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マホロアが作ったテーマパーク『マホロアランド』に、カービィたちをご招待! 今度のマホロアは、いったい何をたくらんでいるの!?
8月5日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ おいでよ、わいわいマホロアランド!』の先行ためし読みだよ!
◆第1回
カービィたちのもとにとどいた、ふしぎなお手紙。これが、大そうどうの始まりだった!?
『星のカービィ Wii デラックス』に登場する「わいわいマホロアランド」の小説版、はじまるよ!
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ふしぎなお手紙
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うす暗い倉庫の奥で、フードを深くかぶった魔術師が、うずくまっていた。
いくつもの箱をていねいにつつみ、リボンをかけていく。
「ククク……これはメタナイトへ……こっちはデデデ大王へ……ワドルディくんにも、用意してあげなくちゃネ……そして、これは……」
魔術師が手にしたのは、とっておきのケーキ。
ふわふわのスポンジに、生クリームがたっぷりぬられ、その上にピンク色のマシュマロがちょこんとのっている。
よく見れば、マシュマロには目や手足がついている。そう、カービィ型のマシュマロだ。
魔術師は、にんまりと目を細めた。
「マホロア特製カービィ・ケーキだヨォ……カービィ、これを見たら、どんな顔をするかナァ……大よろこびして、一口で吸いこんじゃうかもネ……ククク……クックック……」
押し殺した小さな笑い声が、倉庫にひびく。
「サァ、準備はできたヨ。あとは、招待状を送るだけだネェ……」
魔術師は立ち上がり、満足げにうなずいて、倉庫を出た。
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あきれかえるほど平和な、プププランドの昼下がり。
チリーがカービィの家のまどをのぞきこんで、声をかけた。
「おーい、カービィ、いる? 手紙だよ」
聞きつけたカービィは、まどべに駆けよった。
「え? お手紙? ぼくに?」
「うん。道に落ちてたんだ。おっきな字で『カービィへ!』って書いてあるから、持ってきてあげたんだよ」
「ふぅん……どうもありがとう。だれからだろう?」
「差出人は書いてないんだ。だけど、プププランドの住民だったら、手紙なんて書かずに会いにくるだろうし……宇宙のかなたに住んでるだれかが、魔法で送ってきたんじゃないかな」
「ええ!? 魔法!? だれだろう!?」
「カービィのファンかもね」
チリーは笑って、手紙を差し出した。
「ファン!? ぼくの!? うわあ、うれしい!」
カービィは目をかがやかせ、手紙を開いてみた。
パッと見たとたん、カービィの顔が、いつになくまじめになった。
チリーは、興味をもって、たずねた。
「だれから? なんて書いてあるの?」
「………………」
「ん? どうかしたの? だれからの手紙だったの?」
「ま、ま、ま……!」
カービィが、差出人の名前をさけぼうとした瞬間。
パッと、白い光がほとばしった。
あまりのまぶしさに、チリーはギュッと目をつぶった。
「わわわーー!? なに!?」
光が消え、チリーが目を開けてみると――カービィは、どこにもいない。
「あれ? カービィ? どこ行っちゃったの、カービィ!」
返事はない。
家の中にも、まわりにも、カービィの姿は見当たらなかった。
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さて、デデデ城では、デデデ大王がソファにふんぞり返って、大きなあくびをしていた。
「ふぁぁぁ……たいくつだわい。なにかおもしろいことはないのか、おまえたち」
デデデ大王は、けだるい表情で、部下のワドルディたちを見た。
ワドルディたちは、困り顔を見合わせた。
リーダーのバンダナワドルディが言った。
「では、ぼくら、歌をうたいます」
「つまらん。おまえらの歌は、聞きあきた」
「えっと……それでは、みんなでダンスを……」
「ダンスも見あきた。先に言っとくが、手品も、ものまねも、なぞなぞ大会もあきたぞ。なにか、今までにない、ものすごく楽しいことをやれ」
そんなむちゃなことを言われても、なにも思いつかない。ワドルディたちは、うんうんと考えこんだ。
デデデ大王は、また大あくび。
「ふぁぁぁぁ……なにかないのか。オレ様が夢中になれるものは……」
と、そこへ。
一人のワドルディが、駆けこんできた。
「大王様、お手紙でーす!」
「なに? 手紙だと?」
デデデ大王は、ガバリと身を起こした。
「きっと、ファンレターだな! まったく、オレ様の人気は、とどまるところを知らんわい。どれどれ……」
デデデ大王はもったいぶって、手紙を開いた。
手紙を読んだとたん、大王の顔がひきつった。
バンダナワドルディは心配になって、大王を見上げた。
「どうしたんですか、大王様。そのお手紙が、なにか? だれからのお手紙ですか?」
「ま……ま……ま……!」
大王がなにかさけびかけた瞬間、パッと白い光がほとばしった。
「わあああ!?」
「ま、まぶしい!」
ワドルディたちは、びっくりぎょうてん。みんな、とっさに目をつぶった。
光がおさまり、ワドルディたちが、おそるおそる目を開けてみると。
デデデ大王の姿が消えていた。大王のそばにいた、バンダナワドルディも。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
同じころ、戦艦(せんかん)ハルバードの艦内(かんない)。
メタナイトとバル艦長は、ゆうがなお茶の時間を過ごしていた。
バル艦長は、もぐもぐとケーキをほおばって、笑顔で言った。
「このショートケーキは、じつに絶品ですなぁ、メタナイト様。大人気のケーキ屋さんに、二時間もならんで、ようやく買えたのですぞ!」
メタナイトは、ケーキをフォークで切り分けながら、そっけなく言った。
「大事な任務だと言って出て行ったと思えば、ケーキ屋にならんでいたのか、君は」
「え、そ、それは……ケーキの確保はたいせつな任務ですからな! わしが食べたかったのではなく、メタナイツたちの士気を高めるために、必死の努力をしたのですぞ……!」
バル艦長が言いはっているとちゅうで、アックスナイトがやって来た。
「お話中、失礼いたします。メタナイト様、手紙が届きました」
「手紙? 私にか」
「はい。大きな字で『メタナイトへ!』と書いてあります。差出人はわかりません」
バル艦長が、うれしそうに言った。
「ケーキ屋の新作案内ですかな? 新作が出たら教えてくれと、たのんでおいたのです」
「それなら、君あてに届くと思うが……」
メタナイトは封を開けてみた。
手紙を一目見た瞬間、メタナイトはハッとしてさけんだ。
「これは……まさか……!」
とつぜん、パッと白い光がほとばしった。
「わあああ!? 何事です!?」
バル艦長もアックスナイトも、あわてて目を閉じた。
光が消え、二人がゆっくり目を開けてみると――メタナイトが消えていた。
「ぬぉぉぉ!? メタナイト様!? メタナイト様、どこです!?」
バル艦長はうろたえ、大声で呼びかけた。
メタナイツたちは、大あわて。戦艦ハルバードの艦内をくまなく探し回ったが、メタナイトの姿は、どこにもなかった。
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カービィは、ぎゅっとつぶっていた目を開けて、あたりを見回した。
「え……? ここ、どこ?」
カービィは、ポカーンとした。
ほんの一瞬前まで、家にいて、チリーと話していたはずだ。
なのに、強い光におどろいて目を閉じている間に、まわりの風景がすっかり変わっていた。
足元は石だたみで、目の前には大きな門がある。門の向こう側には、きれいな花だんや、ふんすいが見えた。
「どこだ、ここは!?」
背後で大きな声がしたので、カービィは振り向いた。
デデデ大王が、きょろきょろしながら立っていた。バンダナワドルディもいっしょにいる。
「ワドルディ! デデデ大王!」
カービィはさけんで、二人に駆けよった。
二人はカービィを見て、目をまるくした。
「カービィ!? いったい、どうして……」
すると、そのとき、もう一人の声が聞こえた。
「やれやれ、だ。やはり、君たちもいっしょか」
カービィは、そちらに顔を向けた。
ぽつんとたたずんでいるのは、メタナイトだった。
カービィは、飛び上がってさけんだ。
「メタナイトも!? ここ、どこなの? なんで、ぼくら、こんなところにいるの? ぼく、ついさっきまで、おうちにいたんだよ!」
デデデ大王が言った。
「オレ様だって、デデデ城にいたわい。城の執務室で、偉大な支配者として、むずかしい仕事にはげんでいたのだ」
メタナイトが言った。
「私は戦艦ハルバードにいた。そこへ、手紙が届いたのだ。読んだとたんに、強い光がさして、気がついたらここに飛ばされていたというわけだ」
「この手紙のせいか……!」
デデデ大王は、持っていた手紙をにぎりしめた。
カービィは、自分のところに来た手紙を開いて、読み上げてみた。
「『ヤァ、カービィ、久しぶりだネェ。元気? ボクはトッテモ元気だヨォ! ボク、楽しい遊園地――テーマパークをつくったンダ! トクベツに招待するから、ミンナで遊びに来てネ! 待ってるネ!』……差出人は……」
「マホロア!」
メタナイトとデデデ大王も声をそろえて、その名を口にした。
デデデ大王は、腕を組んで、うなり声を上げた。
「まさか、本当に、あのマホロアなのか?」
「わからん。だが、ヤツの名前をかたる者など、いるとは思えん……」
と、そのとき。
門の向こう側から、楽しい音楽が聞こえてきた。
思わずおどり出したくなるような、軽やかなリズムとメロディだ。
そして、その曲に合わせるようにふわふわと、門をくぐってあらわれたのは――。
「久しぶりだネェ、ミンナ!」
「マホロアァァァ――!」
カービィ、デデデ大王、メタナイト、そしてバンダナワドルディの四人は、声をそろえてさけんだ。
マホロアは、ニコニコして両手を広げ、言った。
「ようこそ、ようこそ、ボクのテーマパークへ! 歓迎するヨォ! キミたちは、初めてのお客サマ……」
メタナイトは、無言で剣をぬいた。
デデデ大王は、ハンマーを振りかざした。
カービィも、「すいこみ」の体勢に入っている。
バンダナワドルディは、武器こそ持っていないものの、いつでも逃げ出せるようにダッシュのかまえ。
四人の様子を見て、マホロアはあわててさけんだ。
「エ――!? チョット待って、キミたち!? なんで、いきなり戦う気なのォ!?」
メタナイトが答えた。
「問答無用だ。このような強引な方法で私たちを呼びよせて、なにをする気だ、マホロア!」
デデデ大王も、マホロアをにらんで言った。
「まさか、またしてもオレ様の前に、ノコノコあらわれるとはな! なにをたくらんでるのか知らんが、オレ様が成敗(せいばい)してやるわい!」
カービィも、いさましくさけんだ。
「おまえの思うとおりには、させないぞ! かくごしろ、マホロア!」
「待ってェ――! 誤解(ごかい)だヨォ!」
マホロアは、おびえたようにあとずさって、手を振った。
「ボク、戦う気なんてないヨォ! ミンナを招待しただけだヨォ!」
「……招待?」
「ウン。ボクが作ったテーマパーク、マホロアランドにネ!」
マホロアはくるんと一回転して、片目をつぶった。
音楽が、いっそう高らかに鳴りひびいた。
「マホロアランド……だと?」
メタナイトは、ますます警戒心を強めて、マホロアをにらみつけた。
「ウン! 楽しいアトラクションでイッパイの、夢のテーマパークだヨォ! 支配人は、ボク。よろしくネ!」
マホロアは、うやうやしくおじぎをした。
メタナイトは、けわしい態度をくずさずに言った。
「いきなりテーマパークなどと言われても、わけがわからない。なにをたくらんでいるのだ、マホロア」
するとマホロアは、にっこり笑って答えた。
「たくらんでなんか、いないヨォ。ボク、キミたちと仲直りをしたいだけなンダ」
「仲直り?」
「ウン! ずいぶん、きらわれることをしちゃったからネェ。ミンナにあやまりたくて、招待状を出したんだヨ」
デデデ大王が、怒りをこめて言った。
「おまえと仲直りなんぞ、考えられんわい! だいたい、いきなり手紙をよこして、オレ様の返事も待たずに呼びつけるなんて! やり方が気に入らんわい!」
「やり方が強引だったのは、あやまるネ。ホントは、ステキなシャトルバスでおむかえに行きたかったンダ。でも、準備が間に合わなくて……ボク、とにかく早く、お客サマをおむかえしたかったんだヨォ!」
メタナイトも、カービィも、デデデ大王も、バンダナワドルディも、じーっとマホロアをにらみつけた。
と、そのとき。
ヒュルルル……バァーン! と、大きな音がひびき、空が明るくなった。
カービィたちは、おどろいて空を見上げた。
まっさおな空に、大きなにじ色の花が開いていた。
花火のようだが、もっと色あざやかで、キラキラとかがやいている。大空に宝石をちりばめたような、息をのむ光景だった。
そして、数えきれないくらいたくさんの風船が、いっせいに空に舞い上がった。目がくらむほどの紙ふぶきが、宙(ちゅう)にきらめいた。
楽しい音楽が、ますます高まる。カービィは目をみはり、夢中でさけんだ。
「うわああああ! にじのお花! ふーせん! かみふぶき! きれいー!」
カービィは、きれいなものが大好き。われをわすれて駆け出した。門をくぐり、マホロアランドの中へ。
メタナイトが、するどく叫んだ。
「止まれ、カービィ! マホロアのワナかもしれん! ゆだんするな!」
しかし、そんなメタナイトを押しのけて、デデデ大王も走り出した。
「どけどけー! うぉぉ、なんて数の風船だ! もらったぁぁ!」
デデデ大王は高くジャンプし、手をのばして、いくつもの風船をつかみ取った。
マホロアは、うれしそうに手をたたいた。
「マホロアランドの、オープニング・イベントだヨォ! 楽しんでもらえたかナァ?」
カービィとデデデ大王は、マホロアの声も聞こえていない様子。二人とも、わくわく する光景に、すっかりこころをうばわれている。
「わーい! ふーせん、ふーせん! かみふぶきー!」
「うぉほほほー! カービィ、どっちがたくさん風船をつかまえられるか、競争だ!」
「うん! 負けないぞー!」
はしゃぎ回って、風船に飛びついている。
メタナイトは、バンダナワドルディに小声で言った。
「あの二人は放っておこう。私たちは気をぬかずに、マホロアのたくらみを探り出すのだ」
バンダナワドルディは、緊張(きんちょう)した顔でうなずいた。
「はい、メタナイト様」
マホロアは、そんな二人の会話など気にもかけない様子で、明るくさけんだ。
「サア、メタナイトもワドルディも、早く中に入ってヨ! ボクが、マホロアランドを案内するヨォ!」
マホロアは、ふわふわと門をくぐり、マホロアランドへ入って行く。
メタナイトとバンダナワドルディは顔を見合わせてうなずき合い、マホロアのあとに続いた。
とっても楽しそうなマホロアランドに、カービィとデデデ大王は大はしゃぎ!
門をくぐった先で、いったい何が起こるのか!?
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