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さて、無事に汽車に乗りこんだカービィたちは、きょろきょろと車内を見回した。
二人がけの座席が、ずらりと並んでいる。ほぼ満席だ。
デデデ保安官が、客の顔をひとりひとり確かめながら言った。
「あの女性の顔は、しっかり覚えとるわい。ドレスや、ぼうしの色もな!」
メタナイトが言った。
「ヤツが、そのままの姿でいると思っているのか? もう、別の人物に変装しているに決まっている」
「え……それでは……」
「変装のためには、個室が必要だ。ヤツは、ここではなく、個室のある車両にいるはずだ」
メタナイトは、すばやくドアを開けて、となりの車両に移った。
デデデ保安官は、まごついて、たずねた。
「個室というと……?」
「このタイプの汽車には、客車の最後尾の車両に、個室があるのだ。特等室が一つと、ふつうの個室が五つあるはずだ」
カウボーイ・ワドルディが言った。
「わかりました! では、最後尾を調べればいいですね!」
「フ、フン! 今、オレ様も、そう言おうとしていたところだ!」
デデデ保安官は、みえを張った。ほんとうは、旅行などしたことがないので、汽車のことなんて何も知らないのだ。
いくつかの車両を通り抜けると、次は食堂車だった。テーブルやイスがそなえつけられ、カウンターの上にはグラスや皿が並べられている。
カービィが、目の色を変えて叫んだ。
「うわあ、すごい! 汽車の中に、レストランがある!」
デデデ保安官も、舌なめずりをして言った。
「良いにおいがするわい! 肉が焼けるにおいだ!」
と、そこへ。
聞き覚えのある声がひびいた。
「いらっしゃーい! でも、まだ開店前なんだ。ちょっと待っててね」
カービィとデデデ保安官、それにワドルディたちは、びっくりして叫んだ。
「コックカワサキ――!? どうして、ここに!?」
カウンターの内側でニコニコしているのは、なんと、コックカワサキ。
コックカワサキは、得意げに言った。
「やあ、みんな。実は、君たちがサボテン・シティに行っちゃってから、さびしくてね。大食いのカービィやデデデ保安官がいなくなったら、店の売り上げもガタ落ちだし。それで、ぼく、店はワドルドゥにまかせて、アルバイトをすることにしたんだよ」
「アルバイト……」
「うん。ちょうど、サボテン鉄道の食堂車で、シェフを募集してたんでね」
カービィが、目をかがやかせた。
「それじゃ、ここで、コックカワサキのお料理が食べられるってこと!? うわぁい、やったぁ!」
デデデ保安官も、舌なめずりをして叫んだ。
「ちょうど、肉を食いたいと思ってたところだ! ハンバーグ十人前とステーキ十人前、持ってこーい!」
すると、コックカワサキは手を振って言った。
「言っただろ、まだ準備中なんだってば。もうちょっと待って……」
「待ちきれんわい! 今すぐ食いたいのだ! さっさと準備しろー!」
今にもコックカワサキにつかみかかりそうなデデデ保安官の服のすそを、カウボーイ・ワドルディが引っぱった。
「保安官様! メタナイトさんが、あきれて行ってしまいました。個室を調べる気です。手柄を取られてしまいますよ!」
「なんだと!」
デデデ保安官は、やっと任務を思い出して、メタナイトを追うことにした。
カービィも、コックカワサキに手を振って言った。
「じゃ、あとでまた来るね。お料理、たっぷり用意しておいてね」
「うん、待ってるよ!」
一行は、急ぎ足で、食堂車をあとにした。
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いっぽう、強引に汽車に乗りこんだマッチョリーノと三人の手下たちは、先頭の車両に向かっていた。
彼らの異様な迫力に、乗客たちはざわめいたが、マッチョリーノ一味は気にもとめない。早足で向かう先は、機関室だった。
機関室のドアには、カギがかかっている。マッチョリーノは、手下たちを振り返って言った。
「ドアを開けろ、ボンカース」
「おう」
手下のひとり、ボンカースが進み出て、恐ろしいほどの怪力でドアをこじ開けた。
機関士が振り向き、ギョッとして叫んだ。
「ええええ!? な、なんだ、あんたたちは! 出て行け! ここは、立入禁止だ……!」
「だれに向かって言ってる?」
マッチョリーノはニヤリと笑うと、また手下たちを振り返った。
「こいつを、かわいがってやれ、バーナード」
「よーし」
手下のひとり、バーナードが、ラッパ銃をかまえて、ひきがねを引いた。
ラッパ銃から飛び出したのは、バネのついたボクシング・グローブ!
「うっ!」
機関士は吹っ飛ばされ、カベにぶつかって、気絶してしまった。
マッチョリーノは、三人目の手下に命じた。
「縛りあげろ、ポピーブラザーズJr.」
「はいはーい」
ポピーブラザーズJr.が、手早く機関士を縛りあげた。
「さあ、最後の仕上げだ」
マッチョリーノは、巨大な銃を手にすると、ブレーキ装置に銃弾を何発も撃ちこんだ。
「クク……これで、この汽車は止まれなくなった。地獄の底まで、直行だ!」
ドロッチェを追って汽車に乗りこんだはいいけれど、マッチョリーノのたくらみで、汽車のブレーキが壊れて、止まれなくなってしまった!? 暴走する汽車に乗ってしまったカービィたちと乗客の運命は!? そして、マッチョリーノはいったい何が目的なのか!!?
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