」
「だが……」
メタナイトはマホロアを問いつめようとしたが、いきなり視界が暗くなったので、ハッとした。
マホロアの攻撃か……メタナイトは剣をぬきかけたが、そうではなかった。
カービィが、メタナイトに、ワドルドゥのおめんをかぶせたのだ。
「メタナイトもいっしょにあそぼうよー! ワドルドゥのまねしてよー!」
「…………」
メタナイトは、なんとか威厳(いげん)をとりつくろい、無言でおめんをはずした。
デデデ大王が、口をとがらせて文句を言った。
「やらんのか? ノリの悪いヤツだな!」
「……君たちが良すぎるのだ」
メタナイトは、マホロアとの会話を続けようとしたが、マホロアはニコニコして、話題を変えてしまった。
「ミンナがおめんを楽しんでくれて、ボク、うれしいヨ! さて、次は、マホロア城に案内するネ!」
「マホロア城?」
「ウン! あのお城の名前だヨォ」
マホロアは、広場の奥に建つりっぱなお城をさした。
カラフルなとんがり屋根の塔が、何本もそびえている。正面には、大きなマホロアの顔のかざりがついていた。
「マホロア城の中には、たくさんのアトラクションがあるンダ」
「あとらくしょん……?」
「いろんなゲームで遊べるんだヨ。ミンナ、ボクについて来て!」
マホロアは、お城に向かっていった。
カービィとデデデ大王は、もうすっかり、マホロアランドにこころをうばわれている。はずむ足どりで、マホロアを追いかけた。
「待ってー、マホロア!」
「どんなゲームがあるのだ? オレ様が、必ず一番になるぞ!」
のんきな二人を見送りながら、メタナイトはつぶやいた。
「アトラクション、か。気は進まんが、あの二人を放っておくわけにもいくまい。行こう、ワドルディ」
「はい!」
バンダナワドルディはうなずき、メタナイトとともに歩き出した。
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マホロア城の長い階段を上ると、そこには、いくつものとびらがならんでいた。
マホロアが言った。
「どれでも、好きなアトラクションを選んでネ。お客サマはキミたちだけだから、貸し切りで遊べるヨォ!」
カービィたちは、とびらの上にかかげられた看板(かんばん)を見上げた。
デデデ大王が、看板の文字を順番に読み上げた。
「ギガトンパンチ、刹那(せつな)の見斬(みき)り、スマッシュライド……聞いたことのない名前ばかりだぞ。遊び方がわからん」
マホロアが言った。
「ダイジョーブ、どのゲームも、ルールはカンタンなんダ。すぐに覚えて、遊べるヨォ。それと、マホロアランドには、スタンプカードがあってネ……」
マホロアは、四人にカードをくばった。
デデデ大王がたずねた。
「スタンプカード? なんだ、これは?」
「ゲームに勝つと、スタンプを押せるンダ。スタンプがたくさんたまると、ゴーカ景品が当たるヨ!」
「ごうか景品!? なんだ!?」
「いろいろあるヨ。ミンナがゼッタイよろこんでくれる、スペシャル・プレゼントを用意してあるンダ……クククッ」
マホロアはうつむき、押し殺した笑いをもらした。
「スペシャル・プレゼントだと? 肉か!? おかしか!?」
デデデ大王が、いきおいこんでたずねた。
「ククク……ここでしか食べられない、スペシャル・メニューもあるかもネ!」
「よぉし、こいつは、負けられんわい!」
デデデ大王は目をギラギラさせ、腕まくりをした。
カービィも、もちろん、やる気まんまん。
「ぜったい、ぼくが勝つもんね! スペシャル・メニューは、いただきだよ!」
マホロアは、うれしそうに言った。
「それじゃ、アトラクションを選んでネ。最初は、どれがいいカナ?」
「んーと……あれは、どういうアトラクションなの?」
カービィがさしたのは、かざぐるまのような武器の絵が描かれた看板だった。
マホロアが答えた。
「『一撃! 手裏剣道場』だネ。手裏剣を投げて、マトに当てるゲームだヨォ」
デデデ大王が言った。
「おもしろそうだわい。最初のゲームは、それにしよう」
「ウン! それじゃ、ボクについてきて!」
マホロアは、『一撃! 手裏剣道場』のとびらを開けた。カービィたちは、中に入ってみた。
アトラクションの中は、しんと静かで、竹やぶがおいしげっていた。カベも天井も見えず、夕ぐれのようなあわい光がさしこんでいる。建物の中とは思えない風景だ。
マホロアは四人に向き直り、手裏剣を三本ずつくばった。
「まるいマトが次々に出てくるから、この手裏剣を投げてネ。マトの真ん中に当てると、ドンピシャ! 高得点になるヨォ」
「なーんだ、それだけか。カンタンすぎるわい」
デデデ大王が笑い、手裏剣をかまえた。
マホロアが言った。
「それじゃ、まず、一のマトを出すヨ! ミンナ、準備はいいカナ?」
「おー!」
カービィたちは声をそろえ、横一列にならんで、手裏剣を手にした。
「ハジメ!」
マホロアのかけ声と同時に、四人の前に、大きなまるいマトがあらわれた。
四人はいっせいに手裏剣を投げた。
ピシッ!
するどい音がひびいた。
メタナイトとカービィの手裏剣は、中心から少しはずれたところに当たった。
デデデ大王の手裏剣は、力が入りすぎて、マトのはしに、かろうじて当たった。
バンダナワドルディの手裏剣は、マトに届かず、手前で落ちてしまった。
マホロアがさけんだ。
「ザンネン! ドンピシャは出なかったネェ。さすがのキミたちにも、チョットむずかしすぎたかナァ? ゴメンネ……クックック」
マホロアは、ゆかいそうに笑った。
メタナイトは、無言でマホロアをにらみつけた。
デデデ大王は、足をふみならして、くやしがった。
「くっ……ちょっとばかり、張り切りすぎたわい! 次は、ドンピシャを狙うぞ!」
カービィも、手をぐるぐる回してさけんだ。
「ぼくだって、次はぜったいドンピシャだよ! マホロア、早く、次のマトを出して!」
「ウン! ミンナ、がんばってネ!」
二枚目のマトがあらわれた――が、今回は、最初のマトとは動きがちがった。
ゆらゆらと左右にゆれながら、下に落ちてくる。
「え!? え!? マトが動いてる――!?」
思いがけない動きに、カービィたちは大あわて。
メタナイトはすばやく狙いをさだめて投げたが、中心に当てることはできなかった。
カービィとデデデ大王の手裏剣は、マトのはしに当たった。
バンダナワドルディの手裏剣は、またしても、マトに届かなかった。
マホロアは、悲しそうに頭を振った。
「アア……やっぱり、キミたちにはムリだったネ……ゴメンネ。三のマトは、ダレにでもドンピシャが出せるくらい、むちゃくちゃカンタンにしておくネェ!」
「――その必要はない」
メタナイトが、目をギラッと光らせて言った。
「今のは、少しゆだんしただけだ。むずかしいほうが、手ごたえがあっていい。次は、ぜったいに、はずさない」
最初は気乗りしない様子だったのに、すっかり、闘志(とうし)に火がついている。
カービィも、手裏剣をかまえてさけんだ。
「ぼくだって! 次はぜーったい、真ん中に当てるぞ!」
デデデ大王も言った。
「最初の二つは、こてしらべだ。次こそ、本気を出してやる! スペシャル・メニューは、だれにもわたさん!」
バンダナワドルディは、小さな声で言った。
「がんばります。次は、もっと、力いっぱい投げるよ!」
マホロアは、両手を口元に当てて笑った。
「クフフフ……! それじゃ、三のマトに行くヨ! ミンナ、がんばれー!」
カービィたちは、息をつめて、竹やぶの先を見つめた。
マトがあらわれる――と同時に、マホロアがマトの前におどり出た。
マホロアは、マトの前で両手を振って、ぴょこぴょこ飛びはねた。
「三のマトだヨォ! ミンナ、楽しんでくれてるカナー?」
メタナイトが、いらだってさけんだ。
「どけ、マホロア! じゃまをするな!」
「ククク! ボクをよけて、命中させられるかナァ? メタナイトサマなら、モチロン、できるよネェ? 銀河一の騎士だもんネェ?」
「どけと言っているのだ!」
「早く投げないと、時間切れになっちゃうヨォ。アーア……ボク、ガッカリだヨォ……まさか、あのメタナイトサマが一度もドンピシャを出せないなんてネェ……クククク!」
マホロアは、うつむいて笑った。
その瞬間――ステージに、闘気(とうき)がほとばしった。
「下がれ、マホロア!」
メタナイトはさけび、思いっきり大地をけって飛び上がった。
手裏剣を投げ捨て、すばやく剣をぬく。仮面の下のするどい目は、マトしか見ていなかった。
「スピニングナイト!」
空中で回転しながら、マトに斬りつける……!
マトの前のマホロアは、あぜんとして、立ちすくんだ。
「エ……エエエ!? ダメだヨォ! 剣はダメ! 手裏剣を投げるンダ!」
しかし、闘志(とうし)に火がついたメタナイトには通じない。
「ヒャアアア! メタナイトを止めてェ! カービィ、デデデ大王、このゲームに勝ったらスタンプ百個プレゼントするヨォ! だから、どうか、メタナイトを……!」
なんとかゲームを立て直そうとしたマホロアだが、この言葉が、かえって裏目(うらめ)に出てしまった。
デデデ大王は目の色を変え、手裏剣を投げ捨てて、愛用のハンマーをかまえた。
「スタンプ百個だと!? メタナイト、きさまには、ゆずらんぞ! 三のマトはオレ様のものだ! えーい、ジャイアントデデデスイング!」
カービィも、負けてはいない。メタナイトとデデデ大王が投げ捨てた手裏剣を吸いこんで、一気にはき出した。
「それー! れんぞく手裏剣! スタンプ百個は、もらったよー!」
「キャアアアアアアア!」
マホロアは悲鳴を上げて、その場にしゃがみこんだ。
メタナイトとデデデ大王は、三のマトをこなごなにくだいてしまった。
デデデ大王が、勝ちほこって言った。
「オレ様の勝ちだ! オレ様が、マトをぶっこわしてやったんだからな!」
メタナイトは、剣をおさめて、クールに言った。
「いや、マトをくだいたのは、私の剣だ。この勝負、私がいただいた」
カービィがさけんだ。
「だめだめ、剣やハンマーをつかったら、失格だよ! ぼくは、ちゃんと手裏剣で攻撃したもんね! ぼくの勝ちだよ!」
三人は、大声で言い合った。
マホロアは、よろよろしながら立ち上がって言った。
「キ……キミたち、みんな失格だヨォ! ルールをちゃんと理解してヨォ!」
デデデ大王が、マホロアをどなりつけた。
「きさまが、じゃまをするからだろうが! やはり、きさまはゆだんのならないヤツだ!」
「ちがうヨォ! じゃまをしたんじゃなくて、マトを狙うのをむずかしくしたんだヨォ……!」
メタナイトが、ハッと気づいて、言った。
「なるほど、これは、試練だったのか……むずかしいほうが手ごたえがあって良いと言ったのは、私だったな。すまなかった、マホロア」
「わかってくれたら、いいヨォ……それじゃ、ミンナのスタンプカードに、スタンプを押すネ。一位はメタナイト、二位はカービィ、三位はデデデ大王……」
マホロアはスタンプを取り出して、みんなのカードに押した。
たちまち、カービィとデデデ大王はきげんを直した。
「やったぁ! スタンプ三個たまったよ!」
「オレ様は一個だけか……フンッ、次はぜったいに負けんぞ! マホロア、早く次のアトラクションに案内しろ!」
「ウ、ウン……次は、なにがいいかナァ……」
マホロアが歩き出そうとした、そのとき。
バンダナワドルディが、声をかけた。
「ねえ、マホロア。ぼく、お手伝いをしようか?」
「エ? お手伝い?」
「アトラクションも、スタンプカードも、ぜんぶ一人でやるなんて、たいへんでしょ。ぼく、マホロアのお手伝いをするよ」
「……ホント? ワァイ、ありがとう!」
マホロアは、声をはずませた。
カービィが言った。
「いいの? ワドルディは、遊びたくないの?」
「遊ぶより、お手伝いのほうがしたいんだ」
バンダナワドルディは、にっこりした。
あんなにたいくつしていたデデデ大王が、すっかり元気になったので、バンダナワドルディはホッとしていた。
それに、ここまでのマホロアの態度を見ていて、うたがう気持ちはほとんど消えていた。
一人でがんばっているマホロアを、助けてあげたいという気もちが、めばえてきたのだ。
デデデ大王が言った。
「それなら、おまえだけじゃなく、他のワドルディどもも呼んだらどうだ?」
「他の……仲間たちですか」
「うむ。急にオレ様が消えて、大さわぎしとるだろうからな。あいつらをここに呼んで、マホロアの手伝いをさせればいい」
マホロアは、ますますうれしそうに、両手を上げた。
「トッテモ助かるヨォ! じゃ、ワドルディ隊をここへ呼ぶネ!」
マホロアが両手を広げると、空中に、ぽっかりと穴があいた。
ドサドサと落ちてきたのは、おおぜいのワドルディたち。
「ひゃあああ!」
「いたたたた!」
「な、なに!? 急に、からだが引っぱられて……ここは、どこ!?」
積み重なるようにたおれたワドルディたちは、なにが起きたのかわからず、おろおろした。
デデデ大王が、ピシャリと言った。
「ええい、うるさいわい! 静かにせんか、おまえたち!」
「……え? あっ、大王様!」
ワドルディたちは起き上がり、大王に飛びついた。
「大王様! 急にいなくなっちゃうから、心配しました!」
「ぼくら、大王様を探してたんです。そしたら、急に、目の前がピカッと光って……」
「ここは、どこですか? なにが、どうなってるんでしょう?」
デデデ大王は、めんどうくさそうに言った。
「説明はあとでしてやる、とにかく、おまえらは、マホロアの手伝いをしろ」
「マホロア……?」
ワドルディたちは、とまどってあたりを見回し、ようやくマホロアに気づいた。
にこやかなマホロアを見て、ワドルディたちは、飛び上がった。
「こ、このひとが、あの有名なうらぎり者のマホロア!?」
「大王様をだました、悪いヤツですね!?」
「わあああ! たいへん! みんな、逃げなきゃ!」
あわを食って逃げ出そうとするワドルディたちの前に、手を広げて立ちはだかったのは、バンダナワドルディ。
「待って、みんな! 話を聞いて。みんなをここへ呼んだのは、マホロアのお手伝いをしてもらうためなんだ」
「あ……バンダナせんぱい!」
ワドルディたちは、ふしぎそうにたずねた。
「お手伝い? マホロアの……?」
「どういうことですか? マホロアは、大王様をうらぎった敵なのでは……?」
「うーんと……ぼくも、よくわからないけど、今は敵じゃない……みたい。ここは、マホロアが作ったテーマパークなんだよ」
マホロアが言った。
「ミンナには、テーマパークのキャストとして、はたらいてもらいたいンダ。よろしくネ!」
「……キャスト……?」
ワドルディたちは、顔を見合わせた。マホロアが説明した。
「アトラクションを動かしたり、お客サマを案内したりする係だヨ! 他にも、レストランのお食事を作ったり、ショップでおみやげを売ったりするお仕事を、手伝ってもらいたいンダ」
「レストラン……ショップ……?」
「テーマパークの……お仕事……」
きょとんとしていたワドルディたちだが、だんだん、目がキラキラし始めた。
「うわあ、おもしろそう!」
「やるやる! ぼく、前から、レストランのお仕事をしてみたいって思ってたんだ!」
「ぼくは、アトラクションのかかりがいいな!」
バンダナワドルディが言った。
「それじゃ、チームに分かれて、お手伝いをしよう。マホロア、なにをすればいいか、教えてくれる?」
「ウン! まずは、アトラクションの説明をするネ……」
マホロアは、ワドルディたちにかこまれて、楽しそうに話し始めた。
そんな様子をながめながら、メタナイトがつぶやいた。
「前からテーマパークを作りたかった……か。本気なのか? マホロアは、いったい、なにを考えているのだ……?」
そんなメタナイトをよそに、カービィとデデデ大王ははしゃぎ回っていた。
「次は!? 次はどんなアトラクション!? ぼく、ぜったい勝つよ!」
「フハハ! 引っこんでいろ、カービィ。ここからが、オレ様の見せ場だわい!」
バンダナワドルディとワドルディ隊も、すっかりマホロアを信じきった様子だ。
「……やれやれ、だ」
メタナイトは顔をそむけ、ひそかにため息をついた。
ワドルディ隊のみんなも加わって、いよいよにぎやかになったマホロアランド!
楽しい時間は、あっというま。夜になると、いよいよマホロアが動き出す……?
次回「二人の本当の気持ち」をおたのしみに!(7月28日公開予定)
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- 9784046322340
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