地面に開いた深~い穴に落っこちてしまったデデデ大王を助けに行くため、カービィたちが穴をおりると、そこには、見たこともない地底世界が広がっていた!? 2025年12月10日発売予定の『星のカービィ 地底世界の大冒険!の巻』でくりひろげられる、カービィたちの大冒険を、どこよりも早く先行ためし読みできちゃうよ!
◆第4回
デデデ大王が開けてしまった穴をふさぐ、大工事がスタート! ……の前に、大切なのは、腹ごしらえ!? いつも通りのカービィたちのところに、初めて会う地下の住民がやってきて……?
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ないしょの友だち
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「おいしー! やっぱり、コックカワサキのおにぎり、さいこー!」
カービィは、大きく口をあけて、たらこおにぎりとツナマヨおにぎりと梅おかかおにぎりを、次々に放りこんだ。
三人は、穴の中に足場を作った。いよいよ作業を始める――予定だったが、カービィがさっそく、お弁当を広げてしまったのだ。
バンダナワドルディが、あきれて言った。
「カービィ、お弁当よりも、工事が先だよ。早くやろうよ」
「わかってる! このたまごサンドを食べたら、すぐに……」
と、そのとき。
下のほうから、声が聞こえてきた。
「やっほー、地上のみんな。ボク、お手伝いに来たよ」
三人はおどろいて、下を見た。
ディグーだ。小さなカンテラを手にしている。
彼は足場のはしごを伝って、するすると三人のところまで登ってきた。
バンダナワドルディが言った。
「ディグー! どうして!?」
「お手伝いだよ。君たちは、地下の作業になれてないでしょ。ボクは、土を掘るのも運ぶのも、とくいだからね」
ものしりワドルディが言った。
「でも、村長さんにしかられるんじゃないですか? たしか、反省文がどうとか言ってましたが……」
ディグーは、フフンと笑って言った。
「見つからなきゃ平気だよ。村長さんは、頭が固いんだ」
「だいじょうぶ……ですか?」
「うん。ボク、村長さんに言われて、ずっと反省文を書かされててさ……もう、あきあきだよ!」
そう言ったとたん、ディグーのおなかが、グーッと鳴った。
ディグーは、はずかしそうに言った。
「反省文にかかりっきりで、食事するひまもなくてね……えへへ!」
カービィが、手にしていたサンドイッチを差し出した。
「これ、食べて! すごくおいしいよ」
「……え?」
ディグーは、めんくらいながら、受け取った。
「これ……食べものなの? こんなの、見たことないや」
「たまごサンドイッチだよ。すっごく、おいしいんだ!」
「地上の食べもの? わあ……ボク、食べられるかなあ?」
ディグーは、おっかなびっくり、たまごサンドイッチをかじった。
とたんに。
ディグーの目が、今までにないくらいかがやいた。
「んぎゃ! お、お、おいし――!」
ディグーはハッとして、口をおさえた。
「いっけない。村長さんに聞こえたら、また、しかられちゃう!」
四人は緊張して様子をうかがったが、モーリィが駆けつけてくる気配はなかった。
四人は顔を見合わせ、なんだかおかしくなって、同時に笑った。
ディグーは、にこにこしながら言った。
「どうもありがとう! 本当においしいね。こんなにおいしい食べものがあるなんて、やっぱり、地上はすてきな場所なんだね」
カービィが、大きくうなずいた。
「うん! コックカワサキのレストランは、宇宙でいちばんすてきな場所なんだよ。ディグーも、おいでよ!」
すると、ディグーは、がっかりした様子で頭を振った。
「ボクは、地上には出られないんだ。日の光が、まぶしすぎるからね」
「そうなの?」
「うん。何度か、顔を出そうとしてみたんだけど、光がこわくてね。ボクには、耐えられそうにないんだ」
ディグーは、くやしそうに続けた。
「でも、地上には、ボクが見たことのないきれいなものが、たくさんあふれてるでしょ? だから、すごくあこがれてるんだよ。君たち、ボクに、地上のことをたくさん教えてくれないかなあ?」
「いいよ! なにがききたいの?」
カービィが言うと、ディグーは目をキラキラさせて言った。
「なんでも! さっきみたいな、おいしい食べもののこととか、きれいな景色のこととか、うっとりするような音のこととか。なんでも、聞きたいんだ」
「わかった、ぜんぶ話してあげるね。ぼくが好きな食べものはね!」
カービィが張り切って話そうとするのを、バンダナワドルディが止めた。
「カービィ、まずは作業だよ。穴をふさぐ工事をしながら、お話ししよう」
「あ、そうだった!」
四人は工事道具を手にして、楽しくおしゃべりをしながら、穴をふさぐ作業に取りかかった。
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コックカワサキのおいしいレストランのこと、ウィスピーウッズが実らせるフルーツのこと、みんなでお弁当を食べるみどりの丘のこと、高い空から聞こえてくる鳥の歌のこと、まっさおな空に浮かぶ雲のこと、雨上がりの空にかかる虹のこと……。
カービィたちが語る地上の話に、ディグーはうっとりして聞き入った。
「わぁ……やっぱり、すごいなぁ。地上に、行ってみたいなぁ……」
ディグーは目を閉じた。閉じた目の中に、明るい地上の風景を思い描いているようだ。
カービィが言った。
「村長さんみたいな、サングラスをかければいいんじゃないかな? そうすれば、ディグーだって、地上に出てこられるよ」
「うーん。でも、それだと、きれいな風景は見られないんだよね。ボク、カービィたちが見てるような、青い空や虹を見てみたいんだけど……」
ディグーは、残念そうなため息をついた。
ものしりワドルディが言った。
「――ディグーさん。一つ、気にかかっているのですが」
「え? なぁに?」
「反省文を書かされているということでしたよね。なにについての反省文なのですか?」
「ああ、それはね……」
ディグーは、つまらなそうに言った。
「ボクが、たびたび、村から脱走しようとするからなんだ」
「……脱走!?」
「うん。ボクらの村には、住民が外に出られないように、柵が張りめぐらされているんだよ。でも、ボクはどうしても出たくて……これまでに六回、脱走作戦を決行してるんだ」
「六回も!」
カービィが、目をまるくした。
「今までは、柵のカギをハリガネでうまく開けて、ぬけ出してたんだ。でも村長さんが、どんどん、がんじょうなカギをかけるようになって、ハリガネじゃ開かなくなっちゃった。それで、ボク、柵をこじ開けようとして、こわしちゃったんだよ。村長さんはカンカンになって、反省文を書けって言い出したんだ」
バンダナワドルディが、ふしぎそうに言った。
「でも、ディグーは、おひさまの光がこわいんだよね? 地上には、出られないんじゃなかった?」
「あ、ちがう、ちがう。ボクが行きたいのは、地上じゃないんだ。逆だよ。ボク、地底に行くために、村をぬけ出そうとしてるんだ」
「……え? 地底?」
カービィたちは、きょとんとした。
ディグーは言った。
「ボクらの村を出ると、地底へと続く、長い長い下り坂があるんだ。ボクらの村に伝わってる伝説によると、その下り坂の終点には、光を振りまく木と、命が宿る石にいろどられた、とってもきれいな森があるんだって!」
「森? 地底に……?」
「うん。ボクは、地上には出られないけど、地底の森のきれいな景色なら見られるかもしれない。それに、その森には、とろけるようにあまくておいしい、神聖なフルーツが実っているって言われてるんだ。ボク、それを食べてみたいんだよ」
「フルーツ!?」
カービィが、目をかがやかせて、飛び上がった。
「うわぁ、食べたい、ぼくも食べたい! 行こうよ、ディグー! 今すぐ、その森へ!」
カービィは、今にも足場から飛び下りそう。
バンダナワドルディがカービィをつかまえて、言った。
「でも、柵まで作って、外に出ることを禁止してるってことは、なにか理由があるんでしょ? 森に近づいちゃいけない理由が」
「……まあね」
ディグーは、つまらなそうに、鼻をピクピクさせた。
「地底には、おそろしい化けものがいるって、村長さんは言ってるんだ」
「え!? 化けもの!?」
「ボクは、村長さんの作り話だと思ってるけどね」
ディグーは、力をこめて続けた。
「これまでに、たくさんの住民や冒険者たちが、地底をめざしたんだって。ふしぎな森とフルーツの伝説を信じてね。でも、帰ってきた者はいない。それで、地底にはおそろしい化けものがいるって考えられているんだよ」
バンダナワドルディが、心配そうに言った。
「だれも帰ってこない? それじゃ、やっぱり、危険な化けものがいるんじゃないの? 柵の外に出ちゃいけないって言われるのも、しかたない気がするけど……」
「ちがうね!」
ディグーは、自信ありげに頭を振った。
「地底の森があまりにすばらしすぎて、みんな、そこで幸せに暮らしてるんだよ。だから、帰ってこないんだ」
「……そうかなあ……?」
「だけど、そんなことがわかったら、村民がみんな地底にひっこしちゃうじゃない? 村長さんは、それじゃ困るから、化けものの話をでっち上げて、みんなをこわがらせてるんだ。ボク、そう思う」
「ぼくも、ディグーにさんせい!」
カービィが言った。
「ほんと? うれしいな。ありがとう、カービィ」
ディグーはニコニコしたが、ものしりワドルディが、冷静に言った。
「カービィさんは、フルーツのことで頭がいっぱいで、とにかく地底に行きたいだけなのです。ぼくは、村長さんの考えにも一理あると思いますが」
カービィが言い返した。
「もし、ほんとに化けものがいても、へーきだもんね! ぼくが、ササッとやっつけちゃうから!」
ディグーは笑い出した。
「あはは、カービィは小さいのに、勇気があるんだなあ。えらいぞー!」
「…………あの、ディグー……」
バンダナワドルディが、ひかえ目に口をはさんだ。
ディグーが、カービィのことを、本当に小さくてかわいいだけの子だと思っているらしいので、さりげなく訂正しようと思ったのだ。
けれど、カービィが飛び上がって、ディグーの手を強く引っぱった。
「うん、ぼく、勇気あるよー! だから行こう。今すぐ行こうよ。早く、早く!」
バンダナワドルディは、あわてて言った。
「ダメダメ、カービィ! その前に、修理だよ。とにかく早く穴をふさいで、デデデ大王様を助けなくちゃ」
「あ、そうだった。がんばろう!」
カービィは、おにぎりをポイポイと口に放りこんで、作業にもどった。
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ところが――一日じゅうはたらいても、穴はなかなかふさがらなかった。
四人とも、ヘトヘトだ。バンダナワドルディが、汗をふきながら言った。
「ふぅ、みんな、お疲れさま。今日は、ここまでにしよう。残りは、明日」
カービィが言った。
「早く帰って、コックカワサキのお店に行こうよ。ぼく、たくさんはたらいて、おなかペコペコ!」
ディグーが、おどろいて言った。
「カービィ、もう、おなかがすいたの? あんなにたくさん食べたのに?」
ものしりワドルディが、大まじめに言った。
「あのくらいのおにぎりやサンドイッチでは、カービィさんにとっては、ぜんぜん『たくさん』ではありません。カービィさんは、宇宙一の食いしん坊なのです」
カービィは、すばやく言い返した。
「えー!? ぼく、ちっとも食いしん坊じゃないよ。みんなより、ちょっと、おなかがへりやすいだけだよ」
ディグーは、おかしくなって、吹き出した。
「すごいなあ、カービィは! ほんとに、食べることが大好きなんだね」
カービィは、にこにこして、うなずいた。
「うん! だって、プププランドには、おいしいものがたくさんあるんだもん。コックカワサキのお店のハンバーグとか、チャーハンとか、焼きそばとか、おでんとか、コロッケとか、カレーライスとか、クリームあんみつとか……!」
話しているうちに、ますます、おなかがすいてきた。カービィは、顔を上げて叫んだ。
「うわあ、おなかぺこぺこー! 早く帰ろうよ、ワドルディ!」
「ううん、その前に、村長さんの家に行かなくちゃ。大王様、もう気がついたかもしれないし」
四人は、足場を下りた。
ディグーが言った。
「それじゃ、ボクは自分の家にもどるね。村長さんには、ボクが君たちのお手伝いをしたってこと、言わないでね」
バンダナワドルディは、うなずいた。
「もちろん、ないしょにしておくよ。今日はありがとう、ディグー。またね」
「またねー!」
カービィも、手を振った。
ディグーは手を振り返して、自分の家へともどっていった。
地下の村で、新しい友だちができたカービィたち。
さて、村長さんの家で、デデデ大王は、いったいどうしているでしょうか……?
次回『地下世界のごちそうディナー』をお楽しみに! (12月12日公開予定)
『星のカービィ 地底世界の大冒険!の巻』は2025年12月10日発売予定!
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