
◆第7回
ごちそう目当てでやってきたパーティで、まさかの大事件発生!?
さらわれたパフェスキー夫人を助けるため、カービィたちは北の森へ!
でも、簡単(かんたん)には近づけないようで……?
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
本当のパフェスキー夫人
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
「ストップー!」
カービィがようやく止まったのは、切り立ったガケの手前だった。
カービィに引っ張られていた飛行船も、草の上にドスンと着地した。
「ふー、あぶない、あぶない。うっかり、落っこちるとこだった!」
飛行船のとびらが開いて、メタナイトとデデデ大王が飛び出してきた。
「よくやったぞ、カービィ!」
「うう……タテゆれがすごくて、よったわい」
デデデ大王はフラフラしている。
カービィは、ガケの底を見下ろして、言った。
「すごく深いよ……どうやって越えよう?」
「見ろ。あそこにつり橋(ばし)がある」
メタナイトが指さした。なるほど、向こう岸まで、古ぼけたつり橋(ばし)がかかっている。
「あそこから、向こう岸へ渡れるぞ」
「ううむ……なんとも、たよりない橋(はし)だわい。あんなもの、渡ってだいじょうぶか?」
不安そうなデデデ大王を、カービィがからかった。
「デデデ大王は太ってるから、橋(はし)がこわれちゃうかもねー!」
「なんだと!? カービィ、おまえ、オレ様のナイスバディにケチをつける気か!?」
「ナイスバディって? おなかが出てること?」
「この……! おまえが、ひとのことを言えるか!」
デデデ大王は、カービィをなぐりつけようとした。
カービィはその手をかいくぐり、反撃(はんげき)を食らわせようと身がまえる。
メタナイトがふたりを止めた。
「やめたまえ。仲間われなどしている場合ではない」
「仲間? はっ、オレ様はおまえらの仲間になった覚えなんかないぞ!」
デデデ大王はすっかりきげんを悪くしてしまい、ふたりにくるっと背を向けた。
そのとき──。
デデデ大王の頭上を、何かがヒュッと音を立ててかすめ飛んだ。
デデデ大王は、振り向いてどなった。
「やる気か、カービィ! いつでも受けて立つぞ!」
「ぼくじゃないよ〜!」
「しまった、橋(はし)が!」
メタナイトがさけんだ。
デデデ大王の頭上をかすめたするどい刃(やいば)は、つり橋(ばし)に向かって一直線。
橋(はし)をつっていたロープを、ザクッと切断(せつだん)していた。
つり橋(ばし)は音を立てて、ガケの下に落ちていく……。
メタナイトは剣をぬき、身がまえてさけんだ。
「出てこい! 何者だ!」
三人の前に、敵が飛び下りてきた。
「ここは、ぜったい通すわけにいかねえんだ!」
さけび声とともに下り立ったのは、まるい金色のボディと、頭につけた大きなカッターがとくちょうの、小さな戦士。
デデデ大王が、目を丸くした。
「サーキブルじゃないか!? まさか、おまえも誘拐団(ゆうかいだん)の一味(いちみ)なのか!?」
サーキブルもやはり、プププランドの住民で、時々デデデ大王にこき使われている戦士の一人だった。頭のカッターをブーメランのように飛ばして、鋼鉄(こうてつ)をも切りさく能力をもっている。サーキブルは、頭を低く下げて言いはなった。
「この計画だけは、ジャマさせねえ!」
「きさま……!」
「たとえデデデ大王様でも、ここは通せねえんだ!」
サーキブルは、頭のカッターを飛ばした。
一直線に飛んできたカッターを、メタナイトが剣でたたき落とす。
デデデ大王が、わめきちらした。
「オレ様にさからう気か! くっそ……思い知れ、サーキブル!」
「待って!」
サーキブルにつかみかかろうとするデデデ大王を、カービィが止めた。
「ジャマするな、カービィ!」
「ぼくにまかせて!」
カービィはくるんと宙返(ちゅうがえ)りをした。
と同時に、ホイールのぼうしがはずれた。はずれたぼうしは、元のウィリーのすがたに。
「あ……あれ? ここは……?」
状況(じょうきょう)がわかっていないウィリーは、キョロキョロとあたりを見回した。
そのすきに、カービィは、からだをいっぱいにふくらませて、息をすいこんでいた。
サーキブルが、悲鳴を上げた。
「わ……わああっ!? なんだ!?」
彼はたちまちカービィにすいこまれてしまった。
カービィの頭上に新しくあらわれたのは、カッターを装備(そうび)したぼうし。
カービィは、くるんと一回転して、頭の上の刃(やいば)を軽く飛ばした。
「見て見て! 『カッター』のコピー能力が使えるようになったよー!」
メタナイトが、剣をおさめて言った。
「なるほど、敵の能力をうばい取り、戦闘不能(せんとうふのう)にする……か。みごとなものだな、カービィ」
「それだけじゃないよー!」
カービィは、ガケっぷちにはえた木々の間を走り回って、その高さを確かめた。
メタナイトは首をかしげた。
「何をしているのだ……?」
「よーし、この木がいちばん良さそう!」
カービィは、そのあたりでいちばん高く、いちばん太い木に向けて、たった今コピーしたばかりの『カッター』の能力を使った。
するどい刃(やいば)が、太いみきを切りさく。
メリメリ……と、大きな音を立てて、巨木はたおれた。
デデデ大王が、あきれて言った。
「どういうつもりだ、カービィ。材木で、家でもたてる気か?」
「家じゃない、橋(はし)だよ!」
カービィの言うとおり。
たおれた木のてっぺんは、ガケの向こう岸にまで届いていた。
メタナイトが言った。
「そうか……木を両岸(りょうぎし)の間に横たえて、橋(はし)のかわりにしようというわけか。いい考えだぞ、カービィ」
「早く行こう〜!」
メタナイトは、デデデ大王を見た。
さっきまで、カービィとケンカして、すっかりヘソをまげていた大王だが……。
「……よし」
うでを組み、重々しくうなずいた。
「いっしょに来るのか?」
「うむ。だが、かんちがいするなよ。おまえらのことなんか、仲間とは思ってない。パフェスキーのことだって、どうでもいい。オレ様はな……」
デデデ大王は、けわしい顔つきでウィリーをにらんだ。
「どうにも、ガマンがならんのだ! こいつらが、オレ様にたてつくとはな!」
デデデ大王の大きな目玉ににらまれて、ウィリーは気絶しそうになった。
「おまえらだけで、こんな大それた計画を立てるとは思えん。きっと、背後に黒幕(くろまく)がいるんだろう。言え、ウィリー!」
「く、黒幕(くろまく)なんていません……」
「ウソをつくなっ! このオレ様を倒して、プププランドの王になろうとしているヤツがいるにちがいない! その名を言えというのだ!」
「よせ、デデデ大王」
ウィリーをしめ上げようとするデデデ大王を、メタナイトが止めた。
「理由はともかく、私たちとともに戦う気になったのだな?」
「おまえらとともに戦うんじゃない! おまえたちが、オレ様のために戦うんだ!」
「……そういうことにしておいてやろう。ともかく、パフェスキー夫人を救出(きゅうしゅつ)することが大事だ。行くぞ」
「案内してもらうよ、ウィリー!」
カービィが言った。ウィリーは観念(かんねん)したように、ふるえながらうなずいた。
メタナイトたちは、ウィリーを先頭に、丸木の橋(はし)を渡った。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
対岸(たいがん)に渡った一行は、木々の間を走りぬけた。
「あのどうくつです……」
ウィリーが指さす先。山はだに、大きな穴がぽっかり口をあけている。
「よーし、行っくよ〜!」
「ゆだんするなよ、カービィ!」
「だいじょーぶ!」
カービィが真っ先に走りよろうとしたときだった。
「ストォォォップ! それ以上、近づくなぁぁぁー!」
大ボリュームの声が鳴りひびいた。
あまりの音量に、さすがのカービィもひっくり返ったほど。
「み……耳が……キンキンするぅ……」
「一歩も動くなぁぁぁ! どうくつに近づくなぁぁぁ!」
またしても、大ボリューム。
メタナイトもデデデ大王も、両手で耳をふさいだ。
行く手をさえぎるように、どうくつの中から人影があらわれた。
「おまえは……ウォーキーじゃないか!」
デデデ大王が、うめいた。
三人の前に立ちはだかっているのは、マイクのようなすがたをした、プププランドの住民──ウォーキー。
ウォーキーは、聞く者を圧倒(あっとう)する声量(せいりょう)の持ち主。彼もやはり、ウィリーやサーキブルと同じように、デデデ大王にこき使われる部下のひとりだった。
「おまえまで、誘拐団(ゆうかいだん)の一味(いちみ)だったのか……!」
「事情(じじょう)があるんですぅぅぅ、デデデ大王様ぁぁぁ!」
耳をつんざく大声でうったえられて、デデデ大王もメタナイトもカービィも、のたうち回った。
「オレたちの話を聞いてくださぁぁい! 事情(じじょう)がわかれば、きっと大王様たちだってぇぇぇ……!」
「わ、わかった! わかったから、おまえはしゃべるな! 他のやつに代われ!」
「は、はいぃぃぃ!」
「オレが話します」
ウォーキーにかわって、ウィリーが申し出た。
「その前に、サーキブルを解放してやってくれよ、カービィ」
ウィリーは、すがるような目でカービィを見た。
「サーキブルだって、悪気(わるぎ)はないんだ。オレたちがこんな計画を立てたのには、理由がある。サーキブルにだって言い分があるんだよ……元のすがたにもどして、話を聞いてやってくれよ」
「……うん。わかった」
カービィは、ウィリーとウォーキーをにらんだまま、うなずいた。
「だけど、おかしなまねをしたら、またすいこんじゃうからね!」
「信用してくれ。もう、はむかう気はねえよ。オレたちに勝ち目はねぇって、わかったから」
カービィは、くるんと空中で一回転し、コピー能力をはずした。
カッターのぼうしは消えて、サーキブルのすがたに戻った。
「ふ……う……ひどい目にあったぜ! カービィ、おまえ、よくもオレの能力を利用しやがったな……!」
あたまに血が上っているサーキブルを、ウィリーがなだめた。
「落ち着いて、サーキブル。もう、抵抗(ていこう)してもむだだよ。……事情(じじょう)を話そう」
デデデ大王が、どなった。
「事情(じじょうだと!? おまえたち、オレ様に対する反乱(はんらん)をくわだてているんだろう!? パフェスキーから身代金(みのしろきん)をおどし取って、軍資金(ぐんしきん)にする気だったにちがいないー!」
「だまっていろ、デデデ大王。彼らの話を聞こう」
メタナイトが、デデデ大王を止めた。
サーキブルが言った。
「たしかに、オレたちはパフェスキー夫人を誘拐(ゆうかい)したぜ。だけど……身代金(みのしろきん)なんかほしくねえ」
「ウソをつけ!」
「ウソじゃねえ……夫人は、このどうくつの奥にいる」
「無事なのか?」
「ああ、もちろん。逃げられねえようにしばってあるけど、けがはねえ」
「なぜ、こんなことをしたんだ?」
メタナイトが、きびしい声でたずねた。
サーキブルは、しょんぼりしてこたえた。
「……友だちのためだ」
「なんだって?」
「コックカワサキを助けたかったんだ!」
思いがけない名前を聞いて、デデデ大王、メタナイト、カービィは顔を見合わせた。
「コックカワサキが、どうかしたのか?」
「あいつだけじゃねえ。パフェスキー夫人に集められた料理人たちは、みんな、ひどい目にあわされてるんだ……!」
「ひどい目だって?」
「そうさ。パフェスキー夫人は、表向きは上品ぶってるけど、本当はとてもわがままで、おっかねえヤツなんだ」
ウィリーもうなずいて、言いそえた。
「あいつは味の好みがうるさくて、シェフたちが作った料理にいちいちケチをつけるんだそうだ。だけど、シェフにはそれぞれのやり方があるから、パフェスキー夫人の言うことに反発(はんぱつ)するヤツもいる……」
「そうなったら、パフェスキー夫人はカンカンさ。さからったシェフを部屋に閉じこめて、逃げられねえようにカギをかけちまうんだ」
「えーっ!?」
カービィは、目をまるくした。
「あのお屋敷(やしき)には、そのためのかくし部屋がたくさんあるんだぜ」
「うそ……」
「うそじゃねえ。見てくれ、コックカワサキから来た手紙だ」
サーキブルは、くしゃくしゃになった一枚の紙を取り出した。
メタナイトが受け取って、文面に目を走らせた。
「なるほど……今の話のとおりだな」
「コックカワサキは、窓の格子(こうし)のすき間からその手紙を外に投げた。『サーキブルに届けてください』って書いてあったんで、ひろった人がオレに届けてくれたんだ」
「信じられないよ……あのパフェスキー夫人が、そんなことするなんて……」
カービィがつぶやくと、メタナイトが言った。
「いや、思い当たるふしがある」
「え?」
「あのパーティの料理のことだ。せっかく超一流シェフを集めておきながら、それぞれの得意料理を出さないなんて、みょうな話ではないか? ビーフステーキだって、コックカワサキのレシピじゃなかっただろう?」
デデデ大王がうなずいた。
「うむ。コックカワサキにビーフステーキを作らせないなんて、なんだか変だと思ったんだ! そういうわけだったのか」
「それに、キッチンにいたシェフは三人だけだった……」
「そうか! あいつらは、パフェスキーにさからわずに、言われたとおりの料理を作ったんだな。だから、閉じこめられずにすんだが……」
「ビクビクしてたよね、すごく! パフェスキー夫人のことをこわがってたんだ!」
デデデ大王は、怒(いか)りのあまり飛び上がってわめいた。
「パフェスキーめ! シェフをひとりじめするわ、オレ様に招待状(しょうたいじょう)を出し忘れるわ、しかもシェフたちを苦しめるわ! とんでもない極悪人(ごくあくにん)だわい!」
メタナイトが言った。
「招待状(しょうたいじょう)の件は、関係ない気がするが……」
「うるさいっ! とにかく、ゆるせん。サーキブル、ウィリー、でかしたぞ! オレ様がパフェスキーをとっちめてやるー!」
「待ちたまえ」
今にもどうくつの中に駆けこんでいきそうなデデデ大王を、メタナイトが引き止めた。
「レディに対して、暴力をふるってはいけない。パフェスキー夫人の言い分も聞いてみようではないか」
「フン! 極悪人(ごくあくにん)の言い分なんて……!」
「とにかく、案内してくれ、サーキブル」
「あ、ああ。こっちだ」
メタナイトとカービィとデデデ大王は、どうくつの中へ足をふみ入れた。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
どうくつの奥のほうから、キンキンしたわめき声が聞こえてきた。
「このロープをほどきなさーい! わたくしを、今すぐに解放しなさいってばー! さもないと、あんたたちみんな刑務所(けいむしょ)惑星(わくせい)にぶちこんで、一生出られなくしてやるからねー! かくごしろ、ばかやろーっ!」
「……パフェスキー夫人の声だな」
メタナイトが、あきれてささやいた。
カービィが、そっと答えた。
「おっかないこと言ってるねー」
「パーティの時は上品なレディだったんだが。どうやら、こちらが彼女の本当の顔らしいな」
「ずっと、あの調子です。うるさくて、耳がおかしくなりそうなんです……」
ウォーキーが言い、全員から「おまえが言うな!」とつっこまれた。
カービィたち三人は、サーキブルたちに案内されて奥へ進んだ。
しだいに明らかになってきた、事件の真相。
カービィたちは、いよいよどうくつの奥へと向かいます!
『星のカービィ あぶないグルメ屋敷!?の巻』れんさい第8回(7月1日更新予定)に続く
作:高瀬 美恵 絵:苅野 タウ 絵:ぽと
- 【定価】
- 748円(本体680円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書変形判
- 【ISBN】
- 9784046313362
大人気発売中『星のカービィ 天駆ける船と虚言の魔術師』ためし読み公開中!
『星のカービィ 天駆ける船と虚言の魔術師』購入特典もぜひチェックしてみてね☆
その他のカービィの本は以下のバナーからチェック♪
©Nintendo / HAL Laboratory, Inc. KB22-P3926