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◆第6回
メタナイトのおかげで、おいしいごちそうを食べることができた、カービィとデデデ大王。
でも、たのしいパーティで大変なことが起こってしまう!?
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
とつぜんの事件!!
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
やがて日がしずみ、おかしの庭に闇(やみ)がおりてきた。
パフェスキー夫人は、来客たちに呼びかけた。
「くらくなってまいりましたわ。でも、パーティはまだまだ続きますわよ。みなさん、どうぞ屋敷(やしき)の中にお入りください。広間で、ダンスパーティを始めましょう」
来客たちは、ぞろぞろと屋敷の中に入っていった。
「さあ、私たちも行こう」
メタナイトがうながしたが、カービィは「えー……」と不満そうに言った。
「もっと食べたいよ。ダンスなんかより、お食事のほうがいいよー!」
「そうだ、そうだ!」
デデデ大王も、ドレスの中からさんせいの声を上げた。
「ダンスなんて、ヒマ人どもにまかせておけ。オレ様はここを動かんぞ!」
「何を言ってるんだ、君たち……見たまえ」
メタナイトは、ビュッフェコーナーをゆびさした。
さっきまで料理が山盛りになっていた皿は、どれもカラっぽ。かざりのパセリまで、きれいに食べつくされていた。
「百人の客が三日かかっても食べきれないほどの量があると言われてたのに……君たちは、わずか三時間あまりで食べきってしまったのだぞ!」
メタナイトの言うとおり。
カービィとデデデ大王は、一瞬(いっしゅん)も休むことなく料理を食べ続けた。その食欲は、来客全員をふるえ上がらせたほど。
──メタナイト様の恋人は、バケモノでは!?
──胃ぶくろが、四次元につながってるんじゃないの!?
と、さんざんな言われよう。
人々は「デデビィ」を恐れて近づいてこようとしなかった。そのおかげで正体がバレなかったので、結果的には作戦成功だったかもしれない。
「とにかく、もう料理は終わりだ。というより、君たちが終わらせたんだ」
「やだよー! まだ足りないよー! おかわり、おかわり!」
「うむ! オレ様も、おなかペコペコだ!」
「どこまで食い意地(いじ)がはっているんだ、君たちは!」
メタナイトはデデデ大王の手を取り、強引に屋敷(やしき)の中へ引きずっていった。
大広間は、庭と同じように、フルーツやおかしのモチーフでかざりつけられていた。
パフェのようなシャンデリア、シフォンケーキのようなソファ、アップルパイのようなテーブル……。
あまい香りが部屋じゅうにただよい、楽団がゆうがなセレナーデをかなでている。
来客たちは、このパーティに大満足だった。
「さすが、パフェスキー夫人ですわね」
「すみずみまで、気配りが行き届いている。いやはや、見事ですわい」
みんなが絶賛(ぜっさん)している中──。
不服(ふふく)そうにしているのは、もちろんカービィとデデデ大王。
「なんだよー、あのシャンデリア! 本物のパフェかと思ったら、作り物じゃないか! インチキだー!」
「あのテーブルもな! 本物のアップルパイかと思って、かぶりつきそうになったわい」
「まぎらわしいこと、しないでほしいよね!」
「まったくだ。期待させおって……」
そのとき、楽団のかなでる音楽が、軽快(けいかい)なワルツに変わった。
パフェスキー夫人が大広間の真ん中に進み出て、言った。
「さあ、ダンスの時間ですわ。みなさま、どうぞ楽しんでくださいね」
来客たちは、それぞれのパートナーと手を取り合い、ワルツをおどり始めた。
パフェスキー夫人はメタナイトに声をかけた。
「さ、メタナイト様もどうぞ。デデビィさんといっしょに、おどってくださいな」
「……」
メタナイトは、カービィとデデデ大王を見た。
ふたりとも、ダンスなんてぜんぜん興味(きょうみ)がない。たいくつそうにフラフラしている。
ダンスの特訓(とっくん)はしたものの、成果(せいか)はなかった。あのふたりとワルツなんておどったら、たちまちボロが出てしまうに決まっている。
メタナイトは、苦しい言い訳をした。
「デデビィはダンスが苦手なのですよ。せっかくのダンスパーティですが、申し訳ない。こよいのダンスは、えんりょさせていただくことに……」
「ま、そうでしたの。でしたら……」
パフェスキー夫人は、目をかがやかせた。
「わたくしと、おどっていただけませんこと?」
「……何? 私が、ですか?」
「ええ。わたくし、ダンスが大好きですの。でも、今日はみなさまをもてなす役割(やくわり)なので、自分はおどらずにいようと思っていましたのよ。デデビィさんがおどらないなら、わたくしをパートナーにしてくださいな」
メタナイトは、ことわろうとしたが、すぐに考え直した。
ダンス中なら、だれにもジャマをされずに、小声で言葉をかわすことができる。パフェスキー夫人から話を聞くためのチャンス。
「わかりました。お相手しましょう」
「ま、うれしいですわ!」
メタナイトは、パフェスキー夫人といっしょにダンスフロアの中央に進み出た。
来客たちは、ざわめいた。
「あら、メタナイト様がダンスですって。めずらしいですわね」
「しかも、パフェスキー夫人と?」
「お相手のデデビィさんは、どうしたのかしら?」
人々はデデビィのほうを見て、ささやき合った。
「……なぜか、ソファに抱きついてますわ」
「かじりつきそうな勢いですな」
「い、今、デデビィさんの口からヨダレがたれて……」
「……見なかったことにしましょう」
人々はデデビィに背を向けて、次々にダンスフロアへ進み出ていった。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
メタナイトは、パフェスキー夫人とワルツをおどり始めた。
おどりながら、パフェスキー夫人はたずねた。
「メタナイト様、今日のお食事はいかがでした?」
「食事?……あ、ああ。すばらしかったですよ」
じつをいうと、メタナイトは、カービィとデデデ大王に食事を運ぶのにいそがしく、自分は何も食べていないのだが、しょうじきにそう言うわけにもいかない。
パフェスキー夫人は、満足そうに笑った。
「ま、そう言っていただけると、うれしいですわ! わたくし、お料理にはこだわりがありますの。おいしくない食事なんて、人生のむだ……わが家のシェフたちに、いつもそう言い聞かせてますのよ」
その言葉を聞いて、メタナイトはさっき聞いた会話を思い出した。
どういうわけか、パフェスキー夫人は、シェフたちに得意料理を作らせないらしい。
料理にこだわりがあると言っているくせに、なんだかみょうだ……何か理由があるのだろうか?
メタナイトは、遠まわしにたずねてみた。
「ところで、コックカワサキは病気なのですか?」
「……え?」
「いや、今日は彼らしい料理がひとつもなかったので、ふしぎに思ったのです。彼は、どうかしたのですか?」
パフェスキー夫人は、急にうろたえた。
ゆうがなステップをふんでいた足元が乱れ、メタナイトの足をふみつけた。
「ま、まあ! ごめんなさい。わたくしとしたことが」
「かまいませんよ。それより……」
「そ、そうそう! わたくし、メタナイト様を独占(どくせん)してしまっては、デデビィさんにうらまれてしまいますわ。ダンスはここまでにしましょう」
パフェスキー夫人は急にダンスをやめて、はなれて行ってしまった。
(どうしても、この話題をさけたいようだな。やはり、彼女は何かをかくしている……)
メタナイトはうたがいを強めながら、ダンスフロアをはなれた。
そして彼は、重大なことに気がついた。
カービィとデデデ大王のすがたが見えない。
さっきまで、シフォンケーキ形のソファにすわっていたはずなのに。
メタナイトはあせって広間を見回してみたが、どこにもふたりのすがたはなかった。
メタナイトは、近くにいた女性をつかまえて、たずねてみた。
「デデビィを見かけませんでしたか!?」
「彼女なら、さっき広間を出て行ったようですわ」
メタナイトは頭をかかえたくなった。
まだまだ食事にみれんたっぷりの、カービィとデデデ大王。何か食べ物をさがしに行ったに決まっている。
「……あのふたり……! 勝手な行動を……!」
「ふたり?」
「いや、なんでもない。失礼!」
メタナイトは、ダンスを楽しんでいる人々をかき分け、広間を飛び出した。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
さて、そのころカービィとデデデ大王は──。
広間をぬけ出して、お屋敷(やしき)のろうかをうろついていた。
目的は、もちろん、メタナイトが直感したとおり。食べ物さがしの探険(たんけん)。
「台所はどっちかなー?」
「オレ様のカンでは、この、ろうかの先にあるはずだ」
「うん、ぼくもそう思う! においでわかるよ」
「おまえとは、なかなか意見が合うな。行くぞ」
「うん!」
ぴったり呼吸(こきゅう)が合っている。まるで、昔からの大親友のように。
「それにしてもパフェスキーのやつめ、三日かかっても食べきれないなんて、大げさなことを言いおって」
「だよね! ぼくら、三時間で食べきっちゃったよ」
「ははっ! やつめ、オレ様たちの実力をなめていたな」
「ぼくたちが本気を出したら、こんなもんじゃないよね!」
「うむ! 台所を襲撃(しゅうげき)だ〜!」
食べ物のにおいをかぎつけることにかけては、ふたりとも驚異的(きょういてき)な能力をもっている。
パフェスキー夫人のお屋敷(やしき)は、めいろのように広くて複雑(ふくざつ)だったが、ふたりはまったくまよわずに台所にたどりついた。
「よし、ここだ、ここだ〜!」
「エビのサラダとローストチキンおかわり〜!」
閉ざされていた銀色のドアを、デデデ大王が体当たりでふっとばした。
そこは、真っ白なコンロや調理台をならべた、広い広いキッチン。
「ヒャホ〜!」
「おかわり、おかわり〜!」
ふたりが声を上げてなだれこむと、キッチンのすみで悲鳴が上がった。
「ひ、ひぇ〜!」
「お、おゆるしください! おゆるしください!」
「すぐに作り直しますので! どうか、おゆるしください〜!」
「……え?」
「なんだ、今の声は」
カービィとデデデ大王は、声のしたほうに近づいてみた。
調理台のかげで、三人のシェフが床にひれふし、ガタガタふるえていた。
デデデ大王がたずねた。
「きさまら、パフェスキー夫人の料理人か」
「さ、さようで……」
三人のうちでいちばん年上のシェフが顔を上げて答えた。
「三人しかいないのか? この屋敷(やしき)には、何十人もの料理人がやとわれていると聞いたんだがなあ……?」
「は……その……あなたさまは、どなたさまで?」
「オレ様の名前を知らんのか? けしからんやつだな。オレ様こそ、このプププランドの偉大(いだい)なる支配者……」
「だめだよ、名前を言っちゃ!」
カービィがあわてて止めた。
若いシェフが、ふしぎそうにつぶやいた。
「ひとりで、何をぶつぶつ言ってるんです? いや、今、顔じゃなくて胸のあたりから声がしたような……」
「気のせい、気のせい〜」
カービィがごまかした。
デデデ大王は、自分の顔がドレスにかくれていることを思い出して、だまりこんだ。
「ぼく……じゃなくて、あたしの名前はデデビィっていうの。メタナイトの友だちなんだ……ですわよ」
「はあ……では、今日のパーティにまねかれたお客様で……?」
「そうだよ〜。お料理が足りないから、食べ物をさがしにきたんだ……ですわ」
「なんと……! 料理が、足りなかった……!?」
三人のシェフは、打ちのめされたようによろめいた。
年上のシェフは、頭をかかえて「ううううう!」とうめき出した。
「しまった……量の計算をまちがえたんだ! たっぷり作ったつもりだったが、足りなかったんだー!」
「どうしよう……どうしよう……!」
「もう、おしまいだ〜!」
カービィもデデデ大王も、あっけにとられてしまった。このシェフたちのこわがりかたは、どう見てもふつうじゃない。
「ねえ、どうしたの……」
カービィがたずねようとしたときだった。
「カービィ! デデデ大王!」
けわしい声がひびいた。
キッチンに駆けこんできたのは、メタナイトだった。
メタナイトは、ふたりを思いっきりどなりつけた。
「勝手なまねをするなと、あれほど言っただろう! もう、君たちの相手はこりごりだ! さあ、帰るぞ!」
そのときメタナイトは、カービィたちの前でふるえている三人のシェフに気づいた。
「……なんだ、君たちは?」
「お、お客様、どうか……!」
シェフたちは、いのるように手を合わせてメタナイトを見た。
「このことは、奥様にはひみつに!」
「足りなかったお料理は、ただちに作り直しますので!」
「でも、もう材料が……!」
シェフたちは顔を見合わせ、またガタガタふるえ出した。
「か、買いに行くんだ、すぐに!」
「しかし、近所のお店は、ぜんぶ買いしめてしまった……」
「近くなくてもいい! 山をこえ、川をこえて今すぐ買いに行くんだー!」
メタナイトは、カービィにそっとたずねた。
「何を言ってるんだ、彼らは?」
「さあ……よくわかんない。さっきから、すごくこわがってるみたい」
「何を?」
「うーん……わかんない」
「君たちが、食べ物を出せとおどしたのではあるまいな?」
「そんなことしないよー!」
「そうする前に、こいつらがふるえ出したのだ。オレ様たちは、何もしとらん」
と、デデデ大王も口をはさんだ。
メタナイトは首をかしげながら、シェフたちに言った。
「何をおびえているのか知らないが、誤解(ごかい)だ。私たちは、敵ではな……」
そのときだった。
とつぜん、何かが爆発するような音が聞こえた。
続いて、おおぜいの人々のさけび声が。
「今の音は……!?」
「広間のほうから聞こえたよー!」
メタナイトとカービィたちは、急いでキッチンから走り出た。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
広間は大混乱だった。
さっきまで美しいワルツがかなでられていたのに、今はみんなの悲鳴がまじり合って、耳をふさぎたくなるほど。
「どうした!? 何があったんだ!」
メタナイトが大声でどなっても、その声も悲鳴にかき消されてしまう。
メタナイトはようやく、ひとりの来客をつかまえてたずねた。
「どうしたんだ! なんのさわぎだ!?」
「どこに行ってたのですか、メタナイト様……!」
男は真っ青な顔をして、今にもたおれそうだった。
「たった今、恐ろしい賊(ぞく)があらわれたんです!」
「賊(ぞく)だって?」
「はい。黒い覆面(ふくめん)で顔をかくした連中でした。そいつらが、武器をかまえてこの広間に押し入ってきて、パフェスキー夫人を……!」
「なんだって!?」
メタナイトはあたりを見回した。パフェスキー夫人のすがたはない。
「賊(ぞく)が、さらっていってしまったのです。止める間もなく!」
カービィがさけんだ。
「追いかけよう!」
「ああ。行くぞ、カービィ!」
こんな事件が起きたからには、もう正体をかくしている場合ではない。
カービィは「うん!」とこたえて、高く飛び上がった。……とたんに。
「きゃぁぁぁぁ〜!」
「で、デデビィさんのあたまが〜っ!」
「や、やっぱりバケモノっ! あの食欲は、ふつうじゃないと思ってたんだ!」
広間のさわぎが、さらに大きくなってしまった。
デデデ大王が、大きくのびをして、ドレスから顔をつき出した。
「ああー、すっきりしたわい! 肩がこった!」
「きゃぁぁぁぁ〜! デデビィさんのからだが〜!」
「……いや? よく見たら……」
「デデデ大王!?」
人々は、デデデ大王とカービィをかこんで、目をまるくした。
「デデビィって……デデデ大王とカービィだったのか!?」
「どうりで、バケモノじみてると思った……」
「どうして、こんな変装を……?」
「そんなことより!」
メタナイトが、人々の疑問(ぎもん)をさえぎった。
「賊(ぞく)がどちらに逃げたか、わかるか?」
「さあ……あの窓をつきやぶって逃げたんですが、すぐに見えなくなって……」
人々が指さすほうを見ると、天井(てんじょう)まで届く大きな窓が割(わ)られていた。
「行こう。私の飛行船で追いかけるんだ」
「うん! その前に、顔を洗ってくるよ〜! おけしょうは、もうたくさん!」
カービィはキッチンに駆けもどって顔を洗い、デデデ大王もいつもの服に着がえた。
「やれやれ! これで、やっと自由に動けるわい!」
「よーし、行くよ〜!」
張りきったカービィを先頭に、メタナイトとデデデ大王も窓から飛び出した。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
三人が飛行船に駆けよってみると──。
飛行船の近くに、何やらうごめいている影があった。
「何をしている!」
メタナイトがするどく問いかけると、あやしい影はさっと振り向いた。
黒いフードつきマントをかぶっているため、正体(しょうたい)はわからない。ふっくらと、丸みのある体つきをしている。
「何者だ!」
くせものは、答えずに逃げ出そうとした。
しかし、カービィたちの動きのほうが早かった。
「待てー!」
カービィがさけんで、くせものに飛びつく。
「顔を見せろっ!」
デデデ大王が、くせものがかぶっていた黒いマントをはぎ取った。
「わああっ」
悲鳴を上げたくせものを見て、デデデ大王は目を見はった。
「きさま……ウィリーじゃないか!」
カービィも、びっくりして、くせものを見下ろした。
ちぢこまってガタガタふるえているのは、タイヤのようなすがたをしたウィリー。プププランドの住民のひとりで、だれにも負けないスピードがじまん。
その速さを買われて、時々、デデデ大王にこき使われている。
「おまえ、誘拐団(ゆうかいだん)の一味(いちみ)だったのか……!」
デデデ大王は、はぎ取った黒い布を地面にたたきつけて、いまいましげにどなった。
「なぜ、こんなことをしたんだ? パフェスキーにうらみでもあるのか?」
「う……うらみってわけじゃ……」
「ってことは、身代金(みのしろきん)目当てだな? パフェスキーをどこに連れて行ったんだ?」
「そ、それは言えません……」
「言わないと、ぶっ飛ばすぞ!」
デデデ大王にどなりつけられて、ウィリーはすくみ上がった。デデデ大王の凶暴(きょうぼう)さは、ウィリーもよく知っている。
「わ、わかりました、言います。北の森の奥にあるどうくつ……です」
「よし行こう! メタナイト、飛行船を出せ!」
デデデ大王は、さっそく飛行船に乗りこもうとしたが、メタナイトが首を振った。
「だめだ。エンジンがこわされている」
「何!? そうか、ウィリー、きさまが細工(さいく)したんだな!?」
デデデ大王ににらまれて、ウィリーはふるえ上がった。
「ご、ごめんなさい!」
「くそっ……北の森は遠い。乗り物がなければ、行けんぞ! メタナイト、さっさとエンジンを修理(しゅうり)しろ!」
「時間がかかる」
「くっ! どうすれば……」
腹だたしげに地団駄(じだんだ)をふむデデデ大王に、カービィが言った。
「だいじょーぶ! 修理(しゅうり)はいらないよ!」
「……何?」
「ぼくにまかせて! ウィリー、協力してもらうね!」
「……え?」
「せーの!」
カービィは大きく息をすいこんだ。
「わあっ! あれ〜!」
ウィリーは、カービィにのみこまれてしまった。
「これでよし、と!」
得意(とくい)げにさけんだカービィの頭には、いつのまにか、赤いぼうしがのっていた。
気づいたメタナイトが、たずねた。
「カービィ、そのぼうしは……」
「ウィリーを吸いこんだから、『ホイール』のコピー能力が使えるようになったんだよ!」
カービィがピョンととび上がると、そのすがたが、たちまちピンク色のタイヤに変わった。
「むむむ……いまいましいが、便利な能力だわい……」
「ぼくが飛行船をひっぱるから、ふたりとも早く乗って! 北の森まで、まっしぐらだよ!」
「飛行船を引っ張るだと? バカめ、こんな重いものを、きさまひとりで……」
デデデ大王は鼻で笑ったが、メタナイトが言った。
「私はカービィの力を信じる。来たまえ、デデデ大王」
「……え? 本気か、メタナイト……」
「ああ。たのんだぞ、カービィ」
「まかせてー!」
メタナイトとデデデ大王は、飛行船に乗りこんだ。
その間に、カービィはお屋敷(やしき)に駆けもどり、倉庫(そうこ)にあったロープを持ち出してきた。
飛行船の金具(かなぐ)にロープを取りつけ、そのはじを、自分のからだにまきつける。
「えー……えーっ…………えええええーいっ!」
カービィは全力で走り出し、飛行船をひっぱった。
飛行船は、ゆるゆると動き始め、やがて加速して宙(ちゅう)にうき上がった。
「よーし! 行くよー!」
カービィは元気いっぱいにさけぶと、全速力で北に向かってころがりだした。
たのしいパーティが、とつぜん大事件の現場になってしまった!?
シェフたちがおびえている理由は?
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