地面に開いた深~い穴に落っこちてしまったデデデ大王を助けに行くため、カービィたちが穴をおりると、そこには、見たこともない地底世界が広がっていた!? 2025年12月10日発売予定の『星のカービィ 地底世界の大冒険!の巻』でくりひろげられる、カービィたちの大冒険を、どこよりも早く先行ためし読みできちゃうよ!
◆第5回
一日目の作業を終え、村長さんの家へ向かったカービィたち。ロープでぐるぐる巻きになって気絶していたデデデ大王は、いったい、どうしているでしょうか……?
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
地下世界のごちそうディナー
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
三人は、モーリィの家へ向かった。
「ただいま、モーリィさん! 今日の作業、終わりました。でも、まだ穴がふさがりきらなくて……」
声をかけると、家の奥から返事があった。
「おう、おまえらか! ご苦労、ご苦労! 中へ入れ」
上きげんな声だ。
バンダナワドルディは、とまどって言った。
「……なんだか、ごきげんだね。穴はまだふさがってないって言ったのに。なにかあったのかな?」
「行ってみましょう」
三人は、家の奥へと進んでみた。
そこは、ダイニングルームだった。
テーブルの上に、何枚もの皿が並べられ、料理が山盛りになっている。
そして、料理を前にしたモーリィとデデデ大王が、まるで親友同士のように、笑い合っていた。
「どうだ、デデデ大王? オレの奥さんの料理は、うまいだろう?」
「うまいなんてもんじゃないわい! あんたの奥さんは、天才だ!」
「うわははははは! いいぞ、もっと食え! あんたの食いっぷりは、気持ちがいい!」
そんな二人に、ミセス・モーリィが次々に料理を運んでいる。
「うれしいわ、こんなによろこんでもらえて。デデデ大王さん、このポテトフライを、召し上がりません?」
「食う、食う! もちろん食うぞー!」
バンダナワドルディは、ドアのところで立ちすくみ、あぜんとして言った。
「だ、大王様……モーリィさん……いったい、なにが……?」
モーリィが、豪快な笑顔で言った。
「よう、おまえら! ご苦労だったな。まあ、すわれ。おまえらも、オレの奥さんの最高の料理を味わうといいぞ!」
「モーリィさん……あの……天井の穴は、まだふさがっていないのですが……」
バンダナワドルディがおずおずと言うと、モーリィは手を振った。
「いいって、いいって。そんなこと、気にすんな。オレは、このデデデ大王というヤツが、気に入ったんだ。こんなに気持ちのいい食いっぷりを見るのは、初めてだからな!」
ミセス・モーリィが、ニコニコして言った。
「デデデ大王さんが、目ざめたとたんに、おなかがすいたって言うものだから、あたくしのお料理を差し上げたの。そうしたら、すごいいきおいで、パクパクと平らげてくれて。それで、あたくしたち、とてもうれしくなってしまったのよ」
「な、なるほど……」
奥さんを深く愛しているモーリィは、ミセス・モーリィの料理に夢中なデデデ大王を、すっかり気に入ってしまったらしい。
カービィが飛び上がって叫んだ。
「わあ、おいしそう! ぼくも食べたいよー! おなか、ペコペコだよー!」
「ええ、もちろん、あなたたちの分もありますよ。さあ、どうぞ席について!」
「わーい! いっただきまーす!」
大きく口をあけたカービィを、バンダナワドルディが全力で止めた。
「ダメー! カービィ、吸いこんじゃダメだよ! 村長さんの家なんだからね。お行儀よく食べるんだよ」
「あ、そうだよね。お行儀よく、いただきまーす!」
カービィはイスにすわり、フォークとナイフを手に取った。
ものしりワドルディが、メガネをクイッと押し上げて言った。
「地下のみなさんの食事は、興味深いですね。どんな食材がとれるのですか?」
ミセス・モーリィが答えた。
「いろんなものが、とれるわよ。赤いおイモでしょ、青いおイモでしょ、みどり色のおイモでしょ、黄色いおイモでしょ」
「……おイモばっかりですね」
「ゴボウやニンジンもあるけど、主食はおイモなの。でも、みんな味がちがうし、おいしいのよ。このあたりの土は、栄養たっぷりだから、おイモや根菜がすくすく育つの」
ものしりワドルディは深くうなずき、小声でつぶやいた。
「土の養分……なるほど、納得です。そのおかげで、地底の森でも、フルーツが実るんですね……」
とたんに、今まで上きげんだったモーリィが表情を変え、ものしりワドルディをにらみつけた。
「今、なんと言った? おまえ、どうして地底の森やフルーツのことを知ってるんだ?」
「え? あっ……!」
ものしりワドルディは、考えごとに夢中になると、ひとりごとを言ってしまうくせがある。よけいなことを口走ったと気づいて、赤くなった。
モーリィは、こわい表情でつめよった。
「さては、ディグーから聞いたんだな? あいつには近づかないでくれと言ったのに!」
バンダナワドルディが、あわててあやまった。
「ご、ごめんなさい! ぼくら、ディグーと仲良くなれて、楽しくて……」
「よけいなことを! これだから、地上のヤツらは!」
モーリィは、カリカリしている。
カービィが、おイモ料理をパクパク食べながら、たずねた。
「どうして、ディグーとなかよくしちゃいけないの? ぼく、ディグーとお話ししてると、すごく楽しいのに。村長さんは、ディグーのこと、きらいなの?」
「……フン! 地上のヤツらには関係ない!」
モーリィは強情な態度で、そっぽを向いた。
ミセス・モーリィが、やさしく言った。
「そんなことないわ。ただ、あたくしたちは、ディグーが心配なの」
「……しんぱい?」
「ええ。あの子は、好奇心がとても強くてね。地上のあなたたちと仲良くなったら、ますます好奇心を刺激されて、危険な場所に飛び出して行ってしまうかもしれない。ただでさえ、地底の森に行きたがって、何度もさわぎを起こしているというのに」
デデデ大王が、食べる手を止めて、たずねた。
「さっきから、なんの話をしてるんだ? 森とかディグーとか、さっぱりわからんぞ。オレ様にもわかるように説明しろ」
「あら、ごめんなさいね」
ミセス・モーリィは、ディグーのことや、彼が見たがっている地底の森や、そこにいるらしい化けものや、伝説のフルーツのことを話した。
まったく興味なさそうに聞き流していたデデデ大王だが、「フルーツ」と聞いたとたんに、目の色を変えて叫んだ。
「フルーツだとー!? それは聞き捨てならん! 食いに行くぞー! 今すぐ!」
今にも駆け出しそうなデデデ大王を、モーリィがどなりつけた。
「ダメだ! 話を聞いてなかったのか? 森には、おそろしい化けものがいるんだぞ!」
デデデ大王は、笑い飛ばした。
「フハハ! 化けものなんぞ、オレ様が一撃で退治してやるわい。いいから、そこをどけ!」
「ダメだったら、ダメだ!」
モーリィは、力ずくでも止めようとするように、両手を広げた。
「今までに、何人ものおろか者が、あんたみたいなことを言って出て行ったんだ。だが、帰ってきた者は一人もいないんだぞ!」
バンダナワドルディが、おそるおそる言った。
「ひょっとしたら、地底が居心地よくて、帰ってきたくなくなった……とか?」
「ディグーがそう言ったんだな?」
モーリィににらまれて、バンダナワドルディはちぢこまった。
「ディグーは、どうしても地底に行きたいもんだから、そんな空想をしてるのさ。だがな、化けものはたしかに実在している。先々々代の村長……つまり、オレのひいじいさんから聞いた、遠い昔の話になるんだがな……化けものを見たという若者がいたそうだ」
「……え?」
バンダナワドルディは、息をのんだ。
ものしりワドルディが、真剣な声で言った。
「化けものの目撃者、ですか。それは、おかしいのでは? 地底に向かった者は、だれ一人として、帰って来なかったという話でしたが」
「実は、ただ一人だけ、逃げおおせたヤツがいたのさ。この村の住民で、好奇心たくましい、やんちゃな若者だったそうだ。ちょうど、今のディグーみたいなヤツだったんだろうな。自信まんまんで出て行った彼は……息も絶え絶え、変わり果てた姿になって、もどってきたそうだ。からだじゅうの栄養を吸い取られてしまったかのように、シワシワにひからびて……」
モーリィは、つらそうに、表情をゆがめた。
「彼は、力を振りしぼって、言い残したんだ。『地底には、最悪の化けものがいます。ぜったい、だれも近づけないで』とな。それを聞いたひいじいさんは、村を守るための柵を作った。オレは、ひいじいさんから受け継いだ柵を、大事に守り続けてるってわけさ」
バンダナワドルディが、まっさおになって言った。
「そ……それじゃ……本当に、化けものは、いるんですね。作り話なんかじゃなく……」
モーリィは怒り出した。
「当たり前だろうが! オレのひいじいさんが、作り話なんか、するもんか! だが、ディグーめ、ぜんぶ、でっち上げだと思っている。どうしようもないヤツだ!」
カービィが叫んだ。
「ぼくが行くよ。化けものなんて、パパっとやっつけちゃう!」
「ダメだ」
「でも、ぼくなら……」
「ダメだと言ったらダメだ! オレは、ひいじいさんの真剣な表情がわすれられない。地底には、たしかに、おそろしい化けものがいるんだ。オレは、もう、一人の犠牲者も出したくない!」
モーリィは、きっぱりと言った。
なにを言っても、彼の決意をゆるがせることは、できそうになかった。
重苦しくなりかけた空気を救うように、ミセス・モーリィが笑顔で言った。
「それじゃ、そろそろ、デザートにしましょうか。あたくし、お菓子作りが大好きなの。地底のフルーツにも負けないくらいおいしいデザートを、たくさん作ったのよ。おイモのパイと、おイモのタルトと、おイモのアイスクリームと、おイモのシェイクよ」
たちまち、カービィは目をかがやかせた。
「うわあ、おいしそう! ぼく、おイモ大好き! 食べたい、食べたーい!」
デデデ大王も、コロッと気を取り直して叫んだ。
「うむ、楽しみだ! まだまだ食うぞー!」
「はーい、たっぷり召し上がれ」
ミセス・モーリィが次々にデザートを運んできた。
カービィもデデデ大王も、伝説のフルーツのことはとりあえずわすれて、おイモづくしのディナーを楽しんだのだった。
たくさん働いたあとの、おいしいディナーは最高! 明日の作業もはかどりそうです。そういえば、戦艦ハルバードの中枢部の鉱石を探しに行ったメタナイトは、どこに行ったのでしょうか……?
メタナイトがどうしているのか、そしてカービィたちの本格的な地底の大冒険は、ぜひ、好評発売中のつばさ文庫『星のカービィ 地底世界の大冒険!の巻』で楽しんでね!
『星のカービィ 地底世界の大冒険!の巻』は好評発売中!
つばさ文庫「星のカービィ」10周年スペシャルページの公開は、2025年12月31日まで! ぜひチェックしてね!
最新『星のカービィ ワドルディのおるすばん大決戦!!』好評発売中!ためし読みも公開中だよ♪
『星のカービィ 早撃ち勝負で大決闘!』好評発売中!ためし読みも公開中だよ♪
大人気発売中『星のカービィ 天駆ける船と虚言の魔術師』もためし読み公開中!
作:高瀬 美恵 絵:苅野 タウ 絵:ぽと
- 【定価】
- 1,320円(本体1,200円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- B6判
- 【ISBN】
- 9784041116197
その他のカービィの本は以下のバナーからチェック♪
© Nintendo / HAL Laboratory, Inc.