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◆第5回
ローアのふたつめのパーツを取りもどすために、レーズンルインズの遺跡(いせき)へとふみこんだカービィとメタナイト。
そこで、ふたりを出むかえたものとは……!?
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冒険の始まり 後編
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はるかな昔、この地にさかえていた文明のあと、レーズンルインズ。
カービィとメタナイトは、足音をしのばせて、遺跡(いせき)の中を慎重(しんちょう)に進んで行った。
外からは、まったくすきまなく石材が組まれているように見えたが、ちゃんと明かり取りの窓があるらしい。どこからか光が差しこんでくるので、周囲(しゅうい)の様子がよく見えた。
石のかべに、ふしぎな絵や記号のようなものが刻(きざ)まれている。メタナイトは、興味(きょうみ)深げに見入ってしまって、なかなか足が進まない。
カービィは、古代の文明などにはまったく興味(きょうみ)がない。メタナイトをおいて、とことこと先へ進んで行った。
「ずーっと奥(おく)まで続いてるよ。奥のほうは、坂道になってるみたい。地下へ続いてるのかな。こんな大きな建物、むかしのひとは何に使ってたんだろう? ゆうえんちかな?」
メタナイトは、古代文字のかべからはなれて、カービィを追った。
「一人で先に行くな、カービィ。敵が待ちかまえているのだぞ。ゆだんするな」
「わかってる……」
カービィが足を止めて振り返ったとき、遺跡(いせき)の天井(てんじょう)で、何かが動いた。
「あぶない、メタナイト!」
天井から急降下し、するどいキバを立ててメタナイトにおそいかかったのは、影にひそんでえものをねらう小さな狩人――バブット!
メタナイトはハッとした。
しかし、彼が剣を抜くより早く、カービィが攻撃をくり出していた。
「キャプチャーウィップ!」
手にしたムチが、宙(ちゅう)におどる。
ムチは正確にバブットをからめとり、引き寄せた。
「ギャ!?」
バブットは悲鳴を上げ、逃げ出そうとした。
その勢いに引きずられそうになり、カービィは急いでムチを振り上げた。
「えーい! フロントたたきつけ!」
地面にたたきつけると、バブットは目を回して、おとなしくなった。
「ふぅ! あぶなかった!」
カービィがムチをおさめると、メタナイトは、少々気まずそうに言った。
「助かった。ゆだんするなと言いながら、すきをみせてしまったのは私のほうだったな」
「ぼくがいると、たよりになるでしょ? えっへん!」
カービィはとくいになって、ぴょんぴょん飛びはねた。
――と。
はずみで、足元の、小さなでっぱりをふんづけてしまった。
どこか遠くで、ガタンと何かが外れるような音がした。
「ん? なんだろう、今の音」
カービィは、きょとんとした。
メタナイトは聴覚(ちょうかく)をとぎすませ、すばやく言った。
「ワナが作動したのかもしれない。カービィ、気をつけ……」
そのとき、ドーンと、何か重い物が落ちたような音が響き、遺跡(いせき)がゆれた。
ゴロゴロとぶきみな音を立てて、大きな岩がころがってくる!
「カービィ、逃げろ!」
メタナイトに急き立てられて、カービィはあわてて走り出した。
あの岩に追いつかれたら、ひとたまりもなく、ぺちゃんこになってしまう。
「うきゃああああ~!」
「走れ、カービィ!」
「走ってるよ~!」
カービィもメタナイトも必死に走ったが、轟音(ごうおん)を立てて転がってくる大岩の速度にはかなわない。
しかも、進むにつれて坂道が急になり、大岩の速度がますます上がる。
「きゃひゃあああああ! ひゃあああああああああ!」
「転がれ、カービィ!」
「む、むり~!」
コピー能力が「ホイール」や「ストーン」だったら、猛(もう)スピードで逃げ切ることができただろう。
でも、カービィが今もっているコピー能力は「ウィップ」。転がる力は、ない。
「ひゃあ、ひゃあ、ひゃ……!」
さすがのカービィも、だんだん息が切れ、足がもつれ始めた。
「あ……!」
つんのめり、転んだはずみで、コピー能力がはずれて、ウィッピィが転がり出てきた。
大岩が迫ってくる。ウィッピィは、何が起きているのかわからない様子で、きょとんとしている。
「わああ! 逃げて、ウィッピィ! 逃げて~!」
カービィはさけんだけれど、どうすることもできない。
もはや、絶体絶命!?
「カービィ!」
メタナイトがさけび、カービィとウィッピィを両腕にかかえて、思いっきりとんだ。
前方のかべに、わずかなくぼみがあった。
メタナイトは、そのくぼみにぎゅっと体を押しこんだ。
仮面をかすめるように、ゴロゴロと大岩が通り過ぎていく。間一髪(かんいっぱつ)だった。
「いたたたたたー!」
悲鳴を上げたのは、ウィッピィだった。
ウィッピィは、涙を浮かべてうったえた。
「わあああん! オレの大切なしっぽがすりむけちゃったぞ! どうしてくれるんだ、おまえら!」
「……しっぽだけですんで、良かったな」
メタナイトは、息をととのえて言った。
「無事か、カービィ」
「ぶ……ぶじ~」
カービィは、はぁはぁと息を切らせて、言った。
「だけど、コピー能力がはずれちゃった。もう一度……」
カービィは、ウィッピィを見た。
「や、やめろ! もう、おまえに吸いこまれるのはごめんだぜ!」
ウィッピィはすばやく逃げ出し、しましまのしっぽを振ってさけんだ。
「おまえらなんか、ミスター・ダウター様にかかれば、ひとひねりだからな! 覚悟しとけー!」
あっという間に、ウィッピィは逃げ去ってしまった。
「行っちゃった……」
カービィはがっかりした。メタナイトが、歩き出しながら言った。
「先へ進もう。今のヤツが言っていた『ミスター・ダウター様』という名が気にかかるな」
「この遺跡(いせき)のオヤブンかな?」
「そんなところだろう。ローアのウイングを回収するためには、そいつを倒すしかなさそうだ」
二人は坂道を下っていった。
遺跡のオヤブンの名前が分かった、カービィとメタナイト。そいつを倒せば、ローアのパーツを、またもうひとつ、取りもどせる!?
しかし、もちろん、そうかんたんにパーツを手に入れることができるはずもなく……。
次回、おそいかかるピンチの中で、カービィがあらたな力に目覚める!?
『星のカービィ 天駆ける船と虚言の魔術師』れんさい第6回(4月28日更新予定)に続く
『星のカービィ 天駆ける船と虚言の魔術師』は4月27日(水)発売予定!
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書籍情報
あくびが出るほど平和な、プププランドの昼下がり。
ショートケーキを持って仲良くピクニックをしようとしていたカービィ、デデデ大王、バンダナワドルディそしてメタナイトの目の前で、晴れた青い空を切り裂いて、突如、巨大な船が落ちてきた。
ふしぎな光につつまれた、その船の名は――ローア。
すでに滅びた超古代文明ハルカンドラが生み出した、奇跡の船。
カービィたちは、船の持ち主だという旅人マホロアに助けを求められ、墜落とともに失われてしまった、船のパーツを探すことになった。
遺跡や海の底に雪の中…そして異空間をかけめぐる、大冒険が始まる!
【解説:熊崎信也「星のカービィ」シリーズ ゼネラルディレクター】
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