
◆第4回
ポップスターじゅうに散らばってしまった、空飛ぶ船ローアのパーツのひとつ「オール」を見つけることができたカービィたちは、ローアでまつマホロアのところへ!
そして、あらたなパーツ探しの旅が始まります!
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
冒険の始まり 前編
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
「ウワァ! もう見つけてくれたノ? スゴイ、スゴイヨォ!」
運ばれてきたオールを見たマホロアは、興奮(こうふん)して飛び回った。
「エナジースフィアも、タクサン集まったネ! ミンナのオカゲだヨォ!」
「他のパーツは、遠くに落ちたらしいのだ」
デデデ大王が言った。
「オレ様たちが必ず見つけてきてやるから、おまえはここでまっていろ」
「ウン! ローアをシュウリしながらまってるネ。ミンナ、このチョーシでがんばって!」
マホロアは、パタパタと手をたたいた。
メタナイトが言った。
「ウィスピーウッズからの情報によれば、一つは東の遺跡(いせき)、もう一つは南の海に落ちたということだったな。ここは、手分けして探そう。私は……」
「遺跡(いせき)を探せ! オレ様は海へ行くぞ!」
デデデ大王が、すばやくさけんだ。
何を考えているかは、聞かなくても明らかだ。バカンスに出かけるかのように、目をキラキラさせている。
メタナイトは、ため息まじりに言った。
「了解(りょうかい)した。私とカービィは遺跡(いせき)を探す。君とワドルディは、海を頼む」
「ああ、オレ様にまかせておけ! ワドルディ、さっそく、準備だ! 水着と浮き輪とサングラスとパラソルを用意しろ!」
「は、はい……」
バンダナワドルディは、困り顔でうなずいた。
四人は、二手(ふたて)に分かれて出発した。
カービィとメタナイトが向かったのは、プププランドの東にある遺跡(いせき)地方。
ポップスターは広大で、カービィがおとずれたことのない場所が、まだまだたくさんある。遺跡(いせき)地方も、その一つだった。
砂におおわれた大地に、石材を組んで造られた建物がいくつも並んでいる。荘厳(そうごん)なながめだ。
初めて遺跡(いせき)を目にして、カービィは「うわああ!」と大声を上げた。
「りっぱな建物だなあ。デデデ城より、かっこいいよ!」
「この遺跡(いせき)は、レーズンルインズと呼ばれている」
メタナイトが重々しく解説しようとしたが、カービィはサッと目の色を変えて食いついた。
「レーズン!? レーズンの遺跡(いせき)なの!? ぼく、大好き! おいしいよね! 前に、ワドルディが作ってくれたんだ、レーズン入りのクッキー! あと、レーズンバターもおいしいし、レーズンとくるみ入りのパンも最高だし、あと、あと……!」
「レーズンルインズは、ただの名前だ。食べ物とは関係ない」
今にもよだれをたらしそうなカービィを、メタナイトは冷たくさえぎって、説明を続けた。
「はるかな昔は、神殿としてさかえていたらしいが、今ではこの通り、すっかりさびれている。この遺跡(いせき)のどこかに、ローアのパーツが落ちたということだが……」
カービィはきょろきょろとあたりを見回し、うれしそうな大声を上げた。
「あ! あそこに、だれかいるよ。この遺跡(いせき)の住民だね。パーツのこと、聞いてみようよ!」
「住民……? そんなはずが……待て、カービィ!」
この遺跡は、誰も住んでいない廃墟(はいきょ)だったはずだ。
メタナイトはあわてて止めようとしたが、カービィは聞いていない。元気に飛びはねて行き、声を張り上げた。
「こんにちは! ぼく、カービィっていうんだ。聞きたいことがあるんだけど……」
「……あん?」
答えたのは、大きな頭にしましまもようのしっぽを生やした、目つきの悪い生き物だった。
じろじろと、あやしむようにカービィを見ている。しかしカービィは少しも気にせず、笑顔でたずねた。
「ぼくら、船のパーツを探してるんだ」
「……パーツ?」
「うん。数日前に、空から船が降ってきたの、知ってる? その船のパーツが、このあたりに落ちたらしくて……」
すると、そいつはとつぜん、敵意をむき出しにしてさけんだ。
「空から降ってきた船……だって? おまえら、まさか、あの神聖なつばさを奪(うば)いに来たっていうのか!? あれは、オレたちのお宝だぞ!」
カービィは、目をぱちぱちさせて言った。
「お宝……? う、ううん、ぼくらが探してるのは、ローアっていう船の……」
「渡すもんか! おーい、だれか来てくれ! 敵の襲撃(しゅうげき)だぁ!」
すると、岩の向こうからひょっこりと、丸っこい影が現れた。
水色の、小さなドラゴンのような姿をしている。そいつは、ねむそうな声で言った。
「ふぁぁ……何をさわいでるんだい、ウィッピィ?」
「お、いいところに来てくれたぜ、ウォーターガルボ! こいつら、神聖なつばさをねらってるんだ。追い返すぜ!」
「ううーん? そりゃあ、こらしめないとねえ……!」
水色の小さなドラゴンは、いきなり攻撃をしかけてきた。
カッと口を開いて、水の弾丸――ウォーター弾(だん)をはき出したのだ。
「わわっ!?」
カービィは、びっくりして飛びのいた。
「やめてよ! ぼくら、けんかしに来たんじゃないよ。ただ、船のパーツを探してるだけで……」
カービィは逃げようとしたが、ウィッピィがしましまのしっぽを振り上げて、おそいかかってきた。
「渡すわけにはいかないぜ! 神聖なつばさは、オレたちのものだ!」
しっぽがムチのようにしなり、カービィをねらう。
「わあああああ!」
カービィはうろたえ、ひっくり返りそうになった。
そこへ、メタナイトが剣を抜いて飛びこんできた。
するどい切っ先が、ウィッピィのしっぽに斬(き)りかかる。
「ひゃああああ!」
ウィッピィは悲鳴を上げて、飛びのいた。
メタナイトは、剣を低くかまえて、つぶやいた。
「戦闘は望まないが、そちらが戦う気なら、やむをえまい。行くぞ!」
望まないという割に、メタナイトの闘志(とうし)は早くも全開。気迫(きはく)をみなぎらせて、敵に斬(き)りかかってゆく。
ウィッピィもウォーターガルボも、たじたじとなった。
「や、やばいぜ。ミスター・ダウター様に知らせないと!」
「行こう!」
二人は背を向けて、逃げ出した。
メタナイトは、とっさに叫(さけ)んだ。
「カービィ、二人を止めるのだ! 援軍(えんぐん)を呼ばれたら、まずい!」
「わかった! 行くぞー!」
カービィは両手を広げ、思いっきり息を吸いこんだ。
おとくいの「すいこみ」だ。
たちまち、ウィッピィが宙(ちゅう)を飛んだ。
「わわわわ!? 何をするんだ――!?」
ウィッピィは、カービィの口の中へ吸いこまれてしまった。
とたんに、カービィの姿が変化した。
頭には、赤いカウボーイハット。右手には、長いムチ。
カービィはくるっと回って、ムチを振り上げた。
「やったぁ! ウィップのコピー能力だよ!」
しかし、そのすきに、ウォーターガルボのほうは、遺跡(いせき)の建物の中へ駆けこんでしまった。
メタナイトが言った。
「やれやれ。遺跡の中でも、戦闘はさけられそうにないな。気を引きしめて行こう、カービィ」
「うん!」
カービィはうなずいた。
「この遺跡(いせき)の住民は、けんかっ早いね。急におそいかかってくるなんて、ひどいや」
「違うぞ、カービィ」
メタナイトは、歩き出しながら言った。
「やつらは、住民ではない」
「え? でも……」
「遺跡(いせき)に住民はいない。今の連中は、この遺跡(いせき)を根城にして暴れ回っている、ならず者の一味(いちみ)だ」
「ならず者……?」
「うむ」
メタナイトは、前方にそびえ立つ遺跡(いせき)を見上げた。
巨石(きょせき)を階段(かいだん)状に積み上げた、天をつくような建築物だ。
「見ての通り、この遺跡(いせき)は、要塞(ようさい)のようにがんじょうで大きい。ここに住み着いて、旅人をおそう乱暴者の集団がいると、うわさに聞いたことがある」
「ふぅん。悪いやつらなんだね。だから、ぼくの話をちっとも聞いてくれなかったんだ」
「いや、それも違う。むしろ、君の話をちゃんと聞いたからこそ、敵意を向けてきたのだ」
「そうなの? どういうこと?」
「やつら、『神聖なつばさ』とくちばしっていただろう。それは、きっと、空から落ちてきたローアのウイングのことだと思う」
「ウイング……」
「マホロアが言っていただろう。ローアには、左右二枚のウイングがあるのだ。そのうちの一枚が、このあたりに落下した。それを見つけたならず者どもが、貴重(きちょう)な宝物と信じこんで、守っているのだろう」
「そっか……じゃあ、ぼくらのことを、宝物をうばいに来た敵だと思ってるんだね」
「ああ。話が通じる相手ではなさそうだ。遺跡(いせき)の中では、さっきの連中よりももっとてごわい相手が待ちかまえているはずだ。ゆだんするなよ」
「わかった!」
カービィは、ムチをにぎった手を元気よく突き上げた。
ローアのふたつめのパーツ「ウイング」のありかが判明(はんめい)!
カービィとメタナイトは、遺跡(いせき)の中へと、足をふみいれます……!
『星のカービィ 天駆ける船と虚言の魔術師』れんさい第5回(4月22日更新予定)に続く
『星のカービィ 天駆ける船と虚言の魔術師』は4月27日(水)発売予定!
購入特典もあるからぜひチェックしてみてね☆
書籍情報
あくびが出るほど平和な、プププランドの昼下がり。
ショートケーキを持って仲良くピクニックをしようとしていたカービィ、デデデ大王、バンダナワドルディそしてメタナイトの目の前で、晴れた青い空を切り裂いて、突如、巨大な船が落ちてきた。
ふしぎな光につつまれた、その船の名は――ローア。
すでに滅びた超古代文明ハルカンドラが生み出した、奇跡の船。
カービィたちは、船の持ち主だという旅人マホロアに助けを求められ、墜落とともに失われてしまった、船のパーツを探すことになった。
遺跡や海の底に雪の中…そして異空間をかけめぐる、大冒険が始まる!
【解説:熊崎信也「星のカービィ」シリーズ ゼネラルディレクター】
その他のカービィの本は以下のバナーからチェック♪
©Nintendo / HAL Laboratory, Inc. KB22-P3926